第243話 移動と特訓
<『ミヤ・マサの森林』から『始まりの森林・灰の群集エリア1』に移動しました>
寄り道もあったけど、とりあえず森林エリアへと到着である。えーと、ここから少し北に行けば川だから、そこまで行って後は川沿いに進んでいけば良いって事だな。
「アルは川はどうすんだ? 多分泳げるだろ?」
「泳げるだろうが、スキルの熟練度稼ぎにはならんから泳がないぞ。まぁ障害物がない方が楽だから川の上を通るつもりだけどな」
「なんだか無駄なことしてる気もするけど……」
「実際のところ熟練度以外では無駄といえば無駄だからな」
「確かにそりゃそうだ」
熟練度稼ぎが目的だから決して無駄という訳でもないけど、わざわざ川の上で空中に浮くのは見た目的には無駄だよな。まぁ、その辺は気にしても仕方ないか。
「で、移動はどうする?」
「あーケイ、川までは運んでもらってもいいか? 多分今の大きさじゃ何度か迂回しなきゃいけないかもしれん」
「……それもそうか。よし、それじゃ川までは俺が運ぶって事で」
「おう、頼む」
確かに森林深部に比べれば木の密集度は低いとはいえ、今のアルのクジラではまだ全部を無事に通過出来るほどではない。川まで行ってしまえば問題はないだろうけど、そこまでは俺が木の上まで浮かせて運ぶ方が早いな。という事で巨大水のカーペットを作成!
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 48/48 → 46/46(上限値使用:6)
夜目と発光も発動中だから、そこそこの上限使用量。……そしてやっぱりLv3以降はLv上昇は遅くなってくるね。そろそろ発光も上がってくれて良いんですよ?
しょうもない事を考えていても仕方ないので、とりあえずアルを生成した水の上に乗せて木の上まで浮かせていく。うん、無事に完了だね。
「あー! 乗っておくの忘れた!? 『上限発動指示:登録1』『共生指示:登録1』!」
「お、リスからパラシュート化が出来るようになったんだな。っていうかいつの間に?」
「ケイさんが食器洗いをしてる間!」
「……あぁ、そう」
ハーレさんは上限発動指示で傘展開を呼び出して、共生指示で風魔法を呼び出して、そして上空へと打ち上がっていった。パラシュートというより、凧とか気球……? いや、どっちも何か違う気はするけど適切な表現が見つからないな。
俺との少しのログイン時間の差でできた隙間の時間で色々とやっているようである。まぁ悪い事でもないから別にいいけどさ。
「わっ!? これ、浮けるのかな!?」
「お、サヤが浮いたー!?」
「……首吊りグマか?」
そしてサヤの竜はクマの首を絞め上げる様に浮かんでいく。タツノオトシゴから竜へと種族が変わった事で標準で浮けるようになったようである。……まぁマフラーみたいに巻き付いてる状態で浮かび上がればこうもなるか。
「サヤ、竜の位置を変えたら?」
「うん、そうするよ! えっと、ぶら下がるのは微妙にバランスが悪いから……うん、これならどうかな?」
「……贅沢な椅子だな」
「珍妙なスクショが大量に撮れたー!」
ヨッシさんに言われるままにサヤは竜の位置を変えていき、クマの磔みたいになったり、また首吊りみたいになったりしながら調整していく。最終的には竜の上に腰掛けるような形で落ち着いた。まぁこれ以上大きくなると共生進化は無理らしいのが少し残念だけど。
そして何気にハーレさんがスクショを撮りまくっていたようである。確かに珍光景であったのは間違いないから、気持ちも分からなくはない。サヤはアルの上に着地すると竜をクマの首に戻していた。竜でログイン中でも移動自体はクマの方でやるみたいだね。
さてと俺もアルに登るか。ヨッシさんは既にアルの木の上で待機してるし、サヤも竜を椅子にして飛んでいったしな。……まぁ浮かせる前に登っておけという話なんだけどね。
<行動値1と魔力値5消費して『風魔法Lv1:ウィンドクリエイト』を発動します> 行動値 45/46(上限値使用:6): 魔力値 105/110
<熟練度が規定値に到達したため、スキル『風魔法Lv1』が『風魔法Lv2』になりました>
お、風魔法のLvが上がったね。それはいいとして、今まで何度もやったみたいに空中での飛び跳ねを……ん? あ、ちょっと試したい事を思いついたからやってみよう。視界はコケの視点で背後に固定! 多分予想通りなら、アルを軽く飛び越えるからな。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を5消費して『風の操作Lv1』を並列発動の待機します> 行動値 40/46(上限値使用:6)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を2消費して『体当たりLv1』を並列発動の待機します> 行動値 38/46(上限値使用:6)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
<熟練度が規定値に到達したため、スキル『風の操作Lv1』が『風の操作Lv2』になりました>
よし、風の操作もLvが上がった! 体当たりはあえて威力を抑えてLv1で発動。多分Lv3だと勢いがあり過ぎる。風の操作で上方へと一気に推進力を生み出すと同時に上空へ向かって体当たり!
