第228話 激戦を終えて


「それにしても、サヤとケイが戦闘中に進化するとは思わなかったぞ」

「あの時はあれしかないかなって思ってね?」

「サヤのおかげで助かった。あのままなら負けてたし」


 あの時は焦っていて纏癒以外の進化なんて選択肢は思いついていなかったからね。サヤが実演してみてくれなければ、支配進化の実行は思いつかずに倒されていただろう。

 今後の課題は毒への対処方法だな。……進化の軌跡の欠片シリーズはもう使えなくなったし、未成体用の小結晶の確保も考えないといけないね。


「っていうか、それを言うならベスタだってやってただろ?」

「あぁ、そういやそうだったな」

「あの時は加算されるステータスを無駄にしてまでありがとな」

「いや、別にいいぜ。あの後『複合解除薬』で解除して、育て直してからまた融合してるしな」

「……え、解除したの?」

「まぁな。あの時のコケはLv10だったんだぞ。いくらなんでもステータスが無駄になり過ぎる」

「あ、そうなんだ」


 なんだ、解除して育て直してたのか。……いや、それでも競争クエストでの経験値は無駄になっただろうし、再度育成の手間はあったはずだ。感謝はしても文句を言う事でもないか。

 俺は……Lv5分だし、このままで良いか。Lv5分のステータスが勿体ないといえば勿体ないけど、競争クエストの経験値も勿体ないからね。まぁ実際に戦ってみた感じでも問題はなさそうな感じだったし。……何よりもあれは課金アイテムだからね……。


「そういやサヤの進化先は前に言ってた『魔爪グマ』でいいのか?」

「うん、それで合ってるかな」

「サヤは随分と凄い事になってるね!?」

「これって、爪なの……? 刃状の外骨格になってない?」

「あはは、そうみたいかな?」


 進化前のクマは普通の爪が伸び縮みするようになっていたけども、今のクマは巨大な4本の鉤爪付きの籠手でも着けているような感じである。これはまた現実離れした光景になったもんだ。


「でも、これって前の爪みたいに収納可能みたいかな? こんな感じだよ」

「おー!? 腕の中に埋まっていったよ!?」

「……やっぱり爪じゃない気がするね?」


 あ、進化してもその収納は可能なのか。まぁ普段からあんな爪があれば邪魔なだけだろうしね。


「ご歓談中悪いんだけど、俺はいつまで墜落した状態でみんなに乗られてればいいんだ?」

「あ、そういえばそういう状態か」

「わ!? そうだった!?」

「……すまん、アルマース」

「「謝罪する!」」

「アル、ごめんね?」

「アルさん、ごめん!」


 そういえば紅焔さんとライルさん、そして俺以外はみんなアルの上に退避してそのままだった。流石に戦闘が終わった状況で乗り続けるのは駄目だよな。みんなも慌てて降りていた。

 ハーレさんだけは木の巣に戻って行ったけど、まぁあそこが定位置だし問題ないか。みんなも下りたことだしアルをもう1度浮かせておこうかな。


「アル、もう一度浮かせるから小型化しろよー」

「おう、頼む。『上限発動指示:登録1』!」


<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 18/48 → 18/50

<行動値上限を使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します>  行動値 18/50 → 18/48(上限値使用:2)


 コケを保護していた水を解除して、水を大量生成し小型化を呼び出して小さくなったアルのクジラを浮かせていく。少し休んでいたから行動値もいくらか回復していたね。


「ふー、これで元通りか」

「アルさん! 尾ビレが斬り落とされてるけど、HPは大丈夫ー!?」

「やばいといえばやばいな。もう1割切ってるからぎりぎりだ」

「だよね!? それじゃ口開けて! ほい、ほい、ほい!」

「お、サンキュー、ハーレさん」


 再度浮くようになったアルに向けて、背中の木の巣から果物やら焼き魚をアルの目の前に投げていくハーレさんと、それを次々と食べていくアルの姿があった。うーん、これもまたなんとも不思議な光景だな。


「お、面白い光景だね! ハーレ、スクショ撮っておくよ!」

「レナさん、お願いね!」

「……リスに餌付けされるクジラかな?」

「見た目だけだとそうなるよね」


 俺にもまさしくそう見えるよ。まだ競争クエストは終わってはいないとはいえ、俺らの役目の激戦を終えて、果物で回復させながら寛ぎタイムである。紅焔さん達はPTの仲間同士で談笑してるし、ベスタと風雷コンビはなにやら話し込んでるね。


「そういや俺って見た目はどう変わった?」

「えっと、全体的に少し青くなったかな」

「色以外はそれほど変わらないね。あ、でもコケが前より馴染んでるみたいだね。なんというか説明しにくいんだけど、表面に生えているというより一体化したような……?」

「色の変化と一体化か」


 どうも思った程の見た目の変化はないらしい。まぁ色が変わるだけでも大きく違うし、一体化したというのはコケがロブスターの内部まで侵食したって感じなんだろうね。

 さてと少し空き時間も出来たし、今のうちに支配進化後の未成体のステータスでも確認しとくか。とりあえずメニューを呼び出して、ステータス項目を表示。あ、表記が変わって【ステータス・1st】【ステータス・2nd】【ステータス・参照値】って3つのタブに分かれてるね。


 まずはコケになる1stから確認していこうかな!


