第312話 瘴気に満ちた常闇の洞窟
とりあえず俺の回復待ちということで少し休憩中。まぁ状況が状況だから、俺としてはこの回復時間はありがたいね。それにしても進化したヒノノコはかなり厄介そうである。魔法も物理も両方ありだもんな。
まぁその辺は対策を考えるとして、少し周囲を見回してみよう。常闇の洞窟の入り口付近だしボスが直前にいるからか、敵の姿は特になし。一応みんなは警戒はしてるけどね。
「アーサー君、少し手合わせしてみる?」
「え、ヨッシさん、良いんですか!?」
「すぐに行動値が回復する程度でだけどね」
「はい、わかりました!」
アーサーが1人で何かを考え込んでいるのを見たヨッシさんがそんな提案をして、アーサーが嬉しそうに提案を受けていた。やっぱりヨッシさんは面倒見が良いんだろうね。
アーサーはアーサーで、未成体への進化について色々と考えているのかな。無理に俺の進化を追いかける必要はないとは言ったし、さっきベスタが与えたヒントにも色々思うところはあるだろう。
「アーサー君も頑張ってるね。ねぇ水月さん、スキル無しでの手合わせはどうかな?」
「えぇ、構いませんよ。1撃を先に当てた方の勝ちで宜しいですか?」
「うん、それで良いかな。今度は負けないよ!」
「おー! それなら審判やるよ!」
「ハーレ、お願いかな」
「お願いします、ハーレさん」
「了解です! それじゃ試合開始!」
そしてサヤと水月さんはスキル無しでの模擬戦を開始した。審判役はハーレさんのようである。PT連結をしているのでダメージはないけど、スキルなしでの1撃当てる勝負なら問題なく行えるだろうしね。
「なぁ、アルマースさん。やっぱり苦手なのは無理にやらない方が良いのか?」
「あーフラムは近接をしたいって話だったか。でも苦手だからその方向で育てていいのか悩んでるってとこか」
「そう、そうなんだよ! 苦手だと駄目なのかな……」
「いや、そうでもないぞ。フラムなら、灰のサファリ同盟は見てるだろう?」
「あー、色々やってるらしいな。でも、あれってそういうのが得意なんじゃねぇの?」
「それもあるにはあるが、あいつらは自分が最大限楽しめるようにやってるんだよ」
「……自分が最大限楽しめるように……」
「不動種が嫌って訳でも、近接しかしたくないって訳でもないんだろ?」
「まぁ、そうだな……」
「得意な事を活かしつつ、自分のやりたいようにやれば良いんだよ」
「そっか。そうだよな!」
フラムはフラムで何かアルに相談していた。その横でライさんが周囲を照らしながら会話を聞いていたようである。そういや、発光でもそれなりに瘴気の中でも明るくなるんだな。これも『瘴気耐性Ⅰ』の効果だったりするのだろか。
「……思ってたよりフラムは悩んでたのか。仕方ないな、共闘イベントが終わったら何か特訓メニューでも考えてやるか。……そういや灰の群集では初心者講座ってのもやってるらしいし、フラムの杉の場所で赤の群集でもやってみるのもありか……?」
そしてライさんはライさんで何かを企んでいるようである。まぁ初心者向けや、不得意な人に向けての特訓の機会を作るというのもありだろうね。灰の群集では既に確立済みではある事だけど、赤の群集でも同じような事が始まる可能性も出てきたか。
それにしてもみんな随分と自由に休憩しているね。一部休憩じゃないのも混じってたし。
さてと俺は共闘戦略板が更新されているって事だったし、その辺も確認していこうかな。『全体』と『赤の群集:常闇の洞窟』という風に群集毎の常闇の洞窟があり、『赤の群集・森林:灰の群集・森林深部(ミズキの森林)』という風に各地の競争クエストのエリアに分かれている。
競争クエストエリアの方は自分の群集が関わってないと見れないみたいだけど、常闇の洞窟の方はどこの群集でも問題なく見れるらしい。
とりあえず先に行った先遣隊の人達や、他のエリアの情報も知りたいところだね。……これはどこに見に行くのがいいんだろうか?
