第281話 雑魚の一掃
ボスの逃亡を邪魔させないように阻む為の雑魚敵達が次々と押し寄せてくる。相変わらずとんでもない数だな。後はこいつらを殲滅してしまえば今回のボス戦は一段落か。
あ、そうだ。総力戦の時に見せてるし、ジェイさんなら組み合わせは違ってももう何かしらの条件は見つけているだろうからあれを試しておくか。他の群集の人と重ねた時にどうなるかは気になってるんだよね。昨日の赤の群集ではちょっと出しにくかったし。
「ジェイさん、ちょっと実験に付き合ってくれない?」
「……今度はなんですか? というか、よく戦闘中に次々と何個も思いつきますね!?」
「ま、それはいいって事にしてくださいな。今回のは他の群集の昇華持ちの人がいないと試せないんだよ」
「……他の群集の昇華持ちいないと試せない……? ……まさか、他の群集との昇華魔法を試すのですか!?」
「そういう事。そもそも発動するのかとか、発動したとしてダメージ判定がどうなるかとかを確認しときたい」
「……なるほど」
少し考え込んでいるようだけど、話が早くて助かるね。そして見せたとはいえ、昇華魔法という名前が出てきたという事はやっぱり既に実際に使っているな。……属性は分からないけど、他にも昇華持ちがいる確率は高いと考えて良さそうだ。
「……確かに共闘イベント中に確認しておきたい内容ではありますね。そうですね、その提案を受けましょう」
「はっ、あれの同系統をやんのか。そうなると範囲もダメージがどう出るか分からねぇな。おい、巻き込まれたくない奴らは退避しろ! 近接系の奴は特にだ!」
「小型のやつは俺に乗れ! 全員は無理だが、空へと退避するぞ!」
「おっと、これは危ないやつだね!?」
「灰のコケと青のコケがやらかすぞー! 水と土だから少しでも高いところに逃げろー!」
「……何故、私まで? いえ、この場合は共犯にはなりますけども……」
あのー、アルとかレナさんは同じPTだから俺の判定でもジェイさんの判定でもダメージは受けないはずなんだけど、率先して逃げてるのはなぜ? そして灰の群集のみんなは逃げろと言いつつ、どことなくはしゃいでいるような気がするのは気のせいか!?
「え? え? どういう事!?」
「ちょっとしたら分かるから逃げとけ!」
「木は盾でいくぞ。根下ろしして、足止めに拘束していけ!」
「「「「「おう! 『根下ろし』『コイルルート』!」」」」」
「灰の群集の人達、なんでそんなに逃げるのが早いの!?」
「いつもの事だからだよ! 『アクアプリズン』!」
「そうそう、いつもの事さー!」
「え、灰の群集だとこれがいつもなの!? 『エレクトロプリズン』!」
こら、そこのハーレさん! 地味に混じっていつもの事とか喧伝しない! それにしても灰の群集は行動が早いな。木の人達は根下ろしして、その木の影に大型動物系の人達が退避していく。そりゃ木の人はHPも高いし、回復もあるから盾役としては適任ではあるけどちょっと大げさ過ぎない!?
<『魔力集中Lv2』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 36/50 → 36/52(上限値使用:2)
<『操作属性付与Lv1』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 36/52 → 36/53(上限値使用:1)
あ、魔力集中が切れた。まぁこれからやる事には使わないから別にいいか。ふむ、ボスを倒すのに10分弱ってところだったんだな。あの水流を使った連続でのチャージスキルの叩き込みがなければもっとかかってただろうね。
これらも後でまとめ機能に情報を上げとこう。水場が近くにあるエリアなら昇華なしの水流の操作でも再現出来るはず。それだけでかなり違うはずだ。
なんかさっきから無言でジーッと見てくるジェイさんと斬雨さんが非常に気になる。……いや、なんとなく理由は分かるんだけど、流石にこれは落ち着かない。
「ジェイさん、斬雨さん、すっごい目線が気になるんだけど……」
「……なぁ、ケイさん。いつも灰の群集で何やってんだ?」
「……黙秘で」
「ケイさん、参考までにお聞きしますが、荒らすモノ系統の称号をいくつお持ちで?」
「……それも黙秘で」
「その反応で大体分かりました。なるほど、掲示板の灰の群集らしき人らの達観ぶりの理由はそれですか」
黙秘って言ったのに、大体伝わってる気がする!? ジェイさんのその質問内容からして、何度も荒らしているというのを前提に聞いてるもんな。……それにしても、みんな慌てて退避しながらもちゃんと足止めはしてるのは流石だね。
「よし、乗れる奴は大体乗ったな。飛ぶぞ! 『上限発動指示:登録1』!」
「おー!? 空飛ぶクジラに乗れた!」
「感動するのも良いけど、拘束お願いね。『ポイズンプリズン』!」
「そりゃそうだ! 『コイルウィンド』!」
「はっ!? そりゃそうだ。でもそのままじゃ使えないから輝石を使おうっと。『纏属進化・纏土』『アースプリズン』!」
