第352話 魔法砲撃の仕様
水魔法Lv5は防御系の魔法という事が分かったので、次はもう1つの魔法砲撃について検証していこう。とりあえずスキルの説明を見ておこうっと。
『魔法砲撃Lv1』
自身の特定部位を指定して攻撃の起点とする事で、魔法を砲撃として撃ち出す事が可能になる。砲撃化するかは魔法発動時に任意指定可能。
攻撃方向が指定した部位の向いた方に固定され、操作系スキルによる制御は不可能になるが、攻撃速度と威力を強化。クリエイト系の魔法による生成量も少し増加。
Lv上昇により攻撃速度と威力の上昇。
ふむふむ、まぁ元々まとめに書いてた通りの内容だね。スキルとしてはどうやら上限値使用の系統のスキルみたいである。操作系スキルでの手動操作が出来ないのと向きが固定されるのがデメリットではあるけど、使い方次第ではこの威力強化は役立つはず。
「サヤ、スキルの内容は確認出来たか?」
「うん、問題ないかな。それでどういう風に試してみる?」
「……そうだな、どっか適当に壁に向かって試し撃ちをしてみるか」
周囲にそれなりに人がいるので、適当にぶっ放すって訳にもいかないしね。んー、サヤの試し撃ちはさっきの水の防壁が丁度良いかもしれない。
「魔力集中も発動している事ですし、私が試し撃ちの相手を致しましょうか?」
「え、ルストさん良いのかな?」
「えぇ、折角ですからね」
「それならお願いするね。ケイ、先に試させて貰ってもいいかな?」
「おう、いいぞ」
さて物理型のサヤのクマでは魔法の威力はそんなに大した事はない筈だけど、通常の発動と魔法砲撃を使用しての発動の違いが気になるとこだね。あ、その辺の確認もしとこうかな。
「それじゃルストさん、行くね」
「えぇ、いつでもどうぞ」
「あ、サヤ待った!」
「……ケイ、どうしたのかな?」
「魔法砲撃の反映ありとなし、両方やってみてくれない?」
「あ、それもそうかな。取得までに何度も使ったけど、見比べてみたいもんね」
「後で俺のも比較してみるし、違いが知りたいから同じ魔法で試そうぜ」
「比較検証だね。そういう事なら土魔法が一番育ってるからこれが良いかな?」
「土魔法か。じゃあ、アースバレットでやるか」
「うん、分かったかな」
よし、これで物理型による魔法砲撃の有無の差と、魔法型による魔法砲撃の有無の差が分かるだろう。まぁ俺は支配進化だから厳密には魔法型とも言い切れないけど、ステータス的には同じようなものなので大丈夫のはず。
「まずは普通に行くよ。『アースバレット』!」
「『根の操作』!」
「あ、あっさり叩き落とされたかな!?」
「物理型の魔法ですと威力は下がるのでこんなものでしょう。少しではありますが速度は遅めですね。物理型ですと魔力の追加消費による速度加速の余裕もありませんしね」
あ、そういや魔力の追加消費で速度の加速ってのもあったっけ。あんまり使う事がないから忘れかけてた。それにしてもこうやって物理型での魔法の発動を見てみると威力はもちろんだけど速度にも差があるんだな。
この辺は明確にステータスの差が出るんだね。とはいえ決して遅い訳じゃないから、簡単に弾き飛ばしているルストさんが凄いだけだけども。
「まぁそれもそうかな。それじゃ次を行くよ。『魔法砲撃』『アースバレット』!」
「おぉ! 明確に速度が上がりましたが、それでも魔法型の通常発動と同等より少し速いくらいですね」
サヤの爪の先から撃ち放たれたアースバレットの速度は俺が普通に発動した時より速めではあったみたいだね。まぁそれくらいだとルストさんには根であっさりと叩き落とされていたけども……。
でも、狙いがバレバレとはいえこれはかなり強力な強化かもしれない。物理型でも魔法型の通常発動と同等以上とはね。
「でも、これは使えそうかな?」
「これなら牽制とかにも十分使えるんじゃねぇか?」
「うん、これは使えそうな気がするかな。私にはこっちの方が使いやすいしね。普通の発動の狙いをつけるのはあんまり得意じゃないし」
「サヤって近接は凄いけど、それ以外は結構苦手だもんねー!」
「近接が得意じゃないハーレには言われたくないかな!?」
「こらこら、サヤもハーレもそういう事で喧嘩しないの」
「ヨッシは全体的に高水準だもんね!?」
「うん、ヨッシって地味にバランス良いよね」
「あれ!? なんか私に矛先が向いたよ!?」
何か妙な流れになって、ヨッシさんがにじり寄っていくサヤとハーレさんから距離を取り始めていく。あんまり気にしてはなかったけど、ハーレさんはそういや近接は得意じゃないんだな。ふむ、俺が何気なく言って決まった方向の投擲は実はハーレさんにかなり向いていたって事なのかもね。
あ、ヨッシさんを捕まえにサヤとハーレさんが動き出してヨッシさんが逃げ出した。まぁ仲良くじゃれ合ってるだけだろうし、特に問題もないだろう。
「ケイさん、放っておいていいのですか?」
「ん? あの3人なら特に心配はいらないぞ。なぁ、アル?」
「ま、心配はいらないな。とりあえず時間の事もあるから、ケイの方もやっておこうぜ」
「そだな。という事で引き続き、ルストさんよろしく」
「ケイさんとアルマースさんが大丈夫と言うのならそうなのでしょうね。では続きをしましょうか」
「ほいよ。とりあえず俺も通常発動から行くぞ」
「えぇ、分かりました」
さてと俺もアースバレットを使っていこう。色んな属性で試してみたいけど、とりあえずそれは後回し。こういう事は順番にやっていかないとね。
<行動値2と魔力値6消費して『土魔法Lv2:アースバレット』を発動します> 行動値 52/57(上限値使用:1): 魔力値 171/182
話している間に少しだけど行動値も魔力値も回復していた。今回は普通に今まで通りの発動なので、そこら辺の空中に小石を生成して、狙いをつけていく。ルストさんもこの程度なら回避は余裕みたいなので、ここは3発にして本気で当てるつもりで行こうか。
照準はルストさんの幹。3発同時に別方向より撃ち出す! お、あっさり叩き落とされた。まぁ別方向からとはいえ、ただ真っ直ぐに撃ち出しただけならそうなるか。
「ケイさん、なぜ3発にしているのですか!?」
「え、あんまりにも余裕そうだったからつい……ね?」
「つい……ではありませんよ!?」
「とか言いつつ、普通に全部叩き落としてるよな、ルストさん」
「……まぁこのくらいでしたらね」
ルストさんに全て叩き落とされるのは想定済みだったからやっただけだしなー。魔力を追加投入すれば加速も可能だけど、流石にそれは今やる事でもないからね。
それにしてもこれだと弾速的にはサヤの魔法砲撃ありには少し劣るくらいか。これで俺が魔法砲撃を使えばどうなるのかが楽しみだね。そういや、魔法砲撃での3発までの同時撃ち出しについてはどうなるんだろ……? その辺の情報はまとめに無かった気もするから、試してみるか。
「ルストさん、次は3発で魔法砲撃ありで行くぞ」
「……その場合、どうなるのですか?」
「知らんから試す! そういや今更なんだけど、この手の情報は赤のサファリ同盟には無かったのか?」
「魔法型の人は何人かいますが、赤のサファリ同盟でそれを使っている方はいませんよ。まぁ色んなスキルに色んな条件も多くありますし、全てを網羅とはいきませんからね」
「ま、そりゃそうだな。灰の群集にだってルストさんみたいな物理型の木の人は殆ど居ないみたいだからな」
「おや、アルマースさん、そうなのですか?」
「まぁな。結構早い段階で魔法の取得が流行ったのが原因ではあるみたいだぜ」
「……そういう事もあるのですね。では、これらはお互いにとって欠落している情報の補填という事になるのでしょうか」
「あ、そういやそうなるのか」
「まぁ共闘イベント中だし、それで別にいいと思うけどな」
すべての種族のすべてのプレイスタイルが判明しているわけじゃないから、こういう不足する情報が出てくるのは仕方ないか。それを補い合うのも共闘イベントって事なのかもね。そしてそこから鍛えていき、再び対決型のイベントへと繋がっていくのかもしれない。
これはずっとどこかの群集が一強になり続けないようにする為の措置だったりするのかな? まぁそれでも次の対決型のイベントで負ける気はないけどね!
「とにかく次、行くぞー!」
「えぇ、分かりました。……次のは全力で叩き落とすつもりで行きます」
「気合入ってんな、ルストさん」
複数の根を同時に操作しながら迎撃態勢に入っていくルストさんである。うーむ、全力というだけあって隙がないな。まぁ実験だし、気軽に行くか。
<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します> 行動値 52/57 → 52/56(上限値使用:2)
<行動値2と魔力値6消費して『土魔法Lv2:アースバレット』を発動します> 行動値 50/56(上限値使用:2): 魔力値 165/182
砲撃化するかどうかの選択肢が出たから、即座に砲撃化を選択。すると起点とする部位の選択が出たので次は右側のハサミを選択。そこまで行けば通常発動の時の照準指定は出てこなくて、砲撃の撃ち出される位置の予想の線がハサミの先から伸びるように表示された。
これで発動すれば撃ち出されるんだな。あ、3発にした場合は同時発射ではなくて連射になるのか。ふむ、地味に手順が増えてはいるけども狙いをつけるのが苦手な人には良いのかもね。よし、とりあえず3連射いってみよー! 右側のハサミをルストさんに向けて、アースバレットの1発目を撃ち出していく。
「っ!? これは!?」
おぉ、これは思った以上に速度が早い!? ルストさんは反応自体は出来ているけど、叩き落とそうとしたら根が逆に弾かれたの見ると威力も相当上がっているっぽい。よし、次!
「くっ!? ですが、これはまだ何とかなる範囲です!」
「お、捌き切ったか」
「流石、ルストさん」
続く2発目、3発目も相当な速度と威力で撃ち出されたけども、狙い自体はハサミの向きでバレバレだからそこから先読みされて、叩き落とされてしまった。ふむふむ、威力や速度は充分以上に強化はされているけど、ルストさんクラスだとバレバレの狙いは対処されてしまうのか。
「……魔法砲撃は魔法型の方が使うと地味に恐ろしいようですね。それを防ぐには弾くのではなく、完全に射線から外れるか防壁の類が確実でしょう」
「これなら自動防御系のスキルもありじゃねぇか?」
「そうですね。意外とその方が防げるかもしれません」
「あー、なるほど。狙いがシンプルなだけに自動防御の方が対応しやすいのか……」
ふむふむ、これで魔法砲撃の特徴が結構見えてきた。照準がバレバレになる代わりに威力増強と加速は申し分なし。ただし、自動防御系のスキルとは相性は悪そうって事か。これは状況によって通常発動との使い分けをするのが良さそうだね。
「ケイさん終わったー!?」
「後は細かく他の属性やらLvで試してみたいとこだけど、とりあえず最低限の確認は終わったな。で、どういう状態なんだ、それ」
「ヨッシを捕まえたのさー!」
「あはは、捕まっちゃった」
そこにはクラゲの傘の中に捕獲されたヨッシさんと、ヨッシさんが逃げられないように触手で包んだ状態で手に持っているハーレさんがいた。うん、何がどうしてそうなった。
「……そういえば何でこうなったのかな?」
「別に何でもいいさー! 鬼ごっこ楽しかったよ!」
「サヤがハーレを投げるのはズルイと思うんだけどね。ハーレ、そろそろ……」
「はーい! またやろうねー!」
「サヤ、今度はハーレを捕まえようか」
「うん、それも良いかな」
「おー! 私は簡単には捕まらないよ!」
3人とも追いかける事になったきっかけとかはどうやらどうでもいいらしい。まぁそれだけ気を許せる相手って事なんだろうね。仲が良くて何よりだよ。
「さて、とりあえず最低限の確認が済んだならそろそろ出発するか」
「それもそうだな。ルストさん、試し撃ちの相手ありがとな」
「いえいえ、どういたしまして。私としても興味深かったので構いませんし、思っていた以上にオンライン版は奥が深くなっているようですね」
「あ、確かにそれは私も思ったー! 新規実装が多いもんね!」
「オフライン版の情報は当てにならない方が多いしね」
「それで良いんじゃないかな? 折角なんだから、知らない事が多い方が楽しいと思うよ」
「ま、そりゃそうだな」
オンライン版からの新規実装だらけで、知らない情報が大量だもんな。まぁ手探りで育てていく楽しみを考えるならそっちの方が楽しいけどね。
「さて、それじゃ出発するか」
「「「「「おー!」」」」」
「あ、でもレースは良いけど揺れ過ぎない程度でよろしく」
「まぁそれはもっともだな」
「そうですね、そこは気をつけましょうか」
そうしてPTを結成してからルストさんの樹洞に入って移動を開始した。今はアルはクジラでログイン中だから、樹洞展開が使えないので仕方ない。
魔法砲撃については他の属性やLvでの魔法砲撃の効果は試してみたいけど、ミズキの森林に辿り着いてからやればいいや。多分ボス戦の攻略は大人数で役割を分担する事になりそうな気もするし、メンバーを集める時の待ち時間を有効活用すればいい。その為にもまずは常闇の洞窟を脱出だ!
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