第307話 共闘するメンバー
目的地は常闇の洞窟の金属塊があった場所。そしてそこに行くまでのメンバーを決める必要がある。他の群集と協力してという事だから、俺らのPTの空き枠に赤の群集の人を1人か、PT連結が必要になってくる。とりあえず、バラけて他の人達とPTを組んで行くのは無しだな。
「それで、PTメンバーはどうする?」
「私は是非とも同行させて頂きたい! そして可能であれば、灰の群集の常闇の洞窟へですね!」
「分かった、分かったから、ルストさん。とりあえず落ち着いてくれ」
「はっ!? これは失礼しました」
ルストさんは、目的の為となればグイグイ来るんだな。これが赤のサファリ同盟の一員か。この感じだとかなり曲者揃いな気がするね……。
さてと今ここにいるのは灰の群集は俺のPTメンバーとベスタ、赤の群集はルアー、ルストさん、フラム。そしてベスタの指示出しが終わってからアルに乗ってきたアーサーと水月さんである。まぁ2PTは作れそうだよな。
「おい、ルアー。お前のとこのPTメンバーはどうなってる?」
「あーあいつらなら、分散して動いているぜ。このエリアにいるのは俺と……そういやあいつどこ行った?」
ベスタの質問に答えていくルアーが周囲を確認している。ルアーのPTって初めに戦った時の人達かな? 確かあの時に居たのはイカ、チューリップ、カメレオン、キツネだったはず。そうか、揃って行動しているって訳でもないんだな。でも今の言い方からするとこっちのエリアに1人は居そうな感じだね。
「お探しの方はそちらでは?」
「おっと、流石にルストさんにはバレちまうのかい。ルアー、俺をお探しかい?」
「うぉ!? いつの間に!?」
「おいこら、ライ!? こんなとこで擬態してんじゃねぇよ!?」
そして擬態を解いてカメレオンが姿を表して、アルが驚いていた。どうやらいつの間にかアルの木に擬態して枝に紛れていたようである。……うーむ、気付かなかった。
「いやー、誰が気付くかなーってな。意外と気付かれないもんだな?」
「いえ、そうでもないですね。私の見たところ、水月さんと……灰の群集ではサヤさん、そしてハーレさんは気付いてましたね? あぁ、ベスタさんもですか」
「げっ!? 思った以上に気付かれてた!?」
そこのサヤとハーレさん、ハイタッチして喜んでないで気付いてたなら報告しなさい! あ、水月さんまで、和気あいあいとしてるし!? いや、別に問題があるタイミングじゃなかったし、だから特に何も言わなかったんだろうけどさ。
というか、誰が気付いていたかまで気付いていたとなると……ルストさんって、かなりヤバいかもしれない。よし、可能な限り仲良くしておこう。
「いやー、やっぱり灰の群集は侮れねぇなー。競争クエストの時はどーも! カメレオンのラインハルトでっす。ライで良いぜー!」
「ライさんか。擬態って地味に凄いな」
「全員ではなくても見破られてたらまだまだってもんよ」
「ふっふっふ、サファリ系プレイヤーを甘く見てもらっちゃ困るのさ!」
「ハーレさん、前の時は気付いてなかったよな?」
「あぅ!? それは地味に気にしてる事だから言わないでー!?」
あ、ハーレさんって地味に気にしてたのか。サヤは海で擬態のタツノオトシゴに勘付いてたし、気付くのは不思議でもないかな。……水月さんはほんとに初心者か疑惑が出てくるけど、まぁ気にしない方向で。
とりあえずこれで2PT分の人数はいるけど、このメンバーで行くか? うーん、まぁ足手まといになりそうなフラムは置いといて、戦力としては充分過ぎるか。
「コケのアニキ! 俺、一緒にやりたい!」
「む! 駄目ですよ、それは私が先約です!」
「えー!? ルストさんはさっき知り合ったばっかじゃん!」
「そういう問題ではないのですよ!」
「……ルストさん、流石に大人げないのでその辺で切り上げて頂けますか?」
「貴方が立ち塞がりますか、水月さん。良いでしょう、貴方を打ち負かしてーー」
アーサーの一緒に戦いたいというまぁ普通に純粋な願いをルストさんが妨害し、そこに水月さんが割って入って一触即発の雰囲気になっていく。おーい、何がどうしてそうなったー?
