第158話 再集合までの時間潰し


 昼飯のピザを食べ終え、少しまったりと休憩して1時過ぎにログインしていく。いったんからの連絡事項は共闘イベントの予告のみで変化はなかった。


 ログイン場面を通過して、再びゲームの中へと戻ってくる。ログイン状態を確認してみると、みんなはまだ戻ってきていないようだ。

 そして1回ログアウトしたので上限値使用のスキルが全て切れていた。PTも解散状態である。……でも夜目は切れていて良かったかもしれない。切った状態での目の前に広がるこの景色も良いものだ。


 暗闇を青白く発光するエンの根に繋がっている木とその光に照らされる洞窟と地下湖は、群集拠点種の周辺の淡く光る木々とも違った神秘的な雰囲気を醸し出している。うーん、ライトアップされた洞窟とか普段は見る事もないからこういうのもいいな。……ここまでは安全地点以外は何も見えない真っ暗な洞窟だったし。


 周辺を見回してみれば、ログアウトした時と同じで結構な数の木のプレイヤーが植わっている。なんだかんだで他のプレイヤーのリスポーン地点に設定されている移動種の人が結構いるようだ。地下の洞窟に乱立する色んな種類の木っていうのも、また不思議な光景だね。


「これも良い景色だね!」

「そうだな」


 そしていつの間にか横にやってきていたハーレさんと、のんびりと景色を堪能していた。まぁ俺がアルにあるハーレさんの巣のイス型石のコケにいるだけなんだけど……。アルの位置的に植わっている木の集団の湖側の端っこの方で、移動操作制御も自動解除になって、他の俺の群体であるここのコケに自動移動していた。

 まぁお陰で結構良い位置から地下湖を見られているので良いだろう。


「ここも泳いでも大丈夫かな!?」

「大丈夫だろうけど、結構人が居るから目立つぞ?」

「そういうのは私は気にしない!」

「それならお好きにどうぞ」


 本人が別に目立っても良いって言うなら、問題ないだろ。別に悪い事をしようってわけでもないし。


<群集クエスト《群集拠点種の強化・灰の群集》・群集拠点種:エン(始まりの森林深部・灰の群集エリア2)の強化が規定値に達しました>

<転移地点が生成されます>

<群集クエスト《群集拠点種の強化・灰の群集》・群集拠点種:エン(始まりの森林深部・灰の群集エリア2)転移地点 4/10>


 お、エンの強化が進んだか。4/10って事はクエストが進むのが結構早くなってるな。あ、右側の通路の方に根が伸びていっている。


「お!? 新しい転移地点が出来るのかな!? 根にしがみついて来ようかな!?」

「こら、逸れる気か!?」

「あ、それもそっか!」


 海水の地下湖へと続く道と違う側に根が伸びていったって事は、あっち側の奥に更に新しい転移地点が設置されるんだな。これはログインする人が増えてきて、一気に経験値が増えていってるんだろうね。さすが日曜日ってところか。


 って、止めなきゃハーレさんはアルみたいにしがみついて便乗して行きそうだ。……あれって運営から怒られたりしないよな……?

 ちょっと今のうちにクエストの進捗状態を確認しておくか。クエスト情報の詳細表示っと。


群集クエスト《群集拠点種の強化・灰の群集》


【群集拠点種:エニシ(始まりの森林・灰の群集エリア1)】


 経路確立   0/4

 経験値強化  29%

 進化ポイント 700/2000

 転移地点   2/10


【群集拠点種:エン(始まりの森林深部・灰の群集エリア2)】


 経路確立   0/4

 経験値強化  40%

 進化ポイント 979/2000

 転移地点   4/10


【群集拠点種:ユカリ(始まりの草原・灰の群集エリア3)】


 経路確立   0/4

 経験値強化  25%

 進化ポイント 435/2000

 転移地点   2/10


【群集拠点種:キズナ(始まりの荒野・灰の群集エリア4)】


 経路確立   0/4

 経験値強化  17%

 進化ポイント 567/2000

 転移地点   1/10


【群集拠点種:ヨシミ(始まりの海原・灰の群集エリア5)】


 経路確立   0/4

 経験値強化  32%

 進化ポイント 789/2000

 転移地点   3/10


 ※進化ポイントは譲渡された増強進化ポイント、融合進化ポイント、生存進化ポイントの合算になります。


 あ、思った通りに全体的に進んでる。競争クエストが終わってる分だけ森林深部エリアが特に進んでるって感じではあるね。……経路確立はどこのエリアもまだか。でもこの感じなら今日中に1経路くらいは確立できそうだ。


「ん? もうハーレさんもケイも戻ってたか。思ったより早いな?」


 そうしている内にアルもログインしてきた。アルの方が先にログインしてると思ってたけど、思ったよりは遅かったな。とは言っても集合時間よりは早いから特に問題ないけどね。多分、リアルの日常的な用事や、掲示板を見たりとかしていたんだろう。俺だってそうだったし。


