第346話 共闘イベント、最終段階へ


 トラブルの報告と他の場所での状況の確認も出来て、問題も解決したようなので共闘戦略板の出番は終わりである。さて、サヤたちに伝えとくかな。


「ただいまっと」

「ケイ、どうだったかな?」

「ベスタのいた場所でもトラブルはあったけど、一応は片付いたぞ」

「あ、そうなんだ?」

「まぁ、しょうもない内容だったけどな」 


 あまりにもしょうもなさ過ぎるけど一応簡潔に説明していく。エンの分身体のLvが上がって強化されたとはいえ、自分達では倒せずに弥生さんに怯えて悪態をつきながら逃げていくとか長々と説明しても仕方ないしね……。


「それじゃベスタさん達が倒すまで待てばいいのかな?」

「そうなるな。まぁ、そんなに時間はかからないだろ」


 ベスタ達が苦戦するとも思えないので、少し待てば分身体を倒してすぐに修復も終わるだろうしね。とりあえず討伐が完了して、金属塊の修復が終わるまで待機である。


<ワールドクエスト《この地で共に》の金属塊を修復しました> 灰の群集 13/13

<ワールドクエスト《この地で共に》の灰の常闇の洞窟で金属塊の修復が完了しました>

<溢れていた瘴気の流出が止まりました>

<ボスの瘴気によるHPの回復量が大幅に減少しました>

<全ての常闇の洞窟で金属塊の修復が完了しました>

<規定条件を満たしましたので、ワールドクエスト《この地で共に》が次の段階へ移行します>


 どうやら他の群集の常闇の洞窟では既に終わっていて、ベスタ達のいた場所が最後だったらしい。とりあえずこれでクエストは進展した。倒すのも思った以上に早かったね。

 クエストが進んだ事で瘴気の流出が止まっていく。これでボスの回復に関しても弱体化して、前よりは倒しやすい状態になっただろう。まぁこれに関しては実際に確認してみる必要はあるね。


 そして次の段階へと移行という事は、ボスの撃破は元々想定されていなかったって事なのかな。あ、そんな事を考えてたらグレイとセキとサイアンの姿が目の前に現れてきた。ここで特殊演出ありなんだ。


『各地の瘴気の流出点の修復を確認した。同胞たちよ、ご苦労であった』

『だけどよ、それで終わりって訳じゃねぇぜ? 既に溢れた瘴気は時間をかけて除去していくとして、群集拠点種はどうする?』

『それについてはサイアンに頼んである。サイアン、どうだ?』

『……その件については分析が終わっています。外部から浄化の力を取り込ませ、強制的に適応の為の進化を促す事で正常化出来る可能性はあります。ですが……』


 そこで言葉を濁す青の群集の長のサイアン。そういう分析系は青の群集の得意分野とかそんな感じなのだろうか。

 それにしても群集拠点種を強制的に適応させて進化させるのか。……もしかして適応進化を発生させる為に何度もぶっ倒せとかそういう内容だったりする? 有り得そうだけど、ここは演出を見ていけばわかるか。


『サイアン、何が問題だ?』

『……扱える浄化の力が足りません。少なくとも、今の我々が力を使い過ぎず扱える範囲では不可能です』

『くそっ! 浄化の力が無尽蔵にある訳じゃねぇのは分かってるが、ここで手詰まりかよ!』

『……そういう事か』

[……すまぬ。そなたらがどうにか対応策を講じてくれたというのに、我は無力だ……]

『ちっ、グレイ、サイアン、何か手段はねぇのか!?』


 焦るようにセキが少し取り乱している。そしてグレイとサイアンも考え込み、無言となっていった。


『……こうなっては仕方あるまい。私は人の身に戻るのは諦めるとしよう』

『なっ!? グレイ、てめぇふざけた事を言ってんじゃねぇぞ!?』

『黙れ、セキ。私1人でどうにかなるのであれば、それで構わん。【惑星浄化機構】、お前の干渉が可能な浄化の力を必要量だけ私の方で使わせて貰うぞ。サイアン、それなら可能だな?』

『……えぇ、力の制限なしで人の身を諦めるのであれば、惑星の浄化の力を直接制御する事で可能でしょう』

[ま、待ってくれ!? それは……それでは!? そなたは良いのか!?]

『他に手段がないのであれば、そうするより他に無いだろう。悪いが、セキ、サイアン、灰の群集の事は任せるぞ』

『……ちっ』

『……一定以上の力を行使すると存在が強大になり過ぎて、現時点では悪影響を及ぼしかねないですからね……。分かりました。グレイのその覚悟、お受けしましょう』


 え、ちょっと待って。精神生命体って力を使い過ぎると強大な存在になり過ぎるの!? 強大な力にはそれ相応の代価が必要って事なのか。無制限で好き勝手に使い過ぎると人の身を取り戻すという目的は達成できなくなるんだな。これで灰の群集の長のグレイが退場っていうか、どっか行ってしまうのか……?


