第201話 前兆の調査
<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『常闇の洞窟』に移動しました>
海エリアへの経路確立して以来の常闇の洞窟入りである。相変わらず真っ暗だな。さてと共生進化の状態でこれを使うのは初めてだけど、どうだろう?
<行動値上限を3使用して『発光Lv3』を発動します> 行動値 45/45 → 42/42(上限値使用:3)
<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します> 行動値 42/42 → 41/41(上限値使用:4)
周りが明るくなったのは分かったけど、どういう状態になったんだ? ロブスターの背中に生えてるコケが光ってるんだから、ロブスターが光ってるように見える?
「変わった灯りになったな」
「へぇ、こういう風になるんだね」
「どう見えてるんだ? 自分じゃよく分からないんだけど」
「あー光るザリガニ? スクリーンショットでも撮ろうか?」
「その手があったか。紅焔さん、頼むわ」
「ほいよ。えーと、これって他のプレイヤーに見せるのはどうやるんだ?」
「紅焔、スクリーンショットの右下辺りに共有って項目があるはずだよ。この場合ならその中のどれでも問題ないかな」
「お、これか。えっと共有条件は、無条件、同群集、同エリア内、PT、フレンドか。ここはPTにしとくか」
<スクリーンショットが共有化されました。表示しますか?>
紅焔さんはスクリーンショットを使い慣れていないようで、ソラさんから使い方を教わっていた。っていうか共有機能ってのもあるんだな。
そうか、昨日のハーレさん達が参加していったサファリ系プレイヤー達の集まりはこの機能を利用してたんだな。ゲーム内なら外部出力みたいな制限はないって話だし、ああやって集まってそれぞれのスクリーンショットを共有していたんだろう。多分使ったのは同エリア内かな?
そういやログイン場面で承諾はする事はあったけど、俺もまだろくにスクリーンショット機能を使った事なかったっけ。
表示するように選べば、メニューが自動的に開いてさっき紅焔さんが撮ってくれたスクリーンショットが表示された。お、真っ暗な洞窟の中に浮かび上がる暖色の灯りを背負った褐色のロブスターとか不思議な光景になってるね。スクリーンショットを保存するって項目があるから、これで欲しければ貰えるって感じか。
「客観的にどう見えるかよく分かった。紅焔さん、サンキュー!」
「これくらいどうって事はねぇよ!」
「そりゃ紅焔もドラゴンに進化したての時は僕やライルやカステラに散々撮らせまくってたもんね?」
「だー!? そりゃ言わんでいい!?」
「へぇ、そんなことしてたのか」
「まだまだ小さいとはいえ、見た目だけは目標のドラゴンになったんだから、これくらいいいだろー!?」
「僕は駄目とは言ってないよ?」
「まぁ言ってないな」
「からかって遊んでるだろ、ソラ!?」
「あ、流石にバレるか!」
何とも仲の良い感じ良さそうだね。ちょっと紅焔さんがソラさんを追いかけ回しているので、それが落ち着くまで少し掛かりそうだ。その間に共生進化の状態でも色々と何が変わっているか確認しておこうかな。とりあえず増殖で光源を増やしてみるか。出来る事と出来ない事の確認は大事!
<行動値を3消費して『増殖Lv3』を発動します> 行動値 38/41(上限値使用:4)
これでロブスターの全身にコケが生えたはず。……暖色ロブスターとかになってそうな見た目な気がするけど、気にしない! この状態で移動操作制御を使ってみようか。
<行動値上限を4使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 38/41 → 37/37(上限値使用:8)
お、発動自体は問題ないね。今の登録が『土魔法Lv1』『増殖Lv3』『群体内移動Lv1』『土の操作Lv3』だったよな。それらが順番に発動している。まずは『土魔法Lv1』でハサミの先に小石を生成、そして増殖Lv3で生成した小石にコケを纏わせていく。
『群体内移動Lv1』で問題が発生した。どうもロブスターの表面のコケ以外に移動が出来なくなっているようだ。当たり前といえば当たり前だけど、共生相手からは完全に切り離す事は出来ないみたいだね。とりあえずロブスターの表面のコケの中で移動しておこう。最後の『土の操作Lv3』は問題なく使えた。
ふむふむ、共生進化状態では群体内移動は使い物にならないと考えた方がよさそうだ。
「紅焔、なんか光源が増えてるみたいだよ?」
「そうやって誤魔化そうとしたって……あ、マジだ。これ、ケイさんがやったのか?」
「おうよ。2人がじゃれてる間に実験してた」
「……なんか突っ込むと藪蛇になりそうだからスルーしとこう。で、これってどうなってんの?」
「これが俺の『移動操作制御Ⅰ』だな。コケのみで常闇の洞窟を探索してた時はこれで……」
あれ、ちょっとなんかおかしくないか? ここってエンから転移してきた場所だよな? ……なんで真っ暗なんだ? エンの作った転移地点ってエンが照らしてなかったっけ?
