第248話 イベント前の実験


 今日は特に用事もないのでサクッと帰宅。さてと共闘イベントは5時から開始だから、まだ少し時間はある。それまでに昨日やりそびれた実験をイベントが始まるまでにやっておこうか。早速ログインだ!



 という事でゲームを起動し、ログインしていったんの場所へやってきた。今回の胴体部分は『定期メンテナンスは無事終了。そして共闘イベント【瘴気との邂逅】は本日17時よりスタート!』となっている。まぁ今日の内容はそうなるよな。


 今更といえば今更だけど、支配進化でもここのキャラ表示って変わらないんだよな。ロブスターからはログイン不可になってるのにさ。……なんか意味があったりするんだろうか?


「いったん、イベント開始の時ってどこにいても大丈夫か?」

「特殊演出が入るから、がっつりと戦闘になるエリアは避けておいた方が無難かな〜? まぁ見逃したら見逃したで、イベント期間中ならここでいつでも見れるけどね〜」

「あ、そうなんだ?」

「全員がイベント開始時にログイン出来る訳じゃないからね〜」

「そりゃそうだ」


 当たり前といえば当たり前の話である。リアルの生活がある以上は誰もが同時にログイン出来る訳がない。俺のPTでもアルとかは無理だろうしね。


「前からお知らせしていたけど、情報のまとめ機能が追加されました〜」

「お、待ってました!」

「使い方はメニューに『群集まとめ情報』っていう項目が増えてるから、そこからアクセスしてね〜」

「おうよ」

「編集方法はヘルプの方に項目が追加されているから、そっちを確認してね〜。あ、基本的に編集履歴はプレイヤーの記名式になってるよ〜。匿名は不確定情報の提供の書き込みのみになっています〜。それと、この『群集まとめ情報』関係の画面はスクリーンショットは出来ないからね〜」

「あ、名前出るし、スクショは不可能なんだ」

「荒らし防止だね〜。意図的にデマ情報を書きまくれば、僕から警告を出すよ〜」

「……最近、対策が大変そうだよな?」

「……そうなんだよね。なんで荒らすのかな〜?」

「……さぁ?」


 こっちにも荒らし対策はありと。なんで荒らすのかは俺も聞いて……みたくもないな。どうせろくな答えが返ってきそうにないし、あの手の連中とは関わりたくないものだ。ゲームは楽しくやりたいから、関わらないのが1番良い。……アーサーみたいな心境の変化があるのは珍しいパターンだろうしね。


「いつものスクリーンショットの承諾をお願いします〜」

「ほいよ」


 いつものように渡された一覧を軽く眺めていく。……なんだかんだで結構写ってる事もあるもんだな。あ、昨日の森林エリアでの川下りの様子とか、ホタル……これは構図的に確実にハーレさんのだな。……あ、撮った人の名前も詳細から分かるのか。他はただ偶然紛れて写り込んだだけみたいなので別にいいや。

 よし、この川下りとホタルを何枚か貰っておこう。今回は他の群集からのは無いので、全部許可でいいかな。


「他の群集のはないし、全部許可にしといてくれ。あと、この辺のは貰うよ」

「そう処理しておくね〜。お知らせはこのくらいだけど他に何かあるかな〜?」

「そういや支配進化でもログイン場面が変わらない理由って何かある?」

「えっと、まぁキャラ枠を1つ使用しているっていう表示だね〜」

「そっか。それじゃログインよろしく」

「はいはい〜。あ、その前に今日のログインボーナスね〜」

「お、サンキュ」

「それじゃ楽しんでいってね〜」


 それほど深い意味もないっぽいし、まぁ2枠目の使用状況の確認も必要か。ロブスターの方にはログイン不可とは出てるしね。さてと今日の分のログインボーナスも貰ったし、始めようか! あ、追憶の実……まぁ今度時間がある時でいいか。



 ◇ ◇ ◇



 さてやってきました、ゲームの中へ! 昨日は森林エリアに戻ってからログアウトしたからエニシの前だな。でも昼間の日なのに、少し薄暗い。……雨が結構な勢いで降っていた。

 エニシの下に駆け込んでくる人も結構いる。動物系ばかりで植物系は全然いないから、種族によっての影響は大きそうだね。


「うひゃー!? 土砂降りだ!」

「この天気だとこっちじゃやりにくいな。森林深部の方へ行くか」

「俺は海の2ndの方を育てて来ようっと」

「うーん、イベント開始まで1時間か。微妙な時間……」

「おーい、初心者向けに一発芸スキルの取得大会やろうって話が出てるけど、参加するやついたら来いよ」

「お、あれやんのか! よし、笑いに行ってやろう!」

「……あれ、滑ったから私は苦手」

「ははっ! そりゃそういう事もあるさ!」


 少し周辺を見てみればそんな話題が広まっていた。転移が可能な今なら天気が悪ければ他のエリアに行くのもありか。そして、初心者向けに一発芸スキルの取得とかをやってるんだね。あれは最近は使ってないけど、行動値の少ない初期には重宝するだろう。


