第9章 共闘イベントの開始
第231話 競争クエストを終えて
家に帰ってきたものの、少し悩み中である。普通にこのまま育てるつもりだったけど、帰ってる最中に急に気になりだしてしまった。……単純に言えば、ロブスターの強制進化で若干無駄になったステータスの事がだ。くそ、余計な事を考えるんじゃなかった!
「うーん、どうするか……」
改めて考えると、打開策が他に無かったとはいえLvを最大まで上げずにロブスターを強制進化で未成体にしてしまった。Lv1上がれば1番上昇率の良かった攻撃が4ずつ上がっていたので最大で20くらいのステータスの損失なんだよな……。
勿体無いといえば勿体ない。でも有料アイテムの複合解除薬を買って、昨日の競争クエストの経験値を捨てるのも惜しい。何より折角未成体へと進化したのに、ロブスターを成長体に戻して育て直すのもな……。
それに金欠ではないけどもそれほど余裕がある訳でもないし、月額制のゲームだから余分な出費は抑えたいし……。
「あーもう、どうする!?」
「兄貴、どしたの!?」
「お、晴香、おかえり。今日は早いな」
「少し早めだけど、割といつも通りだよ!?」
「あ、ホントだな」
気が付けば4時半を少し過ぎたくらいか。4時前には帰ってきてたのに地味にリビングで30分以上も悩んでたのかよ。くそ、これは運営の罠か! 戻せる手段が無理のない範囲の額の課金アイテムがあるという事でこれほど悩む事になるとは……。
「それでホントにどうしたの?」
「いや、ロブスターの進化の際に無駄になったステータスが気になってな? 複合解ーー」
「あー!? 私はお金に余裕無いのに兄貴だけズルいんだ!?」
「はい!? いや、それは晴香が使い過ぎてるだけだろ!」
「悩むなら使うべきじゃないんだよ! 私は使ったお金に後悔はない!」
「……常に金欠の晴香が言う事か?」
「無い事には後悔するけど、使った事には後悔しないのさ!」
我が妹ながら無茶苦茶な事を言うな……。まぁ悩むなら使うべきじゃないってとこはそうかもしれないけど。……よし、30分も無駄に悩んでも結論は出なかったんだし悩むだけ無駄か。まだまだ先はあるんだし、決して低いステータスって訳でもないからそのまま行くか。
「よし、課金アイテムはやめとくわ」
「おー! それじゃその分でおやつでもーー」
「それは却下!」
「えー!? なんでー!?」
むしろなんでおやつを買ってもらえると思った!? まぁ、悩むならやめておけと言うのだけは納得がいったのでやめておこう。……おやつが欲しいなら自分でなんとかしろって事で、ゲーム開始しますかね。
◇ ◇ ◇
無駄に悩むのも終わったので、ゲームへとログインしていこう。いつものようにいったんのいる場所へとやってきた。今日の胴体には『共闘イベント、開催日程がほぼ決定!』となっている。ほう、決まったんだ? っていうかなぜほぼ決定? 確定じゃないの?
「いったん、共闘イベントの日程が決まったのか?」
「うん、一応ね〜!」
「一応?」
「クエスト終了待ちなのさ〜。青の群集と灰の群集はもうほんの少しで終了だし、赤の群集が昨日一晩で凄い勢いで進んだからね〜」
「……マジで?」
おいおい、赤の群集は張り切り過ぎだろう。もしかして色々と鬱憤が溜まってた人達が原因がいなくなった事で一気に活性化した……? まぁ経験値と進化ポイントは結構溜まってたって話だし、正解ルートさえ見つけられれば次々と転移地点が生成されて一気に進む……?
いや、それもあるだろうけど、それだけじゃないな。多分だけど、これって下らない騒動に直接巻き込まれたくなくて、正解ルートの判別方法を見つけてたけど情報提供はしてなくて、それでもかなり埋まったマップ情報を隠し持ってた人がいるんじゃないか?
