第12章 後半戦、本格攻略開始!
第339話 夜中にあった事
朝飯を食べ終え、少し情報収集もした。まぁ共闘イベントに関する有用な情報は特に無かったけど、それは見てからじゃないと判別できないので仕方ない。
さてと、今の時刻は午前8時。集合時間は9時だから、1時間はロブスターの物理攻撃の強化をしていこう。
とりあえずログインして、いったんの場所にやってきた。今日の胴体部分には『共闘イベント、後編開催中!』と書いてあった。特に何も変わった事やお知らせは無いようである。
「おはようございます〜」
「いったん、おはよう。特に何もなさそうな気もするけど、何かお知らせはある?」
「今のところは特に無いね〜」
「そっか。そんじゃ今日のログインボーナスをよろしく」
「はいはい〜。本日分をどうぞ〜」
「サンキュ」
「それじゃスクリーンショットの承諾をお願いします〜」
「ほいよ……って、多いな!?」
スクショの承諾待ち一覧を見てみると、赤の群集からのものがズラリと並んでいる。って、構図的に昨日のランダムリスポーンの少し前の時とか、ルストさんと赤の群集のイノシシの人がトラブってた時のかよ。うーん、まぁちょっと内容的には気になるけど、害もないし別に良いか。
それとルストさんと地味に弥生さんからのスクショまで来てた。……ルストさんは分かるというか当然来ているとは思ってたけど、まさか弥生さんのまであるとはね。まぁいいか、全部許可にしとこ。
「いったん、全部許可で良いぞ」
「はいはい〜。いやー、共闘イベントでは許可する人が多いから楽で良いね〜」
「え、楽なのか……? 逆に大変な気もするんだけど」
「不許可の人の置き換え処理をしなくて済むからね〜。件数は多いけど、総合的な負荷は少ないのさ〜」
「あー、なるほど」
そういや不許可の場合はデフォルトの種族に置き換え処理がされるんだったっけ。その辺の処理はいったんの役目みたいだし、負荷が少ないなら良い事かもね。
「それじゃ行ってくる」
「いってらっしゃい〜。今日も頑張って下さいな〜」
そうしていったんに見送られながら、ゲームの中へと移動していった。
◇ ◇ ◇
昨日ログアウトしたのは常闇の洞窟の中だったけど、既に周囲に人がいるようで灯りはあって真っ暗という事はなかった。今日は夜の日だけど、場所と状況の都合で普段の夜の日にログインするより明るかったくらいである。所々に木が植わってるのは昨日の時点でここでログアウトした人なんだろうね。
さてとハーレさんはもうログインしてるかな? それともログイン場面でスクショの確認でもしているのだろうか? お、ハーレさん発見。横にいる木はルストさんか。
「ケイさん、こっちこっち!」
「おぉ、ケイさん、おはようございます!」
む、ルストさんの根に力が入ったっぽい? ふふふ、何度もされていれば流石に前兆には気付くようにもなる! そもそも俺のロブスター体当たりと仕組みは似ているとなれば尚更だ。あの動作にはほんの少しだけど溜めがあるからね。
<行動値を2消費して『鋏殴打Lv2』を発動します> 行動値 56/58
即座にルストさんの突撃に合わせて、ハサミで迎撃する! よし、動きは正確には捉えられていないけど向き的にはこっちで……って、威力で押し負けてこっちのハサミが弾かれた!? くっそ、まだLv2のスキルじゃどうしようもないか。
「おや、ケイさん大丈夫ですか……?」
「ルストさん、威力あり過ぎ……」
「いえ、攻撃の意図は無かったのですが……」
「なら急接近はやめてくれない?」
そうしてくれれば迎撃なんかする必要はないんだけどな。……って、地味に結構HPが減ったし、ハサミが付け根で軽く亀裂が入っている……。うーん、やっぱり純粋な近接では近接特化で強い人には対抗しきれないか。せめてもうちょいスキルLvを上げる必要があるね。
突撃へのカウンターを狙うなら、俺の場合だと爆発系のLv4の魔法を設置するほうが良いのかも。というか、そろそろ魔法もLv5になっても良い頃合いだとは思うんだよな。Lv5はどんな系統の魔法になるんだろ? うーん、まとめを見ればありそうだけどここは自力でやりたいね。
「ま、良いや。そのうちルストさんに反撃してやる」
「えぇ、楽しみにしておりますよ」
「いや、ルスト。その前にその突撃する癖を治そうね?」
「おや、弥生さん。おはようございーー」
「ケイさん、ごめんね。うちのルストが暴走しちゃって……」
いきなり吹き飛んでいったルストさんを見ながら、暗闇の中から黒いネコの弥生さんが現れて俺の方に近付いてきた。……今、弥生さんがルストさんに何かをしたんだろうか。壁際まで吹き飛ばされてるんだけど、何をしたのかがさっぱりわからない……。
何をしたのか分からないけど、これが昨日の鎮圧手段なのだろう。圧倒的な強者からの攻撃は恐ろしいものがあるね。それにしても随分強いな。近接系の強化手段とかコツとかがあるんだろうか? どうも闇属性みたいだし、闇纏いを使ってたみたいだからその辺に秘密があるのかも。
「弥生さんも大変そうな感じ……?」
「そうそう。赤のサファリ同盟ってクセが強い人が多いからさ。ガストは比較的クセはないから、ルアーさん達との窓口役を任せてるんだけどね」
「あ、ガストさんでクセが無い方なんだ」
「おー!? そういう基準でガストさんだったんだ!?」
基準がルストさんや弥生さんになるからあれだけど、確かに比べてみればガストさんは接しやすい相手ではあるよね。うん、赤のサファリ同盟が表に出てなかった理由って一番はクセがあり過ぎて難ありで、弥生さんが止めていたとかそういうのもあったりするんじゃないか?