「そろそろ止めねぇと、てめぇら置いてくぞ?」
「いえ、何でもありません。さぁ、皆さんでPTを連結して行きましょうか!」
「連結があるなら駄目とか言う理由ないじゃんか!?」
そしてベスタの一言でそんな雰囲気もあっさり終了した。……別に2PTで連結して行けば良いだけだから、アーサーの言う事がもっともである。アーサーが中学生だという事を考えると、ルストさんはほんとに大人げないな。実年齢何歳か知らないけどさ。
「とりあえず、ここにいるメンバーでやるって事で良い?」
「えぇ、もちろんですとも!」
「近い近い近い!?」
一気にルストさんに距離を詰められた。木なのに動きが思った以上に素早いぞ!? え、育て方次第でこんなに早く動けるもんなの!?
「……ほう? 良い動きするじゃねぇか」
「ベスタ、関心してる場合なのか? なぁ、ルアーさん。ちょっとした推測なんだが、ルストさんって近接型か?」
「アルさん、正解だ。とは言っても、俺も伝聞だけで実際の戦闘は見たことないんだがな」
「あ、それなら俺見たことあるぜー! あれはヤベぇって!」
「それは面白そうだな。アルマース、俺もやるがお前も可能な限り分析を頼むぞ」
「おう、了解だ」
「……目の前で分析宣言されるってのもどうなんだ。……いや、あの連中の行動はどうにも制御は無理だから別にいいんだが」
何やらベスタとアルで分析計画が立てられているようだけど、とりあえず助けてー!? 根でハサミを掴まれて、捕獲されてるんですけどー!?
っていうか、逃げる隙がねぇー!? いや、遠慮なく吹き飛ばしていいなら手段がない訳じゃないけど、あまりこの人は敵に回したくない! ……多分だけどベスタ級に強いぞ、この人。
「ルストさん、ケイを離してもらっても良いかな?」
「流石にその状態は見過ごせないよね」
「そうですよ、ルストさん。迷惑をかけるならあの方を呼ぶ事になりますけど、宜しいですか?」
おぉ、サヤとヨッシさんと水月さんが助けに来てくれた! 水月さんも誰かを呼ぶとか言ってるけど、もしかしてルストさんを抑え込めるような人が赤の群集にいるのか!? ……戸惑ってるアーサーは別に良いとして、見て見ぬふりをしてるフラムは八つ当たりに後で殴っとこうかな。
「……興奮すると我を忘れてしまうところがありまして、とんだ失礼を……。ケイさん、申し訳ありませんでした」
「……それなら、まぁいいけど、気を付けてくれよ」
そして、根を腕のようにして支え、土下座をするように枝葉を下げていく。いやいや、どうやってんのそれ!? もうなんかさっきからルストさんにびっくりさせられまくりなんですけど!?
「ケイさん、あまりに困った場合でしたら私に一言宜しくお願いします。それ相応の手段がありますので、それを使います」
「……了解」
「それだけはやめていただけませんか、水月さん」
「それを決めるのは私ではありませんからね。迷惑行為はなさらない様に気を付けてくださいね」
とりあえず詳細は分からないけど、決定的な抑止力があるらしい。……なんか、赤の群集の内部での力関係がおかしな事になっている様な気がするのは気のせいだろうか……?
「とにかく、このメンバーって事で良いんだな?」
「良いんじゃないかな」
「私も賛成」
「エリアは是非とも灰の群集でお願いします!」
「俺も灰の群集に行きたい!」
「私達の我儘になってしまうのですが、駄目でしょうか?」
「ベスタ、どうする?」
「まぁどっちかには行くんだ。灰の群集でも問題ないだろう」
改めて確認をすれば反対意見は無く、PT構成としては俺のPTにルストさん、ベスタと他の赤の群集のメンバーという事になった。行き先は赤の群集のメンバーの要望により、灰の群集側の常闇の洞窟に決定である。そしてPTの連結もしたので、メンバーの人数的な問題もない。
「さて、メンバーが決まったところで少し手伝ってもらおうか」
「ん? ベスタ、何するんだ?」
「んなもん、陥没エリアに溢れ出た翼竜とやらの偵察に決まってんだろ」
「あ、そういやそうだっけ」
ルストさんの行動に気圧されて、その辺の情報が失念していた。そっか、突入する為にも入り口までの経路確保は重要だよな。
「さっきの流れだと仕方ない気はするが、忘れんなよ。それで、ある程度の情報は一応確認済みだ」
「え、いつの間に?」
「ケイが漫才やってる間にだよ。ハーレとアルマースも確認に動いていたからな」
「……普通に見てなかった?」
「あれくらいなら見ながらでもどうとでもなる」
「あ、そう」
俺は漫才をしてたつもりはないんだけどね。ハーレさんとアルも地味にその辺の確認に動いていたみたいだ。っていうか、俺が捕まってるのは見てるだけでその裏ではチャットしてたんかい!