流石に昨日の今日でこの進展具合だと、いくらなんでも早過ぎる気がするし。俺でも聞いた限りの状況に置かれていたら、正解ルートを発見しても公表はしたくないと思うし。
「だから開催日程は各群集の群集クエスト《群集拠点種の強化》が終了した翌日の17時から開催となります〜」
「……赤の群集次第では明日からって可能性も……?」
「あるにはあるよ〜。確定したらまたお知らせするからね〜」
「おう、分かった」
これは昨日、情報をリークした意味があったかな。ルアー側から公表された事で情報を隠し持っていた人や、ボイコットしてたっていう海エリアが動き出したのかもしれない。まぁ推測でしかないけども。
それにしても早ければ明日から共闘イベントか。赤の群集で変な事になってなければ順当に進んで、普通に明日開催だったのかもね。……だからこそ強制情報開示か。根本的にクエストが停滞してしまうとイベントが進まないんだな。
「あ、後はスクリーンショットの承諾をお願いね〜」
「ほいよ」
一覧を渡されたので軽く見ていく。ふむふむ、基本的にあんまり多くはないか。昨日は人数が人数だったし、始まった頃と終わった後の沢山いる中にちょっと紛れ込んで映ってるようなのばっかだな。まぁ昨日の俺らの戦いは中継もされてなかったくらいだし、多い訳もないか。
あ、あるにはあったけど、よく撮る余裕があったもんだ。青の群集で俺が水流の操作で一網打尽にしてる瞬間の流されてる最中のスクショとか……。もしかしたら、このスクショを撮ったような人こそ本気で警戒しなきゃいけない相手なんじゃ……?
これに許可を出すのは危険な気がするけど、撮られた時点で手遅れなような気も……。よし、いつも通りの処置でいいや。
「いつも通りでよろしく」
「はいはい〜。いつも通りで処理しておくね〜」
「そんじゃログインで! ……ロブスターはログイン不可だから選ぶ余地ないけど」
「そういう仕様だからね〜。あ、ログインボーナスはまとめて渡すけど、それぞれのインベントリに1個ずつになるよ〜」
「へぇ、支配進化だとそうなるのか」
支配進化中だと全部の項目がコケとロブスターでタブに分けられて、両方にアクセス出来るようになっているみたいだから再ログインの手間が省けて楽といえば楽か。まぁ折角の2キャラでの使い分けってのは出来なくなったけど、これはこれでありかな。コケ単体での利点は少し薄れたけども、汎用性は高くなったしね。
「それじゃ行ってくる」
「今日も楽しんできてね〜」
さてと思っていた以上に共闘イベントまで日数はなさそうだし、今日は徹底的にスキルを鍛え上げるとしようかな。まだ覚えたてだけど、今後よく使いそうなスキルをLv3まで上げるのを目指して頑張ろう!
