第342話 みんなで大騒ぎ
妙な流れで始まったバトルロイヤルも終わり、もう不要になったPTも解散済みである。さて妙な流れもとりあえず終わっただろうし、本格的にスキルを鍛えていこうかな。
「さぁ、次の参加者は誰だー!?」
「お、ハーレさん、まだやるのか?」
「いいね、続けようかー。こうなると勝ち抜いた時の報酬が欲しくなってくるね。あ、そうだ。時間までに何回かやって、勝ち抜いた人でエンの分身体を討伐しよっか。みんな、経験値は欲しいでしょ?」
「お、弥生さん、それは良いアイデアだよ! バトルロイヤル、勝ち抜き報酬はエンの分身体の経験値に決定だー! 出場者募集中!」
「お、良いな、それ!」
「それならやるー!」
「誰が倒すのか揉めそうだから、討伐なしかと思ってたけどそりゃ良い!」
「やってやるぜ!」
「勝ち抜くぞ!」
「やるやるー!」
報酬が決まった事で何か妙に盛り上がりだして、2回目のバトルロイヤルの参加者募集が始まっていた。アルもハーレさんも引き続き実況と解説を行なって行くつもりらしい。そういう報酬がありなら先に言っといて欲しかったけど、今思いついたみたいだし別に良いか。
どう考えても今の人数では連結PTの最大18人も超えそうだしね。集まっているみんなが納得する形で討伐メンバーが決まるなら問題もないだろう。
そしてログイン当初は困惑していたものの、普通に見学していたサヤが近付いてきた。ま、あの状況じゃ迂闊に声はかけられないよな。
「2人ともおはよ。ログインしたらいきなり賑わってるからびっくりしたかな」
「おはよう、サヤ。でもサヤはヨッシさんに比べるとマシだったと思うぞ」
「え、そうなの?」
「サヤ、おはよ。うん、私はログインした直後に出場選手に決められたからね」
「……あはは、確かにそれなら私の方がマシかな」
まぁログイン早々に訳も分からないまま、参戦が決まって実際に実況される事になったヨッシさんに比べればね。俺も流された感が強かったからな。
でもこれは意外と集中力を鍛えるという点では良い特訓かもしれない。……まぁ、これについては実況なしの方がより効果的な気はするけども。実況で周囲の状況が分かるという側面もあったから、そこがちょっと欠点だね。
「あれ、サヤさんってそういう目立つの苦手な人?」
「わっ!? あ、弥生さん。うん、私は苦手かな」
「そっか、そっか。うん、その辺はちょっと配慮が足りなかったね。ヨッシさんも急にゴメンね」
「私はハーレで慣れてるから大丈夫だけど、急には避けてほしいとは思うよ」
「あはは、こりゃ耳が痛い。今後は気をつけるようにするね」
闇の中からニュっと現れてきた弥生さんにサヤが驚いていた。なんで通常時にまで闇纏いを……って、スキルの熟練度稼ぎでもしてるのかもしれないのか。
それにしてもヨッシさんも感じているみたいだけど、弥生さんはハーレさんのノリに近いとこがありそうだ。でもそうなると弥生さんが対人戦に一切興味を示さないってのは不思議だな。
「……弥生さん、対人戦に参加しない理由ってなんかあるのか?」
「ん? あるにはあるけど、それは内緒ー。あ、わたし以外の赤のサファリ同盟はただ単に興味がないだけだけどね」
「そっか、なら無理には聞かないよ」
これは聞いても教えてくれそうにはないし、気にはなるけど無理に聞き出すような内容でもないか。その辺を強引に聞くのはマナー違反だしね。何かしらの理由はあるって事なら、今後も弥生さんの参戦の可能性は低いと考えて良さそうだ。
「ところで弥生さんはなんで闇纏いを今も使ってるのかな?」
「あ、ごめんね。これ、半ば癖になってるんだよ」
「弥生さんは景色もですが、非戦闘時の敵も良くスクショを撮っていますからね」
「ルストさんも来たのか。ってことは、擬態や隠密の代わり?」
「そういう事だねー。ちなみに特性に隠密も持ってるよ」
「あーなるほど」
普通にしていれば気にはならないけど、サファリ系プレイヤーとしてスクショを撮るために隠密を持っているってところか。そしてそれも戦闘方法に組み込んで、更には暴走しがちなルストさんとかを抑える為にも使っている感じかな。
「それにしてもルストにしてやられるとは思ってなかったなー。早起きして何かコソコソやってると思ったらあれだったんだね。あれってもしかしてケイさんが黒幕?」
「ある意味間違ってはないけど、言い方ー!? っていうか、なんでそう思ったんだ?」
「え、何かみんなと反応が違ってたからね」
「あの状況でそこまで確認する余裕あったのか!?」
「いやいや、流石にそれはたまたまだよ。ケイさんがあの時、何か妙に落ち着いてるなって思っただけ」
「あ、そうなのか」
流石にあの状況で全ての人の反応を確認出来てた訳じゃないんだな。まぁ流石にそれが出来るならルストさんの追撃を受ける事もないか。
「さてと、それじゃ時間まではバトルロイヤルを見物してようかな。勝ち抜き報酬も決まったし、面白いスクショが撮れるといいんだけどなー。うん、クリアな視界は重要だね」
「……そう思うのでしたら初手での目潰しは止めましょうよ、弥生さん」
「あれに関しては不本意だけどルストの言う通りだね。でも、ケイさんが代わりにやってたと思うよ?」
ギクリ……! いや、確かに閃光で目潰しして一気に攻め込むつもりではいたから間違いではないけどさ!? もしそうしていたらルストさんからの奇襲を受けたのは俺なのか。
ちょっとルストさんが思いっきり凝視してきている気がするけど、気のせいのはず! っていうか、赤のサファリ同盟の人といるとなんか調子が狂う! 強かったり癖があったりするから、その辺が原因かな……?