「分かってる範囲で話すねー! 森林深部になるけど、エンの攻撃は相当痛い上に灰のサファリ同盟では太刀打ち無理だってー! エンは半覚醒になってなくて、完全に意識不明だそうです!」
「……マジか」
「推測だが、常闇の洞窟にある例の金属塊をどうにかしないとそもそもダメージが通らない可能性があるんじゃないかってとこだな。……もしかしたら最大火力の昇華魔法辺りで半覚醒化は出来るかもしれんが、灰のサファリ同盟の土の昇華だと無理だとよ」
「そもそも不動種はHP、防御共に非常に高いですからね。群集拠点種も不動種の一種でしょうから、半端な攻撃は通じないのでは?」
「ここはルストの意見に賛成だ。まずは常闇の洞窟へ行って、何かをすべきだろう」
アルやハーレさんが集めた情報と推測、そしてそれを聞いてのルストさんもルアーの意見も常闇の洞窟行きの優先度が高いのは確定だな。俺も同じ意見だし、他のみんなも異論は無さそうである。
「で、さっきの話に戻る訳だが初めの問題は翼竜だな。そっちの方はどうだ?」
「どうやら強さに関しては個体差が大きいらしい。成長体でどうにか出来るのもいれば、未成体でなければ対応し切れない事もあるようだぞ」
「その辺はね、コウモリの性質を引き継いでるみたいで分裂するかららしいよー! 基本的には未成体だけど、分裂しまくれば成長体にまで弱るんだってさー!」
「……そういえば常闇の洞窟のコウモリも分裂したらLvは下がってたよね?」
「あ、確かにそうだったかな!」
翼竜はコウモリのあの地味に厄介な特性は引き継いでるけども、その特徴のおかげでまだ未成体になってない人でも戦える範囲の敵はいるらしい。これは良いのか悪いのか判断しかねる情報だね。……いや、そうでもないのか。そのくらいの強さなら未成体の俺らなら強行突破は容易だな。
「そうなると成長体の多いPTを中心に突破口の防衛班を募るか。……いや、その前に他の敵の確認も必要か」
「えぇ、おそらくそれが最善でしょうね。洞窟内もですが、そこまで行くのにも何があるか分かりませんし」
「あー、俺って場違い感が凄くない……? まだこのツチノコは成長体なんだけど」
「フラム兄! 俺だってまだ成長体だし、大丈夫だって!」
「いや、アーサー。お前、もういつでも融合進化が出来たよな?」
「コケのアニキと一緒の支配進化がいいんだ!」
「でもアーサーは操作系は苦手ですよね。いえ、駄目という訳ではないのですが……」
「水月まで!?」
あれ? アーサーに支配進化の事って……あ、ガストさんとの勝負の時に言ったからそれを聞いてたのか。うーん、憧れてくれるのは良いんだけど無理に俺を追いかけてくる必要もないんだけどな。
それに操作系が苦手ならば尚更だ。それなら融合進化でベスタと同じ方向性の方がアーサーには向いているかもしれない。
「アーサー、無理に俺の育成方向に合わせる必要もないんだぞ?」
「それはそうだけど……でも!」
「まぁ無理強いはしないけどな、もう少しじっくり考えてみろ。ゲームってのはな、無理に人のやり方に合わせるんじゃなくて、自分の楽しみ方を見つけるもんだぞ」
「……自分の楽しみ方?」
「おう、そうだぞ。ま、すぐに決める必要はないから、じっくり悩め。それもゲームの醍醐味だ」
「……うん!」
やっぱり素直に変わってきているな。まぁベスタの戦闘を見る機会もあるだろうから、それを少しでも参考にして考えてみてくれればいい。……って、ベスタがなんか近付いてきた。
「……甘いな、ケイ」
「これくらいのアドバイスなら別にいいだろ」
「ま、そこまで厳しくする気なんざ欠片も無いから問題ねぇよ。……あの坊主、後々伸びて来る可能性はあるけどな」
「それは承知の上だよ」
「そうか。ま、それならそれで張り合いが出て良いか」
俺に甘いとか言ってきたけど、ベスタだって充分甘いじゃないか。まぁ、最近ちょっとアーサーの成長が楽しみになってきてるとこはあるけどさ。まぁ抜かれて悔しがってるフラムを見るのも……別に楽しくないや。
「まだ設定した時間には早いが、確認すべき事も多い。まず群集拠点種付近への先遣隊を募って調査する! 希望者はそれぞれのエリア切り替え地点に集まれ!」
そのベスタの宣言に多くの人達が声を返す。みんな、やる気一杯って感じだね。さーて、俺らはその先遣隊の一員って事になるんだろうな。ここから共闘イベントの後編の攻略開始だね!
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