『……【惑星浄化機構】、お前の制御下にある浄化の力、貸してーー』

『っ!? ちょっと待て、グレイ!』

『……セキ、しつこいぞ。私はもうーー』

『いや、そうじゃねぇ! 【惑星浄化機構】、お前は瘴気の影響を受けるようになっていたと言っていたな!?』

[……あぁ。原因は分からぬし、以前はこのような事は無かったのだが……]

『っ!? そういう事ですか!? セキ、よく気付きましたね! その方向性で分析をしてみます!』

『……そうか。焦っていたせいで、その可能性を見落としていたか』

[……どういう事だ? 我のその状態が何か関係あるのか……?]

『【惑星浄化機構】、あなたに直接接続させてもらっても構いませんか?』

[……あぁ。それで何かが分かるというのであれば構わない]

『ありがとうございます。とりあえず今は簡易的な分析だけ行いますね』


 突然何かに気付いたセキと、それによって何かを考え始めたグレイとサイアン。そして状況が分からずに困惑している【惑星浄化機構】であった。これはグレイが諦める事なく、他の解決策が見つかったのか?


『【惑星浄化機構】、お前は生物では無いと言ったな?』

[……あぁ、我は作られた道具に過ぎん。この意志とて、奴らに作られた紛いものでしかない……]

『そこだ。その認識が間違っている』

[……何? どういう事だ?]

『サイアンの分析を待つ必要はあるが、おそらくお前は既に道具ではない。魂なきものには瘴気の影響は殆どないからな』

[な……に……?]

『グレイ、簡易的ではありますが分析が完了しました。まだ不完全ではありますが、予想通りの結果です』

『やっぱりか! おい、グレイ、サイアン。これならあの手段が使えるだろ!』

『分かっている、セキ。だが説明が先だ』


 何か急激に話が動いていっている気がする。道具には瘴気の影響はなく、【惑星浄化機構】には瘴気の影響があるようになった……? そしてグレイの既に道具ではないという発言。

 あ、これってもしかして……。そうなると1つ気になる点が出てくるけど、これってどうなんだろう。……まぁそれは後で考えようっと。とりあえず続きを見ていかないとね。


[それでは我はなんだと言うのだ……?]

『簡易分析の結果を言いますね。あなたは惑星の浄化の力と瘴気を内包し、循環を行う状態になっていました。そしてそれらと僅かながら融合し、生物化している状態です。おそらくその状態になった際に自我が発生し、その際に道具としての記録や仮想的な人格データが混ざり合ったものと推測出来ます』

[……我が……生物?]

『えぇ、正しくは生物化の途中段階と言ったところです。なるほど、だからこの地に降りる前の惑星の簡易調査では有害な瘴気が検出出来なかったのですね』

『ありゃ、瘴気に汚染された場所の調査だけだからな。ちっ、ある意味じゃ黒の暴走種の発生は自衛本能から出た瘴気が原因か』

[……待ってくれ。理解が追いつかぬ。……我が生物だと?]

『もう少し詳細な調査を行いたい所ですが、この惑星そのものがあなたの肉体という事になりますね。まだ融合が始まったばかりのようなので、完全にそう呼べるのはこの地域周辺だけにはなりますが……』

『って、事はあれか。この周辺に安全地点があったのはその影響か』

『おそらくその通りかと。【惑星浄化機構】、あなたの力の及ぶ範囲は惑星全体ではありますが、それにはムラがありますね?』

[……あぁ、そうだ。いつの頃からか、偏りが生じている。全域で瘴気を封じてはいるが、この地域が一番安定しているのは間違いない。そなたらが来るまでは地上に少しでも瘴気が溢れた事はない]


 ほうほう。これってもしかして、今の段階で行ける範囲がその地域って事か? そうなると以前見たワールドクエストの進行によって行けるエリアが増えるといういったんからの情報はここに繋がっているのかもしれないね。


[我が生物だとして、それがそなたらの助けになるのか……?]

『助けになるどころか、生物ってとこが最重要なんだよ!』

[……どういう事なのだ? それが最重要な事だと?]

『あぁ、その通りだ。生物が相手ならば、我らの力で同種の存在へと引き上げられる。その後、我らが新たな肉体を得る為の進化の手法を応用して、力を引き上げ今より馴染む形へと進化させる事が可能だ』

[そんな事が可能なのか!?]