【ステータス・1st】


 名前:ケイ

 種族:支配ゴケ

 所属:灰の群集


 レベル 1

 進化階位:未成体・支配種

 属性:水、土

 特性:複合適応、支配


 群体数 329/4000

 魔力値 16/106

 行動値 35/50


 攻撃 50

 防御 68

 俊敏 54

 知識 92

 器用 92

 魔力 128


 ふむふむ。支配進化というだけあって未成体・支配種と特性に支配が追加か。属性は変化なしと。これは支配進化だと特性や性質は変わらないのかな……?

 そして具体的な数値は覚えてないけども、全体的にステータスが上がっている気がする。魔力が飛び抜けて高くて、攻撃や俊敏は低いもんだなぁ……。

 幼生体から成長体への進化は一時的にステータスが下がってたけど、未成体への進化はそういう事はないようである。進化階位が上がる事で強化幅が増えていくって事なのかもね。


 何よりも行動値と魔力値が一気に上がったのがありがたい! 重要なところだからね、その辺の数値って。

 さてと次は2ndのロブスターの方を見てみよう。多分、支配進化では支配される側がログイン不可になるからこっちから見れるようになってるんだろうね。


【ステータス・2nd】


 名前:ケイ2nd(ログイン不可)

 種族:傀儡ロブスター

 所属:灰の群集

 

 レベル 1

 進化階位:未成体・傀儡種

 属性:なし

 特性:打撃、堅牢、傀儡


 HP 881/3750

 魔力値 32/32

 行動値 39/39


 攻撃 99

 防御 92

 俊敏 66

 知識 40

 器用 40

 魔力 21


 ほうほう。ロブスターはしっかりとログイン不可との記載ありか。まぁそれが支配進化の特徴だもんね。これは承知の上なので問題ない。実際に戦ってみて両方のスキルを制約なしで使えるのはかなり便利だったしね。

 ただ同じスキルが重複して存在していたので、熟練度絡みがどうなっているのかが少し気になるところ。この辺は試してみるしかないか。


 ステータスの傾向としてはコケの方と変わらずに増えてるっぽいね。まぁLv5分は無駄になったけどそれでも結構攻撃も防御もあるし問題なさそうかな? 未成体からのレベルアップでのステータス上昇量も増えるだろうしね。


 さてと1番気になっているステータス・参照値とやらを見てみようじゃないか。


【ステータス・参照値】


 HP 881/3750

 群体数 329/4000

 魔力値 106/106

 行動値 35/50


 攻撃 99

 防御 92

 俊敏 66

 知識 92

 器用 92

 魔力 128


 うおっ!? 思った以上にいいとこ取りのステータスになっている!? 1番低いステータスで俊敏が66で後は90超えか。流石2枠を常時使用して、進化条件が厳しいだけはあるね。支配進化だとロブスターの魔力値や行動値は全くの無意味か。

 これはHPと群体数が両方あるけど、確か進化時にコケを優先とかになってたね。うん、説明欄にコケが死ねば死亡で、ロブスターが死ねば5割弱体化ってなってる。……5割の弱体化は相当キツイな。

 ロブスターの復活条件は、死亡から10分以上経過した後に、再ログインをするかコケのリスポーンの2択になっている。復活させるまで最低10分間はコケが弱体化したままみたいだし、こりゃかなり厳しいね。戦う時はどっちも死なないようにしろって事なんだろう。



「おい、全員集合しろ!」

「お、終わったか!?」

「あぁ、もう間もなくゴールらしい」

「やったー! これで勝ちだね!」

「あぁ、間違いなくな。根下ろしをする前に往路の実を貰ってないやつはエニシまで行って貰ってこい!」


 これで後は最後の演出を見るだけか。ここの帰還の実は貰ってるから、俺らのPTは森林エリアの群集拠点種のエニシに往路の実を貰いに行こうかな。


「よし、貰いに行くか!」

「「「「おー!」」」」


 という事で、帰還の実を使って一旦移動! 俺達のPT以外は既に持っていたらしく、移動は俺らだけだけど。



 ◇ ◇ ◇



<『名も無き森林・灰の群集エリア1西部』から『始まりの森林・灰の群集エリア1』に移動しました>


 そして群集拠点種のエニシの前に到着した。まぁ最初にここに来た時と同様で大混雑である。……意外と今回はアルが目立ってないね?


