第202話 問題は灰の群集にも
とりあえず森林深部のエンの元へと戻ってきた。サヤ達のログインがまだなので、とりあえず情報共有板を見ていくことに決定。さっきの緊急調査クエストってのも重要っぽいしね。サッと情報共有板を見ていこう。
オオカミ : おい、オオカミ組! ライオンとヒョウは見つかったか!
オオカミ2 : まだっす!
オオカミ3 : あいつら、どこに逃げた!?
草花 : 気持ちは分かるけど、程々にしときなよ?
木 : でも、そろそろ1回徹底的にあの仲の悪さは何とかしてもらわないと……。
なんだろう、いきなりなんか変な状況に遭遇した気がする。……多分、このオオカミはベスタだよな。これは一体どういう状況だ?
ドラゴン : まだやってるのか?
草花 : 性根を叩き直すってオオカミの人がね? まぁあの2人が喧嘩してなきゃ昨日は負けなかった可能性もあるし……
コケ : 一体何事? っていうか、ドラゴン表記に変わってる!?
ドラゴン : おうよ! 進化したら表記が変わった!
カンガルー : なんか一部種族は表記が変わる事があるみたいだぞ。
コケ : イルカもクジラから変わるって言ってたっけ。
ドラゴン : 根本的に別種族認定になれば変わるんじゃないかって話だな。
ふむふむ、確かに種族的にも『劣火龍』になって明確にトカゲとは言えなくなった紅焔さんの表記はドラゴンの方が適切なのかもしれないね。
オオカミ3 : コケの人! 雷属性のライオンか雷属性のヒョウを見かけなかったか?
コケ : え、雷を纏ったライオンならちょっと前に森林深部の群集拠点種で見かけた気はするけど……?
オオカミ : 森林深部か!? あの野郎、舐めた真似しやがって! 行くぞ、オオカミ組!
オオカミ2 : 了解っす!
オオカミ3 : おう!
一体何が起きてるんだろうか? え、なんでベスタとオオカミ組がライオンの人とヒョウの人を探し回ってるの?
コケ : 誰か状況説明してくれない?
草花 : あー、確かに事情を知らないとこの状況は意味不明だよね。
ゾウ : コケの人は昨日、草原エリアの競争クエストで青の群集に負けたのは知ってるか?
コケ : あ、それは掲示板で話題になってたから知ってる。オオカミの人が地震で強制ログアウトになって形勢不利になって負けたんだって?
でもベスタはそれで悔しがっても荒れるようなタイプじゃないと思うんだけどな。……そしてそれがなぜライオンの人とヒョウの人を探し回ってる状況に繋がるのかがわからない。
ゾウ : まぁ、掲示板に出てる情報はそんなもんか。……実態が漏れてなくて良かったと言うべきかもな。
木 : ……確かに。こっちの形勢が悪くなった理由がリーダー格の強制ログアウトで混乱したからだと思ってくれてる方がありがたいか。
草花 : そうだね。まぁオオカミの人の気持ちも分かるし。
コケ : 結局どういう事なんだ?
ゾウ : あぁ、すまん。簡潔に言うとだな、負けた理由はライオンの人とヒョウの人の喧嘩だよ。
コケ : ……はい?
ドラゴン : 断片的にしか聞いてないけど、オオカミの人が強制ログアウトになった後にオオカミ組で体勢を立て直そうとしたら、自分が指揮を取るってライオンの人とヒョウの人が喧嘩を始めて収拾がつかなくなった所を狙われたんだっけ?
ゾウ : そうそう。すぐにオオカミの人が戻ってきたけど、もう手遅れでさ。オオカミの人も強制ログアウト自体は天災だから仕方ないって、その点は気にしてはなかったんだけどね。……ただ、ライオンの人とヒョウの人のお互いへの責任転嫁が酷くてね?
コケ : うわ……。
ライオン : それはヒョウのせいだ! 奴が引っ込んでおればよかったのだ!
ヒョウ : んだと!? それはてめぇだろうが!
オオカミ : ほう、迷惑かけて逃げまくった挙げ句に誰かが事情を聞く度に責任転嫁とは随分舐めてんじゃねぇか!