『あぁ、こちらの領域に引き上げるのはそれほど難しい事ではないし、理屈の上ではな。サイアン、それに必要な進化情報はどうだ?』

『……同胞達からの大量の情報提供は必要にはなりますが、不可能ではない範囲かと思われます。意図しない形ではありましたが大量の進化情報を得られたのが大きいかと』

『よし、その方向で同胞達には協力を頼むとしよう。……いや、その前にする事があったな』

『あん? んなもん、なんかあったか?』

『当たり前だ。当事者の同意もなしに行える訳がないだろう』

『あ、そりゃそうだ』


 ま、当たり前だよな。当事者の意思を無視して、勝手に話を進める訳にもいかないのは当然の事である。それにしても、群集拠点種の進化ではなく【惑星浄化機構】を一度、精神生命体化させてから俺らと同様に新たな生命とするとは思わなかったな。

 だからボスの討伐カウントには群集拠点種が含まれてなかったのか。群集拠点種は倒すのではなく、【惑星浄化機構】が進化した力によって正常化させるって事なんだろう。そして、大量の進化ポイントの用途はここか。


『【惑星浄化機構】、今ここに3つの選択肢がある。1つはこのまま何もせずに放置する事。1つは私に浄化の制御を預ける事。最後の1つは少しの差異はあるが、同種の存在となってこの地で共に歩んでいく事だ。どれを選ぶ?』

[……そんなもの、悩む理由すらない。我はそなたらに返せぬ罪と、恩がある。叶うのならば、共にその道を歩ませて貰いたい!]

『ならば決まりだ。【惑星浄化機構】の精神生命体化と、その後の進化に向けての行動を開始する!』

『群集拠点種の正常化は、【惑星浄化機構】の進化の後に、浄化の力を引き出す事で行います』

『……確か、今はどこの群集拠点種の近くにも邪魔な瘴気強化種が居たはずだな。そっちの始末も必要じゃねぇか?』

『そうだな。おそらく正常化を実行する際に邪魔になるだろう。併せてそちらの排除も必要か。セキ、サイアン、それぞれの群集に協力の要請を通達しておけ』

『言われなくても分かってらぁ!』

『そうですね。そうしましょう』


<規定条件を満たしましたので、ワールドクエスト《この地で共に》が次の段階へ移行します>

<任意で競争クエストエリアの群集支援種に、【惑星浄化機構】の進化の為の各種進化ポイントの譲渡が可能になりました>

<譲渡したポイント数に応じて、共闘イベント『瘴気との邂逅』終了時にイベント報酬アイテムとの交換が可能になります。積極的に譲渡していきましょう>

<報酬アイテムの交換個数上限はボス戦への参加回数が基準となります>


 ここまでで演出は終了か。ついにイベントの報酬についての言及があった! これは少しだけ進化や万が一のスキル取得に必要な分だけ残して、後は全部突っ込んでも良さそうだね。そして、これがどうやら共闘イベントの最終段階の様な気がするね。


「おー! 遂にイベント報酬の情報が出たよー!」

「でも具体的に何が貰えるかは教えて貰えないんだね」

「それは仕方ないんじゃないかな? でも良いものがあればいいよね」

「とりあえず俺はそれぞれ200ポイントくらい残しつつ、残りは全部譲渡していく!」

「お、気前いいな、ケイ。まぁ何が貰えるかは分かんねぇが、結構大型のイベントだ。今後いつでも手に入るってほど気楽なアイテムではない気がするし、俺もそうするか」

「そだね! 進化ポイントは別の手段でも後々貯められるし、どうしても欲しいのがあってもポイント足らずで入手不可は嫌だもんね!」

「それにボスの参戦回数がアイテムの交換個数の上限なら、報酬アイテムも複数ありそうだよね」

「それは私も思ったかな。全く欲しいものが無いってことはないと思うし、ここは思い切って進化ポイントの譲渡が良い気がするよ」


 サヤ達も俺と似たような判断をしたらしい。ま、状況を見る限りではそれが確実だろうしね。それにまだ次の木曜の定期メンテまでは結構時間はあるもんな。……もしかしたら、報酬が判明した後にもポイントを稼ぐ手段はあるかもしれないけど、そこはあんまり楽観視しない方向でいこう。


 さて、これで共闘イベントの着地点が見えてきた。とりあえずはボスの討伐と、進化ポイントの譲渡が重要だね。とりあえず常闇の洞窟から出てヒノノコと戦うか、ミズキの森林まで戻って進化ポイントの譲渡をしてくるかを決めないとね。

 流石に即座に進化ポイントが上限に行くとは思えないし、混雑もしそうだ。……どっちにしろ常闇の洞窟から出る必要はあるから、みんなと相談してからだね。……それにしても周囲のみんなも盛り上がってるな。まぁ気持ちは分かるけど。

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