第204話 種族による違い


 とりあえずミズキの森林まで行く為にエンの所まで移動していく事になった。不動桜の残滓を倒しに行っても良いんだけど、移動するだけなら転移の方が楽だしな。みんなでぞろぞろ歩きながら進んでいく。

 ヨッシさんのウニだけは流石に陸地での移動が大変だと思っていたら、Lvの上がった針伸縮では伸縮させる針を選べるようになったという事らしい。数本長く伸ばした針というか棘を動かして上手く歩いていた。そもそも針伸縮は上限値使用型のスキルだったそうだ。


 さてと折角だし、気になっていた事を確認してみよう。


「1つソラさんに質問」

「ん? ケイさん、なんだい?」

「固有スキルの『鷹の目』って、敵の位置は矢印が出て表示されるのか?」

「あれ? 僕、その仕様をケイさんに説明したっけ?」

「いやしてもらってないよ。俺にも似たようなスキルがあるだけだ」

「へぇ、そうなんだ? 結構、進化ポイント数が必要だっただろう?」

「……ん? ポイント数?」


 俺の獲物察知は初期スキルだから進化ポイントなんて全然使ってないけど……。なんか微妙に話が噛み合ってない? 


「あれ? 僕、何か変なことを言ったかい?」

「変なことっていうか、『鷹の目』って初期スキルじゃないのか?」

「いやいや、初期スキルじゃないよ。初期から取れるようにはなってたけど、全部15ポイントずつ必要なスキルだよ」

「え、マジで? ロブスターだと似たような『獲物察知』ってスキルが初期スキルなんだけど」

「ケイさん、ちょい待った。『獲物察知』が初期スキルだと? 俺はドラゴンになって『獲物察知』を取得可能になったけど、ポイント20ずつ必要だったぞ?」

「はい!?」


 ドラゴンでは獲物察知が各種進化ポイントが20必要!? いや、未成体まで行ってて無駄遣いしてなければそれほど負担のあるポイント数ではないけど、それでもそんなに必要なのか!? ……これは予想外の状況になってきた。


「……もしかして種族によって取得条件が違うのかな? 私は取得一覧に無いし、ハーレとヨッシはどんな感じ?」

「……ウニにはないかな。ハチは確認してみないと分からないけど」

「私もないね! 代わりにリスと同じで『危機察知』ならあったよー! でもリスでは初期スキルだったような?」

「俺のトカゲも『危機察知』は初期スキルだったっけ……。こりゃ、サヤさんの言うように種族によって条件が違いそうだな」


 そうやって話しているうちにエンの元へと辿り着いた。ふむ、随分と思ってたのとは違う方向に話が進んでいってしまってるね。


「こういう時は聞くのが一番早いよ! ちょっと聞き込みに行ってくる! 『傘展開』『ウィンドクリエイト』『風の操作』!」

「ちょっと、ハーレ!? サヤ、お願い!」

「こうなるとハーレはいつも突っ走るよね」


 そしてそれを追いかけるようにウニのヨッシさんをサヤが持ち上げてハーレさんを追いかけていく。流石にあのウニの移動方法ではまだ素早くは移動出来ないようである。


「こっちはこっちで調べておくか?」

「……そうだな。鷹の目は種族固有で特例だと思ってたけど、こうなってくると話が違ってくる」

「僕もそう思うね。これは確認しておくべきだ」



 コケ    : ちょっと質問!

 ヒョウ   : も、もう二度と喧嘩しないから、勘弁してー!?

 ライオン  : 私もだ……。もう許してくれ……。

 オオカミ  : ふん、ようやくか。これから森林エリアで青の群集と再度決着をつけるぞ。

 ヒョウ   : へーい。

 ライオン  : ……仕方あるまい。

 オオカミ  : ところでコケの人、どうかしたか?


 まだやってたんだ。……まぁそこはスルーしておこう。


 コケ    : ちょっとドラゴンの人と話しをしてて、気になった事があってね。

 ドラゴン  : おう。一律同じかと思って確認してなかった事があってな。

 オオカミ  : ほう? どういう内容だ?

 草花    : それは気になる話題っぽい!

 コケ    : では本題に『獲物察知』のスキルを持ってる人、取得条件を教えてくれない?

 ヒョウ   : や、やっと解放された……。え、未成体から各種ポイント20だよな?

 ライオン  : ……うむ、その筈だ。

 ヘビ    : え? 俺は初期スキルだったぞ?

 リス    : そもそもリスにはそんなスキルは無かった。『危機察知』ならあったけど。

 ネズミ   : 私は初期スキルだったよ?