「おや、皆さんはこちらで雑談中ですか」
「お、ジェイさん! 岩の操作の使い方が上手かったな!」
「……ケイさんのテンションが妙に高いのが気になりますが、まぁ良いでしょう。ケイさんとヨッシさんの連携も素晴らしかったですよ」
「三日月さんの跳び方には色んなスキルの使い方に可能性を感じたかな。ケイの体当たりみたいだったよ」
「あれは思った以上に上手くいったからな。まとめにあるジェイのケイさん分析コーナーも役立つもんだ」
「ちょっと待って!? 青の群集にはそんなもんがあるのか!?」
ちょっと軽くは聞き流せないんだけど、そんなコーナーってありなのか!? いやいや、青の群集のまとめ機能ってどうなってんの!?
「要警戒人物、それも次々と新たな使い方を発見しているのですから当然でしょう。それにケイさん自身も分析は行っていますよね?」
「ぐっ、それは確かにそうだけど……」
後でジェイさんのやった岩の操作の追加生成の応用方法についての情報も上げるつもりではあるから、これについては否定しきれない。他の群集について止める権利もないんだから、これは甘んじて受け入れるべきか……。
まぁいい、見せたものばかりが俺の手札のすべてではないからね。それに新たな手札は増やしていくつもりだしね。まぁ育成待ちなのも多いけど。
「サヤ、ちょっと場所変えて特訓しよう」
「え、私は良いけどみんなはどうするの?」
「アルとハーレさんは楽しそうだからこのままで良いだろ。ヨッシさんはどうする?」
「それなら私も特訓に付き合うよ」
よし、そうと決まればどこか近くの分かれ道の行き止まりにでも行って特訓しよう。ジェイさん発案の斬雨さんのカウンターと連撃のコンボは強力だったもんな。あれの再現もしてみたいしね。……まぁ俺じゃなくてサヤがだけど。
もう分析コーナーが作られているというなら、こっちもひたすら分析して応用と発展をさせていくまでだ!
「ほほう? これは面白そうな気がするね」
「……覗き見は感心しませんよ、弥生さん」
「ルストに注意されるのはなんか釈然としないけど、まぁ仕方ないね。今日はバトルロイヤルの見物を楽しもうっと」
「私もスクショを撮りたいですからね。観戦していますとも」
そんな会話をしているとバトルロイヤルの方から大歓声が上がっていた。あっちはあっちで盛り上がっているみたいだね。……正直なところ興味がない訳でもないけど、今は元々の予定通りにスキルの熟練度稼ぎをしておきたいからな。うーむ、悩ましいけど今回は育成優先で!
「お、盛り上がってるね! それじゃまた後で!」
「それでは皆さん、また後ほどよろしくお願いします」
そうして弥生さんとルストさんは一気に駆け抜けていった。どっちも移動が早い上に弥生さんに至っては途中で暗闇の中へと消えていった。色んな人の灯りはあるものの、常闇の洞窟内は暗い部分も多いので闇とは相性が良すぎるね。
「……なぁ、ジェイ」
「どうしました、三日月?」
「……赤の群集の分析コーナーもいるんじゃね?」
「……それは私も思っていたところです。ところで斬雨はどうしました?」
「あいつなら、そのままゲストを続けてたぜ?」
「何をやっているのですか、斬雨……。三日月、私達も分析しに行きますよ」
「おうよ。ま、もう1戦やってみるってのも楽しそうだな」
「……状況次第でそれも検討しましょうか」
そんなやり取りを経て、ジェイさんと三日月さんも見物へと向かっていった。まぁ3つの群集が勢揃いしているのは珍しい事態ではあるもんな。
おっと、どうやら2戦目のバトルロイヤルが終わったみたいだな。良いタイミングだしアルとハーレさんに声をかけてから、特訓しに行くとするか。情報の分析はアルとハーレさんに任せておけばいいだろう。
それに灰の群集でもソウさんやシアンさんやセリアさん、他にも顔見知りではないけど何人か来ているみたいだしね。……っていうか、昨日増援を頼まれた時は人手不足だったけど今の人数だと問題なさそうだ。
「おーい、アル、ハーレさん!」
「ん? ケイ、どうした?」
「俺とサヤとヨッシさんで特訓してくるから、ここでの色々を任せていいか?」
「問題ないよー!」
「おう、任せとけ」
「それじゃ任せた」
今はアルもハーレさんも特訓に移動してくる気はないようである。まぁアルは地味に空中浮遊は発動したままなので、ただそこで浮いているだけでも熟練度稼ぎにはなってるんだな。
あれ、よく見たらハーレさんも何かしてる……? 何やら小さな石が目立たないように巣の中で細かく動いているな。気付かれない位置で地味に土の操作を鍛えていたのか。2人ともただ無駄に過ごしている訳でもないんだね。
「それじゃ特訓しに行くか」
「うん、そうしようかな」
「サヤは『連鎖増強Ⅰ』にも慣れないとね」
「そうだね。連撃数も多いから、慣れないと扱いにくそうだもん」
今はとにかく、ロブスターの攻撃を鍛えられる範囲で鍛えていこう! 操作属性付与や水流の操作で威力は増せるけど、元となるスキルの威力が高い方がいいだろうしね。
そうして特訓している内に時間は10時に近づいてきて、残り10分になった。もう少し鍛えておきたい気分ではあるけども、これは時間切れである。
俺はひたすらロブスターの物理攻撃を強化していった。その結果、鋏強打Lv3、鋏切断Lv3、そしてその派生の鋏衝打Lv2と、鋏鋭断Lv1まで強化する事が出来た。
ヨッシさんは毒の生成スキルの強化をしたけれどルストさんに教わった条件には僅かに届かず、サヤは連鎖増強Ⅰによる威力強化に慣れていった。
「よし、そろそろ戻るか」
「うん、そうしようかな」
「でも人数も結構いたから、やること無いかもしれないね」
「ま、その為のバトルロイヤルみたいなとこになってたしな」
そもそも俺達のいる場所については修復済みの箇所だから、そこまで気にする必要もない。バトルロイヤルで誰が討伐するかも決まっていってるだろうから戻らなくても良いと言えば良いんだけど、まぁイベントが進むのは見ておかないとね。
「え、何!? いきなり何ー!?」
「ちっ、なんの真似だ、あいつら!」
「アル、ハーレさん、どした?」
「ちょっとトラブル発生だ! すぐ戻ってきてくれ!」
「……こんな土壇場でトラブル?」
「ケイ、ヨッシ、急ごう! 『自己強化』『ウィンドクリエイト』『操作属性付与』!」
「そだね。事情は分からないけどあんまり良い状態ではなさそうだよ」
「……そうだな、そうしよう」
即座に自己強化と風属性の付与を行ったサヤに俺が乗って、俺のハサミにヨッシさんがしがみつく様な形で勢いよく駆けていく。光源の小石を操作しているので、解除して水のカーペットを使うよりこっちの方が早いんだよな。
そして金属塊のある転移地点に戻ってきた。トラブルだという事らしいから、良い雰囲気ではないようである。とりあえず周囲には光源はいくつもあるし、すぐに動けるように発動していた光源の小石は解除しておくか。
「いきなり出てきて占拠するとはどういうつもりですか?」
「言っただろ、こいつの経験値は美味いんだ。クエストの段階を進めるのは1日くらい先延ばしにしても良いだろ?」
「随分と勝手な事を言ってくれますね……」
「おいおい、同じ青の群集じゃねぇか。ジェイさん、仲良くやろうぜ?」
「お断りしますよ。そもそも割り込みをしているという自覚はあるのですか?」
「は? 順番待ちなんてあったのかよ?」
ジェイさんが対応しているみたいだけどトラブルってのは揉め事のようだ。どうやら見た感じでは青の群集のサメの人と、オオカミの人と、ライオンの人と、樫の木の人が金属塊の前を陣取っているようである。
これは経験値狙いでのクエスト攻略の妨害か……? でも2時間も前から……いや人によってはそれより前からいたのに、そこに割り込んでくるとかふざけてるな。特に気にしてなかったけど、あの近くに木の人がログアウトしてた痕跡はあったから、このつもりでログアウト場所を調整してたのか……? そうでなければこの大人数の中、この状況は作れないよな……。
弥生さんは不機嫌そうだし、ジェイさんも苛立っている様子。他のみんなも明らかに不快感に満ちている。そりゃこの後の討伐を誰がやるかを報酬にして特訓のバトルロイヤルをしてたのに、こんな形で台無しにされたら気分がいいはずが無い。
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