ってこれ、速!? この合わせ技、地味に一気に距離を詰めるのに良いな。……ただし、並列制御で体当たりの同時発動まではいらない。単純にここまでやると速すぎる。でも何度か繰り返せば結構な高さまで飛べる気がする!
「おーい、ケイ? どこまで飛ぶ気だ?」
「おー! 月夜の空を飛び跳ねるザリガニのスクショが撮れたー!」
「あ、ハーレさん。地味にそれ欲しいから後でくれ」
「ケイさん、了解です!」
よし、面白そうなスクショはこれで貰えるのは確定だ。それにしても言われるまで気付かなかったけど、今日は綺麗な満月か。いつの間にか曇ってたのが晴れていたんだな。……とりあえず着地しようっと。
「ケイ! ちゃんと減速してこいよ!」
「分かってる!」
さて、瞬発的な足場には出来るのは分かってるので、こっちはどうだろう? 覚えたてだけど、早速実験といこうか。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を5消費して『風の操作Lv2』を並列発動の待機します> 行動値 33/46(上限値使用:6)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値4と魔力値10消費して『風魔法Lv2:ウィンドボール』を並列発動の待機します> 行動値 29/46(上限値使用:6): 魔力値 95/110
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
撃ち出したウィンドボールを手動操作で減速させ、その上に着地。そしてアルの位置まで動かして、クジラの上に無事に移動完了。……うーん、風魔法も足場に出来なくはないけど瞬間的な使い方の方が良さそうだ。流石に風魔法だと足場としては不安定だった。
それにしても多分跳び過ぎるとは思ったけど、流石に予想以上過ぎたよ。そういや未成体での威力アップを考慮に入れるのを忘れていたような……。そりゃ体当たりLv1にしても跳び過ぎるわ! まぁ過ぎた事を気にしても仕方ない。
「よし、何はともあれ出発するか!」
「……無駄に跳び過ぎて、無意味に時間かけたのケイだよな? というか平然と風魔法Lv2も足場にしてたよな!?」
「そこは気にしないでおこうぜ、アル!」
「……まぁいつもの事か。それじゃまずは森林エリアの東部のボスのとこまで移動するぞ」
「「「「おー!」」」」
なんか色々やってたけども、ようやく川に向けて移動である。そこからはアルに乗って、熟練度稼ぎしながら川下りだー!
そして少し移動すればすぐに川が見えてきた。ここまでくればもう俺の水は要らないな。結構な川幅もあるし、アルが川の上を移動して行くのは問題なさそうである。さてと、ここで川の上にアルを下ろそうかな。行動値も全快済みだしね。
「アル、水を解除するぞー」
「おう、頼む!」
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 46/46 → 46/48(上限値使用:4)
川の上で解除して、アルを川へと着水させる。とはいってもクジラは浮いてるし、木も魔法産の水で弾いてアメンボみたいになってるけども。ま、これなら問題無さそうだ。
「熟練度稼ぎを始めるよー!」
「さて、動き回るのは無しだから魔法と操作系が中心か?」
「……よし、ハーレさんはサヤの操作系の練習に付き合ってやってくれ」
「分かったよ!」
「うん。それはいいけど、具体的にどうすれば良いかな?」
「サヤはひたすら電気の操作でハーレさんの投擲を撃ち落とす事。とりあえずそれだけで良いだろ」
「了解です! サヤ、木の側でやるよー!」
「うん、分かったかな」
とりあえずサヤはハーレさんとこの内容で特訓するので良いだろう。まずはサヤは操作系スキルに慣れるところから始めないとね。
さてと俺はヨッシさんと魔法の撃ち合いでもしようかな。風魔法と火魔法を強化だ!
「ヨッシさんは、俺とで良いか?」
「そりゃもちろん。どういう上げ方をしていく?」
「とりあえず俺は低いやつから上げていく」
「私はハチの氷と毒を鍛えたいかな。ケイさんは属性的には何にするの?」
「俺は火と風と光と炎だな。……流石に今回は応用スキルの方はやめとくけど」
「あはは。確かにそれはそうだね。それなら私が的の生成役かな?」
「そうしてもらえるとありがたいね」
よし、これで役割分担は決定だな。後は鍛えていくだけである。……まぁサヤが苦手なものの特訓なのでアルに流れ弾が当たる可能性もあるが、ダメージはないし大目に見てもらおう。
「んじゃ移動開始するぞ」
「おう、アル任せた! それじゃこっちも練習開始!」
「「「おー!」」」
あまりアルの上では盛大に動けないので、今回は対戦式ゲームではなく純粋に撃ち合いだな。まぁ場所が場所なだけに仕方ないだろう。
そして川下りをしていくアルの背中の上でしばらく特訓を続けていく。
「あ! なんとなくコツが分かってきたかも?」
「おー! それじゃ速度上げるよー! 『投擲』『投擲』!」
「え!? ハーレ、それはまだ無理かな!? 『エレクトロクリエイト』『電気の操作』!」
「ハーレ、少し加減しなさい! 『アイスニードル』!」
「おー、ヨッシさんお見事」
「……なんか妙な気分だよな。背中で魔法やら投擲やらが飛び交いまくってるってのも」
「別に流れ弾も当たってないから大丈夫だろ?」
「まぁそこはな。っていうか、よく流れ弾の1発も当たってこないもんだな」
「そりゃ俺とヨッシさんで撃ち落としてるし」
サヤも少しは慣れてきたみたいではあるけども、まだまだハーレさんの投擲の大半は撃ち落とせていない。なので、俺とヨッシさんが流れ弾に関しては撃ち落として対処していた。当たってもダメージないけど、不意の流れ弾に対処してた方が地味に特訓になってたからね。
そんな風に特訓をしているうちに風の操作と風魔法はLv3になった。よしよし、順調に鍛えられているね。
「よし、そろそろボスの場所だぞ」
「意外と時間かかったかな?」
「……速度を出そうと思えば出来たけど、全員振り落としても良かったんだな?」
「ご配慮ありがとうかな!」
「あはは、アルさんありがとね」
移動が随分ゆっくりな気はしたけど、アルはアルで色々配慮してくれていたらしい。途中で空中浮遊の効果時間切れになって普通に泳いでたりもしたけど、移動を任せられるのはありがたい話である。
「ところでここのボスは何?」
「飛鱒だな。簡単に言えばあれだ、ルアーを弱くしたようなヤツ」
「あー空飛ぶ魚か。了解」
「サクッと倒して、湿地エリアへレッツゴー!」
「「「「おー!」」」」
ただの通過点でしかないから、さっさと倒していかないとね。今が9時を結構過ぎているので、このペースだと平原エリアに辿り着けるか地味に怪しいんだよな。ボス戦はサクッと終わらせないといけないね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます