第245話 森林の隣接の湿地へ


<『始まりの森林・灰の群集エリア1』から『スターリー湿原』に移動しました>


 とりあえず湿地エリアに到着! 川の水が溢れ出たかのように水に覆われた湿地帯のようである。……うん、所々に陸地はあるけど大半が浅く水没していて、多量の草が生えている感じか。ちょっとイメージしていた感じとは違うけど、これはこれで中々に見応えのある風景だね。


「おー! 思ってたのとはちょっと違うけど、いい感じだね!」

「地面の表面が泥濘んでいるってのをイメージしてたけど、案外水が多いんだね」

「それは森林深部の沼ガメの先の湿地エリアだな。こっちは川がある分、水量多めって話だ」

「……アル、さっきから地味に揺れてるのは何でだ?」

「川の深さ的に泳ぐのがぎりぎりなんだよ。……正直底に当たってるし」

「あーなるほど。少しの間、俺が浮かそうか?」

「いや、可能な範囲は自力で動くぞ。頼ってばかりじゃスキルLvが上がらん」

「アルがそれで良いなら、別に良いけど……」


 川と言っても深さに問題があり、どうやら速度も出ていないようである。小型化してもまだデカいクジラというのもあるんだろうけども、何もかもすんなり上手く行くわけでもないらしい。まぁその辺りはスキルLvが上がってくればどんどん解消されていくだろうけどね。


 そんな風に移動していくと、何やら見えてきた。右側の陸地が水で途切れているのを繋ぐ、木の板か何かで作られた橋みたいなのがある。これが整備クエストで作った物かな? ふむ、土台に太い根があって、更に細かい根で板を固定しているっぽい。これは不動種のNPCの根か何かだろうか?

 進行方向にあればぶつかりそうだけど、これは位置関係的にそういう事はなさそうだ。


「橋があるよ!?」

「それがここの整備クエストらしいぜ。後は地面のある方にも木の板で足場は出来てるそうだ」

「へー、でもここからは水草が邪魔で見えないね」

「まぁ川から行くのは、川魚とか海からきた泳げる種族がメインって話だからな」


 つまり今俺たちの進んでいるルートは特殊ルートって事になるんだな。陸地は陸地で整備クエストで作られた足場の上を通っていくんだろう。


「ハーレはここでは泳がないのかな?」

「何か危険な予感がするので止めておきます!」

「あはは、確かにワニとかいそうだもんね」

「実際にワニはいるらしいぞ。水中の方を移動してると襲ってくるそうだ」

「ほう、ワニがいるのか。気をつけて進まないとな」

「ま、いるのは成長体までらしいがな」


 こっちは川があるだけ、水量が多め。そしてここにはワニがいて、襲撃の可能性もあり。成長体までなのはエリアの位置的に当たり前か。相変わらずアルは結構エリア情報は仕入れているね。……しばらくはアルは泳ぎなので、ワニには要注意だな。


 さてとここなら水も大量にあるから、頼まれてた光の操作の実験も出来るかな? もし火がついても燃えにくそうだし、消火用の水もある。丁度いいから試しておくか。


「みんな、ちょっと実験させてくれ」

「良いけど、何やるのかな?」

「夜に光の操作がどの程度使えるかの実験」

「あー! そういや頼まれてたね!」

「え、そうなんだ?」

「うん、夕方に情報共有板でねー!」

「あ、なるほど。私は今日はいなかったもんね」

「そういう事。あんまり時間はかからないから、ちょっとだけな?」

「……流石に月の光で火が起きるとは思わないが、エリア的には丁度いいか」

「了解です!」

「うん、いいよ」

「分かったかな」


 よし、みんなの了承を得られたという事で実験開始! さてとまずは頼まれていた普通に光の操作を発動してみるか。夜の日の月明かりぐらいではどんなもんだろう?


