第353話 現状の確認


 アルがクジラでログイン中な事もあって、みんなはルストさんの樹洞に入っている。それにあれだけ跳ねまくる状態で樹洞の中にも入れないのではアルの方には乗れないからね。まぁハーレさんは思いっきり巣の方に向かっているけど、別に良いか。落ちても何とかなるだろうしね。


「そうだ。ケイ、ハーレさん、今のうちに最新情報を仕入れといてくれるか?」

「あ、それもそだね! 情報確認は大事さー!」

「そうだな。ミズキの森林まで戻った後にどう動くかにも関わってくるし、その方がいいか」

「それならハーレもこっちかな?」

「えー!? 私は定位置の巣が良いー!?」

「ハーレ、情報の確認をしながら落ちても知らないよ?」

「うー!? 仕方ない、今回は我慢しよっと!」


 どうやら今回は大人しく情報収集に徹する事にしたらしい。まぁその方が安全だし、落下していく心配をしなくて良いから助かるけどね。


「んじゃ情報収集は任せたぞ。『高速遊泳』!」

「そうですね。私とアルマースさんは移動に専念しましょうか。『根脚強化』!」

「揺れが少ないように頼んだぞー!」

「おう、そのつもりだから自己強化は発動してねぇぞ! って言っても俺の方には誰も乗ってないけどな!」

「揺れについては私も気をつけるとしましょうか」

「アルもルストさんも移動は任せた!」


 とりあえずルストさんも揺れには気を遣ってくれるみたいだし、今は樹洞の中で情報収集に専念しよう。


「ケイ、灯りをお願い出来るかな?」

「おっと、そういやそうだった」


 樹洞の中は暗いままだし、発光を使って光源は確保しておかないとね。


<行動値を3消費して『増殖Lv3』を発動します>  行動値 53/56(上限値使用:2)

<行動値上限を3使用して『発光Lv3』を発動します>  行動値 53/56 → 53/53(上限値使用:5)


 よし、増殖はLv4だと増え過ぎだからLv3でいい。魔法砲撃が発動したままだけど、まぁ魔法発動時に任意で砲撃化を指定出来るし、そのままでも特に問題なし。

 情報収集は赤の群集も関わってくるだろうから共闘戦略板の『赤の群集・森林:灰の群集・森林深部(ミズキの森林)』で良いだろう。多分だけど、ヒノノコとかのボス戦も共闘は必要だろうしね。


「さてと、ハーレさん情報収集に行くぞ!」

「了解です! 共闘戦略板でいいー!?」

「おう。ミズキの森林のとこな」

「了解です!」

「サヤとヨッシさんはどうする?」

「私は少し魔法砲撃の練習をしたいかな?」

「それなら私はそれに付き合うよ。毒魔法か氷魔法のLv5にも興味出てきたしね」

「よし、なら2人は特訓だな。それじゃそれぞれに行動開始!」

「「「「「おー!」」」」」


 それぞれにやる事も決まったので、アルとルストさんの移動で常闇の洞窟の出入り口に到着するまでは個別にやっていこう。とりあえず俺とハーレさんは共闘戦略板で情報収集だな。



 ベスタ   : 昼飯の時間が重なったから、しばらくは人が戻ってくるまでは待機だな。

 招き猫   : そだね。ねぇ、それまでちょっとヒノノコの攻撃を探ってきてもいい?

 ベスタ   : それは個人の判断でやってくれて構わないが、現地で揉めるなよ?

 招き猫   : 大丈夫、大丈夫! 基本的にレナさんが灰のサファリ同盟を指揮してるんでしょ? レナさん相手に下手な真似すれば、口コミで死ぬって!


 うん、レナさんに関してはあの顔の広さからして冗談抜きで後が恐ろしい事になりそうではある。レナさんは弥生さんとはまた違った意味での危険性を秘めてるよね。まぁ普通にしてれば危険性は低いというのも共通点か。


 ハーレ   : やっほー! 今はどんな感じになってるのー!?

◯ルアー   : お、ハーレさんがいるって事はあそこのPTも昼休憩を終えて動き出したか。

 ケイ    : まぁ、その通りだな。で、現状はどんなもん?