まぁその辺を深く突っ込んで聞く気はないし、もし聞くにしてもちょっと場所が悪いかな。
「ログイン早々、何をやっているんですか?」
「……とんでもねぇな、赤のサファリ同盟と灰の群集ってのは……」
そして共生進化状態のジェイさんとシャコの三日月さんも近付いてきた。斬雨さんがいないのは多分まだログインしていないからなのだろう。
周辺を確認する前にルストさんの突撃があったから確認出来てなかった。なので改めて周囲を見てみれば他にも意外と結構な人数が集まっているけど、知り合いはこれくらいかな?
「ジェイさん、見てたら分かるだろうけど俺は悪くない」
「……そのようには見えましたが、そもそも迎撃の必要もなかったのでは……?」
「……何度か捕まってみれば分かるって」
「……何度か捕まった経験があるのですか」
「うん。ハサミを根で掴まれてぶら下げられてな?」
「とんでもねぇな、ルストさん」
「……赤の群集についても今後は警戒をしていた方が良さそうですね」
ジェイさんはジェイさんで、赤のサファリ同盟を含めた赤の群集の警戒度合いを上げているようである。まぁ俺も同じ気持ちなので、その判断はよく分かる。
さて挨拶はこの辺にして大事な事を確認していこうか。今はエンの分身体の姿は見えないし、瘴気も満ちていないし、金属塊が破壊された様子もない。……これは夜中の人達が倒し続けたか、直前に再修復された感じかな?
「ところでここのエンの分身体は?」
「あー、1時間前くらいに倒したからちょうど予定時間ぐらいに完全復活だな」
「やっぱり討伐済みか」
「放置されてた訳じゃないんだね!?」
「いや、ここのは放置はされてたぞ。1時間前に倒した時に再修復しただけだ」
「あ、そうなんだ」
三日月さんが説明をしてくれた感じでは、ここは夜通し退治されてたのではなく放置の後に破壊されて再修復をしただけか。まぁ徹夜して桜花さんが出張取引所をやってた訳じゃないだろうし、ここの地点については仕方ないだろうね。
「他の地点では夜通し戦っていた所もあるそうですよ?」
「へぇ? 再出現まで待ち時間も結構あるだろうに、良くやるなー」
「はい! 昨日、私もアルさんと一緒に1戦やりました!」
「あの後やってたんかい!?」
「ハーレさんは参加されていたのですね。待っている間はスキルの熟練度稼ぎをしたり、ログアウトして仮眠をしたりして、完全復活したら倒すのを繰り返した方もいるそうです。まぁ倒してから再復活まで3時間ですが、経験値は良かったそうですよ」
「……なるほど」
夜中に戦っていた人は大量の経験値狙いでやってたって事か。まぁ1回目に倒した時間にもよるだろうけど、多くても3回か4回くらいだろうからまだそこまでLvは凶悪にはなってないだろう。これで明日までとかになればどんどんLvが上がって倒すのが面倒になりそうだけどね。
「敢えて金属塊を破壊されたまま修復せずに放置している場所もあるそうなので、その辺がどうなるかですね」
「あ、経験値狙いだからクリアさせたくないとか?」
「まぁそういう事になりますね。流石に延々と占拠し続ける事はないと思いますが……」
「うーん、何かトラブルの予感……」
「いえ、群集拠点種の分身体さえ居なくなってしまえば瘴気の除去は可能ですし、問題ないかと。経験値を手に入れるには倒す必要がありますからね」
「その隙に進めちまえってとこだな。ま、ちょっと強硬手段にはなるが……」
「そっか、そういやそうなるんだな」
エンの……というか群集拠点種を倒してから3時間の間に瘴気の除去をしてしまえば、金属塊の修復はされるのでクエストクリア自体は可能なんだな。まぁそもそも経験値狙いで独占してクエストクリアを妨害する人が出てこなければ良いけども……。
最後に一戦やらせてくれとかだとその人達を優先した方が良いだろうしね。そうでなければ俺達が逆に独占してる事になるから、その辺は気をつけておかないと。人数が多ければ誰が倒すかっていうのも考えておく必要もありそうだ。
