第351話 新たな水魔法


 予定外の事があった昼飯も一応食べ終わったので、ゲームの続きをやっていこう。という事で、再度ログインしていったんの場所にやってきた。今回の胴体部分は『予想以上にイベント進行が早い!? まぁ別に良いか』となっている。

 ふむ、運営としてはこの共闘イベントは想定以上の早さで進んでるっぽいね。ヒノノコとかのボスを倒し終わったらどうなるんだろ? まだストーリーに続きがあるのか、それとも何か他の要素でもあるのかな? まぁやってみれば分かる事というか、やらなきゃ分からない事だな。


「いったん、模擬戦絡みのアンケートがあるとか掲示板で見たけどその辺はまだなんだよな?」

「お、見てたんだね〜。うん、それに関しては現在準備中ですのでお待ちください〜」

「ほいよ。それじゃスクショ整理を軽くしとくから一覧をくれ」

「はいはい〜。よろしくお願いします〜」


 いったんからいつものように一覧を受け取り、軽く眺めていく。早めに戻りたいとこではあるので簡単に流し見にはなるんだけど……。うん、なんとなく予想はしてたけどバトルロイヤルでの戦闘中のが多めだね。

 最後の方のジェイさんとの勝負のはルストさんと弥生さんの分が多いな。ある意味予想通りだし、いつも通りの処理でいいか。


「全部許可でよろしく」

「はいはい〜。そう処理しておきます〜」

「それじゃそろそろ行ってくる」

「共闘イベント、頑張ってね〜」


 いったんに見送られながら、昼の部開始である。さて、頑張りますか。



 ◇ ◇ ◇



 そしてゲーム内へと移動していく。常闇の洞窟だと通路でログアウトしたら前のエリアに戻されるから、ログアウト可能な転移地点でログアウトしたからね。周囲には人が結構いて光源はそれなりに確保されている。それに瘴気が薄まってきているのか、視界も少し良くなってる気がするね。


<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します>  行動値 58/58 → 57/57(上限値使用:1)


 とりあえず夜目だけは発動しておこう。多少の灯りがあるとはいえ全体的に暗いので、これがあるだけでも結構視界は良くなるしね。

 さてとみんなのログイン具合はどんなもんかな? 辺りを見回してみれば水場の方に小型化して牽引状態のアルを発見。名前が2nd表記だから、アルはクジラでログイン中か。サヤとヨッシさんもそっちの方にいるね。そっちの方まで歩いていこうっと。


「お、ケイも来たか」

「ケイが来たなら、ハーレもすぐかな」

「だろうね。ところで、ケイさんお昼どうだった? 何か企んでた気もするけど」

「……ハーレさんにしてやられた」

「あはは、やっぱり。ハーレってそういうとこは抜け目ないから」

「つくづく実感したよ……。そもそも賭けに乗ったのが間違いだった」

「ケイ、ドンマイかな?」

「ま、たまにはそういうのも良いんじゃねぇの? 何でも上手く行く事ばっかじゃねぇぞ」

「仰る通りで……」


 今回の件で結構懲りたので、もう二度とハーレさんとおかずを賭けた勝負はやらない。横取りされる事は今まで何度もあったけど、堂々と正当な理由でおかずが減ると非常に悲しくなったしな……。カツ丼でカツ無しってどんな罰なんだろう……。


「おー! みんな、もう揃ってたんだね!」

「後はルストさんがログインしたら出発はできるかな」

「ルストさんがまだなんだね!?」

「流石にここまで来て、ルストさんだけ置いていく訳にもいかないからな」

「アル、流石にそれはどうかと思うぞ」

「置いていかないって言ってんだろうが!?」

「分かってるって。ルストさんを置いていくなんて、冗談、冗だーー」

「誰を置いて行くのですか?」

「うわっ!?」


 背後にルストさんがいてびっくりした!? ……ここから少し離れたとこでログアウトした筈なんだけど、気のせいだったかなー? いや、単純に移動が早いから一気に距離を詰めてきただけか。


「私を置いていくとかそういう風に聞こえた気がするのですが、気のせいですか……?」

「いや、それは置いていく訳にはいかないって話をしてただけだから! だからそんなに拗ねないでー!?」

「……ケイが余計な事を言うからだぞ」

「ルストさん、すみませんでしたー!」

「そうですか。それは良かったです」


 ルストさんが木の根で地面にのの字を書き始めて思いっきり焦った。もうこれはむしろ怒ってくれた方がまだ気が楽だったよ……。ルストさんを置いていくなんて、そんなつもりは欠片もなかったしアルを少しからかおうと思っただけだったんだよ……。口は災の元っていうのはこういう事を言うんだろうね、少し反省……。