◯ルアー   : とりあえず常闇の洞窟から脱出して、ミズキの森林に集結中だな。まぁ、昼休憩の都合もあってまだ揃うには時間がかかりそうな感じだ。


◯マッチ   : クエストが進行した直後に常闇の洞窟の通路でログアウトして、前のエリアに戻った人達はボスの広範囲攻撃をされて結構な大惨事だったよ。あれだね、一気に大人数が無秩序に動くと痛い目を見るね。


 ケイ    : あー、やっぱりか。


 その可能性は考えていたけど、やっぱりそういう事態も起きていた訳か。まぁある程度の予想はついていたから別に気にするほどの事ではない。そりゃ戻る先は思いっきりボスが狙ってくる地点なんだから、不用意にやるとそうなるよね。


 ベスタ   : その件を含めて、今は普通に常闇の洞窟を移動してる連中が大半だな。……ところで、猛烈な勢いで競うように駆けていった小さくなったクジラが引っ張る灰の群集の木と、赤の群集の木の目撃情報が上がっていたが、ケイ達のPTだな?


 おおう!? まぁ掲示板で話題になってたし、目撃者も結構いたはずだから情報が回ってても当然と言えば当然か。でもあれは俺自身、何もしてないんだけどな?


 ハーレ   : そだよー! アルさんとルストさんでレースをしてたのさー!

◯ルアー   : なんで競い合う様に暴走してるのかと思ってたら、実情はレースでほんとに競ってたのかよ!? まぁ、おかげで木での高速移動方法の情報が上がっているから問題ないが……。


 ベスタ   : ただの確認で深い意味はないから気にすんな。とりあえず今はケイ達も出口を目指しているって認識でいいか?


 ケイ    : おう、その認識でいいぞ。で、ぶっちゃけ出入り口のとこのヒノノコと瘴気の様子とかはどうなってるんだ? 辿り着く前に情報が欲しいんだけど。


 レナ    : およ? ちょうどいいタイミングっぽい?

 ラック   : クエストの進行による変更点を大雑把にだけど把握出来たから、報告に来たよー! オオカミ組の協力にも感謝!


◯ルアー   : 良いタイミングだな。

◯ガスト   : 流石に灰の群集は分析が早いな。赤の森林の方はもう少し掛かりそうだ。


 ふむふむ、レナさんをリーダーに灰のサファリ同盟の方で検証を行っていたようである。そしてオオカミ組もその手伝いをしていたのか。


 ベスタ   : とりあえず報告を頼む。

 ラック   : 任せといてー! まず一番の変化はボス戦のカウントのタイミングが変化しています!

 ケイ    : ボス戦のカウントのタイミングが変化……?


 それはどういう事なんだろう? 確か常闇の洞窟に突入した時のカウントはヒノノコを視認してからだったはずだけど、そこが変わったという事か?


 ラック   : えっとね、変化前はPT内の誰かが視認が条件だったけど、変化後の今はヒノノコが戦闘状態に入った時にボス戦の範囲にいる事だね。


 レナ    : そして範囲は具体的に陥没エリア全域と陥没エリア端の崖上2メートル圏内だー! その中にいれば人数制限は特にないみたい!


 ケイ    : なるほど、崖上も一部は範囲内なのか。


 崖上が少し範囲に含まれるって事は崖の上からの一方的な攻撃はさせないってとこなんだろう。崖上から攻撃をするのであれば、そこもボスの攻撃圏内になるって事だな。ふむ、流石に遠距離から狙いまくる展開はさせてくれないか。


 ラック   : それと当然ではあるんだけど瘴気が薄くなってるね! まだそれなりの濃度はあるけど、ヒノノコが回復に瘴気を使う度に目に見えて減っていってるよ!


 ハーレ   : おー! それは朗報だね!

 レナ    : ついでに案にあった、瘴気収束によるヒノノコの誘導はそれなりに効果ありだったね。でもこれに関してはもっと重要な事が分かったよ。


 ケイ    : もっと重要な事……?