少し見上げてみれば、かなり慣れてきた浮かぶアルの背に乗っている多種多様な小型動物や草花の人達が見える。そしてクジラの上から次々と放たれていく様々な属性の拘束魔法。……これ、あちこちで複合魔法になってるっぽいけど、数が多くてどれがどれやらさっぱりだ。
「皆さん、位置がバラけ過ぎです。拘束した敵が他の敵の邪魔になるような位置にお願いしますよ!」
「おーい、クジラの上ー! 可能ならアクアクリエイトで頼む! 複合魔法で行くからな」
「了解! 『纏属進化・纏水』『アクアクリエイト』!」
「ホホウ、他の属性は空中戦力の拘束ですな! 『コイルウィンド』!」
盾となっている木が次々と複合魔法のルートレストレイントで地上の敵を足止めし、他の属性の人達が次々と空を飛ぶ敵を拘束していく。これで大量の敵も倒しはしてないけれど、大半が身動き取れなくなっていた。
ボスへの追撃防止の行動パターンのせいか、プレイヤーが固まったのを追いかけてくる結果になり敵も密集している。まさしく広範囲攻撃で仕留めてくれって感じだな。さてと、これで不発とかだったら悲しいぞ。……まぁ地味にさっきの複合魔法を見た感じでは同じPTであれば、群集関係なく複合魔法になってたっぽいけど。
「ケイさん、魔力値の消費具合は大丈夫ですか?」
「行動値ほどは減ってなかったからもう全快。ジェイさんは?」
「私は今全快したところです。敵の真上から行きましょうか。『移動操作制御Ⅰ』! ケイさん、乗ってください」
「お、上からぶっ放すんだな」
「自分達が巻き込まれても嫌ですからね」
「確かにそりゃそうだ」
ダメージ判定がどう出たとしてもおそらく俺とジェイさんにはダメージはないけども、自分の発動した魔法に巻き込まれたくはないからね。軽く跳ね跳び、ジェイさんの生成した岩に乗って空に飛んでいく。ふむ、若干視界は悪いけど、足場の安定感はこっちの方が上だな。
今回ジェイさんが生成した岩はそれほど大きい岩ではなかったので視界の妨げは特になし。ほどほどに高く、大量の敵の真上までやってきた。ここからなら非常に狙いやすい。
「では実験と行きましょうか」
「おうよ!」
敵は密集状態かつ拘束も多数。半覚醒も混じっているけど、大半は瘴気強化種。発動条件そのものはおそらく問題ない。そして巻き込む可能性のある味方は退避済み。すなわち準備完了だ!
「行きますよ。『アースクリエイト』!」
「どんなのになるか、実験だ!」
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 35/53(上限値使用:1): 魔力値 111/114
<『昇華魔法:デブリスフロウ』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/114
よし、昇華魔法の発動に成功した。同じ連結したPT内であれば群集が違っても発動には問題ないようだ。発動した昇華魔法は、土砂で濁りきった多量の水……いや、これは水を多量に含んだ土石流か!?
土石流は容赦なく敵の集団へと襲い掛かり、その全てに平等に襲いかかっていく。そして地形に沿って土石流に押し流されていった。いや、これ地味にえげつないな。瞬間火力はスチームエクスプロージョンが強かったけどこちらの方が効果時間は長いし、ウォーターフォールより広範囲で威力は結構あるぞ。
「……これは凄まじいですね」
「……俺が今まで使ったどれよりもえげつないかも」
「それは状況次第では? まぁこれがえげつないというのには同意ですが」
次々とHPが無くなって砕け散っていくポリゴンが見えているし、凄まじい勢いで討伐の進化ポイントが手に入っていく。……何体倒したかを数えるのはもういいや。後でどれだけポイントが増えたかだけ確認しようっと。
「どうやら半覚醒は倒しきれてはいないようですね」
「そういやそうだな。討伐ポイントが入ってこないし」
「そっちは余裕だな、おい!? 急いで回復しろ!」
「やべぇ!? 思ったより少ないけど地味にダメージがある!? 『水分吸収』!」
「青にも灰にも効果ありってどういう事ー!?」
そして木の影に隠れていた人達は慌てふためいていた。ぎりぎり効果範囲外ではあるみたいだけど、流れ弾みたいなものがあるらしくそれでダメージを受けていた。青の群集も灰の群集も平等に……。どうやら判定としてはどちらかのではなく、両方の判定が出ているようだ。
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『高原を荒らすモノ』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『共闘殲滅を行うモノ』を取得しました>
<スキル『魔力値増加Ⅱ』を取得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『高原を荒らすモノ』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『共闘殲滅を行うモノ』を取得しました>
<スキル『魔力値増加Ⅱ』を取得しました>
昇華魔法の効果が切れたと思えば称号が手に入った。……何か不名誉な称号な気はするけど、どう考えてもめっちゃ良いスキルが手に入ってるよ、おい!