「……ケイさん?」
「なぁ、紅焔さん、ソラさん。ここって転移地点だよな?」
「そりゃ当然……ちょっと待て、なんでこんなに暗い!?」
「あ、確かにそうだね。前はエンが発光してて明るかったはずだよ」
今更のように、紅焔さんもソラさんも異常に気付く。……元々ここの転移地点が暗い場所だという可能性もあったから確認を取ったけど、やっぱり異常事態のようである。やっぱり何かあるかもと思ったのは正解か!
「エン、聞こえるか!? 何がどうなってる?」
『……すまん! ここは瘴気を封じ込めていた場所の1つだったらしい! それが不定期に荒れ狂っている! 今はその真っ最中だ』
「……マジか?」
『少し前までは少し溢れる程度だったが、急激に活性化してきている。こっちの転移用の分体じゃ抑え込むのが精一杯だ。くっ!』
エンに事情を聞こうとしたら、切羽詰まっている様子である。少し周囲を見てみれば例の金属の塊とやらが目に入る。聞いていた色とまるで違い、禍々しい色合いをしていてまるで瘴気に侵されているようだ。暫くすると脈打つように瘴気が蠢き、そして何処かへと飛んで行った。……あまり速度は早くないのか、まだ視認出来る範囲だけど何がどうなった?
『すまん! 俺の本体には問題はないが、俺だけではこの異常事態に対処しきれん! 可能であればお前たちで今の瘴気が何処に行ったか確認を頼めないか!?』
<緊急調査クエスト『瘴気の行方』を受注しますか?>
おっと、まさかのクエスト発生。……これは個別に受けるクエストか。ここと同じような転移地点にやってくれば発生する可能性のあるクエストなのかもしれないね。
「……どうする?」
「これは受けるしかないだろ」
「僕も受けるのに賛成だね」
「よし、それじゃそういう事で!」
満場一致でクエストを受諾。見失わないうちにさっさと追いかけないと! 明らかに徐々に瘴気の移動速度が上がっている。
「紅焔!」
「分かってる! 『大型化』!」
「おぉ!? デカくなった!?」
大型化により、紅焔さんが少し大きくなった。体長1メートルくらいだろうか。ドラゴンとしてはまだまだ小型だろうがそれでも多少大きくなれば迫力も増すというものだ。
「飛ばすぞ!」
「うわっ!?」
「索敵は僕がやるよ。『鷹の目』!」
俺は大型化した紅焔さんの脚に掴まれていた。そして、常闇の洞窟内をドラゴンとタカが飛んでいく。こりゃ速いな。俺は俺で移動操作制御で作った光源を全力で加速させ、紅焔さんの前方に灯りを用意する。ロブスターと共生進化中には移動には使えないが、こういう光源としての利用には問題なさそうだ。
そういえば、ソラさんの鷹の目って俺の獲物察知に仕様が似ている……? 後で詳細を聞いてみようかな。
「紅焔、ストップ!」
「……光源グモの残滓だな」
「……いや、なんかおかしいぞ?」
追いかけていた瘴気の塊が残滓の光源グモの前で止まり、そして光源グモの中へと瘴気が入り込んでいった。その結果、瘴気を身に纏った光源グモの残滓が誕生していた。残滓の異常個体の発生原因がこれって事か!? とにかく識別で情報確認だ。
<行動値を3消費して『識別Lv3』を発動します> 行動値 34/37(上限値使用:8)
『光源グモ』 Lv15
種族:黒の暴走種の残滓(?)
進化階位:成長体・暴走種
属性:光
特性:捕縛
<黒の暴走種の残滓の異常個体を確認しました。群集の長へと報告します>
ちっ、やっぱり残滓の異常個体で間違いなさそうだ。これはやっぱり共闘イベントの事前兆候だろう。共闘イベントは常闇の洞窟を舞台とした群集クエストの完了と競争クエストが全部終わってからという話だし、ここが何らかの形で関わってくる可能性は充分ある。
つまり常闇の洞窟で異常があるからこそ、そこのクエストが終わらないと次に進まないという事なのだろう。かなり終盤には近づいて来ているはずだから、次に向けての準備が始まっているんだろうね。
「こりゃ重要情報を見つけたっぽいな。流石ケイさんだ」
「やっぱりケイさんはビックリ箱だよね」
「これって俺が居たからなのか!?」
ここに来たいと言ったのは確かに俺だけど、俺じゃなきゃ発生させられないって事は無いはずだけどな!? ……それは後でいいか。今はこいつを倒すべきだ!