 レナ    : うん、もっと重要な事。単純明快に、浄化の光と組み合わせて瘴気の総量を減らせるね。ただし、纏浄を使うとヒノノコからの攻撃優先度がかなり上がって攻撃が苛烈になるから結構厳しめー。


 ラック   : そこで活躍するのが麻痺毒だね。複数の翼竜に麻痺毒を与えたら、翼竜を攻撃しに行くよ。複数体で同時にやればヒノノコの攻撃優先度が頻繁に変わって混乱するみたいで隙が出来るね! 纏浄の方が少し優先度が高めだけど、数が増えれば増えるだけ有効な感じ!


 ベスタ   : ふむ、大人数で纏浄を同時使用して標的の分散をしつつ、翼竜にも麻痺毒を与える事で更に分散が可能なのか。……となると翼竜は敢えて分裂させて標的を増やすのが効果的か。


 招き猫   : 結構調べたねー。それでヒノノコは倒せそう?

 レナ    : んー、まだ微妙かな。陥没エリアの森は焼け落ちちゃってるから瘴気も減って姿を確認しやすくはなったよ。攻撃は当てやすくはなったし1割くらいはすぐ削れるけど、もう少し瘴気を減らさないと無理だね。回復速度は遅くはなったけどまだまだ早いし、エンの根も邪魔ー。


 ケイ    : まだ倒すまでに手順が必要なんだな。


 とりあえずは回復に使える瘴気を徹底的に減らすのが重要なようである。ここは人数がいればいるほど効率よく進めれそうか……? うん、これは結構な大人数での共同戦線になりそうな気がするね。人数制限がないって事は、大人数で協力して瘴気を消滅させろって事かな?


 ハーレ   : エンの方はー!?

 ラック   : エンは灰の群集じゃどうにもならないねー! でも赤の群集の人なら、結構な確率で状態異常や攻撃が有効なのは確認したよ。ただし、HPは全然減らないから多分群集拠点種は根本的に倒せなさそう。ちなみにエンの攻撃優先度は他の群集の人の方が少し高め!


 レナ    : それと植物系に有効な攻撃なら、少しの間だけどヒノノコとの連携を妨害出来るね。という事で、ここは赤の群集の人達の出番だよ。エンとヒノノコの連携の妨害が重要かも。


◯ルアー   : なるほど、そういう形で共闘か。

◯ガスト   : 他の群集で群集拠点種の妨害を引き受ける形になるんだな。……そうなると順番を決めてから赤の森林か、灰の森林深部に人数を集めて、一気に攻め落とす方が良さそうだな


◯ルアー   : そうだな。同時進行ではなく時間をずらせば纏瘴と纏浄の両方を活用させる事も可能か。


 ケイ    : そっか。使えない時間の分だけ、討伐時間をずらせばいいんだな。それで片方で纏浄を使った人は2戦目で纏瘴を、纏瘴を使った人は纏浄を使って役割分担をすればいいんだ。


 もしかしてそういう攻略の為の使用時間の制限なのか? とにかくこれらの情報からすると自分の群集の所はボスや翼竜を、他の群集の所では群集拠点種の妨害を行うのが良さそうだね。それと瘴気の除去もか。


 招き猫   : うー、その辺の確認に行こうと思ってたのに大体終わってたって事なんだね……。

 レナ    : ま、そうなるかなー。でも、これはヒノノコにまともにダメージを与えられるようにするまでの手順だからね。ヒノノコ自体の攻略はまた別の戦力が必要だと思うよ。


 ベスタ   : だろうな。だが、序盤の攻略手順の検証はよくやった。


 うんうん、確かに重要な情報ばっかだったもんな。……ところで、ベスタはその場には居ないっぽいけどどうしたんだろ? 真っ先に検証に加わってそうな気がするんだけど……。


 ケイ    : そういやベスタは今は何やってんの? 検証に加わってないってのがちょっと意外なんだけど。


 ベスタ   : あー、それか。ちょっと不注意で携帯端末を壊しちまって、修理に出しに行ってたんだよ。そんで今はルアー達と一緒に常闇の洞窟を抜けているとこだ。


◯ルアー   : ま、そういう事だな。っていうか、ケイさん達とは結構近い位置にいるぞ。

 ケイ    : ……なるほど、そりゃ大変だ。っていうか、近くにいるんだ?