「ジェイさん、最新情報ありがとな」
「いえいえ、共闘では必要ですからね」
「ジェイさんって、青の群集のまとめ役の方面の人だよね?」
「リーダーとしてはジャックではありますが、まぁ私は補佐役みたいなものですよ。弥生さん、それがどうかしましたか?」
「いやね、しっかりしてるなーって思っただけだよ。灰の群集のベスタさんだっけ? あの人もしっかりしてるよねー」
そんな風な事を寝っ転がって寛ぎながら弥生さんが聞いてきていた。うん、この動きは本物のネコの動きに非常に近い気がする。……今そういう動きをする意味がよく分からないけども。
なんというか弥生さんはクセのあるという赤のサファリ同盟をまとめているだけの力量や発言力はあるみたいだけど、本人にも確実に妙なクセがあるよね。……まぁ今まで見た感じではルストさんほど強烈なものではないけどさ。
「昨日ちょっと検討したけど、ルアーさんはかなり大変みたいだしこれはちょっと条件緩和かなー」
「弥生さん、良いのですか?」
「だって、流石にあの認知されてなさは想定外だったからさー。条件的にはもう初めに決めた見限り条件は満たしてるんだよね」
「……え?」
「掲示板で見たけど他の箇所でもトラブルあったみたいだもんね!?」
「うん、そうなんだよね。昨日だけで6件かな。大変だったんだよ、ルアーさんのPTメンバーとあちこち走り回って事態を収めに行くのもさ。そんな中でルストは盛大にやっちゃってくれるしさー」
「……申し訳ありませんでした」
「あれについてはケイさんが収めてくれて助かったけどね」
「まぁ流石に放置も出来ないし……」
騒動が酷ければ見限る条件って話とは聞いていたけども、既にアウト段階なのか。それにしても他にも色々トラブルが多発してたんだな。ルアー達、ご愁傷さまです。……あ、でもさっきそれを緩和するって言ってたね。何とかぎりぎりセーフ……?
まぁ灰の群集の俺らには直接は関係ない話ではあるけど、ルアー達の頑張りを知っているからもう少し何とか立て直してほしいところだね。
「ま、そういう事で条件変更。ルストが勧誘した新メンバーの事もあるし、最低限で情報の共有意識が浸透するまでは大目に見る事。ルスト、そのつもりで暴れないようにね」
「はい、分かりました」
「おや、残念ですね。折角、青の群集にスカウトしようかと思ったのですが……」
「あはは、そう簡単に赤のサファリ同盟は手懐けられるとは思わない事だね。私達は大人しく指示には従わないよ?」
「それは承知の上のスカウトのつもりですけどね」
「ジェイさんはジェイさんで、抜け目ないね。ま、もし移籍する事になったら青の群集も候補に入れても良さそう」
まるでその言い方だと、移籍するとしたら既にどこにするか決めていたような発言だね。という事は移籍するとしたら灰の群集に来るつもりだったって事か。
まぁ今のところは灰の群集では風雷コンビの喧嘩騒動以外ではそれほど大きな問題は発生してないから、トラブルを避けたいのであれば最適ではあるのかもしれない。
「さーて、みんな! 予定の時間まではまだ結構時間あるから、スキルを鍛えるなり、まとめで情報の整理をするなりやっていこうー!」
そんな弥生さんの号令もありつつ、みんなは思い思いの事をやっていく。さてと俺もちょっと特訓しますかね。とりあえず目標はロブスターの鋏切断と鋏殴打の派生と、そのスキルのLv3までの強化だね。
土の昇華は多分まだ無理だから確実なパワーアップを優先していこう。水魔法Lv5も目指したいけど、やっぱりスキルが多いと育成が大変だね。でも器用貧乏にしない為にも全体的な強化も必要だもんな。
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