「おい、もうすぐ終わるらしいぞ!」

「……演出見に行く?」

「おっしゃー! 今回こそスクショ撮ってやる!」

「ようやく終了タイミングに遭遇出来たしな! 行くぜ!」

「クジラを見に行くぞー! あれは凄かった!」

「あの水量ってなんだったんだろう?」

「あー!? ジャック達どうなった!?」

「灰の群集って凄いねー」


 何やら騒々しいね。クジラに水量って事は、俺らの戦闘は中継されてた……? あ、少し離れたとこの不動種の人が中継やってるな。リアルタイム映像だから、中継に映ってるクジラはシアンさんだな。ふむふむ、見た感じだと俺がやった水流の操作での移動のハーレさんのクラゲ無しバージョンか。


「なんだ? 情報共有板を見てないのか? あれはーー」

「ストーップ! 流石にそれは口外禁止!」

「あ、すまん。後で教えるわ」

「お願いね。って事で、そこで盗み聞きしてる赤の群集の人は諦めてね〜。わざわざ擬態までして情報泥棒狙いかな?」

「何!? 擬態で盗み聞きだと!?」

「ちっ、バレたか!」

「盗み聞きは追い払え!」


「……堂々と仲良くしてれば普通に中継も一緒に見れるのに、わざわざ遠くから来て何やってんだか」

「どうせ赤の群集で好き勝手やってた奴の1人でしょ。立場悪くなったらしいけど、やってる事が見苦しい」

「……だよなぁ。他人が負けた事には煩かったらしいのに、自分らは情報泥棒かよ。人から盗んだ情報で強くなって楽しいもんか?」

「知らね。荒らす連中の考えなんか理解したくもねぇよ」

「そりゃ違いない」


 赤の群集の人が隣接ではない灰の群集の初期エリアまで来て情報盗みをしてたのか。でも普通にしてれば占拠エリア以外では問答無用で追い払うなんて光景は見ないんだけどね……。

 普通に中継を見ていたらしき青の群集の人から辛辣な言葉も聞こえてきたし、青の群集からも良い風には見られてないらしい。もしかして騒動起こしてた連中の立場が悪化した? ま、赤の群集は今は別にいいか。


 混雑しているので話しかけての取得は厳しそうだな。マップ情報からアイテム取得しようっと。お、あったあった。


<『往路の実:群集支援種ミヤビ・名も無き森林・灰の群集エリア1西部(限定)』を獲得しました>


 そういや今回の競争クエストの群集支援種の名前知らなかったね。ミヤビって名前なのか。詳細は名前と行き先が変わるだけだし別に見なくてもいいか。気を付けなければいけないのは、群集支援種が根下ろし中でなければ使えないって事くらいだし。


「まだ使えないね!?」

「あそこの中継を見る限りだと、まだ移動中みたいだし仕方ないんじゃないか?」

「あ、止まったかな?」

「根を下ろし始めたね。そろそろ使えるんじゃない?」

「ベスタから連絡だ。『往路の実が使えるようになったから戻ってこい』だと」

「みんな、戻るぞー!」

「「「「おー!」」」」


 転移が可能になったし、最後の競争クエストも残すところはクリアのみ! 群集支援種まで戻って特殊演出を見て、今日は終了だ!




【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:水陸コケ → 支配ゴケ

 所属:灰の群集


 レベル 20(上限) → 1

 進化階位:成長体・複合適応種 → 未成体・支配種

 属性:水、土 → 水、土

 特性:複合適応 → 複合適応、支配


 群体数 150/3700 → 150/4000

 魔力値 86/86 → 106/106

 行動値 44/45 → 50/50


 攻撃 45 → 50

 防御 53 → 68

 俊敏 44 → 54

 知識 72 → 92

 器用 72 → 92

 魔力 98 → 128

 


 名前:ケイ2nd(ログイン不可)

 種族:殴りロブスター → 傀儡ロブスター

 所属:灰の群集

 

 レベル 15 → 1

 進化階位:成長体・殴打種 → 未成体・傀儡種

 属性:なし → なし

 特性:打撃、堅牢 → 打撃、堅牢、傀儡


 HP 3500/3500 → 3750/3750

 魔力値 24/24 → 32/32

 行動値 35/35 → 39/39


 攻撃 69 → 99

 防御 67 → 92

 俊敏 51 → 66

 知識 32 → 40

 器用 32 → 40

 魔力 17 → 21

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