<行動値を20消費して『光の操作Lv1』を発動します>  行動値 28/48(上限値使用:4)


 とりあえず普通に発動してみたけど……あ、これダメだ。月の方を見てみたけども、まともに操作の指定すら出来ん。Lvが低いのもありそうだけど、根本的に光量不足っぽい。月の光では無理か。

 この状態で自分で発光している光を操作するのは……出来そうな気もするけど、地味に駄目みたいだな? 一定量以上の範囲がないと指定が不可か。そして、ちょっと離れた位置まで届いた光そのものは操作可能だけど、最低限必要な光量には届いてないと。

 光の操作の支配対象の条件的には、ある程度の明るさとある程度の照らされている範囲が必要なんだな。それなら光ってる自分自身が見えていればいけるか?


「……何も起きないけど、失敗かな?」

「みたいだ。夜の日はそのままじゃ使いものにならないかも」

「えー!? 勿体無いね!?」

「俺も同感。って事でここからは俺自身の発案の実験!」

「あ、やっぱり何か用意してるんだ。流石、ケイさん」

「どんなのだろうなー!?」


 次の実験をやる為に一旦光の操作は解除。……思いっきり行動値が無駄になったけど、熟練度になったと思っておこう。スキル自体は使用したんだし、熟練度は貯まってるだろうしね。

 さて、次! 自分自身は見えないけど、光源の数を増やす事は可能だからそっちの方向性でやってみよう。


<行動値1と魔力値4消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 27/48(上限値使用:4): 魔力値 106/110

<行動値を3消費して『増殖Lv3』を発動します>  行動値 24/48(上限値使用:4)


 ここまではいつもの光源を複数作る手順と同じ。これで発光コケ付きの魔法産の小石の出来上がり。さて、ここからは並列制御の出番だな。並列制御を使わなくても出来そうな気もするけど、一応こっちの方を試してみたい。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を20消費して『光の操作Lv1』は並列発動の待機になります>  行動値 4/48(上限値使用:4)

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を8消費して『土の操作Lv3』を発動します>  行動値 ー4/48(上限値使用:4)

<指定を完了しました。並列発動を開始します>

<行動値が足りませんので不発になりました>


 そういや2つ目は2倍消費だった!? げっ、足りなくてもしっかり行動値は消費してるし……。先に使う行動値を計算しておくべきだったね。

 うーん、やっぱり地面に光るコケを作るだけでも良いのか? いやでも、全方位に光を放てる状態で、光源位置を自分で調整出来る方が良い気もするし……。そもそも現在地はアルの背中の上だしな。


 でもこれが戦闘中でなくて良かった。……並列制御は行動値管理が重要。特に応用スキルを使う時は! 失敗しても行動値が消費されるという事が分かったから良しとしよう。ついでにマイナス表記まで行くという事もね。


「……光源が増えただけかな?」

「すまん、行動値が足りなくて不発……。回復まで待たないと」

「そりゃさっきも応用スキルを使ったばっかだしな」

「行動値に要注意って事だね」

「回復を待ってから、もう1回やればいいさー!」

「そうさせてもらうよ」

「その間に出来るだけ進んどくか」

「アルさん、出航だー!」

「……船じゃねぇんだけどな。再使用も可能になったから空中浮遊でいくぞ。『上限発動指示:登録2』!」


 アルは川を泳ぐのから切り替えて、川の水面から少し浮かび上がっていく。船ではなくて木とクジラだけど、やってる事は船だよな。形式的にはクジラで木を引っ張ってるから水上の馬車って感じだけど。……自分で考えておいてなんだけど、水上の馬車ってなんだろね?


「……意外と移動操作制御の取得が出ないもんだな」

「あれ? アルはもうてっきり持ってるものかと思ってたぞ」

「あー、多分木だけで動いてたらとっくに取得だったんだろうよ。クジラと共生進化させてからはほぼ乗ってるだけだったからな」

「あ、なるほどね」

「さて、あとどのくらいかかるのやら……。つっても、現状じゃそれほど使い道もないけどな」

「ま、それもそうか」


 途中でそんなやりとりもありながら、アルの背中でのんびりと湿原を進んでいく。移動に専念しているアル以外はみんなで予定通りに熟練度稼ぎの特訓をしている。今はヨッシさんとサヤの組み合わせだ。ハーレさんと俺は行動値を使い切ったので回復中。


 お、ちょっと川幅の狭くなっている場所に出た。あー、ここにも橋がかかってるのか。そのままじゃ確実にぶつかるし、避けなきゃ駄目だな。


「えー、皆様、本日は遊覧船『アルマース』にご乗船頂き有難うございます」

「ハーレさん!? 誰が遊覧船だよ!?」

「あ、実況の別バージョンが始まったかな?」

「おう、ハーレさん。もっとやれー!」

「……これは止めるべき?」

「……アルも1回くらいは良いんじゃないかな?」

「くっ!? 今まで乗ってきたのがここで仇になったか!?」


 行動値の回復中のハーレさんが何やら退屈していたのか、観光案内の真似事を始めた。よし、今回の対象はアルだし、そのまま行ってしまえ!


「前方に見えてきましたあの橋は、灰の群集の森林エリアの方が幾度となく敵を倒し、材料を集め群集支援種と共に作り上げた物になります」

「……整備クエストのエリアには大体不動種の群集支援種がいるって話だぞ。ちなみに調査クエストは動物系がいるらしい」

「へぇ、そうなのか。ところでこのまま行くと衝突しそうだけど、それは良いのか?」

「流石に良いわけないな。上から越えるから、ケイ、任せていいか?」

「おう、任せとけ」

「これより空中遊覧へと移ります。皆様お楽しみ下さいませ」


 えーと、すぐに解除するし移動操作制御じゃなくて普通に発動でいいか。……待てよ? 折角だし水流の操作と風の操作の合わせ技でも……。あーアルが木を引っ張ってる状態だと風が分散しそうで推力には微妙かもしれない。行動値も全快してないし、ここは普通にしておくか。


<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します>  行動値 35/48 → 35/46(上限値使用:6)


 とりあえずアルの下へ水を生成して、クジラを持ち上げ、橋を壊さないように避けていく。不必要に整備クエストで森林エリアの人達が作った橋を壊すのも忍びないしね。……壊せるのかどうかはわからないけど、流石に試す気も起きないし。

 ん? 何か、水音がしたような……? あ、あれか。


「みんな、下のやつらはどうするよ?」

「……下? あぁ、なるほど」

「わー!? ワニだ!?」

「言ってたのが出てきたかな」

「1、2……3匹だね。どれも異常個体みたい」


 アルが水面から離れたのが理由なのか、それとも元々集まっていたのか、理由は分からないが明らかに水面に戻れば攻撃を狙っていますとばかりにワニが3匹ほど集まってきている。3匹とも瘴気を纏っているし、こいつら残滓の異常個体か。とりあえず識別しておこう。


<行動値を3消費して『識別Lv3』を発動します>  行動値 32/46(上限値使用:6)


『大食いワニ』Lv17

 種族:黒の暴走種の残滓(?)

 進化階位:成長体

 属性:水

 特性:大食い、強靭


 あ、思った以上にLvが高かった。このワニは成長体だからもう少しでLvが上がりそうな経験値の足しにはなるかな。


「どうする? とりあえず1体識別したら成長体のLv17だけど」

「とりあえずわざわざ攻撃されに降りる必要はないな。成長体なら上から魔法で仕留めるか」


 下でワニが降りてこいと言わんばかりに睨みつけ、その巨大で凶悪な顎を開閉させている。……うん、この状況で降りたくはないな。成長体相手だからダメージは全然平気だろうけど、気分的な問題で。


「よし、サヤは電気魔法Lv2、ヨッシさんは氷魔法Lv2でよろしく。可能なら複合魔法を狙ってみよう。ハーレさんは動きが鈍ったとこに狙撃で撃ち込むって感じで!」

「分かったかな! 『エレクトロボール』!」

「サヤが魔法って珍しいもの見る気分だね。『アイスニードル』!」


 そしてワニに向かってサヤのクマのマフラーになっている竜とヨッシさんが魔法を撃ち出していく。俺が指示したとはいえ、サヤが魔法を使うのは新鮮だね。ようやく本来の狙い通りの魔法砲台になってきた感じである。

 実験ではあったけど無事に複合魔法になったようで、電気を纏った尖った氷がワニへと突き刺さり、麻痺と凍結の状態異常になって盛大に動きが鈍り、水面に浮かんでいた。……ふむ、電気も氷もワニはどっちも弱そうだし、かなり効果ありみたいだな。


「なんて複合魔法?」

「えっと、『エレクトロニードル』かな」

「これは便利かもね」

「確かに麻痺と凍結の両方は地味に凶悪だな。こりゃ良さそうだ」

「私もいっくよー! 『魔力集中』『狙撃』『狙撃』『狙撃』!」


 そして身動きの取れないでいるワニに向けて狙撃が次々と撃ち込まれていく。ふむ、雑魚敵とはいえ流石に残滓の異常個体か。未成体のこの攻撃でも7割くらい削るのがやっとか。……いや手数的には充分? 


 さてと仕留める為の追撃といくか。行動値的には……多分足りる筈。今度こそさっきのミスった攻撃をやってやろうじゃないか!


<行動値1と魔力値4消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 31/46(上限値使用:6): 魔力値 106/110

<行動値を3消費して『増殖Lv3』を発動します>  行動値 28/46(上限値使用:6)


 さっきは失敗したけど次こそは成功させる! 自前の光源による、光の操作の収束攻撃を!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を20消費して『光の操作Lv1』は並列発動の待機になります>  行動値 8/46(上限値使用:6)

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を8消費して『土の操作Lv3』を発動します>  行動値 0/46(上限値使用:6)

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 よし、無事に発動した。光源位置も自分で見れるように調整すれば光の操作を発動するのに必要な最低限の光量は確保出来たようだ。これで最低限ぎりぎりっぽいから、土の操作を使わないならもっと広範囲のコケの光源が必要かもしれない。

 後は……あ、狙いが全然無理だこれ!? 変な方向に収束した光が向かっていっている。


「……ケイ、何やってんだ?」

「ちょっとその辺の草から煙が上がってるだけだね!?」

「……これは成功したような、失敗したような……?」


 発光を使って自前で作った光源で光の操作そのものは使えるけど、現状では弱過ぎて使い物にはならないって事か……。あと、操作精度を上げる為にLv上げは必須だね。


「とりあえず仕留めるよ? 『並列制御』『アイスボム』『氷の操作』!」

「おー!? ヨッシも並列操作だー!?」

「爆発の方向性を偏らせているのかな?」


 ヨッシさんも並列制御での魔法の手動制御をやったみたいだね。3匹の中心辺りに着弾させ爆発の方向性を3匹のワニのみに向けたようである。爆発の指向性を変化させれるというのは地味に良い手段だ。


<ケイがLv4に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>

<ケイ2ndがLv4に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>


 Lvも上がったし順調、順調。さてと橋も越えた事だし、そろそろアルを下ろそうかな。


「アル、下ろすけどいいか?」

「おう、頼むわ」


<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 0/46 → 0/48(上限値使用:4)


 これでアルを再び川に戻せたっと。ここのマップ情報は貰ってきてないから平原エリアまでどのくらいかかるか分からないけど、まだ今日の終了時間まではちょっとはあるからね。



【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:支配ゴケ

 所属:灰の群集


 レベル 3 → 4

 進化階位:未成体・支配種

 属性:水、土

 特性:複合適応、支配


 群体数 535/4300 → 535/4450

 魔力値 106/110 → 106/112

 行動値 0/52 → 0/53


 攻撃 54 → 56

 防御 74 → 77

 俊敏 58 → 60

 知識 102 → 107

 器用 104 → 110

 魔力 142 → 149



 名前:ケイ2nd(ログイン不可)

 種族:傀儡ロブスター

 所属:灰の群集

 

 レベル 3 → 4

 進化階位:未成体・傀儡種

 属性:なし

 特性:打撃、堅牢、傀儡


 HP 4150/4150 → 4150/4350

 魔力値 32/34 → 34/35

 行動値 39/41 → 41/42


 攻撃 113 → 120

 防御 106 → 113

 俊敏 82 → 88

 知識 44 → 46

 器用 44 → 46

 魔力 23 → 24

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