「雨だったし、両親が予定外の外出中だったから宅配ピザで簡単に済ませたんだよ」

「……梅雨の雨の中は出かけたくはないか。俺も面倒だったから買い置きのカップラーメンで済ませたしな」

「ピザもカップラーメンも好きだから、私は問題ないよ!」

「……なんか悲しくなってくるから飯の話は良いとして。ふむ、思った以上に夜目が無くても明るいもんだな?」

「だよね! ヨッシが目立った理由もよく分かるよ!」

「あー、掲示板でヨッシさんが話題に出てたな。確かにこの光景と色合い的にピッタリの神秘的な光景か」


 やっぱりアルも掲示板を確認してきてたか。確かに今のこの場所の雰囲気にあの青白い体色のハチは、ピッタリの雰囲気である。氷属性の影響でキラキラと羽根から氷の粒子が散っているのもそれに拍車をかけているのだろう。


「そういや、なんかログアウト前とちょっと違うか?」

「それなら、あっちの方にエンの根が伸びてたよー!」

「あー違うのはあそこか。って事はクエストが進んだのか?」

「ついさっきな。アル、クエスト詳細見てみれば良いぞ? ハーレさんも」

「お、進展でもあるのかな!? って予想以上に進んでる!?」

「……なるほど、日曜効果と森林深部の競争クエストが終わったのが理由か。……うまく他のエリアまで辿り着いて、競争クエストが終わってなかったら参加してくるのもありか?」

「あ、それも良いかもね! 折角未成体に進化したし、ちょっと暴れたいかも!」

「その辺はとりあえず辿り着いてからな。アルもハーレさんもまだ気が早いぞ」

「ま、それもそうか。さて、俺はサヤとヨッシさんが戻ってくるまでにチュートリアルクエストでも見ておくか」

「私はサヤとヨッシが来るまで湖で泳いでくる!」

「ほいよ、いってらっしゃい」


 とりあえずサヤとヨッシさんが来るまでは自由行動って事で良いだろう。サヤとヨッシさんが来ればすぐに分かるようにPTだけは組んでおいた。とりあえず洞窟内の行動用のスキルを発動しておくかな。


<行動値上限を4使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します>  行動値 45/45 → 41/41(上限値使用:4)

<行動値上限を3使用して『発光Lv3』を発動します>  行動値 41/41 → 38/38(上限値使用:7)

<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します>  行動値 38/38 → 37/37(上限値使用:8)


 発光と夜目は上限値使用だから、移動操作制御には登録出来ないので個別発動になるけどこれでよし。常時必要って訳でもないから問題ないだろう。何をして時間を潰していようかな……?

 そういや結構アイテム数は増えてきたけど、進化の軌跡はスタック可能なタイプのアイテムで良かった。そうじゃなけりゃ無意味に圧迫する事になるし……。『採集ビギナー』とか取れないかな? インベントリは今は半分くらい埋まってるし、拡張を狙っていきたいところ。確か条件は10種類以上で合計300個以上だったっけ? 

 種類は『淡水漁ビギナー』と重複可能なら丁度今が多分10種類。流石に進化の軌跡とかはカウントされないよな。多分だけど採集の数が足りないんだろう。……よし、地下湖の水でも採ってくるか! という事でハーレさんの泳いでいる地下湖へレッツゴー! 


「あれ!? ケイさんも湖に来たんだ!?」

「いや、『採集ビギナー』でも取ろうかと思ってな?」

「あ、それ良いね! よし、それなら私も『淡水漁ビギナー』を目指すぞー!」

「なんか真っ白な魚やら海老やらもいるみたいだしな」


 『淡水漁ビギナー』には種類が足りるか微妙なラインだけど、数を稼ぐには丁度良いだろう。水分吸収してその後は俺も地下湖の魚とかも狙ってみるか。……1種類20個までが1日の取得限度だからな。正直まだ使いどころがイマイチ分かっていないアイテムも多い。虫の死体とかどう使えと……あれ? もしかして……。


「それじゃ頑張るぞー!」

「おう。っていうかちょっと実験するからハーレさん、待機!」

「え、何やるの!?」

「魚の誘き寄せ。うまく行くかはやってみてのお楽しみって事で」


<インベントリから『虫の死体』を取り出します>


「わ!? あ、これって私が突っ込んだハエの集団を紅焔さんが焼いた時のやつ?」

「そうそう。使い道が分からなかったけど、もしかしたら……」

「あ、魚が集まって来てるね!」

「よし、やっぱり魚用の餌か! しかも一般生物相手でも効果あり! ハーレさん、纏めて打ち上げるから散弾で仕留めていけ!」

「分かったよ!」

「それじゃ行くぞ」


 相手は一般生物だし、水の生成はせずに直接湖の水でいいか。湖の上で小石で浮かんだ状態からやろうじゃないか。ふふふ、やはり同時発動可能っていいね!


<行動値を4消費して『水の操作Lv5』を発動します>  行動値 33/37(上限値使用:8)


「おー! 大量だね! 『散弾投擲』!」

「よし、次々行くぞ!」

「おうともさー!」


 そうしてしばらくの間、ハーレさんと共に魚と海老の乱獲を続けていた。地下湖の小魚と、地下湖の小海老20個ずつゲット! さてと、水分吸収で水も取得していこう。そんなふうに考えていたらアルからPT会話が届いてきた。


「おーい、2人さん。そろそろ良いか?」

「お、アル。サヤとヨッシさんが来たか?」

「まぁそれもあるんだが、物凄く目立ってるぞ?」

「え……?」


 そう言われて陸地の方を見てみれば、見物人で溢れていた。……あーこんなとこで盛大にこんな事をしたらそりゃ目立つか。


「『淡水漁ビギナー』ってどうやって取るのかと思ってたけど、水の操作で打ち上げて他のプレイヤーが仕留めれば良いのか」

「なんか撒き餌みたいにばら撒いてたのは、ありゃなんだ?」

「……あれか。使い道のよく分からない虫の死体とかか!」

「あれなら途中で大量に手に入れたのあるけど?」

「俺らも試してみるか?」

「そうだな。やってみるか」

「あー!? うちのPTには水の操作持ちが居ない!?」

「えー『進化の軌跡・水の欠片』のご入用はありませんか? 今なら木の回復用の水3個と交換致します!」

「ここでトレード開始!? ……水2個になりませんかね?」

「俺は3個で良いぜ!」

「はい、毎度あり!」

「ちょっと待っててくれ、今から調達するから」

「あ、その手があった!」

「こっちは果物と交換するよー! トレード内容は要交渉!」

「よし、プレイヤー産の蜜柑2個でどうだ!」

「こっちは3個だ!」

「やるのは良いが、全滅だけには気を付けろよ! オンライン版での全滅の回復時間はまだ分かってないからな!」

「そんくらい分かってるって!」


 どうやら目立ったと言っても、手法を真似る為に注目していたらしい。水の操作持ちの人は俺と同じように魚を採り始めたり、何やら水の欠片とのトレードで交渉合戦が始まったりしている。うん、悪目立ちしてた訳じゃないし別に良いのか。……もしかして具体的な淡水での採集の仕方って話すのを忘れてたかな? まぁインベントリ拡張のスキルはみんな欲しいよね。


「おう、ただいま」

「2人ともおかえり。ログインし直したらなんか群がってて何事かと思ったよ」

「私もかな。でもあの水の状態は見覚えもあったしね」

「とりあえず、成果はどんなもんだ?」

「地下湖の魚と地下湖の海老が20個ずつだな。あと虫の死体が撒き餌になる事が判明。水分吸収もしてこようかと思ってるけど、してきていい?」

「あーそれなら俺も水分吸収はしておきたいな。多分川の水とは別カウントだろ?」

「多分な。魚とかもザリガニのいた湖とは別カウントだし。『採集ビギナー』狙いなだけだから水分吸収での水はアルに渡そうか?」

「お、それは助かるな。そんじゃそれで頼むわ」

「んじゃちょっと俺とアルは水分吸収してくる。ちょっと待っててくれ」

「うん、分かったかな」

「了解」

「いってらっしゃいー!」


 という事で、沢山のプレイヤー達が乱獲に動き出した地下湖にアルと2人で移動していく。……張り切ってやるのは良いけど、注意してた人の言う通り全滅はさせるなよ。


「それにしても小魚とか小海老は何に使うんだろう?」

「……ザリガニの時は果物で注意を引けたから似たような事が出来るのかな?」

「鳥の黒の暴走種に持っていかれた事もあったよね!?」

「あれ? もしかして意外と使い道はあるのか?」

「……後で色々と試してみるか」


 その後、水分吸収で地下湖の水を20個入手したので纏樹の時の回復用に3個ほど残しておこう。残り17個はアルに渡してここでの採集は終わりになった。アルの回復も少ししやすくなった。


「それじゃ、本格的に海水の方に行きますか!」

「「「「おー!」」」」


 目指すのは目的地の海エリア! 相変わらず海エリアの方に繋がる左側の通路に行く人は少ないけども、それは別に良いだろう。多分、経路が確保されれば海エリアに行きたい人も多いだろうしね。進化の軌跡・海の欠片と進化の軌跡・海の小結晶をみんなで必要な分をそれぞれ分配して進出準備も完了だ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る