 サメ    : ……バラつきまくってんな? 俺は未成体から出た。各種ポイント20。

 草花    : 草花にはそんなものはない!

 木     : 木にもないな。

 カブトムシ : ……特に無かったような気がする。

 小鳥    : 俺も無かったよ! でも『危機察知』なら初期スキルであった!


 どうやらざっと聞いてみた感じでもバラバラであるようだ。……いや、そうでもないか?


 オオカミ  : ……俺も未成体から各種20からだ。なるほど、そういう傾向か。

 ドラゴン  : これは肉食系の動物が取得可能な感じか?

 オオカミ  : おそらくな。食物連鎖で上の方ならポイント数が増えて未成体からという所か。

 ヘビ    : あ、確かに!

 ウサギ   : 『危機察知』はあるけど、こっちはもしかして草食系の動物用?

 リス    : あ、そうかもしれん!

 ヘビ2   : 『獲物察知』は食う事も食われる事もある種族の初期スキル?

 木     : 植物系にはその系統はなんかないのか!?

 木2    : 『樹液分泌』がその系統じゃね? 探すんじゃなくて呼び寄せる方向にはなるけど。

 木     : はっ!? そういえばそうか!

 草花    : そういえば草花にも『蜜分泌』ってのがあったっけ。

 オオカミ  : 食物連鎖の種族の分類による特有のスキルか。……まぁ、攻撃力の非常に高い最上位には標準装備でないのは仕方ないな。


 クマ    : 確かにそうだな。序盤にあれば便利だが、クマやオオカミに初めからあれば相性が良過ぎるか。……使いたければ持ってるやつとPTを組めば良いだけの話。


 ドラゴン  : まぁ使い方次第だろ。『危機察知』もあれはあれで便利だし。


 確かに初めからあれば非常に便利だろうけど、便利だからこそこうやって種族毎に割り振られているって感じかな。クマの人の言うようにオンラインゲームなんだからその役割が欲しければPTを組めば良い話で、何も全てを1人で完結させる必要もないだろう。


 それにしてもなんか言い忘れてる事があるような気がしてるんだけど、なんだっけな……? えーと、昨日は進化を進めて支配進化って新しい進化情報は出たけどこれはまだ公開は早い。その後の強化された残滓のボスに会ったのはちょっと前に報告済み。その後に競争クエストで青の群集の襲撃を受けて、海流の操作と岩の操作で撃退して、その際に風の操作を……って、忘れてるのこれだ!?


 コケ    : あー、言い忘れていた情報がありました……。

 オオカミ  : ん? まだ他にもあるのか?

 草花    : 今度は何だー!? 言い忘れは気にしなくてもいいよ! ど忘れは誰にでもある!

 コケ    : そう言ってもらえると助かる。えっと、風の操作についてなんだけど。

 ドラゴン  : あれ? 風の操作の称号での取得情報なら、昨日の夜に木の人とクジラの人の連名で公開なかったっけ?


 オオカミ  : あぁ、あったな。今日、海エリアで人を集めて本格的に検証するって話だな。

 コケ    : あれ、既に公開済み!? その情報公開あったの何時頃?

 ヘビ2   : 日付変わってからじゃなかったっけ?

 ドラゴン  : そうそう。それで時間的に検証は微妙って事で今日になったんだよな。今頃やってる最中じゃねぇか?


 草花    : 後は共生進化状態だと、両方のキャラで同じ称号を得るとか言ってたね。

 木     : 言ってたなー。共生進化も少し面倒にはなるけど色々利点がありそうだ。


 どうやらアルとシアンさんの方で昨日の夜のうちに情報公開してくれていたようである。日付が変わってからだと俺はもうログアウトした後だから、知らなくて当然だね。うん、伝え忘れはアルが結構フォローしてくれてるみたいでありがたい話だ。


 オオカミ  : コケの人、その辺の話は聞いてなかったのか?

 コケ    : 休日以外は日付変わる前にはログアウトしてるからな……。

 ドラゴン  : そういやコケの人は深夜帯にはいないもんな。って事は、コケの人がログアウトした後に木の人が報告してくれたってとこか。


 カメ    : こういうタイミングのズレがたまにあるから、早めにまとめ機能が欲しいとこだね。

 オオカミ  : 確かにな。まだ検討段階らしいが、個々のプレイヤーが自由に編集できるタイプのものの予定だと聞いたぞ。


 コケ    : おー、そうなのか。それなら結構便利そうかも。

 草花    : 誰でも使えるなら、デマ情報だけは気を付けないとねー!

 ドラゴン  : まぁその辺は対応してくれるだろ。


 その辺は上手く対応してくれるのに期待だね。それが実装されれば複合進化……特に俺は支配進化についての公表も可能になるし。とりあえず種族によって索敵系のスキルの取得条件が異なる事とその傾向は分かった。ハーレさん達も直接聞きに行ってるけど、おそらく結果は同じだろう。


「ただいまー! 良いもの貰ってきたよー!」

「ハーレは自由過ぎるかな!?」

「まぁこれがハーレだからね。ケイさん、色々聞いてきたよ」


 戻ってきたハーレさん達の情報と俺達の方で集めた情報を照らし合わせて見たけども、ほぼ傾向は同じようであった。うん、これでとりあえず『獲物察知』とか『危機察知』の取得仕様は大体わかった。


「はい、これ。みんなにお土産!」

「おっ、焼き魚のいい匂い?」

「天然の火で川魚を焼いたらアイテム加工になったんだってさ! なんと固定値回復から、割合回復にパワーアップしたそうです!」

「お、そりゃいいね」


 なるほど、天然の火で焼けばアイテムの性質が変わるんだな。これは果物以外の回復アイテムも増えてくるかもしれないね。折角味覚もあるんだし、その辺は少し楽しみである。


「でも、焼く為の網とかの道具が何も無かったから木のプレイヤーが根で突き刺して、火に包まれながら焼いてたらしいよ?」

「え、枝とかで串とか作れないのか?」

「作れるには作れるらしいけど、まだまだ作りにくいんだってさ!」

「ダメージがないから問題ないみたいだけど、木の人が火の中にいるんだって。でも焼き魚は少し塩気が足りないけど美味しかったかな」

「簡単なものしか無理らしいけど、食べれるのに大満足! 丸焼きにしたら食べれないかな……?」


 そしてそんな物騒な事を呟きながら、俺に向かって徐々に近付いてくる。……ヨッシさんまで一緒に狙っているような気がするのは気のせいか? いや、今のヨッシさんはウニだしな……。


「その発言をしながらこっちに来るな!?」

「ハーレ!? なんで私まで!?」

「オマール海老とウニ、一緒に食べてみたい!」

「知るか! っていうか仲間を食べようとするな!」

「これも実験! プレイヤーを食べたら味がするのかどうか確認だよ!」

「ハーレ、ストップ! これ以上は怒るよ?」

「うっ、ヨッシに怒られる!?」

「ハーレ、食べたいのなら一般生物を捕りに行くのはどうかな?」

「おっそうだね! ケイさん、それなら問題ないよね!?」

「……まぁそれならな」

「よーし! 焼けそうな物を探すぞー! ……クマ肉って美味しいのかな?」

「ハーレ!?」

「冗談だよー! じゅるり……」


 そして標的はサヤにも移っていた。さっき情報共有板で食物連鎖の話が出てたけど、こうして見てると一番の驚異って人間なんだろうな。……怒られるから我慢しただけで、我慢出来ているのかが少し怪しい。……また狙ってくれば最終手段のゲーム取り上げを考えないといけないか。


 それにしても塩か。海水に水の操作を使って、塩だけ分離とか出来ないか……? 水の操作のLvも上がってきてるし、ダメ元で試してみようかな。それが駄目なら、どっかの乾燥地帯にでも海水を撒いて塩の精製でもやってみるとか? ……使い道が思いつかなかった海水だけど、こう考えると意外と使い道もあるのかもしれない。

 塩がもし手に入れば、火の操作をなんとか手に入れてバーベキューでもやってみるのも良いかもしれないね。


「お、確かにちょっと塩気が足りないけど、これは中々いけるな」

「これは戦闘後の回復にちょうどいいかもしれないね」


 そして紅焔さんとソラさんは味見として早速食べていた。美味そうに食うもんだから、俺も結局食べてみる。確かに少し塩気は足りないけど、それでも美味かった。


「あ、そうだ! 不動桜を倒さないとミズキの森林までの転移は無理だってさ!」

「それを一番先に言おうな!?」


 という事で予定変更。まずは不動桜を倒しに行く事に決定だ。……よく考えたら、海エリアでナギの海原への誘導するのにボス討伐の手伝いがあった時点でこの可能性は考えておくべきだった。

 でも常闇の洞窟や他のエリアへの転移は倒さなくても行けたんだよな。……特殊エリアのボスだけは別判定なのかもしれないね。


 とりあえず不動桜の討伐に出発だ!

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