「さて、そういう事でしたら問題ありませんね」

「……復活早いなー」

「ルストさん、弥生さんはどうなのかな?」

「弥生さんですか。今日は新調した家具が先程届いてまして、兄と一緒にリアルで……いえ、これはこれ以上話すと怒られる話ですね」

「……もう既に遅い気もするかな?」

「……間違いなく遅いね」

「ルストさん、アウトー!」

「……内緒にしていただけると助かります」

「まぁ、わざわざ言いふらす事でもないからな」

「だな。ルストさん、リアル情報については要注意だぞ」

「……そうですね、肝に銘じておきます。流石に居候状態で家から追い出されるのは困りますからね」


 迂闊にリアル情報を喋りすぎてるルストさんだけど、もしかしてオンラインゲームはあんまりやってないのか……? オフライン版をやってるのは間違いないだろうけど、この辺のオンラインでのマナー的なのは微妙な感じがするぞ。


「ルストさん、参考までに聞くけどオンラインゲームって初めてか?」

「おや、よく分かりましたね。……私、もしかして色々マナー違反やってますか……?」

「うん、まぁ……正直に言うなら色々と……」

「……そうでしたか。それは重ね重ね、失礼いたしました」

「あー、その手の事はフラムが詳しいからあいつに聞けば良いよ」

「ほう、そうなのですね。それではその様にしましょうか」

「あいつ、ゲームの操作自体はあんまり上手くないけど色々とやってはいるからな」


 まぁVRゲームのオンライン化が始まった当初に出たやつは確かあいつもやってたはず。2年前位に発売されたVRゲーム初のMMORPGは混雑し過ぎてて俺は割と早い段階で飽きて辞めたけど、フラムは結構やってたって言ってた気もする。まぁ正確なとこは知らないけども。


「まぁ移動もあるし、話は移動しながらにしないか?」

「それが良さそうかな」

「そうですね、そうしましょう」

「またレースするー!?」

「お、良いぜ。ルストさん、またやるか?」

「お望みなのであれば受けて立ちましょう!」


 ハーレさんを筆頭にアルとルストさんはやる気のようである。まぁ移動速度を考えるならば速くていいんだけど、あれにはちょっと問題点もあるからな。……流石に今回は止めておくか。


「あ、ごめんね。3人ともそれは却下にさせて?」

「えー!? ヨッシ、なんでー!?」

「あの移動、揺れ過ぎて他の事が何も出来ないからね」

「確かにそれはそうかな」

「……そんなに揺れてたか……? いや、良く考えたら跳ねまくってたな」

「そういえばその辺りには注意を払っていませんでしたか……」

「ごめんね、水差してさ。でもケイさんとサヤは確認したい事があるんじゃない?」

「おう、まぁな」

「取得したけど、タイミング的にまだ使えてないもんね」


 魔法砲撃を取得した直後にルストさんとアルでレースが始まったから、まだ確認出来てないんだよな。水魔法も折角Lvが上がったのにどんなのかまだ見れてないし。


「え、そんなのあったのー!?」

「うん、私とケイで同じ魔法砲撃っていうスキルをね?」

「ついでに俺は水魔法Lv5にもなったぞ」

「……Lv5の魔法はなんでしたかね? 聞いた覚えはあるのですが、興味がなかったもので忘れてしまいました」

「ふっふっふ、Lv5の魔法の種類は私が知っているのさー!」

「あ、敢えて見ずに自分で確かめたかったから、ハーレさんはそれを言うの無しな?」

「ガーン!?」

「口に出して落ち込まんでいい!」


 わざとらしくショックを受けた様な動作をしなくてもいいよ! なんだかいつにも増して機嫌やノリがいいな、ハーレさん。俺から勝ち取ったカツ丼がそんなに美味かったのか!? わざとらしい被害妄想は悲しくなるからやめとこ……。

 まぁハーレさんが元気なのは単純に色々テンションが上がる要素があったからなんだろうね。


「はい! それならここでササッと確認してから、レースをすればいいと思います!」

「ハーレ、妙にレースに拘るね?」

「運営に模擬戦のひとつとしてレースを入れて欲しいのさー!」

「そういう理由かい!」

「そういう理由ですさー!」

「……なるほど、そういう方向性での模擬戦もありか」

「あぁ、あれですか。レースはどうなんでしょうかね?」

「え、どういう事?」

「あー、サヤとヨッシさんは掲示板は見た?」

「見てないかな。何か情報があったの?」

「私も見てないけど、何かあったの?」


 サヤは掲示板での模擬戦絡みのアンケートが近々ある事は知らないんだな。反応的にヨッシさんも知らなさそうだ。アルとルストさんは知ってたようである。

 ハーレさん的には個人開催イベント的な感じで色々出来るようにして欲しいとかそういう感じかな? まぁ実現可能かどうか別として、意見そのものはありかもしれないね。


「近々運営から実装要望のアンケートがあるらしいんだけど、その内容が今朝のバトルロイヤルとかを含めた模擬戦絡みらしいぞ。ハーレさんはそこにレースを入れたいって事だな」

「あ、なるほどね。模擬戦か、それも楽しそうだね」

「確かにそうかな。……一度ケイと戦ってみたい気もするし」

「え、サヤと戦うのか!? うーん、近接では勝てる気がしない……」

「私も遠距離ではケイに勝てる気はしないかな……」

「2人の勝負は見てみたい気はするね」

「確かに気になる対戦ではあるな」

「もしその機会があれば、是非とも観戦させていただきたいものです」


 どういう形になるか、そもそも実装されるかもまだ未知数だけど、興味深いのは間違いないね。同じ群集同士じゃ今は本格的なのは出来ないからな。まぁ進化を簡単にし過ぎない為や、今の共闘イベントのようなダメージ判定に関係する重要な要素ではあるからね。

 もし模擬戦が実装されるとしても、進化には関わらない特殊仕様のものにはなりそうだ。


「ま、先に確認が出来てからならレースで別にいいか。サヤとヨッシさん的にはどう?」

「私はそれでもいいかな? 早めに戻りたいのは確かだしね」

「私はケイさんとサヤが良いなら問題ないよ」

「おー! それじゃそうしようー!」

「ほいよ。とりあえず先に水魔法Lv5を行ってみるか!」

「どんなのかな?」

「気にはなるよね。私も氷魔法も毒魔法もLv5は近いと思うし、傾向だけは知っておきたいね」


 そういやヨッシさんも結構魔法寄りだもんな。確かに気になるとこではある。発動する前に名前を所持スキル一覧から確認して……ほうほう、こういう内容か。さて、実際に発動してみよう!


<行動値5と魔力値15消費して『水魔法Lv5:アクアウォール』を発動します> 行動値 52/57(上限値使用:1): 魔力値 167/182


 水魔法Lv5を発動してみれば、展開する範囲指定が出てきたので目の前に1メートル四方くらいで範囲を指定すれば、その範囲に水の防壁が生成された。厚さの指定も出来るけど、総量は決まってるっぽいね。範囲を狭めれば厚さは増せるし、範囲を広くすれば厚さは薄くなるようである。

 Lv5の魔法は攻撃的な魔法ではなく防御的な魔法なのか。ふむふむ、ちょっと強度が知りたいとこだね。多分だけど使う行動値も魔力値も多いから、水の操作で作る水の防壁より効果は遥かに上な筈。みんながログアウトしてPT解散状態になってるし、ここはルストさんに頼むか。


「ルストさん、強度の実験してもらっていい?」

「えぇ、構いませんよ。魔法相手ならこちらですね。『魔力集中』『根槍乱れ突き』!」


 結構強力な勢いの根の連続突きだったけれど、水の防壁は破壊される事もなく無事であった。ふむふむ、弾き飛ばすのではなく攻撃の勢いを吸収している感じかな。

 あ、地味に耐久値ってのも視界に表示されてて今ので2割くらいの耐久値減少か。ルストさんのこの攻撃を受けてこれなら結構使えそうだな。それにこれなら、これからのヒノノコ戦に活躍しそうではある。


「お、結構頑丈か?」

「いえ、頑丈というよりは威力を減衰させられてますね。これは属性によって特徴が変わってきそうですね」

「ふっふっふ! 火や雷ならカウンター付きの攻性防御、風なら受け流す防御、土なら硬質な防御なんだよ!」

「ほう、そうなんだ」


 なるほど、属性によってそういう違いがあるのか。ヨッシさんの氷と毒について言わなかったのはヨッシさん自身が自分で見つけたい感じもするので、ハーレさんもそこは空気を読んだようである。


「さてと、次は魔法砲撃の方を試してみるか」

「私も気になってるから、早く試してみたいかな」

「魔法砲撃っていうと、あれか。水砲ザリガニが使ってたっていうやつだな」

「そう、それだよ。ちなみに紅焔さんも持ってるっぽいぞ」

「へぇ、紅焔さんがか。どういうスキルでどういう取得条件なんだ?」

「キャラの一部の部位を発動起点にして照準がバレバレになって射線も制限される代わりに、魔法の威力とか速度とかが強化されるっぽい」

「……なんとなく紅焔さんが持ってる理由が分かった。ドラゴンのブレスを再現する為か」

「多分なー」


 紅焔さんについては十中八九それで間違いないだろう。共闘イベントが始まる前に一緒に常闇の洞窟に行った時にそれっぽい事してたしね。


「紅焔さんという方は、もしや火属性のドラゴンの方ですか?」

「おう、そうだぞ。ルストさん、紅焔さんと面識あるのか?」

「いえ、直接はありませんね。ですが、灰の群集から移籍してきたキツネの方が話していた気はします」

「あー、なんとなく心当たりがある人だ……」

「まぁそれほど細かく話した訳ではないんですけどね」


 ふむ、紅焔さんが苦手意識を持ってる例のキツネの人の事みたいだな。……俺はあのキツネの人とは特に交流もないから、いまいちよく分からないんだよね。

 まぁキツネの人の事はルストさんもいまいち分かってないみたいだし、別にいいや。さてと次は魔法砲撃を試してみようじゃないか。

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