第323話 敵の情報分析
これからの方針も決まってきたので、具体的に俺達もどう動くかを検討しないとね。さて、このまま経過観察をしつつスキルを鍛えていくのでも良いし、常闇の洞窟の中でもまだ行っていない場所のほうが多いのでそっちに行ってみるのも良いかもしれない。
とりあえずその辺を相談して、方針を決めていこうじゃないか。
「おい、エンの分身体が成長するぞ!」
と思ったけど、どうやらそれどころでもなさそうである。そういやさっきもうすぐ変化するとか言ってたっけ。みんなが警戒態勢に移行していき、少し小さかったエンの分身体は元々居たのと同じくらいの大きさになっている。
「ベスタ、これって何度目の成長?」
「6度目だな。なるほど、2時間で再出現して1時間かけて元通りって事か」
ほうほう、そういう風になっているのか。完全に安全なのは撃破後2時間で、それから1時間は倒しやすい状況なのかもしれないね。
そして、その成長が完全に止まった後に何かが姿を表してきた。これが話に聞いていた転移してくる翼竜か。そういやこいつの識別情報ってどんな内容だ? 地味にまだ知らないな。
<行動値を3消費して『識別Lv3』を発動します> 行動値 53/56(上限値使用:1)
<熟練度が規定値に到達したため、スキル『識別Lv3』が『識別Lv4』になりました>
『分裂劣プテラ』Lv4
種族:黒の瘴気強化種
進化階位:未成体・黒の瘴気強化種
属性:瘴気
特性:分裂、合体、瘴気吸収
おっと、識別のLvが上がった。後で何が追加で分かるようになったのか確認しておこう。っていうか、翼竜とみんな呼んでたけど正式にはプテラかよ! コウモリから恐竜の一種へと進化というのはどうなんだ? ……まぁもっととんでも進化はあるし、気にしなくても良いか。
「ベスタ、こいつどうするんだ?」
「外に溢れている奴とほぼ同じみたいだからな。とりあえず確認しておきたい事はあるが、それが終われば瞬殺で良いだろう」
「あ、同じ種類なんだな」
まぁよく考えてみれば、外から転移してきているんだから同じで当たり前か。とりあえず確認が終われば瞬殺って事だな。
「その後に一応エンの分身体も倒しておくぞ。今日中に完全復活前に倒すパターンも試しておきたいからな」
「ほいよ」
確かに完全復活までのパターンは判明したから、次は成長途中のパターンの確認になってくる。今の時間からなら今日中にもう1回再復活して、途中段階での撃破は試せるはず。
「あ、折角だし新スキルを試して良い?」
「ヨッシさん、何か新スキル手に入ったのか?」
「うん、ついさっきね」
「さっき取得したと言ってたあれだな」
「ヨッシさん、私達赤の群集の前で宜しいのですか?」
「うん、これは分かってても簡単に防げそうではないしさ」
「ヨッシ、頑張ってかな!」
「効果の程も確認はしておきたいからな。全力でぶっ放せ」
ほうほう、これはヨッシさんは相当自信ありと見た。ベスタも効果を確認したいっていうくらいだし、かなり重要なそうな内容? あ、もしかして目指してたあれに到達したのか!
「ベスタさんありがとね。それじゃいくよ。『ポイズンクリエイト』『猛毒の操作』!」
「やっぱりか!」
どうやらヨッシさんも昇華に辿り着いたようである。でも、毒の生成量が増えている感じはしない。毒関係はちょっと特殊みたいだし、もしかしたら生成量増加ではないのかもしれないね。
そのヨッシさんの発動した猛毒の操作によって作られた毒の弾は金属塊に向かって突撃しようとしていたプテラ……みんなに合わせて翼竜で良いか。翼竜へと直撃する。そして呆気なく行動不能になり地面に落下して、HPが徐々に減っていく。
あれ、これは何の毒だ……? 行動が阻害されるのは麻痺毒っぽいけど、継続ダメージは麻痺毒にはないはず。
「……ヨッシさん、これってどういう状況?」
「それは腐食毒と麻痺毒の混合毒。毒の昇華のスキルは『複合毒生成Ⅰ』ってなっててね。2つの毒の効果を併せ持つ毒が作れるようになったんだよ。それで『猛毒の操作』は毒の効果の増幅だってさ」
「なるほど、そうきたか!」
「ちなみに『複合毒生成Ⅰ』は同じ毒を重ねれば2倍とまでいかないけど、効果が増加するって」
道理で継続ダメージでHPが減りつつ麻痺毒の効果で飛べずに落下した訳だ。ふむふむ、複数の毒が同時に使えて、同じ毒なら効果上乗せというのは良い強化な上に、猛毒の操作で扱えば更に毒の威力アップか。これで更にヨッシさんの状態異常が凶悪になったね。