 ハーレさんがいたら実況か司会役をやりたがっていただろうな。俺も何もする事が無ければちょっと見ていたい気もするけど、1人の内に試しておきたい事もある。

 まだみんなもログインしてないし、ここは秘密特訓的に常闇の洞窟でやろうかな。元々は荒野でと思っていたけど、1人で行くなら常闇の洞窟の方が色々と都合がいい。……あそこなら失敗しても燃える物もないしね。

 その前に本日分のログインボーナスを貰っておこう。とりあえずコケの方を使用。


<『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>

<ケイがアイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>


 次はロブスターだね。ログインし直さなくても両方のログインボーナスの使用が出来るのは支配進化の良いとこだ。


<『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>

<ケイ2ndがアイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>


 無事受け取り完了って事で、早速行動に移ろうかな。……さてと、常闇の洞窟はエニシからでも好きな位置に転移出来るかな……? お、問題なく行けそうだ。

 全く知らない場所もあれだからヨッシさんが未成体に進化した地下湖のある場所にするか。えーと、確か2ヶ所目に設置された場所だったはずだから、森林深部の2番目の場所だな。よし、転移っと。


<『始まりの森林・灰の群集エリア1』から『常闇の洞窟』に移動しました>


 よし、転移完了。目の前には青白く光って地下湖を照らし出す木と、何やら特訓中の1PTがいるようだ。

 何日か前に来たはずだけど、なんか久しぶりに来た気がする。あー、常闇の洞窟が舞台の群集クエストも終わったから、人は前よりは圧倒的に少なめか。まぁここの敵は癖が強いもんな。それでも全然いない訳ではないみたいだけど。


 ま、人が少ないほうがもし失敗した際の被害は少ないからそっちの方が良いけどね。今回やるのは少なからず味方にすら影響があるからな。……成功すればそうでもないんだろうけど、失敗した場合は迷惑でしかない。

 とりあえずどこか行き止まりを目指して出発だ。……その前に真っ暗では行動に支障があるから、暗闇対策をしていこう。


<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します>  行動値 53/53 → 52/52(上限値使用:1)

<行動値上限を3使用して『暗視』を発動します>  行動値 52/52 → 49/49(上限値使用:3)


 これで問題ないね。今回は光源はいらないって事で発光はなし。さぁ、実験に出発だー! これが終わったらまとめ機能を見に行こうっと。



 しばらく進んで行けば、行き止まりへと辿り着く。ここは光源のある転移地点と違って、完全な真っ暗闇である。よし、このくらいの方が他の影響を遮断出来て判別しやすいね。それでは実験開始!


<『進化の軌跡・光の小結晶』を使用して、纏属進化を行います>


 そういや支配進化で纏属進化を使うのは初めてだ。どうなるんだろ? ん? あ、進化対象がコケかロブスターか選べるようになってるね。共生進化だとまとめてだったけど、こういう違いがあるんだな。何気にロブスターが選べるのが大事だったりするかもしれん。

 とりあえずここはコケにしておこう。進化対象を選択をすればコケ周辺を光の膜が包んでいき、砕け散っていけば進化完了だ。

 

<『支配ゴケ』から『支配ゴケ・纏光』へと纏属進化しました>

<『閃光』が一時スキルとして付与されます>


 よし、進化完了。……ロブスターでやった場合がどうなるのかが地味に気になるけど、小結晶はあんまり持ってないし……って樹の輝石を使えば良いだけか。とりあえずそれは後回しっと。

 そういや付与スキルって持ってるスキルは表示されなくなった? 既に持ってるやつは一時スキルと言うのも変だし、初回だけ全部表示されるとかかな。そうじゃないと何が付与されるのか分からないし。まぁその辺は困るわけでもないし、別にいいか。


 さてとそこにある石は間違いなく、未成体のあのカニだよな。……意味はないかもしれないけど、ロブスター側でも看破は取っておこうかな。


<行動値を3消費して『識別Lv3』を発動します>  行動値 46/49(上限値使用:4)


『石海ガニ』Lv2

 種族:黒の暴走種の残滓(?)

