第282話 ボス戦後の一休み


 ボス戦の雑魚掃討も終えたので、しばらく連結したPT単位で交代で休憩という事になった。切りがいいタイミングなのでPTを抜けて終わりにする人や、逆に新たにやってきた人との人数調節も兼ねている。

 俺達の連結PTは全員このまま継続という事で、休憩と新たに来た人のPT編成の調整をしている。まぁ主にジェイさんがだけど。今更だけど、ここの戦場では指揮はジェイさんが行っている。青の群集のサブリーダーとかそんな感じかな?


 しばらく休んでいていいという事なので、進化ポイントがどれだけ増えたかの確認とクエストの進捗状態を確認していこうか。あとまとめ機能への報告も上げないとね。ついでに情報共有板も覗いてこよう。


 まずはクエストからだね。さてと、どれだけ進んでいるものだろうか? 明日から休みだし、週末の内に一気に進めたいけど個人でどうこうなる規模でもないからな。



【共闘イベント『瘴気との邂逅』】


 ワールドクエスト《地の底にいるモノ》の進行状況


 【赤の群集】

  黒の暴走種、半覚醒の解放 401/500

  黒の瘴気強化種の撃破 3973/5000

  ボスの撃破 0/10


 【青の群集】

  黒の暴走種、半覚醒の解放 421/500

  黒の瘴気強化種の撃破 4132/5000

  ボスの撃破 0/10


 【灰の群集】

  黒の暴走種、半覚醒の解放 415/500

  黒の瘴気強化種の撃破 4024/5000

  ボスの撃破 1/10


  ボス戦への参加回数:2


 あれ、確認してみたらかなり雑魚敵が終盤に迫りつつある!? くっ、赤の群集の騒動の件で少し時間を無駄にしたのが痛いのか!? ……でもさっきのボス戦での勢いを見る感じではこんなもんか。なんだかんだで結構な量は倒したもんな。

 それにボスの討伐数自体は全然増えていない。どこのエリアでも段階的に弱らせているという事なのだろう。そうなると雑魚を上限まで倒しきって、ボス討伐に集中できるようになってからが本番か。


 次はとんでもない事になってそうな進化ポイントを見てみるか。……どんな量になっているのやら。とりあえずコケの方から確認していこうか。


【進化】


 増強進化ポイント 1147P(共闘イベント開始後の加算:992P)

 融合進化ポイント 1144P(共闘イベント開始後の加算:983P)

 生存進化ポイント 1159P(共闘イベント開始後の加算:986P)


 うわっ、4桁行ってたよ!? ちょっと待って、いくらなんでも多過ぎじゃないか? 冗談抜きでこんなに大量のポイントは一体何に使うんだ? もしかしてまたエンたち、群集拠点種の進化に使うとかそういう感じか。……うん、群集支援種が瘴気に耐えられず再び黒の暴走種になっている事を考えてみれば、その可能性は充分ありそうな気はする。

 大体似たようなものだとは思うけど、一応ロブスターの方も確認しておこう。


【進化】


 増強進化ポイント 1006P(共闘イベント開始後の加算:992P)

 融合進化ポイント 1030P(共闘イベント開始後の加算:983P)

 生存進化ポイント 1040P(共闘イベント開始後の加算:986P)


 うん、こっちも4桁行ってたか。……これだけあれば、正直スキル取り放題だよなー。絶対に育成しきれないし、そもそも所持スキル自体を把握しきれなくなるからやらないけど。……いったんも用途があるみたいな事を漏らしてたし、ここは温存一択で。

 スキル取得に回すなら共闘イベントが終わってからでも問題ない筈だ。実は後編で必須スキルの取得に大量のポイントが必要ですとか、そういう可能性もあるからね。まぁこれは後編が始まる……というよりは前編が終わるまで待つしかないだろう。


 そういえば俺は支配進化だから両方にポイント入ってるけど、単体の場合ってどうなってるんだろ? 単純に倍の差がつくもんね。まぁ共生進化や支配進化はその分経験値は半分になってるけどさ。