草花 : あーまたこの2人は……。
あ、これは流石に怒るわ。ログアウトせずに逃げまくって、俺みたいに事情を聞いたらこうやって責任転嫁の言い訳を繰り返しているわけか。……そもそも増援が必要になったのもこの2人のせいだったような。……赤の群集の問題を聞いたりもしたけど、灰の群集に問題が存在しない訳じゃないんだな。
ゾウ : 何が問題って、ライオンの人もヒョウの人も普通に戦ってくれれば相当強いってとこなんだよな。
オオカミ3 : よし、ヒョウの方は捕まえたぞ! ……で、捕まえたけど具体的にどうすんだ?
オオカミ : 確かヒョウは虫が苦手だったはずだな。常闇の洞窟の虫ゾーンに放り込め。
ヒョウ : ちょ!? それは勘弁!?
オオカミ3 : 了解。それじゃこれから連行する。
ヒョウ : えっ!? ちょっと待って!? 苦手生物フィルタがあってもそれは嫌だ!?
ライオン : ふん、自業自得だろう。……ん? なに、馬鹿な!?
オオカミ : よし、こっちも捕まえた。……こいつは水が苦手だったな。湖にでも放り込むか。
ライオン : 何!? は、離せ!?
オオカミ : 何度も止めろと言ってるのを無視して、散々喧嘩しまくって迷惑かけまくった挙げ句に負けの原因を作った奴らが何を言う。自業自得だ、覚悟しろ!
うわー、ベスタがかなり怒ってるな。敗戦の戦犯2名はそれぞれの苦手な場所に放り込まれるのか。……せめて仲良くできないにしても、連携をぶっ壊すような真似さえしなけりゃこうはならなかっただろうにね。
ゾウ : ちょっとやり過ぎな気もするけど、自業自得な面も多い気がするから別に良いか。
草花 : まぁ、そうだね。散々みんなが仲裁してたのに無視しまくってたんだから……。なまじ強い分、抑え込める人も限られてくるし。
ライオン2 : これで仲良くとまでは期待しないけど、邪魔にならない程度になってくれれば良いんだけどな。
ドラゴン : 区切りがついたみたいだし、情報提供いいか?
カツオ : おうよ。いつまでもどうしようもない逃走劇を見ててもしゃーないしな。どんな情報?
よし、これで話題が変わった。ライオンの人とヒョウの人の扱いはベスタやオオカミ組に任せておこう。
タカ : 瘴気っぽいやつで強化された残滓に関わる情報だね。
カンガルー : お、なんか前兆が他にも出たか。どんなだ?
ドラゴン : あの瘴気っぽいのは瘴気で確定。経路確定に不要な転移地点あるだろ? あそこが瘴気の発生源だ。
モグラ : え、1時間前くらいにそこら辺は行ったけど、何も異常なかったよ?
コケ : どうも突発的な発生みたいだぞ。転移した際に群集拠点種の分体の灯りが消えてたら『緊急調査クエスト』っていうクエストの発生の可能性はありだと思う。
木 : なるほど、ランダム発生のクエストって感じか。
ドラゴン : おそらくな。時々様子を見に来てくれと言ってたから、無駄足になる可能性があっても行っておいた方が良いかもしれん。
オオカミ3 : 噂をすれば何とやらか。ちょうどそれが今発生したぞ。
ヒョウ : ギャー!? なんか残滓が強化されたー!? あ、止め!? 分裂して増えるなー!?
オオカミ3 : うっわ、これは苦手な人にはきっついだろうな……。
どうやらタイミングがいいのか悪いのか、瘴気による残滓の強化が起こったようである。ヒョウの人の反応を見る限りでは例のカサカサと音のする虫エリアの残滓がそうなったらしい。虫にも分裂するやつがいるんだね。
それにしてもその状況でもここに書き込む余裕はあるんだな。……よし、見なかったことにしよう。
オオカミ : そういや他の群集との情報共有の件はどうだ?