「なぁ、ベスタ。情報の確認はどこのがいい?」
「ん? 今のうちに情報の確認か? それならとりあえずはミズキの森林で良いだろう」
「ほいよ。それでベスタは何やってるんだ?」
「俺は先に分かった情報をまとめ機能に上げておく」
「あ、なるほど」
さっきの戦闘で進化したヒノノコについて色々分かった事はあるし、その辺のまとめはベスタに任せておいて大丈夫だろう。ベスタほど頼りになる相手は早々いないしね。さてと『赤の群集・森林:灰の群集・森林深部(ミズキの森林)』のところに行きますかね。
○ガスト : 俺らの方だけじゃなく、灰の群集の方にも先遣隊が向かったんだな?
甘口辛子 : あぁ、俺は出遅れたが既に常闇の洞窟入りはしたそうだ。ボスに関しても情報は入ってきている。常闇の洞窟前の特殊ボスが進化しているってな。
招き猫 : うちの主力勢が進化したヒノノコをぶっ倒す気で足止めしてたけど、どうなったんだろ?
○ガスト : 誰か囮になれば常闇の洞窟への突入自体は可能だと聞いたが、倒せないのか……?
レナ : どうだろね? みんな思いっきり攻撃は叩き込んでたけど、敵の攻撃もヤバそうだったしさ。
あ、俺らの事が話題になってるしちょうどいいや。このまま報告してしまおう。……っていうか、やっぱりあの時にいたリスはレナさんか!?
ケイ : 報告! ヒノノコの討伐は現状では無理!
レナ : およ? 苦戦してたみたいだし、邪魔になりそうだったから灰のサファリ同盟のみんなは撤退させたけどそんなにヤバい?
ケイ : ちょっとキツかったけど、巻き込みかねなかったからナイス判断! 多分、弱体化の条件がある。それでも分かった事はいくつかあるから、報告していくよ。
○マッチ : おー!? 分かった事があるんだ!?
○ルスト : えぇ、ありましたとも! 丸太のような大きなツチノコに、黒い火とそれを防ぐ滝。あれこそゲームだからこそ見られる光景! ボス戦へと出てきたのは間違いではなかった!
○ガスト : あー、後でじっくり聞いてやるから、ルストはちょっと黙ってろ。お前が語り出すと脱線しすぎるんだよ!
○ルスト : なんですか、ガスト? 貴方も興味があるのではないのですか?
○ガスト : いや、あるにはあるが一応共闘中だからな!?
○ルスト : あぁ、それもそうですね。あ、それはそうとガストに報告があるのですが、皆に伝えてもらえますか?
○ガスト : ……ここで話すような事じゃない気もするが、なんだ?
○ルスト : 私達の組織名は灰の群集の方々に倣って、『赤のサファリ同盟』と名乗っておきましたので。
○ガスト : はぁ!? 勝手に何やってんだよ!? それは各自で案を出し合って決めるって話してたじゃねぇか!
なにやらガストさんとルストさんの間で口論が始まっていた。いや、ほんとにここでするべき事じゃない気もするけど、何となく少し赤の群集のサファリ系プレイヤーの一端が見えた気もする。あれだ、基本的に自分の目的の為だけのマイペース集団なのだろう。
っていうか、名乗ってた赤のサファリ同盟って勝手にルストさんが決めてたんかい! そういや組織名はないとか言ってたっけ。
ベスタ : 何やってんだ、お前ら……。
○ルアー : おーい、内輪揉めなら他の機会にやってくれ。
○ガスト : ちっ、仕方ねぇか。ルスト、次に集まった時に話し合いだからな。
○ルスト : そんなに駄目ですかね? 赤のサファリ同盟という名称は?
レナ : まぁその辺はそっちで話し合ってねー! で、ベスタさんが来たってことは?
ベスタ : あぁ、判明した内容はまとめに上げてある。灰の群集は各自確認をしておいてくれ。
甘口辛子 : 流石はリーダーだな。仕事が早い!
ベスタ : ……リーダーになった覚えは欠片もないんだがな。
○ルアー : 赤の群集の方にも同じ情報は上げているから確認しといてくれ。
○マッチ : お、新情報ー!
なるほど、ベスタと一緒にルアーもまとめ作業に移ってたのか。一応俺も確認しておこうっと。……ふむふむ、群集拠点種が広範囲に渡って根で攻撃を仕掛けてくる事や、翼竜の対処法、そしてヒノノコの攻撃の優先度、毒への行動パターン、瘴気と火の昇華魔法、何より重要な回復アイテムを食べさせる事での盛大な行動妨害について載ってるね。
翼竜はあえて分裂させて、倒し切らずに大人数で抑え込む方がやりやすいのか。少人数で戦って分裂されるよりかは初めから分裂前提にして大人数で抑えようって事だね。
○マッチ : 灰の群集の分析情報が凄い!? こっちは囮が死んでなんとか切り抜けた程度なのに!?
