第345話 他の場所でも……


 とりあえずここの地点はトラブルはあったけども修復は完了である。灰の群集の常闇の洞窟にある修復場所もあと2ヶ所。でもトラブルのあったここよりも遅いというのも少し気にかかるね。もしかして他の場所でも……?


「アル、ちょっと俺は情報の確認をしてくる」

「あー、さっきの連中の件か。よし、俺も行くぜ」

「それでしたら、青の群集の者として私も行きましょう」

「それならわたしも行った方が良さそうだね。……うん」

「弥生さん、私も一緒に行きましょうか?」

「ルスト……。うん、お願い」

「それじゃとりあえず報告がてら、状況を確認しに行くか。共闘戦略板の『灰の群集:常闇の洞窟』で良い?」

「えぇ、この場合はそこが適切でしょうね」

「よし、そんじゃそういう事で。他の人達は終わるまで好きにしててくれー!」


 そうみんなに告げると、それぞれに返事をして寛いで雑談をしたり、特訓を始めたり、気が早く移動を開始している人もいた。ま、その辺は自由にしてもらって問題ないだろう。

 という事で、とにかく共闘戦略板へと行こうじゃないか。ベスタ辺りが居るとは思うし、何かしらの情報はあるだろう。


 招き猫   : うーん、終わりそうにない……。どうしよ、こいつら?

 ベスタ   : 強制的に割り込んでも良いが、そうすると俺らのマナー違反になるからな……。ちっ、無駄に時間がかかりやがる。


◯フラム   : あー、暇だなー。


 ベスタ達がいるのは俺達が今の場所に移動してくる前の金属塊があった場所だったはずだけど、何かあったっぽい? やっぱり遅れが出ているのには俺らの方と同じで理由があったみたいだな。


 ケイ    : ちょっと情報を貰いに来たんだけど、何かあった?

◯フラム   : お、ケイか。いやな、ここの分身体は復活させないようにしてたけど挑みたいって青の群集のPTがいたから復活させたんだけど、そこで問題が……。あーもう、倒したい人がいるなら、それを優先させるべきなんだろうけど、それでもこれはな……。


 ケイ    : おーい、フラム。もう少し具体的な内容を話せー!

◯ルアー   : 自信過剰な青の群集の6人PTが、経験値が欲しいから倒させてくれって言って結構前から分身体と戦っているんだよ。だけど、倒しきれなくて膠着状態になっててな。倒せないなら、こっちで手伝おうかって言っても邪魔すんなの一点張りで……。しかも立ち回りが下手なせいで金属塊まで壊れたしな……。


 アルマース : もしかしてさっきの連中の仲間か?

 ケイ    : 青の群集って事や、内容的にはそうっぽいよな。あー、面倒くさ……。


 俺らのとこには割り込んで倒させないように好き勝手な事を言って、他の場所では倒せてもいないのかよ。金属塊まで壊れてるとなると、もしかしてわざとやってんじゃないだろうな……?


 ベスタ   : そういえばケイ達の方でもトラブルがあったと断片的な報告が上がっていたな。そっちはどうなった? 相当物騒な事になっていたと聞いたが……。


◯弥生    : あはは……情報は早いんだね。

◯ガスト   : あれ、弥生さんがなんで顔出してんだ? そこって弥生さんが……あっ、もしかしてそういう事か。おい、ルスト。話にしか聞いてはいないが、例のあれがあったのか?


◯ルスト   : えぇ、そうなります……。

◯ガスト   : なるほど、それで気にして弥生さんが顔を出したのか。

●マムシ   : こっちは無事に終わったって報告に来たが……トラブルか? あれって何の事だ? 話が見えねぇんだが……。


●ジェイ   : マムシの方は無事に終わりましたか。弥生さん、自分で説明するのが厳しいのでしたら私の方で説明しますが……。


◯弥生    : ううん、大丈夫。それは自分でやるから。


 そして弥生さんが自分で、こっちで発生したトラブルについて語っていった。弥生さんが自分自身のやった事を語る形で……。


 しばらくかけて、こちらで起きた事をルストさんが補足しながら弥生さんが説明していった。さてと大丈夫だとは思うけど、みんなの反応はどんなものやら。


 ベスタ   : ちっ、そこまで好き勝手してる連中がいるのかよ。

 招き猫   : あらま、それだと希望に合わせて譲ったのは下策だったんだね。

●マムシ   : おい、ジェイ。そいつらって、もしかして……?

●ジェイ   : えぇ、ご想像の通りです。あの方達でしたよ。

 ベスタ   : なんだ、心当たりがあるのか?