ホタテ : 掲示板には書き込んでは来たけど、まだ何とも微妙なとこ。多分まだ決めかねてるんじゃないか? 青の群集は期待出来そうだけど、赤の群集は何とも怪しい感じだな。
普通にベスタが会話に戻ってきた。……ライオンの人が現状どうなってのか気にはなるけど、気にしない方が良さそうな気もする。ホタテの人は昨日の周回PTの人だろうか?
コケ : ホタテの人って、昨日癒ワカメの周回PTにいた人?
ホタテ : おう、そうだぜ! そういう事を聞くってことはあの時のメンバーか。確かあの時は……あ、あのロブスターの人か! いや、あの後報告しようにも連絡手段が無かったからさ。
コケ : あ、それはごめん。あの後、競争クエストに参戦したら思った以上の激戦で疲れちゃって、ここに顔出さないままログアウトしちゃったもんで。
ホタテ : 良いってことよ。まぁ掲示板は見ててくれたみたいだし、あの後調べて分かったのはあんなもんさ。
ドラゴン : え? 初出の残滓の異常個体の遭遇者ってコケの人だったのか!?
コケ : あれが初出だったんかい。まぁ俺のPTだったけど。
草花 : 初発見とも限らないけどね。ここに書き込まない人だって結構いるしさ。
ホタテ : そりゃそうだ。まぁ常闇の洞窟から出てきた瘴気が残滓の強化をしているってのは間違いなさそうだな。PVの件も合わせれば、瘴気絡みの共闘イベントの可能性は高くなったか。
オオカミ : そうなるとやはり他の群集との連携か。コケの人、海で青の群集と戦った感想はどうだ?
コケ : んー決して弱くはないけど荒削りって感じかな。突出して強かった人は好戦的だけど、単独行動系。ただ、向上心はかなりありそうだし、負けを糧にして強くなる可能性が高そう。今後に要注意って印象だな。
オオカミ : そっちも似たような傾向か。俺も青の群集に対しては似たような感想だ。あれは今後、一気に化ける可能性があるな。……赤の群集の方は、何か問題を抱えてるように思うが、内情が分からんから何とも言えん……。
なるほど、ベスタも俺と同じような印象か。青の群集はどうも複合進化を活用して見えない所で強化してるような気もするんだよな。青の群集は今後に要注意だね。……さて、問題は赤の群集の方だよな。一応情報は慎也から仕入れてはいるけど、どう話したものか。
サル : 赤の群集についてなら、ちょっと用事があって赤の群集エリアに行った時に愚痴混じりに聞いたぞ。どうもあのオオカミの人に負けた川魚の人がリーダー格だったらしくて、負けた後に舐められるようになったんだと。
オオカミ : ……なに? どういう事だ?
サル : なんでも負けた後から俺らとワイワイ騒ぎに来てた勝敗を割り切れるやつと、そうでない負けず嫌いなやつで対立状態になって、その間で情報の秘匿が横行してるんだと。
コケ : 俺もそれは聞いた。どうもあんまり良い状態ではないらしいぞ。……ぶっちゃけ、聞いたやつが脳筋が多いとも言ってた。
オオカミ : ゲームなんだから勝敗が決まるなんてことは分かりきってる筈だろうに、そこを根に持って内部分裂かよ。一度、平等に負けになるように叩き潰してやろうか……。
ドラゴン : オオカミの人、流石にそれはマズいだろうよ。
オオカミ : ……分かっている。言ってみただけだ。……そうなると、まとめ役が機能していないことが原因か。……秘密裏に一部の赤の群集の奴に有利になる情報を流して、勢力の安定化を図るか……?
サル : ありだとは思うけど、教えても問題ないけど重要な情報ってなると、何だ……?
コケ : 現状がどうかははっきりとは言えないけど、常闇の洞窟の正解ルートの割り出し方法は未確定っぽいのは聞いたぞ。
カンガルー : あ、あれか。……他の群集も埋まらなきゃ共闘イベントが始まらないんだし、競争クエストもあと少しだし、正解ルートの情報なら問題ないのでは?
オオカミ : ……そうだな。それでいくか。コケの人、サルの人、赤の群集に情報は流せるか?
サル : あー俺は微妙かも……。
コケ : 俺はいけるぞ。リアル側での知り合いだしな。
オオカミ : リアル側か。……まぁそういう事もあるか。
草花 : あんまり情報漏らしすぎないように気をつけてねー! 大丈夫だとは思うけど。
コケ : その辺は気をつけてるつもり。明日にでも話してみる。
オオカミ : 明日か。まぁそれくらいが無難だな。
カンガルー : 任せたよ、コケの人!
コケ : おう、任された!
さてと、これで赤の群集絡みの情報は終わりっと。気になってた草原エリアでの競争クエストの情報も手に入ったし、そろそろ良いかな……?
あ、共生進化での称号取得や支配進化についての情報は……まだ早いか。公開したいとこではあるけど、まとめ機能が実装されるまでは控えておこう。……そういや、1つ気になる点があるんだった。
コケ : あ、そういやちょっと未成体の人で知ってる人がいたら教えてほしいんだけどさ。
オオカミ : ん? 何が聞きたい?
コケ : なんか銀色に光る溜め攻撃みたいなのを何回か見たんだけど、なんか情報ある?
カンガルー : そんなのあるんだ?
草花 : ほーそれは気になるね。
オオカミ : あぁ、それか。チャージ系の無属性の高威力単発スキルのエフェクトだな。未成体から同系統のスキルからの派生での取得と、ポイントでの取得が可能になる。
草花 : ほうほう。チャージ系の高威力スキルなんだ。
オオカミ : ただし、分類上は応用スキルになり行動値の消費も大きくて、隙も大きいがな。威力は申し分ないが、使いどころが難しいスキルでもある。派生からの取得時には『力を溜めるモノ』っていう称号があるのも特徴か。
草花 : へぇー! そんな称号もあるんだね。
オオカミ : 『力を溜めるモノ』でチャージ系スキルの威力増強の『凝縮破壊Ⅰ』っていうスキルが手に入るからな。チャージ時間に応じて威力増大っていう特殊スキルだ。
カンガルー : 応用スキルに特殊スキルか! ロマン技だな!
コケ : なるほどね。だから海流の操作をぶった斬れた訳か。
ホタテ : そういえば海流の操作を切るタチウオが青の群集にいるとは聞いてたけど……。
サル : 恐ろしいな、そのタチウオ!?
ふむふむ、タチウオの人のもシャコの人のも応用スキルだった訳か。……拘束系のスキルを使うプレイヤーと一緒でなくて助かった……いやカニの人が土魔法で拘束してたから、分断するのは非常に重要だったって事なんだろう。
まぁこれで大体聞きたいことは聞けたかな? 何か伝えるのを忘れてるような気もするんだけど、何だっけな? うーむ……。お、ハーレさんからフレンドコールが来たし、時間を見てみればそこそこ時間が経っていた。とりあえずフレンドコールに出よう。……忘れてる事は思い出してからでもいいって事にしておこう。
「おーい、ケイさん! 今大丈夫ー!?」
「一区切りついたとこだから問題ないぞ」
「そっか! それなら良かった! みんなログインしたから合流しない!?」
「あ、今紅焔さんとソラさんとPT組んでるけど、一緒でも良いか?」
「お!? 紅焔さんとソラさんもいるんだ! それじゃ一緒にやろうよ!」
「やっぱりそう言うと思ってた。よし、んじゃどこ集合だ?」
「数日ぶりに、あの崖下!」
「おう、分かった」
それだけ連絡事項を終えて、フレンドコールを切る。いつもの崖下に行くのも久々な気がするね。
「ケイさん、そっちのメンバーが揃ったのか?」
「アル以外はな。紅焔さんとソラさんも一緒で良いってよ」
「お、それは嬉しいね」
「それならお言葉に甘えて一緒に行かせてもらうぜ」
そういう事になり、いつもの崖下へと移動していく。ロブスターで森を本格的に歩いていくのは初めてだけど、案外速度が出る上に結構安定して歩いていけた。うん、コケの有無に左右されない移動も重要だ。
まぁ群体化での移動にも利点はあるけど、欠点もあるからね。とりあえず、みんなと合流していこう!
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