「……片方の称号は不名誉ではありますが、スキルは非常に有用そうですね」
「これは確かに有用だよな」
称号条件は他の群集の人と昇華魔法の発動か、もしくはPT連結状態で荒らすモノ称号の取得……? 殲滅って事は倒す数も関係ありそうだよな。魔力値に関わるものなら昇華魔法は必須条件な気もするけど、ちょっと条件がはっきりしない。……これの検証は地味に難しいな。
とりあえずスキルの方は後で詳細は確認するとして、まだ残っている半覚醒を仕留めるのが先か。効果が切れたら土砂も消滅して、その辺に転がりまくってるしね。……それでも広範囲に渡って地面が抉れているのはあの威力の名残だね。ふむ、この威力の違いからすると昇華魔法にも組み合わせの良し悪しがあるのかもしれない。
「残りは半覚醒の殲滅で終わり! 倒せてないとは言っても結構削れてるから一気に倒すよ! 『自己強化』『強蹴り』!」
「残りの殲滅だー! レナさんに続けー! 『強投擲』『強投擲』『強投擲』!」
「一息つくのはこれが終わってからだね! 『自己強化』『爪刃乱舞』!」
「あと少しだしね。『並列制御』『ポイズンボール』『毒の操作』!」
「まったく、慌ただしいもんだ。『リーフカッター』!」
そんな風に言いながらもみんなが一斉に攻撃に移っていく。それに釣られるように灰の群集の人達も青の群集の人達も行動を開始し、残った半覚醒の殲滅を開始した。……もう途中から誰も気にしていなかったけど、ボスのウサギの姿はとうの昔に消えている。ま、逃げるのが分かってて追撃は推奨じゃなければそうなるか。
そんな風にして、数分後には全て倒し終える。大半の半覚醒は成長体なら7割、未成体でも3割はHPが削れていたので仕留めきるのにはそう時間はかからなかった。違う群集同士で昇華魔法を使えば、両方の判定が出て減衰しつつもそれなりには効くようである。
まぁ、まだ使える人数も多くないだろうから気軽に使える手段でもないか。避難しないと大惨事になりかねないし、状況次第では普通に大人数で個別対処の方が良いかも。あ、そういえば……。
「今更聞いても遅いけど、俺らとPT連結してなかった人達って進化ポイントは大丈夫?」
「それなら既に検証済みで問題ねぇぞ。ボス戦前だと駄目だが、ボス戦中ならここのエリアで戦闘中なら問答無用で手に入るぜ」
「あ、そうなんだ」
「……これも夕方には上げた確定情報なんですが。……まぁ何か事情もあったようですし深くは聞きませんよ」
「そうしてくれると助かる。ま、もうちょい確認に気をつけるよ」
「えぇ、そうして下さい」
そういやポイントについては昨日のティラノのボス戦の時もそうなってたような気もする。昨日は数えてはいたけど、自分の連結したPTのものかまでは確認してなかったっけ。……赤の群集の件でバタバタしてたとはいえ、ちゃんとまとめ機能は活用しないとね。
とりあえずこれで今回のボス戦は終了である。ボス自体はまだ完全には倒せてないし、時間もまだまだ結構ある。適度に休憩を入れながら、ここのボスのウサギの完全討伐が今日の目標かな。
それにしても、あれだけの数とボス戦の経験値があってもLvは上がらずか。あと少しで上がる寸前ではあるけど、1体辺りの経験値が少なくて未成体からのLvの上がり方が遅くなってるようだ。まぁ支配進化でそれぞれで分割になって半分ってのも影響してるだろうから、地道に頑張って上げていこう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます