第249話 共闘イベントの開始


 とりあえず転移地点まで戻って、そこから転移でエンの本体へと移動である。まだイベント開始まで少しあるけど、それほど時間は残っていないしね。そろそろイベント開始に備えよう。


<『常闇の洞窟』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>


 さてと戻ってきました、森林深部! っていうか眩しい!?


<『暗視』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 23/49 → 23/52(上限値使用:1)

<『夜目』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 23/52 → 23/53



 とりあえず忘れない内に閃光を取得しておこう。あれは俺の切り札になる可能性がある。……まぁ光の操作鍛えないと命中精度が酷い事になってるけどね。

 えっと、ポイントでの取得一覧から閃光は……あった。増強進化ポイント15くらいはなんてことない。はい、サクッと取得完了!


 それじゃ新機能のまとめ機能を見てみよう。確かメニューから『群集まとめ機能』を選択だったっけ。お、既に色々とまとめられていた。……ふむふむ、未成体からの進化絡みは大体網羅済みか。支配進化も他に情報元の人がいたようで、俺の知ってる事は埋まっているね。


 結構な量があるしまだ未編集のとこも多いから流し見にはなるけど、軽く目を通しておこう。お、『凝縮破壊Ⅰ』の確定条件が出てる。なになに、単発系の基本になるスキルをLv5とその派生スキル2種類をそれぞれLv5で称号『力を溜めるモノ』が手に入り、単発系の応用スキルと『凝縮破壊Ⅰ』が取得か。

 あ、例がある。どれどれ、爪系の単発チャージスキルの場合か。基本になるスキル『爪撃Lv5』、派生スキル『強爪撃Lv5』、派生スキル『強斬爪撃Lv5』で応用スキル『重爪斬』と『凝縮破壊Ⅰ』が取得となってるね。

 例があると分かりやすくて助かるね。派生前の1番初めのスキルと、手に入れたい応用スキルと同系統を2つ、合計で3つをLv5にすれば良いんだな。


 最後の部分に『連撃でも同じような条件の可能性あり。情報提供求む』って書いてある。……っていうか編集者はベスタでした。これ、ベスタの持ってる応用スキルか……?

 まぁベスタも編集するって言ってたから不思議な事でもないか。……うん、色々情報はあるけど基本的に知ってるのが多そうだ。自分が見つけたのが結構載ってるのも不思議な感じだね。


 あ、コケの人専用、情報書き込み欄ってのがマジで出来てるし……。ま、いっか。メモ代わりに書いておこう。……っとその前に、使い方っと。……ふむふむ、これをこうして……あれ? あぁそういう感じか。ただ入力欄に打ち込めば良いだけに設定してくれてるのか。これはありがたいね。


 とりあえず並列制御で複合魔法の発動が可能な事、並列制御を使ったLv2の魔法の手動操作、夜の日の光の操作の使用感、あとは閃光と光の操作の並列制御での使用と、並列制御を使った昇華魔法の発動の情報を書いておこう。とりあえずこんなもんかな?


 そんな風に確認していると、サヤたちが揃ってやってきた。時間を見てみればもう10分もしないうちにイベント開始である。いつの間にやら結構時間が経っていた。……先にフレンドコールで連絡しとくべきだったかな?


「あ、ケイさん発見!」

「みんな、もう勢揃いしてたんだな」

「そろそろイベント開始だしね」

「ケイは何かやってたみたいだから、邪魔しないようにしてたかな」

「あー、すまん。ちょっと昨日やりそびれた実験もあったもんで」

「そうだったの!? 言ってくれれば付き合ったのに!」

「いや、結構博打だったからさ。結果としては大成功だけど、まだスキルLvが足りない感じだな。結果については早速まとめに書いといたぞ」


 即座にメモしておけるからありがたい機能だし、これで伝え忘れも減るだろう。っていうか、みんなして見始めたっぽいな。ログイン状態は、サヤはクマで、ハーレさんはリスで、ヨッシさんはハチか。みんな共生進化状態で1枠目からログイン中ってとこだね。


「あ、これかな。ケイ専用の書き込み欄が出来てるね」

「わー!? ホントだね!?」

「あ、ハーレ。『凝縮破壊Ⅰ』の条件も出てるよ」

「おー!? これって、大体推測通りだよね! この方針で鍛えるぞー!」

「私は連撃系だね。連撃系なら操作属性付与で風属性が欲しいかな」

「サヤって未成体の討伐称号はまだだったよね? どこかで狙ってみる?」

「イベントの合間で機会があれば狙ってみたいかな?」

「その時は水流の操作で流してやるから任せとけ!」

「うん、その時はケイにお願いするね」


 とりあえず、様子を見ながらにはなるだろうけどね。もうすぐ始まる共闘イベント次第ではあるし。……そろそろ5時だし、イベント開始かな。



<群集クエスト《異変の調査・灰の群集》を終了します>

<共闘イベント『瘴気との邂逅』を開始します>


 いつものようにグレイが目の前に現れてきた。お、他に似たようなのが2人いるってことは、赤の群集の長と青の群集の長かな。さてとここからイベントの開始説明だ。しっかり聞いておかないと。


『おう、赤の群集の連中よく聞いとけよ! 今回は事前通達したように共同作戦だ!』

『……セキ、相変わらず貴方は落ち着きのない方ですね。私は青の群集の長、サイアンと申します』

『私は灰の群集の長のグレイだ。先に通達しておいた赤の群集と青の群集と灰の群集による共同調査の日程が決まった。これより隣接しているエリア同士を基準とし、【大地の脈動】の跡地となる『常闇の洞窟』への調査をーー』


 グレイの説明を遮るようにいきなり地面が揺れ始め、轟音が響き渡る。一体何が起こった!?


『チッ、何事だ!?』

『……落ち着いて、それぞれの方から報告を。現状把握が最優先です!』

『……何が起きた?』


 あ、グレイの周囲に巨大な樹や巨大な海藻や巨大なサボテンの立体映像が浮かび上がってくる。これは群集拠点種か。


『グレイ、緊急事態だ!』

『こっちも危ないよ。グレイ、これは……』

『エンとヨシミか。一体何があった?』

『やべぇぞ、何かが俺らの構築したネットワークに割り込んできたぞ!』

『ははっ……。何だよ、こいつ。この星に何が居るってんだ!?』

『……落ち着きなさいと言っても、これは無理ですか』


 どうもグレイと各地の群集拠点種の会話のようだけど、何やら予想外の事態が発生しているらしい。赤の群集も青の群集も同じように報告を受け取っているようである。……これはもしかして先手を取られたのか?


『くっ、グレイ、すまん! 何かに割り込まれた!』

[jsgxyjskzkhsIkxjjzhajs!]

『……何者だ?』

[jsgahwkfoxkjdhej……。……どういう事だ? 貴様ら、何故この言語を使っている?]

『こちらは何者かと聞いている!』

[この地を滅ぼし、貴様らが作った我を捨て、星をも捨てた者共に語る言葉などないわ! 何をしに戻ってきた!]

『……何の話をしている!?』

[我はこの地を、この星を守り再生すると遥か昔に決めた。全てを破壊し尽くし、全てを捨てた貴様らにこの地をこれ以上踏ませはしない!]


 あれ? なんか盛大に話が噛み合ってないぞ? 俺らプレイヤーの精神生命体はここに来るのは初めてだよな…?


[……何やらこの地を捨てた時より妙な変化をしている様だが、それ故に瘴気に弱くなっているようだな。不本意な手段ではあるがこの星を瘴気で死の星へと変えた大罪、その身をもって贖うといい!]


 その言葉と同時に再び大地が揺れる。そして地下より噴出した大量の瘴気が空を覆っていく。……発生源は南の方みたいだし高原の方か!? 空に舞い上がった瘴気までは見えたけど、その後どうなったのかは分からない。しばらく後に何か異常な力の衝撃が放たれてきた。


「わ!?」

「……なんだ、今の衝撃!?」

「何が起こったんだ?」

「え? え? 共同調査だと思ってたんですけど!?」

「いや、でもこれは緊迫感が出てきたな」

「瘴気か……。もしかすると残滓に何かあったか?」


 周囲にいた人達もちょっと予想外な展開に驚いていた。前後編と聞いていたから、前半は共同調査と思っていたけどこの展開は予想外だ。……一体何が起きているんだ……?


『エニシ、エン、ユカリ、キズナ、ヨシミ! 何が起きたか分かるか!?』

『ちっ、瘴気の濃度が跳ね上がってやがる! どこにあった、こんな異常な量の瘴気!』

『……地下っすね。残滓の異常個体が大量増殖中みたいっす』

『駄目、これは駄目!』


 グレイも群集拠点種もみんな慌てているようである。……残滓の異常個体の増加はこの展開の布石だったのか? そうなると前半は残滓の異常個体の撃破がメイン?