 進化階位:未成体・暴走種

 属性:土、海

 特性:擬態、堅牢


<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『見破るモノ』を取得しました>

<スキル『看破』を取得しました>


 とりあえず、これでロブスター側でも看破は取れた。……っていうか、こいつ残滓の異常個体か。ちょうどいいや、こいつを標的にしよう。えーと、行動値は……うん、足りるはず。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を20消費して『光の操作Lv1』は並列発動の待機になります>  行動値 26/49(上限値使用:4)

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を4消費して『閃光Lv2』は並列発動の待機になります>  行動値 22/49(上限値使用:4)

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 さて、この組み合わせだとどうなる? お、おぉ!? 閃光で放つ光が全て光の操作の支配下になった! あ、でも制御は甘いままだから、収束は出来たけど狙いが全然……あ、カニに命中って、今ので3分の1くらい削れた!? うおっ、カニの殻の表面が地味に溶けてるし、これは予想以上に攻撃力が凄まじい。日の光を集めるより凶悪じゃない!?


 とりあえず実験は予想以上の成功。閃光の効果が一瞬だから、操作も一瞬にはなるけど威力がとんでもない。これ、レーザー光線みたいなもんだな。これは外でやらなくて正解だ。

 これはポイントで閃光を取るのは有りだな。えーと、閃光はっと……。おい、邪魔すんな、カニ! とりあえず邪魔なカニを先に仕留めるか。


<行動値上限を2使用と魔力値4消費して『魔力集中Lv2』を発動します>  行動値 22/49 → 22/47(上限値使用:6): 魔力値 108/112 :効果時間 12分


 さて魔力集中を使ってみたものの、何の属性を付与したものか。とりあえず今は纏光で光属性になってるから鋏は光っているけど、これってどんな効果があるのやら。……って光属性になってるのはコケだけど、地味にロブスターの魔力集中にも反映されるんだな。これが支配進化ってものか。

 おっと、カニが鋏で殴ってきてる。あ、ここでスリップ回避の練習っていうのもありか? あれはあれで鍛えておきたいし。


<行動値を3消費して『増殖Lv3』を発動します>  行動値 19/47(上限値使用:6)

<行動値を2消費して『スリップLv2』を発動します>  行動値 17/47(上限値使用:6)


 あら、意外とあっさり回避成功。ふむ、この感じだと同格の雑魚敵の攻撃にこれは必要なさそうだ。普通に未成体の今なら余裕でスキル無しでも受け流せたっぽい。よし、折角だし適度に回避しつつ、スリップ回避の練習をしていこう。ついでに様子を見ながら光の操作もLv上げだ。


 そしてしばらくの間、行動値を回復させながら通常攻撃でHPを削りつつ、スリップを織り交ぜながら回避練習と光の操作のLv上げをしていく。とりあえず光の操作はLv2になった。けどLv3までは上げたいところ。

 その戦闘中に気付いたけど魔力集中で光属性を付与した状態だと、攻撃の判定時に小規模な閃光が発生してるみたいだね。確率は低いけど盲目の状態異常になっている事があった。


 さてと、そろそろ切り上げようかな。魔力集中も切れる頃だしね。


<行動値を2消費して『スリップLv2』を発動します>  行動値 26/47(上限値使用:6)

<熟練度が規定値に到達したため、スキル『スリップLv2』が『スリップLv3』になりました>

<『魔力集中Lv2』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 26/47 → 26/49(上限値使用:4)


 スリップのLvが上がって、魔力集中が切れたか。いつまでもやってても仕方ないしそろそろ仕留めるとして、何で仕留めようかな? 何か、試してないパターンでも……あ、あれって出来るかな? ちょっと試してみよう。さーて、どうなるか。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 25/49(上限値使用:4): 魔力値 109/112

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値2と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 23/49(上限値使用:4): 魔力値 106/112

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


<『昇華魔法:ウォーターフォール』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/112


 お、昇華魔法の発動成功! カニの頭上から大量の水が滝の様に流れ落ちていき、そして圧殺し、ポリゴンとなって砕け散っていった。大量の水は流れ出して行くこともなく、攻撃を終えると霧状になり消滅していっている。

 うーん? 威力はあるにはあるけど、スチームエクスプロージョンに比べると威力が低過ぎる様な気もする。消費魔力値が1人分か2人分かの違いかな?  これは水の昇華を持ってる草花の人と威力の比較検証が必要だね。単独で使うにはちょっと威力と魔力値の消費量が釣り合わないかもしれない。


 とりあえずやる事は終わったし、時間も程々に過ぎている。まとめ機能も気になるし、今の実験結果も報告しておかないとね。さて一旦森林深部まで戻りますか!

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