 よし、こういう時は聞くのが早い。多分まとめにありそうな気もするけど、交流も兼ねて雑談といこう。


「斬雨さん、ちょっと質問良い?」

「ん? 俺に答えられる範囲ならいいぜ」

「ずばり、共生進化してない状態だと進化ポイントの取得ってどうなってんの?」

「あー、それか。それならジェイと色々と確認してるぜ」

「なになにー!? それは私も気になる!」

「まぁ慌てなさんな。進化ポイントなら半覚醒も瘴気強化種も単独の時は倍に設定されてるぜ」

「おー、マジか」


 単独だと倍になるってことは、1プレイヤー辺りの進化ポイントの取得数は変わらず結構な量が手に入る事になる。……1キャラ辺りのポイント取得数は大きく変わってくるから、やっぱりどっかに提供する感じかな。単独と共生進化や支配進化でのポイント格差がとんでもない事になるしね。


「斬雨さんやジェイさんは、この大量の進化ポイントはどう見る?」

「……そうですね。不足分を補う役目はあるとの事ですが、それを差し引いても多過ぎますからね。用途が分かるか、もしくはイベント終了までは迂闊に使わない方が良いでしょうね」

「ま、それでもちょっとくらいなら使っても良いんじゃねぇの? あんま余裕もねぇしな」

「不足気味の方はそうでしょうね。私も結構ギリギリだったので、ありがたいところです」


 あ、そういえば青の群集は進化ポイントがギリギリの人が多いって話だったっけ。なんだかんだで結構な数の敵も倒せているし、まだ成長体の人とかには結構ありがたいのかもしれない。ロブスターが成長体へ進化したての頃はそれほど余裕もなかったしね。


「え!? 1枠目の進化ポイントって余るもんじゃないの!?」

「ハーレ、それは多分灰の群集だけだよ」

「そだね。わたしが聞いた話でも余ってるのは灰の群集の1枠目が多いね。特に魔法系の人達!」

「……ちょっと待って下さい。その魔法系の部分が1番ポイントの消費が激しい筈なんですが、一体いつから称号からの取得の方法を確立していたのですか!?」


 そういう聞き方をするって事は、青の群集でも称号取得の方法自体は判明してるんだね。まぁあれは普通にやってれば誰かが気付くか。別にもう過ぎた話だし、これくらいは教えても問題ないだろう。称号からの取得方法の確立は、確かあれはアルがまだ動けなかった時だから……。


「えーと、幼生体の時だな」

「はぁ!? 早過ぎねぇか!?」

「……あまりにも早過ぎますよ!?」

「その時にはもう応用スキルの存在も判明してたよね? わたし、情報共有板で見た覚えがあるよ」

「あー、あったな。ケイが岩で転がってきて、俺とサヤで止めたやつだな」

「あれはビックリしたかな」

「そういえばそんな事もあったねー!」

「私はあの日は居なかったんだよね。色々と見そびれたなー」


 そういやあの時はヨッシさんはログイン出来ないって事で居なかったっけ。そっか、全員が全員いつも揃ってた訳じゃないもんな。まぁリアル側で聞いてはいたんだろうけども。


「……そんな時から応用スキルもですか。それは差がついて当たり前ですね」

「その時はこっちは例のクジラの悪影響の真っ只中だな。……ちっ、あのBANクジラはもしかして知ってたんじゃねぇか?」

「……今考えてみればその可能性はありますね。PKの繰り返しで経験値を稼ぎ、『海を荒らすモノ』で海流の操作を、地形の破壊で『地形を弄るモノ』とポイント取得と統合で『行動値増加Ⅰ』と『行動値増加Ⅱ』で行動値を増やしていたとすれば……」

「クジラをやってるとわかるが、実際に可能そうなのが怖いな……」

「あー、幼生体でも海流の操作を使えるだけの条件は整うんだな……」


 嫌な可能性に今更気付いてしまった。情報が色々出揃った今考えてみれば、確かに条件的には幼生体でも行動値20を確保する事も、海流の操作を取得する事も、それを使って大暴れする事も、行動値を再び溜めるだけの時間を稼ぐ事もクジラならば可能である。……早く取れ過ぎて悪用されるとそうなるのか。