●マムシ   : あぁ、何かと口うるさい、青の群集の主導権を握りたがっていた連中だ。どうにも俺らが青の群集を立て直したのが気に入らないみたいで妙に突っかかってきててな。あいつらがこんな割り込み行為をするなら、内部の問題だと伏せずに予め他の群集に伝えておくべきだったか……。


 ケイ    : どこでも面倒くさいやつはいるんだな。


 あの連中は青の群集の主導権を取りたがっていた集団なのか。なぜ主導権を取れなかったのかは、今の状況を考えたらすぐに分かるけども……。

 それにしても、大して強くはなさそうだけど青の群集にはそういう集団もいるんだな。オンラインゲームは人と人との関わりだから、迷惑行為をする人がいるのは避けられないか。……表面化してないだけで、灰の群集にも居ないとは言い切れないから気をつけておこう。


◯弥生    : あれ……? わたしの行動に対する反応が薄い?

 ベスタ   : なんだ、気にして欲しかったのか? まぁ少しやり過ぎではあるが、悪意も無ければ、相手が全面的に悪いだろう。気にする様な事ではない。


 招き猫   : そだね。別にそのくらいなら迷惑行為って訳でもないしさー。

 レナ    : あ、さっき常闇の洞窟から怯えるように出てきてヒノノコに殺られた青の群集のオオカミって、弥生の仕業だったんだね。っていうか、それくらいなら風雷コンビの喧嘩の方が迷惑だったよねー。


 招き猫   : 確かにそれは言えてるねー。悪意がないなら、灰の群集は基本的には気にしないって。

 ベスタ   : そういう事だ。あまり気に病む必要はない。


 おー、流石は灰の群集だ。そうだよな、びっくりする事はあっても普段の弥生さんを見る限りでは一切の悪意は感じないしね。

 流石に全くの無自覚の反省無しならそういう訳にもいかないけど、本人が悪かったと思っているのなら過度に責め立てるのは無しだろう。それに迷惑度合いでは喧嘩をしていた頃の風雷コンビの方が上というのはなんとなく分かる。言っても聞かないのが一番厄介だからね。


◯弥生    : ……わたしの気にし過ぎ?

◯ガスト   : あんまり高頻度ならあれだが、こういう反応ならたまになら良いんじゃねぇの? 前のゲームで具体的にどんな状態だったかまでは俺は知らんけどさ。


◯ルスト   : いえ、待ってください。あれを対処するのは基本的に私なのですが? というか、私は問答無用で攻撃対象なんですが!?


◯ガスト   : 頑張れよ、ルスト。それが身内ってもんだし、普段は逆にお前が迷惑かけてるだろうが。


◯ルスト   : ぐぅ!? 自覚があるだけに言い返せません……。

●マムシ   : あー、まぁ赤の群集の内部の事は後で自分らでやってくれ。

 アルマース : ま、そうしてもらった方が良いな。

 レナ    : そだよ! あ、弥生! また今度赤のサファリ同盟に遊びに行くからねー!

◯弥生    : あ、うん。いつでもおいで、レナ。


 とりあえずこれで弥生さんについては大丈夫かな。今まで関わってきた感じではどう考えてもルストさんの暴走頻度の方が高いから、単純比較は出来ないけど明確に怒らせなければ大丈夫な弥生さんの方が安全かもね。

 でもまぁ、これから先に弥生さんが対人戦のイベントで敵として現れる可能性もかなり出てきたからその辺は注意しないとね。流石に今ここで話す事でもないから、灰の群集のみの時に対策を考えておかないと……。


●マムシ   : ……ん? 赤のサファリ同盟……?

●ジェイ   : あぁ、後で情報をまとめて上げておきますが、赤の群集の要警戒集団ですね。

◯弥生    : いやいや、要警戒集団なんて、そんな事はないよ?

 ベスタ   : その件については把握している。……まぁ敢えて何も言うまい。

◯弥生    : 何か赤のサファリ同盟が変なふうに認識されてない!?

◯ルアー   : 協力を受けている俺が言うのもなんだけど、赤のサファリ同盟は充分やばいから……。


◯弥生    : なんでそうなってるのさ、ガスト!?

◯ガスト   : えぇ!? 俺のせいなのか!?


 うん、思いっきり脱線しまくってるし……。弥生さん的には情報提供をしているだけで、そこまで劇的なものという認識はなかったのかな? うん、まぁ正常に赤の群集が機能してたならそうだったかもしれないけど、かなりヤバい状態まで赤の群集は行ってたみたいだしね。

 その状況から、ルストさんの持ってる精度の情報を提供していればそりゃね? こういうのって本人が一番自覚しにくいってのもあるからなー。


<ワールドクエスト《この地で共に》の金属塊を修復しました> 灰の群集 12/13


 お、他の地点の修復が終わった。という事は残った場所はベスタ達が居て、青の群集の迷惑PTがいる所が最後か?


 シン    : よし、こっちは終わりっと!

 アルマース : 今終わったのは荒野方面の方か。シンさん、ご苦労さん!

 シン    : おうよ! で、何か脱線してるけど他の場所でトラブル発生中?