 ベスタ   : そうなるな。よし、1ヶ所目の転移地点まで行ったら少し待っていてくれ。合流しよう。

 ハーレ   : 了解です!

 ケイ    : ほいよ。


 ルアー達という事はフラム達もいるのかもな。よし、今はPT連結もしてないし、入口まで行けばベスタ達と合流って事で問題ないだろう。そこからヒノノコを突破して、ミズキの森林を目指せばいい。


 ケイ    : あ、そうだ。常闇の洞窟から出る時に警戒しとくべき事はある?

 レナ    : そだねー。他の人が引きつけてる間なら可能性は下がるけど、入口付近は変わらずに攻撃優先度が高いし、黒い火を吐いてくるから防御したほうがいいかな。ケイさんなら水の昇華魔法で防げるでしょ?


 ケイ    : 黒い火ってことは瘴気と火の昇華魔法っぽいやつか。

 レナ    : そう、それ。1回防げたらしばらく使う事はないから楽にはなるよ。それか、かなり狙いにくいけどケイさんの見つけた回復アイテムを食べさせる方法だね。出てくるタイミングで外に人がいれば状況次第ではあるけど、ある程度は対応出来るよ。


 ハーレ   : おー! 意外と対抗手段はあるんだねー!


 確かに思った以上にヒノノコの動きを制限させる方法はあるみたいだね。これこそ検証の成果って事かな。


◯ガスト   : あー、ヒノノコには有効かは分からんが、魔法のLv5の防御魔法でも魔法型の奴ならそれなりに防げるぞ。可能なら並列制御で2重にして複合魔法にすれば、かなり安全だ。


◯ルアー   : それは属性にもよるって話じゃなかったか?

◯ガスト   : そういやそうだったか。まぁ、その辺の判断は任せる。


 まさかの取得したての水魔法Lv5の出番が早くもありそうだ。ふむふむ、魔法のLv5が防御魔法だったというのはそれが必要になってくる場面が出てくるからという事か。ヒノノコの火に対しては水は有利だから、これは使えそうだね。


 ラック   : とりあえず報告はこんなもんだよ! ベスタさん、今後の方針はどうするー?

 ベスタ   : そうだな。まずはそれらの情報をまとめ機能に上げて、情報共有が最優先か。全体としてはとりあえずミズキの森林へ集合して、赤の森林と灰の森林深部のどちらを先に片付けるかの検討も必要だな。その後で希望者を募って、時間を決めてからボス戦の攻略といったところか。


 ラック   : 了解したよー! それじゃ分かってる情報とその方針は灰のサファリ同盟の方でまとめに上げとくよ。自由参加って事でいいんだよね?


 ベスタ   : あぁ、強制する気はないからな。俺はケイ達と合流してからミズキの森林へと向かう。ルアー、赤の群集への告知は任せるぞ?


◯ルアー   : 任せておけ。赤の群集でも大きく動きが出てきたからな。

◯ガスト   : ルストと弥生さんの件だよなー。ま、楽しくなるならそれで良いけどよ。

 ハーレ   : 色々あったけど、赤の群集は改善に向かってるみたいで良かったねー!

◯ルアー   : お陰さまでな。ま、その辺の話は合流してからにしようぜ。

 ハーレ   : 了解です!

 ケイ    : おうよ。んじゃまた後でな! 


 さてととりあえず現時点で必要な情報はこんなもんだろう。情報収集は切り上げて、みんなに手に入れた情報を伝えていくとしますかね。


「みんな、色々分かったぞ」

「そうか、なら説明を頼んだ」

「ほいよ。まずはだなーー」


 そうして簡潔にだけど得た情報を伝えていく。そういや今はどの辺まで来てるんだろうか?


「なるほど、分かった。とりあえず間近の話ではベスタ達と合流だな」

「そうなるな。で、後どのくらい?」

「もう少しかかりそうですね。もうすぐ1ヶ所目の転移地点ですので」

「それでも結構早い方だな」

「まぁ移動速度が上がっているとはいえ、結構な距離もありますからね」

「……それもそうだな」


 常闇の洞窟は元々が相当広いエリアだし、その辺は仕方ないんだろうね。さて、とりあえずベスタ達と合流を目指して頑張っていこうか。

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