 そして、暴れているうちにPKで得た経験値で成長体への進化も可能になるだろう。そうなれば暴走を止められる人などそう多くはない。だからこそ赤の群集の海エリアでは総出で対処をして、暴言や問題行為の累積警告が積もりに積もって運営が動いたのか。


「あー今更いねぇ迷惑野郎の事を考えるのは止めだ、止め!」

「……そうですね。今更考えるだけ無駄でしょう」

「……それもそうだな」


 今更BANクジラの猛威の理由が分かったところで何の意味もないし、不愉快になるだけか。俺は直接関わってないけど、青の群集としてはあまり積極的に話したい事ではないのは間違いないはずだ。


「……ともかく、灰の群集の強さの一因は把握できました。……この差を埋めるのは簡単ではありませんね」

「だが、やる気だろ?」

「当たり前でしょう。赤の群集ほど勝敗に拘るつもりもありませんが、負け続ける気もありませんので」

「なんだかんだで、ジェイも負けず嫌いだよな?」

「それは斬雨もでしょう!」

「おうともよ! そのうち対戦型イベントがまた開催されたらリベンジするつもりだからな」


 結局のところ、2人とも負けず嫌いではあるらしい。まぁ対人戦に参加する人は少なからず負けず嫌いなんだろうね。俺だって負ければ次は勝つって思うだろうし、ちゃんと負けを受け止めれるのであれば決して悪い事ではない。

 だからここで返す言葉はこれが良いだろう。俺だって負ける気はないからね。


「受けて立つけど、勝たせる気もないからな!」

「返り討ちにするまでさー!」

「私も負ける気はないかな」

「私はそこまで勝敗には拘らないけど、みんながこう言ってる事だしね」

「次はただの的のクジラでいる気はねぇからな。空飛ぶクジラの驚異、見せてやるぜ」

「あはは? やっぱりわたしは場違いかなー?」

「「「「「「「いや、それはない」」」」」」」

「みんなして、声が揃いすぎ!?」


 いやいや、どう考えてもレナさんが場違いという事はあり得ない。斬雨さんのカウンターをあっさり破って地面に蹴って埋め込ませた人が場違いであれば、この場に場違いでない人など1人もいない事になる。……どうにもレナさんって自分の強さに無自覚だよね。


「ホホウ、ご歓談中のようですがもうそろそろよろしいですかな? まだ用事があればもう少し待機は出来ますが?」

「あっ、思った以上に話し込んでた!? ごめん、群集の方に色々報告入れてきていいか?」

「ホホウ、それは確かに重要なのでお待ちしましょう」

「そんじゃちょっと報告してくる!」

「私も行くさー!」

「俺も行ってくるか」


 いつものようにアルとハーレさんも一緒に情報共有板行く事が決定だ。さてと、水流の操作と応用スキルの連続攻撃とかの運用方法とか、他の群集との昇華魔法の仕様も報告しておかないとね。あれらはかなり重要になってくるだろうし……って、あー!?


「あ、やば!? サヤの未成体の討伐称号で風の操作の取得が駄目になった!?」

「……あはは。それ、実は取れてたりするかな?」

「え、どうやって?」

「ボスへの攻撃の交代の時にジェイさんの砂に足を取られたんだけど、他の人が飛ばし過ぎた敵にたまたま攻撃が当たって仕留めたみたいで、その……無自覚な討伐がね?」

「……なるほど、そっちの称号か」


 直接見てはいなかったけど、あの時には地味にそんな事があったのか。滑ったのも流れの1つって事になるんだろう。あれ? もしかしてスリップで滑らせて攻撃すれば、風の操作は取得出来る?


「そういう事だから、気にしなくても良いかな」

「そっか、それなら良かったよ」


 なんだか運に助けられた気もするけど、なんとかなっていたなら良しとしよう。さてと情報共有板で報告してから、次のボス出現まで頑張っていこうか!

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