でも、この感じだと毒の昇華魔法は無さそうかな? まぁ複合魔法で毒を使えば性質は引き継がれるし、複数の毒を使った複合魔法でも充分凶悪か。
「なるほど、毒の操作の昇華ではそのようになるのですね。では、お返しに毒に関して良い情報をお教えしましょうか」
「え、ルストさん良いの? 私としてはありがたいけど」
「えぇ、構いませんよ。毒に関しては赤のサファリ同盟にも育てている方がいまして、毒の操作の昇華の効果を知りたがっていましたからね」
「ほう? そんな情報を灰の群集の俺らに話しても良いのか?」
「別に赤のサファリ同盟としては情報秘匿を行うつもりはありませんからね。教えてもらったのであれば、それ相応の返礼をするのが礼儀でしょう」
なるほど、赤のサファリ同盟には釣り合うと思うだけのものがあれば群集は関係なく情報のやり取りは可能なのか。赤の群集としては痛手ではあるだろうけど、見つけた情報の開示義務も秘匿義務もない訳だから止める手段もなしって事なんだな。
とはいえ、さっきから地味に頭を抱えているルアーを放置という訳にもいかないだろう。うん、何に対して頭を抱えているのかはよく分かる。でもヒレで魚の頭を抱えるってのも器用なもんだな。
「おーい、ルアー? 大丈夫か?」
「……あぁ、大丈夫だ」
「ほんとに大丈夫か……?」
「……あぁ。色々と悩ましいとこではあるがな……」
「ルアーさん、ご心配には及びませんよ。赤のサファリ同盟の内部で確定させた情報しか開示はしませんので。いくらなんでも赤の群集の皆さんが集めた情報を勝手には話しません」
「……悩ましいのは、赤のサファリ同盟の情報が一番重要ってとこなんだけどな……」
「そこは知りませんよ。私達だってそれなりに手間をかけて得ている情報ですからね」
「……あぁ、分かっている」
慰めるようにルアーに向き合っているルストさんだけども、こう聞いていると赤のサファリ同盟の情報は恐ろしくなってくるね。
ルアーの気苦労も分かるけど、赤のサファリ同盟に色んな事を強制するのは不可能だからどうしようもないんだろう。ま、その辺は新情報を見つけた人がどう扱うかって問題だから俺らがどうこう言う問題じゃないし……。
逆に言えば、赤のサファリ同盟にとって魅力的な何かを提示出来れば赤の群集の強化にも繋がってくる……? まぁわざわざ強化する材料を灰の群集から提示する理由もないので、その辺は考えないけども。
そしてルストさんはヨッシさんに向き直り、改めて話し合う状況になっていく。っていうか、翼竜は放置になってるけど良いのか? まぁ毒で身動き取れないみたいではあるけどさ。
「いやいや、話すのは良いけど、これどうすんのさ?」
「そういやそうだったね。ルストさん、片付けてからで良い?」
「構いませんよ。それでは毒が効いている内にーー」
「待て、ルスト」
「……なんでしょうか、ベスタさん?」
ライさんが至極当然な指摘をしてルストさんが翼竜を倒そうと動き出したでベスタからのストップがかかる。今止める要素ってなんかあったっけ? ヨッシさんに任せるって言ったし、ヨッシさんがルストさんを止めるならまだしも、特に問題ないよな?
「ベスタ、どうして止めるんだ?」
「……えぇ、今なぜ止めたのか説明していただきましょうか」
「あー、今のは俺の説明不足だったな。……説明するから怒気を抑えてくれ、ルスト」
「それは理由次第ですね」
げっ、ルストさん地味に怒ってる……? もしかしてルストさんって自分のペースを乱されると怒りやすい人か!? よし、今後は気を付けておこう。
「理由としては毒を含めた状態異常……特に麻痺系の効果時間の検証をしたい。ヒノノコ戦ではどうやってそいつらを抑えておくかも重要になりそうだからな」
「……あ、ベスタさん。確認したいって言ってたのは翼竜の弱点?」
「あぁ、そうなる。だから、仕留めずに効果時間切れを待ってくれ」
「なるほど、そういう事ですか。そういえば確認したい事があると言っていましたね。……これは私の早とちりのようで申し訳ありませんでした」
そして、ルストさんがまた枝を支えにして土下座のように……ってもういいよ、それは!? とりあえず確認しておきたいって事を無視して倒そうとしたルストさんが悪かった感じだね。まぁ俺も忘れかけてたけど……。すみませんでしたー!
「……先に説明するのを忘れていた俺も悪かったな。まぁそういう事だから、倒すのは待ってくれ」
「承知いたしました。では、私はそちらの邪魔をしてきそうな分身体の足止めをしておきましょう。『並列制御』『根の操作』『根の操作』!」
「うおっ!? いつの間に!?」
「ちっ、6回目の成長で攻撃再開って事か。アルマース、ルストと連携して時間を稼げるか?」
「それくらいなら問題ないな」
「なら任せる。ラインハルト、ヨッシで毒の条件を変えつつ検証。それとフラムも毒を持ってたな? 手伝え。毒が終わり次第、凍結と麻痺も試す」
「おっし、任せとけ!」
「え、俺も? そういう事なら頑張るぜ!」
「了解! それじゃまずは麻痺毒の単独でいくよ。『ポイズンクリエイト』『猛毒の操作』!」
そういう流れから翼竜の弱点の確認が始まっていく。その間のエンの分身体からの攻撃は元の大きさに戻ったアルが翼竜と分身体を分断し、ルストさんが抜けてくる攻撃を弾いていた。
検証結果としては異常付与の特性と毒属性持ちのヨッシさんの麻痺毒が一番効果があり、その中でも猛毒の操作を使えば毒の効果時間は倍くらいに膨れ上がっていた。一番弱かったのはフラムの特性も属性も無しの普通の麻痺毒という結果。
電気魔法での麻痺や氷魔法での凍結も試してみたが、ヨッシさんが使った時くらいしか麻痺は入らなかったし凍結はそもそも効かなかった。麻痺毒以外は基本的に同様の結果である。どうやらこの翼竜には麻痺毒が一番効くらしい。
ただし、麻痺毒を含めて複合毒にすれば他の毒が効くらしい事が分かった。結構えげつないよね、他の毒との組み合わせにすれば効かない毒が効くようになるって……。
「よし、検証は終了だ。翼竜相手には麻痺毒が有効か」
「……そうなると、ヒノノコが厄介じゃないか?」
「いや、ヒノノコにこいつを攻撃させるのもありだろう。良い目印になる」
「あ、そういう手もありか」
翼竜に麻痺毒を食らわせて落ちたところへヒノノコを突っ込ませ、そこからヒノノコへ集中攻撃か。麻痺毒が効きやすいって事は、攻略法の1つになってそうだね。ヒノノコ攻略の糸口が少し見えた気がする。
「ベスタさん、もう仕留めてもよろしいですか?」
「あぁ、問題ない」
「では参ります! 『根脚強化』『根槍連衝』!」
<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
何度も麻痺毒を受け続けた翼竜はルストさんの銀光を纏った根の連続突きによってあっという間にHPが全て無くなり、ポリゴンとなって砕け散っていった。あらゆる状態異常を繰り返してかなり弱ってたから倒すのは呆気なく終了だね。
これでヒノノコ戦で邪魔になる可能性のある翼竜への対処方法が大体決まったな。分裂前の1体ずつで検証できるのはありがたかった。
「それではヨッシさんに毒に関してお教えしましょうか。『微毒生成』『毒生成』『麻痺毒生成』『腐食毒生成』の4つがあるのはご存知ですよね?」
「それは全部持ってるよ。持ってないと毒攻撃も毒魔法も使えないしね」
「それぞれのレベルをお聞きしても?」
「問題ないよ。『微毒生成Lv4』『毒生成Lv3』『麻痺毒生成Lv4』『腐食毒生成Lv4』だね」
「ふむ、程々に育っていますね。少し足りないのは氷もあるからでしょうか?」
「まぁそうなるのかな? 何かレベルが関係あるの?」
「えぇ、ありますよ。4つ全てLv5になれば『神経毒生成』と『溶解毒生成』という新たな毒と『毒分解』という解毒用のスキルがポイント取得が可能になります」
「え、そうなの!?」
そしてエンの根を相手取りながら話し始めたルストさんから思った以上の大型情報が出てきたよ。新たな毒が2種類追加に、解毒用のスキルまで存在しているとなるとこれはかなり重要な情報だぞ。
こうしてルストさんの話を聞いている感じだと毒は毒で操作系スキルの1つにはあるけど、どうやら別系統として存在しているみたいだね。
「えぇ、こんなところで嘘はつきませんよ。ですが3つとも応用スキルに該当しますので、取得には属性に毒が必要ですし気軽に使えない点にはご注意を。あぁ、それとこれはあくまでもポイント取得が可能になる条件ですので、もしかしたらポイントを使わずに得る条件があるかもしれません」
「あくまでもポイント取得の条件なんだね。うん、分かったよ」
「詳細はどうされますか? 必要であれば説明しますが?」
「それは自分で確かめるからいいよ」
「おや、そうですか」
どうやらヨッシさんは詳細は聞かずに自分で確かめるつもりみたいだね。それにしてもポイント取得可能な条件ってだけで別の取得条件が存在する可能性もあるんだな。まぁ、大抵のものは派生ルートこそあるけどルート上のものは使い込めば取得出来るから、そっち方面で何かあるのかもしれない。
なんだかんだで相当重要な情報は手に入った。まぁエンの分身体の攻撃を凌ぎながらって状況が気になるけどね! さて、次はエンの分身体も検証して情報を洗い出していくぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます