第242話 未成体への進化完了
つい見た目の格好良さに釣られてしまったけど、詳細を聞いておかないとね。さてどんな風になったんだろうか?
「それでどんな風になったんだ?」
「えっと、『劣雷竜』で劣竜種だね。あ、名前には影響ないけど属性は『風』も一応残ってて『雷』との2属性かな。特性が『飛行』『魔法耐性』……。あれ、もしかしてこれ海水への適応が消えてないかな……?」
「……どうなんだろうな?」
特性にあった陸地適応が消えたという事は標準で陸地の生物へと変わったって事なんだろうけど、それで海水に対してどうなったかまでは分からない。……俺の最初の進化であえて陸地での適応を捨て去って水中特化にしたことはあるけど、そこまで極端な事ではなさそうだしな。
少なくとも適応が無くなる場合もあるのは間違いないから、ちょっと試してみないと何とも言えない。いや、でも今なら特性の種があればどうにでもなるか?
「……これはちょっと失敗だったかな?」
「特性の種を使えば何とかなるんじゃないか?」
「あ、それもそうかな? 共生適応に使ってたのは『特性の種:海水適応』だしね」
「でも、共生進化の時って普通に特性の種を使うとどうなるんだ? 共生適応とは効果が違うよな?」
「……どうなるんだろ?」
「そういう時はいったんに聞いてみるべきさー! サヤは共生進化してくるんだよね!?」
「それもそうだね。とりあえず共生進化してきて、その時に聞いてみるよ」
困った時にはいったんに質問が良いかもね。共生進化に関しては割と答えてくれるみたいだし、駄目なら駄目で試してみればいいだけである。
「それじゃ共生進化してくるね」
「サヤ、いってらっしゃいー!」
「ここで待ってるからね」
そしてサヤは一旦ログアウトして、共生進化を実行しに行った。これで戻ってくれば俺らのPTは全員未成体へと進化が完了である。
「サヤが戻ってきたらどうするー!?」
「俺は熟練度稼ぎをしたいとこだけど、ハーレさんは遠出したいんだよな?」
「うん、そうだよ!」
「うーん、私も遠出に1票」
「俺は遠出でも近場でもやること変わらねぇからどっちでもいいぞ」
「まぁアルは空中浮遊を上げるのが最優先か」
うーむ、結構意見が割れたね。でもアルがいるのは夜だけだし、みんなで遠出する方を優先するか? でも熟練度……あ、アルに乗った状態で熟練度上げするのもありか?
アルのクジラは前より小さくなったとはいえ、まだみんなが乗っても大丈夫な広さはある。出来なくもないか……?
「なぁ、アル」
「……なんとなく嫌な予感もするんだが、なんだ?」
「背中の上で暴れててもいい?」
「なんとなくそんな気はした!? ……動きまくる近接は流石に止めてくれ。操作系や魔法同士の撃ち合いまでなら構わんぞ」
「よし、それなら遠出しながらそれで行こうか! サヤが戻ってきて聞いてみてからだけど」
「私は賛成さー!」
「私もいいよ」
「そんじゃ、後はサヤ次第って事で」
まぁ今回は折角進化の輝石を使ったんだから、サヤに操作系スキルや魔法の練習もしてもらおうかな。……そうなると共生進化し終わったら、タツノオトシゴ……いやもう竜か。竜でログインしてもらった方がいいな。まずは電気魔法と電気の操作でコツを掴んでもらって、取得済みの火の操作や火魔法の自力特訓をしてもらえば良いだろう。
俺も火の操作と風の操作の熟練度も上げておきたいから、都合は良いしね。ロブスターの近接系はまた今度の機会にという事で。
そうこうしているうちにサヤが共生進化を終えて戻ってきた。なんか、クマの首に巻き付いている竜の存在感が凄まじいものがある。サヤはどんどん迫力が増していくね。
「ただいまー」
「どうだったー!?」
「特性の種は共生進化中はどっちにも効果あるって。2時間毎の再使用にはなるけどね」
「ほう。って事は、共生適応は発動してないのか?」
「うん、生存環境が重なって意味がないからって事で共生適応は使ってないよ。とにかく海水への適応は問題ないかな」
特性の種がアイテムとして使えるって事は、媒体として使わずに共生進化して共生適応は発動していないと。あれは生存環境が違う場合って話だったしな。まぁ今回は問題なさそうだからいいけど、こういう事もあるって事は気を付けないと。