◇ ◇ ◇
そしてゲームの中へとやってきた。今日は夜の日なので真っ暗である。まぁいつものように夜目を使っていこうじゃないか。ついでに発光もLv上げしておこう。
<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します> 行動値 52/52 → 51/51(上限値使用:1)
<行動値上限を3使用して『発光Lv3』を発動します> 行動値 51/51 → 48/48(上限値使用:4)
よし、発動完了っと。……なんか光る範囲がコケだけじゃなくてロブスターの鋏まで広がっている気がするのは気のせいか……? この辺も支配進化の影響かな。まぁ、困る話でもないから別に良いか。
とりあえずログインボーナスを使っとこう。まずはコケの方からだね。コケ側のインベントリから使用っと。
<『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<ケイがアイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
あ、ちょっと表記に変化あり。まぁ見分けがつかなくなるから必要な表示か。次にロブスターの方でも使っておこう。よし、ちゃんとロブスター側のインベントリにあるね。
<『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<ケイ2ndがアイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
これでログインボーナス受け取りは完了。そういや現在地は……どこにも移動せずにそのままログアウトしたからミヤ・マサの森林か。見た目はやっぱりミズキの森林と同じような感じだね。ここも占拠したエリアになったわけだし、特訓ならここでもいいかな。
「わ!? なんか光ってるザリガニがいると思ったらケイさんだった!?」
「お、ハーレさんか」
まぁさっきまで同じリビングにいたんだから居ても当然か。あの後、直ぐにお互いログインしたんだからね。
「サヤとヨッシさんは?」
「ヨッシは今日は夕方は無理だから夜からだってー! 今日中にハチとウニのバランス問題を解消したいって言ってたよ!」
「確かにあれはなー。ハチをメインに行くみたいだし、ウニで小型化を上限発動制御で発動するか、ハチの大型化の変異進化ってとこか?」
「どっちにするかは悩み中みたい!」
「なるほどね」
確かにどっちの手段でもありと言えばありだよな。アルの言ってた内容によれば小型化も大型化も上限発動制御から呼び出せば結構長時間行けるみたいだしね。まぁ相談されたら相談には乗るけど、決めるのはヨッシさん自身だな。ただ、ウニ側だと進化ポイントがまだ足りなさそうな予感はする。
「あ、あとね! 『私の事は気にしなくていいから、自由にやってて』だって!」
「了解。それでサヤは?」
「もうすぐ来ると思うよー! タツノオトシゴを未成体に進化させたいって言ってた!」
「あ、そういやそうか!」
サヤは昨日、タツノオトシゴをわざと死なせてクマの方を未成体に進化させたからタツノオトシゴはまだ成長体のままなんだ。進化階位がズレてしまったので、そのままでは再度の共生進化は不可能か。共生進化させる為にはタツノオトシゴを未成体へ進化させるのが必須だね。
ヨッシさんがいなくて、サヤの進化の必要があるなら今日の夕方にやる事は決定だな。
「よし、サヤがログインしたらタツノオトシゴのLv上げだな」
「そだね! そうしよう!」
「私がどうかしたのかな?」
「うお!? びっくりした!?」
いつの間にやらすぐ近くにクマのサヤがいた。気付かなかったよ。よし、サヤが来たって事はLv上げを開始出来るな。
「サヤのタツノオトシゴのLv上げをやろうって話してたとこだよ!」
「あ、そうなんだ? それはありがたいかな」
「よし、それじゃ何処でLv上げをやる?」
「……ここまでタツノオトシゴを持ってきてもいいけど、まだ行ってない何処かの調査クエストのエリアはどうかな? 結局昨日は突発的な総力戦で有耶無耶になったしね」
「お、それいいねー! どこのエリアにする!?」
「原点に戻って、森林深部の南側にある高原でも行ってみるか?」
「あ、良いかも。うん、そうしようよ」
「決定だー! 目的地は高原エリアー!」
出来ればアルやヨッシさんがいる日の方が良いけども、ミズキの森林とか占拠済みエリアって居ない訳じゃないけど、黒の暴走種って少なめなんだよね。特訓には良いけど、Lv上げには向かないエリア。
「それが終わったら、みんなで熟練度稼ぎをやろうよ! サヤも魔法を鍛えないと!」
「そうだね。それが目的だったのにまだ全然育ってないかな」
「俺もロブスターの物理攻撃も鍛えたいからちょうどいいか」
「それじゃそれで決定だね! それじゃ出発ー!」
よし、目的地も決まったし、その後の予定も決まったから早速出発しよう。
「あ、でも私のタツノオトシゴは海エリアでリスポーンかな?」
「そうか、タツノオトシゴの最後のリスポーン位置設定は海エリアか」
「うん、先に行ってヨシミのとこまで行ってるね」
「分かったー! ケイさん、私達は先に森林深部に戻ろ!」
「そうだな、そうするか」
そうするのが多分、1番無駄が少ないだろうしね。一旦サヤはタツノオトシゴにログインする為にクマをログアウトしていった。俺とハーレさんはエンのとこまで戻ってサヤが来るまで待機。
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