レナ : 赤の森林の毒スズメは統率持ちの群れのモンスターだったよね。確か攻略方法は、隠れている統率個体の撃破だったっけ?
○マッチ : あれ!? なんで灰の群集の人がこっちの特殊ボスに詳しいの!?
○ラーメン : そういえば、レナって名前の人は何度か見かけたような……?
レナ : あはは、あちこち行ってるもんでねー。
流石、青の群集から『渡りリス』とあだ名を付けられていたレナさんだね。この感じだと初期エリア情報はボスも含めて全て網羅してそうだ。
○ルスト : まぁレナさんは色んなところで会いますからね。共に陸路を移動した時は楽しかったものです。また今度、何処かへ一緒に行きましょう。
レナ : あの時はありがとねー! 休憩場所があったのは助かったもん!
○ガスト : って、お前ら知り合いかよ!? え、俺が入る前に陸路で初期エリア巡りをしてたって時か!?
ベスタ : ……その話題に興味がないこともないが、脱線はそろそろ終わりにしてくれるか。
レナ : はーい!
うん、俺もかなりその話には興味はあるけども今は共闘イベントの方が優先だ。……それにしてもレナさん、色んなとこに出没し過ぎだろう。
ケイ : まぁ本題に戻すとして、進化した特殊ボスは回復が早すぎるからまずは回復の元になってる瘴気を減らす事が重要だと思う。
○ルアー : それは俺も同感だ。まずは常闇の洞窟の中の方を先に何とかすべきだろうな。
招き猫 : 常闇の洞窟の中は、残滓は確認した範囲じゃ殆どが瘴気強化種になってるね。未成体も増えてる感じ!
○マッチ : 少しだけど半覚醒がいるから、そっちは共闘してる群集の人に任せた方が良いよ!
○ルアー : なんだ、半覚醒はまだいるのか。
ベスタ : 単独の群集だけでは行うなって事だろうな。……それで調査用の転移地点まではどうだ?
○マッチ : 進化してるから移動速度は上がってるけど、それでも距離があるからね。もう少しで、一番近くの転移地点には辿り着くよ!
流石にすぐに踏破とは行かないか。それでも先に進む事そのものは問題なさそうである。まぁ結構な距離があるんだし、そこまで難易度は高くは設定されていないか。
招き猫 : 入り口から一番近くの転移地点に到着ー! って、何これ!?
○ガスト : どうした? 何があった?
招き猫 : 転移地点の群集拠点種の分身体が敵になってる! これから戦闘に入るけど、強さが分かんないから、可能なら増援お願い!
ベスタ : ボスとまでは行かなくても、ちょっとした強敵ってところか。ケイ、問題ないか?
まだ全快しきってはいないけども、ほぼ全快には近い。厄介な瘴気汚染の状態異常は治っているし、これなら問題はないだろう。
ケイ : 問題なし! 全快じゃないけど、移動中に回復する範囲だ!
ベスタ : よし、なら休憩は切り上げて先に進むぞ。
エンの分身体の強さは未知数だけど、増援を求められているのならばここは行くべきだろう。まぁ思ったほど強くなくて、辿り着いた時には既に倒された後という可能性もあるけどそうなった時はそうなった時だ。
「そこまで! サヤの勝ち!」
「……今回は私の負けですね」
「今回は勝ったかな!」
「アーサー君、結構強くなったね」
「まだまだもっと強くなりたいです!」
「まぁ焦りは禁物だよ」
サヤと水月さんの模擬戦は今回はサヤの勝ちだったようである。アーサーもヨッシさんとの特訓も一区切りついていたようだ。他のみんなは雑談をしているだけのようなので、問題はなさそうだ。
「休憩はもう良さそうだな? 先に進んでいる先遣隊からの増援要請だ。場所は一番近くの転移地点!」
「おー! 増援、頑張るぞー!」
そうして俺達は休憩を終えて、増援に向けて移動を開始した。まぁそれなりの人数も先に行ってるし、みんな強いだろうから無駄足になる可能性もあるけど追いついておきたいとこではあるんだよね。とにかく、一番近くの転移地点を目指して出発だ!
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