 ケイ    : 分かってる範囲では2ヶ所でトラブル発生。1件は解決済みでもう1件はまだ継続中。

 シン    : マジか!? 俺がいたとこは平穏で良かった。


●ジェイ   : さて、どうしたものですか。こちらと違って強引な割り込みでは無いようですから強制排除は行いにくいですね……。


 ベスタ   : そうなるが、まぁ手段がない訳ではない。

 アルマース : というと?

◯ルアー   : 分身体を無視して、瘴気の除去ですか……?

 ケイ    : あ、そういやその手があったか。


 別に金属塊の修理をするのには瘴気が無くなれば良いだけだから、無理にエンの分身体を倒す必要もない。邪魔にはなるから倒した方が楽だろうけど、倒す邪魔をする訳じゃない。……まぁ文句を言ってくる可能性はありそうだが、文句を言いたいのはこっちも同じ。

 別にベスタ達と連結PTにして、エンの分身体を倒して経験値を貰っても良い筈なのに時間を無意味に浪費させてるんだからな……。


 ケイ    : そういや、ベスタ。そこのエンの分身体って今のLvはいくつ?

 ベスタ   : 今はLv10の筈だ。……おそらく倒しにくくなる段階に入っているんだろう。

 アルマース : 今の未成体のLv10は高めの方だしな。……こっちにいた連中は倒せなかったら俺らに押し付けるつもりだったようだが、そいつらは押し付けないのか?


◯ルアー   : そうしてくれた方がよっぽどマシだ。

◯フラム   : 多分だけど、なんか意地になってるっぽいぞ。

 ケイ    : うっわ、面倒くさ!?


 もうその状況だと押し付けられてベスタ達で討伐した方が圧倒的に早そうである。そこで意地になって倒せもしないのに延々と戦われたら面倒にも程がある。これは後で口論になっても、強硬手段で修復させる方が良さそうな気がするね。


 招き猫   : ん? あれ、ちょっと待って。何か慌ててる感じの青の群集のサメの人があいつらのとこに突っ込んで行ったんだけど、何あれ?


◯フラム   : あ、ホントだな。何を焦って言ってんだ? えーと『赤の群集のネコを怒らせるな! もうあんなのは二度とゴメンだ。もうやめろ!』とか言ってるぞ。


 アルマース : あー、弥生さんが虐殺した人の1人か。そっちの近くにランダムリスポーンしてたんだな。


●ジェイ   : これはチャンスでは?

●マムシ   : どうチャンスなんだ? なんか解決になるか、これ?

 レナ    : んー、そのサメの人って怯えてるんだよね? そこに赤の群集の移動種の木の人っている?


 ベスタ   : あぁ、いるぞ。……なるほど、ハッタリをやる訳か。

◯弥生    : ……何か嫌な予感。レナ、何をする気なのさ!?

 レナ    : こう言えば良いよ。『さっきの惨劇を繰り返したくなければふざけた真似はやめろ。そうでなければその張本人を呼ぶことになる』ってね! そして、わたしの顔の広さを甘く見てもらっちゃ困るのさ! なにせわたしは『渡りリス』だからね! 迷惑行為をした人の話をポロッとあちこちで喋っちゃうかもね?


●ジェイ   : レナさんはそうでしたね。ところで青の群集でのあだ名だったのですが、実は気に入っていたりします?


 レナ    : うん、地味に気に入ってるよー!


 レナさんも地味に恐ろしい事を考えるね。おそらくレナさんは灰の群集の中でも最上位と言っていいほどに顔の広さを持つ人だ。もしかしたら赤の群集や青の群集を含めてもレナさん以上はいないかもしれない。

 情報っていうものは強大な武器にもなるから使い方には注意しないといけないけども、今はその武器が必要なのかもしれない。


 招き猫   : あ、その必要はなさそうかも。サメの人のあまりの焦りっぷりにビビッたみたい。悪態つきながらだけど、撤退していったよ。


 ケイ    : 単なる小物じゃん!?

◯フラム   : まぁその通り小物なんだろうな。

 アルマース : 大物がそんなセコい真似する訳もないし、そうなるな。


 色々と更なるダメージを与える手段もあったけど、これは使わずに済んで良かったのかもしれないね。効果的ではあるけどもあんまり褒められた手段ではないの間違いないし、使わなくていいならその方がいい。


 ベスタ   : よし、邪魔者は居なくなった。とっとと片付けるぞ!

◯ルアー   : あぁ、そうしよう。

◯フラム   : そんじゃ、俺はみんな呼んでくる!

 招き猫   : フラムさん、よろしくねー! 


 そうしてベスタ達は、その地の金属塊の修復の為の行動を開始した。俺達はそれが終わるのを待てばいいだけだね。とりあえずここは切り上げて、クエストの進行を待とうかな。


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