進化で生存環境が変わる場合もあるから要注意! 覚えとかないとね。
「その代わり別のとこに問題があってね。とは言っても、すぐに関係してくる話じゃないんだけど」
「……なんか問題あったのか?」
「これ以上大きくなれば、クマとの共生進化の適応外になるから要注意だって」
「あー、大型動物系同士の共生進化不可に引っかかるのか」
なるほど、そういや大型動物系同士の共生進化は不可能だったっけ。……これ以上大きくなるように進化すればアウトになるんだな。という事は多分だけど大きくならない進化もあるんだろうね。もしくはクマの小型化の進化とかもありか。
「今の状態で、大型化を使うのは大丈夫!?」
「それは聞いてみたけど、『自分で試してみてね〜』って言われたかな」
「あ、多分それは大丈夫なヤツだ」
「だな。いったんがそういう言い方をする時は大体は大丈夫な場合だ」
「そうなの? まぁ後で試してみようかな」
「それが良いと思います!」
「サヤ、大型化は全身を伸ばして5分待機だからね」
「……うん、やってみるしかないよね」
まぁポイントを使わずに大型化を取る手段は分かっているから、取って試せば良いだけの話だもんな。注意点も分かったし、全員の未成体への進化もこれで終わった。そろそろ次の段階へ移っていこうじゃないか。
「ところでこの後遠出しようかって話になってるけど、サヤ的にはどうだ?」
「うーん、折角だけど竜の方でログインしてきたし魔法の練習をしたいかな?」
「それならアルの背中の上で暴れる許可は得た!」
「え、良いのかな、アル!?」
「……魔法か操作系のみな。サヤは立ち位置にも気をつけてくれればそれでいい」
「……良いんだ? そういう事なら、私も遠出でいいかな」
「やったー! 遠出だー! 遠征だー! 未知のエリアだー!」
よし、これで今日の方針は決定だ。アルの背中の上での熟練度稼ぎは実際にやりながら試せばいいや。
「ただし、背中の上で熟練度稼ぎをするならそんなに移動速度は出ないからな?」
「それなら移動操作制御でどうにか出来るぞ?」
「それだと俺の熟練度稼ぎになりにくいから却下。どこまで進めるか分からないって事になるけど、それでいいか?」
「問題ないさー!」
「ま、その辺は仕方ないよね」
色々と同時並行しようというのだから、多少の妥協は必要だろう。なんでもうまく行くとは限らないのが世の常である。まぁゲームでそこまで深く考える必要もないけどね。
「それじゃどこに行くー!?」
「高原は昼間の日が良さそうだから、却下だな」
「うん、それは賛成かな」
「え、そうなんだ? 夕方に行ってたの?」
「うん! あそこは明るい時の方がいいよ!」
「……多少どんよりした明るさでも行けそうな場所か。折角だし森林エリアの川沿いに下っていくか?」
「そっちの先って何があるんだ?」
「整備クエストの湿地エリアと、その先が平原エリアだとよ」
へぇ、森林エリアの整備クエストも森林深部エリアの整備クエストと同じなんだね。見に行ったことないから、伝聞で聞いた程度の事しか分からないけど。……だからこそ行くには丁度いいのかもしれない。整備クエスト自体は多分終わってるだろうけど、どんな風に整備されているのかは気になるところである。
「おー!? 平原って色んな特徴が入り混じってるエリアだよね! そっちに行ってみたい! 湿地も夜の日に1度は行っておくべきって聞いた!」
「ハーレさんもこう言ってるし、それで良いか」
「俺は賛成」
「私も賛成かな」
「私も賛成だね」
「なら全員一致って事で、出発するぞ。まずは森林エリアへ転移だな」
「「「「おー!」」」」
とりあえず目的地も決まったので、出発していこうじゃないか。森林エリアの川沿いに下っていって、目指すは湿地エリアと、その先の平原エリアだ! どっちもまだ行った事のないエリアなので楽しみである。
ミヤビからエニシへと転移する為にミヤビの近くまでやってきた。すぐ近くにはキツネのマサキが、忠犬のように座っている。それにしてもあちこちで焚き火が行われていて、アイテム生産が盛んみたいだね。
灰の群集は競争クエストの勝利数が飛び抜けて多いので、占拠エリアが多くて特訓に使えるエリアが多いのがありがたい。それにしてもマサキのところに人が群がってるな。なんかあったっけ?
「サヤ、ヨッシ! ちょっとマサキから何かアイテムの交換が出来ないか見てきていいですか!?」
「そういえば、ヤナギさんとかから情報ポイントで珍しいアイテムの交換があるんだったね。それくらいなら良いかな?」
「あ、ちゃんと確認するようにしたんだね。うん、問題ないよ」
「だって、サヤとヨッシの2人がかりはなんか怖いからね!? でも許可が下りたー!」
「あはは、やっと効果ありかー」
「……ヨッシ、色々大変だったんだね」
「それじゃちょっと行ってくるねー!」
ちゃんと断りを入れてからマサキの元へと駆けていった。流石に強制的に何度も止められるのをサヤとヨッシさんの2人からされれば、ハーレさんも学習してきたらしい。まぁ独断で突っ込むのを止めてくれるのは良い事だけど、なんかヨッシさんが疲れた雰囲気を醸し出してるね。
2人体制でやっと止まるんだから、1人の時は色々大変だったんだろうな。なんかすまんね、ヨッシさん。なんか出来る事でも……あ、そうだ。
「ヨッシさん、今度何かこっちの食べ物でも送ろうか?」
「え、ケイさん、良いの?」
「まぁ蟹も送ってもらったからな。ハーレさんに食べたい物のリクエストくれたら、俺の方で用意するぞ」
「ありがとう、ケイさん。ネットで頼むかお祖母ちゃんに頼もうかと思ってたとこなんだ」
「サヤの分も用意するから、2人で分けてくれ」
「え、私も良いのかな?」
「ま、ついでだ、ついで」
「それじゃ遠慮なく貰おうかな?」
まぁ蟹のお礼という形なら、母さんも駄目とは言わないだろう。むしろ母さんが嬉々として送りそうな予感もする。……まぁハーレさんにお金を渡すと危険なので、送り主の名前だけをハーレさんにして後は俺と母さんの方で用意しようっと。
「俺には無いのか?」
「アルの住所とか知らんし、どうしろと?」
「そりゃそうだ。まぁ冗談だ、気にすんな」
アルを除け者にしてるような感じになってしまったけど、この辺は女性陣がリアル友達だからこその話だしな。……それならアルがいる時に言うのは避けるべきだったかもしれない。
そんな事を考えているとハーレさんが戻ってきた。地味になんかしょんぼりしているけど、どうしたんだろうか。
「あとほんの少しのところで在庫切れになったよ!?」
「……ん? 何か良いのがあったのか?」
「癒水草と特性の種:淡水適応があったんだよ! どっちか悩んでたら、どっちも在庫切れになっちゃった!」
「あーそりゃ残念だったな」
「うー! ヤナギさんは移動してるから遭遇するのは難しいけど、ここは固定みたいだからその分競争率が高かったー!?」
そういやそういうのが運が良ければ手に入るって話だったっけ。まぁ移動するヤナギさんより、ずっとミヤビの側にいるっぽいマサキの方が交換する機会は得やすいかもな。……競争率が上がるのは仕方ないだろうけどね。
「今回は運がなかったって事で、諦めようね」
「うー! どうしようもないから、仕方ないよね……」
「ま、気を取り直して森林エリアの方へ戻るぞ」
「そだね! 湿地エリアと平原エリアに行くぞー!」
「切り替えが早いね」
「いつもの事だけどね」
ちょっとした寄り道はあったけども、とりあえず目的地に向けて出発である。まずは森林エリアに戻らないとね。
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