「昨日も同じような強化された残滓は見たけど、強くはなっててもオリジナル程じゃないはずだ」
「なるほど。って事は、未成体の俺とソラで負ける事はないな」
「だろうね。一気に片付けようか、紅焔!」
「おうよ! 『ファイアクリエイト』『火の操作』!」
「……クモに直接攻撃は嫌だね。『魔力集中』『ウィンドクリエイト』『操作属性付与』『羽飛ばし』!」
「『ファイアボム』!」
「『ウィンドボム』!」
「わーお……」
流石は未成体。紅焔さんは火の操作で火のブレスを作り出しクモをコンガリと焼いて、ソラさんは操作属性付与で風属性を付与した羽根を飛ばしてクモを盛大に切り裂いた。そしてトドメとばかりに火と風の爆発がクモを襲う。
うん、これは確実にオーバーキルだね。多分、今のは複合魔法になってただろうし。そしてクモはポリゴンとなって砕け散っていった。その際に瘴気も共に消えたようである。
<規定条件を達成しましたので、緊急調査クエスト『瘴気の行方』が進行します>
<エンの元へ報告に戻りましょう>
とりあえずオーバーキルとはいえ、倒した事でクエストが進行した。まぁ瘴気の行方がどうなったかは分かったからな。
「よし、戻るか」
「って、また掴まれるのか!?」
「ケイさん、我慢してね。こっちの方が早いし」
確かにそうだけど……まぁいいか。サヤとベスタの2人によるコケ式滑水移動の無茶な移動に比べればなんてことは無い。……あれを基準にすれば大体大丈夫な気もする。
そして、転移地点まで戻ってきた。……先程までのエンの切羽詰った様子はなりを潜め、通常通りの発光状態に戻っていた。どうもこの様子だとあの状態は突発的なもので継続しているものではないらしい。
『戻ってきたか。成果はどうだった?』
「残滓の中に瘴気が入り込んで、強化されたのを確認した後に倒してきた」
『……なるほど。最近、残滓の異常個体の報告が増えてきていたが、原因はこれか。……こちらの異変が始まった頃と時期も重なるか』
「なぁ、一体何が起こってるんだ?」
『……すまん。まだ判明していなくて、それは調査中としか言えない。……だが、この地には何らかの意思を感じる。……何かがいるぞ』
「……何かがいるか」
『散発的に似たような事態が起こる可能性はある。俺も抑え込んではみるが、時折様子を見に来てくれ』
<緊急調査クエスト『瘴気の行方』が完了しました>
<経験値を獲得しました>
<ケイはLv上限の為、過剰経験値は『群集拠点種:エン』に譲渡されます>
<ケイ2ndがLv10に上がりました。各種ステータスが上昇します>
<Lvアップにより、増強進化ポイント1、融合進化ポイント1、生存進化ポイント1獲得しました>
お、経験値ゲット。そして過剰経験値の譲渡先はエンへと変わっている。これはやっぱり最後に立ち寄った群集拠点種になるみたいだね。
それにしても、その何かというのがあのPVに出てきた声の主……? うーん、そうだとは思うけど事前兆候を探りつつ、共闘イベントの開催を待つしかないかな。だけど、共闘イベントの倒すべき敵は何となく見えてきた。多分だけど強化された残滓が主なザコ敵になって、何かがいると言われているそれがボスなんじゃないかな。
緊急調査クエストもここに転移してきた際に度々起こるクエストなのかもしれない。……この辺は何度かやって来ないと分からないけど。
「とりあえず収穫はありだな。ケイさん、常闇の洞窟に他にも用事あるか?」
「いや別にないぞ?」
「なら一旦戻って、情報共有板で報告しとかないか?」
「それもそうだな。ちょっと気になってる事も色々あるから、その辺も聞いておきたいし」
「あ、そういや昨日は情報共有板では見かけなかったっけ。ケイさんは昨日何してたんだ?」
「海の競争クエストに参加してた」
「あ、そういやそうだったな。それなら見れてなくても仕方ないか」
「ん? もしかして海の癒ワカメの異常個体と戦ってた2ndPTってケイさん達だったりするのかな?」
「あー、うん。多分それは俺達だと思う」
まぁ何はともあれ、新情報は手に入れた。……ちょっと赤の群集の現状とか、ベスタが不本意に負けた事とかその辺が気になってるから確認しておかないとね。
「エン、群集拠点に戻りたいけど大丈夫か?」
『あぁ、なんとか大丈夫だ』
「それなら頼んだ」
『任せておけ』
<『常闇の洞窟』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>
そうしてエンに群集拠点まで送ってもらい、森林深部へと戻ってきた。……光ったままだとコケの時以上に目立っているっぽいので、全部解除だ! うーん、色々と使い勝手が変わってるから、他にも色々試していかないとね。
紅焔さんも大型化したままでは森の中は動きにくいのか、元の大きさに戻っていた。大きければ良いってものでもなさそうだ。
それにしても今日はサヤ達はログインが遅いな。大雨の影響で帰るのが遅れてたりするのかな。
【ステータス】
名前:ケイ2nd
種族:殴りロブスター
所属:灰の群集
レベル 9 → 10
進化階位:成長体・殴打種
属性:なし
特性:打撃、堅牢
HP 2600/2600 → 2600/2750
魔力値 14/18 → 18/19
行動値 23/27 → 27/28
攻撃 45 → 49
防御 43 → 47
俊敏 33 → 36
知識 20 → 22
器用 20 → 22
魔力 11 → 12
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