[苦しむといい。それらが貴様らが遺した罪の証だ]

『だから何の話だと!』

『……グレイ、無駄だ。もう接続は切られた』

『……一体何が居るのだ、この星には!?』

『グレイ、落ち着いて。あなたは灰の群集の長』

『そうっすよ、グレイ』

『……すまない。冷静さを欠いた』

『グレイ、断片的で不確実ではありますが、わかった事が……』

『報告を頼む、ユカリ』

『最近報告の上がっていた残滓の異常個体ですが、先程の瘴気の放出でほぼ全ての残滓が異常個体化したものと思われます』

『ほぼ全てっすか!? どうするんすか?』

『……先程の話は食い違いがあり過ぎる。あのモノは奴らではないかもしれない』

『……再度の接触ですか?』

『それしかあるまい。セキ、サイアン、そっちはどうだ?』

『……似たようなもんだな。ありゃなんだ?』

『こちらも同様ですね。……先程のモノとは再度の接触は必要不可欠かと』

『……ならば決まりか』

『それしかねぇな』

『そうなりますね』


 どうやら長としての行動方針は決まったようである。……あの声の主と再びの接触。それが目標か。


『済まない、同胞たち。どうやら先程のモノとはもう1度接触する必要がありそうだ。力に自信のある者は残滓の排除に動いてほしい。ただ無理強いする気はない。無理だと思う者は異常の感知されていない地域で活動してくれて構わない。……しばし時間を貰えるか?』


 あ、やっぱり強制参加ではないのか。グレイは赤の群集と青の群集との話し合いに向かったのだろうね。……とりあえず森林深部は高原エリアが今回のイベントエリアっぽいな。……どう共闘に繋がるんだろうか。


「うわ!? イベント始まったと思ったら、速攻殺されたんだけど何事!?」

「……もしかして、おまえ高原エリアにいた?」

「あ、こんなとこで奇遇だな。そうそう、なんかいきなり瘴気が地面から溢れ出てきて、残滓が異常に強くなってさ?」

「えー、それで瞬殺されるか?」

「いやいや、なんか色々おかしかったぞ? 黒の暴走種も増えてたしさ」

「え、どういう事?」

「いやー、どうおかしいか確認する前に殺られたもんで……」

「なるほどなー。まだ成長体だもんな」

「そうそう。あそこがいきなり舞台になるとは思ってなかった!」


 近くにリスポーンしてきたキツネの人とその隣にいたトカゲの人の会話の内容的に高原で異変があるのは確定か。とりあえず殺られたキツネの人は成長体で、成長体では厳しい相手。盗み聞きみたいであれだけど、ちょっと情報ゲット。


『すまない、待たせたな。赤の群集と青の群集との話し合いは片付いた。予定は変わるが、共同作戦という点は変わらない。残滓の異常個体については最早残滓ではないという判断から『黒の瘴気強化種』と呼称する事になった。当面の目的はこの『黒の瘴気強化種』の討伐と、先程のモノとの再度の接触を目的とする。以上だ』


<規定条件を達成しましたので、ワールドクエスト《地の底にいるモノ》を開始します>

<『黒の暴走種の残滓(?)』は『黒の瘴気強化種』へと名称が変更されます>

<『黒の瘴気強化種』は各進化階位毎に、初回のみ討伐称号が取得出来ます>

<『黒の瘴気強化種』は討伐時に、各種進化ポイントが取得出来ます>

<共闘イベント中限定の『共闘戦略板』が解放されました>

<PT連結機能が解放されました。連結したPT同士では違う群集からのダメージを受けなくなります>


 うお!? 色々と機能が解放された。『黒の暴走種の残滓(?)』から名前が変わって『黒の瘴気強化種』か。しかも初回は討伐称号が取れて、倒せば進化ポイントも貰えるのか。これは結構ありがたい内容だな。

 PT連結機能は、他の群集との共闘の為の機能か。まぁ共闘するのにフレンドリーファイアを気にしなくて済むのはありがたい。問題は何PTまで連結出来るかだな。


 色々あるのは分かったけど、とりあえず『黒の瘴気強化種』の確認が先だな。これの仕様が分からなければ戦略の立てようがない。……本格参戦はアルが合流してからでも良いけど、それまでに仕様は確認しておくべきだろう。


「よし、みんな! 高原に行くぞ!」

「……確かにそうだね。詳細が分からないとどうしようもないかな」

「まずは行ってみないとだけど、混雑しそうだね」

「空から飛んでいけば良いのさー! 偵察目的なら上空からが安全だよ!」

「……確かにな。よし、それでいくぞ」

「「「おー!」」」


 という事で、即座に水のカーペットの生成だ。サヤがクマだから少し大きめだな。


<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します>  行動値 53/53 → 51/51(上限値使用:2)


 そしてみんなを乗せて出発していく。当たり前だけど、飛べる種族の人が先行してるね。移動には飛行がやっぱり有利か。まぁ草花とか魚も結構飛んでるけども。


 とうとう始まった共闘イベントだけど、いきなり色々予想外だった。まぁなんとなく前後編に分かれてる理由も分かったけどね。あの何かはおそらくプレイヤーである精神生命体達の故郷を滅ぼした者ではない。ただし無関係って訳でもなさそうだけど……。

 その辺が分かるのが多分後編なんだろうな。まぁ今は始まったばかりの前編を頑張るまでだ!

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