第159話 海水の地下湖
とりあえず海水の地下湖へと到着した。特に今は敵の気配はないけど、油断は禁物だな。
「あ、そうだ。一応ここにリスポーン位置の設定しとくか?」
「別に要らないんじゃないか? 最悪、1回は帰還の実で戻って転移で来ればいいだけだし」
「それよりはここから先の場所の何処かで設置した方が良い気がするかな?」
「纏属進化は時間制限もあるし、途中で休憩出来る安全地帯がありそうな気はするけどね」
「ありそうだよね! っていうかなければ困るよね!?」
そもそも一応進化の軌跡はそれなりの個数は確保したつもりだけど、足りるという保証もない。ログアウトの事も考えればどこかしらに陸地の種族が休憩出来る場所はあるとは思う。というかなければ駄目だろう。
「ま、とりあえず行けば分かるだろ」
「それもそうだな。それじゃ行きますか。『纏属進化・纏海』!」
「「「『纏属進化・纏海』!」」」
<『進化の軌跡・海の欠片』を使用して、纏属進化を行います>
みんな揃って纏属進化を実行した。インベントリから取り出した『進化の軌跡・海の欠片』が水色の光を発して、俺やみんなをそれぞれ包み込んでいき、光の膜によって卵状に覆われていく。同時に使用したので完全に覆われてからはみんなの姿は見る事が出来なかった。そして、少しの間を開けて光が霧散していく。
<『水陸コケ』から『水陸コケ・纏海』へと纏属進化しました>
<『海中適応』『海水の操作』『海水魔法』が一時スキルとして付与されます>
みんなを見てみればそれぞれの纏属進化が終わっていた。一時スキルは『海中適応』と『海水の操作Lv2』と『海水魔法Lv2』か。海水の操作と水の操作とかの違いはどうなんだろう? 海水と淡水の違いだけか、それとももっと違いがあるのか。……試してみないと分からないな。
「おー! 水色のクマってなんか新鮮な感じだね!」
「水色のリスも可愛らしい感じかな」
「アルはなんだろう、ちょっと不気味な感じがするな。もう少し白っぽければ普通にありそうな木だけど……」
「ほっとけ! 俺も自分でそう思うわ!」
「ケイは元々少し青が混ざってたからそれ程変わらないかな?」
「あ、そんなもんなのか」
「一番変化がないのは私か。少しだけ色が濃くなったくらい?」
基本的にはこのメンバーでは色が変わる程度の変化のようである。とはいえ元々の色とか種族を考えればその色の変わり方への感想も変わって来るけども。さて見た目に関してはこれくらいでいいとして、肝心なのは付与スキルの方だな。とりあえずいつもの様に新スキルの詳細確認。
『海中適応』
陸上の生物が海中で活動する事を可能にする。海属性の時は何も消費なしで常時発動。
窒息状態、海水に不適合による弱体化を無効化。
要するに、海水の中でも弱る事もなければ窒息する事もないと。海属性でない時はどうなるのか気にはなるけど、まぁ今はそこは重要じゃないか。
「『海中適応』ってのが重要みたいだな。泳ぐようなスキルは無いみたいだし」
「まぁ俺とかどうやって泳げって話だしな。俺は普通に歩いて行く感じになりそうか」
「私は飛べるのかな……? 場合によってはアルさんに捕まっててもいい?」
「良いぜ、ヨッシさん。ケイとサヤとハーレさんは……」
「俺は『水中浮遊』か『移動操作制御』に登録してる小石移動で問題ない」
「私とサヤは泳げるから問題ないね!」
「そうだね。あと正解ルートを探るのはケイの『水中浮遊』が良いのかな?」
「あー海エリアの正解ルートは流れが他より少し強いルートだっけか。分かれ道の時に『水中浮遊』で確かめれば良いか」
「任せたぞ、ケイ」
「おう、任せとけ」
水中浮遊は必要な時に使うとして、基本的には小石移動でいくか。まぁ状況を見つつ問題がありそうなら移動方法を切り替えながらになりそうだな。移動自体は問題なさそうだし、あとは海水の中での戦闘か。これは実際に試してみるしかない。
「はっ! 危機察知に反応あるけど、方向が分かんない!」
「それなら『看破』! アルさん、後ろに闇ゴケ!」
「ちっ、こいつ植物系を狙いやすいのか!?」
突然のハーレさんの危機察知をきっかけにアルの背後に忍び寄っていた闇ゴケをヨッシさんが覚えたての看破で発見する。ハーレさんの危機察知と看破の相性は良いな。アルはサヤの巣のボーナスで奇襲を受ける確率は少し下がっていた筈だけど、まぁ効果も小だったから完全には防げないか。この辺りの効果は実感しにくいね。
……多分出現場所からして、こいつが恐らく1回目の洞窟探索で俺を仕留めたコケだな。折角だし、実験を兼ねて纏海の力を確認させてもらおう!
「みんな、一斉に海水魔法Lv2!」
「おう! 『シーウォーターボール』」
「あっ、進化で少し魔力値が増えてるから少し余裕があるよ! 『シーウォーターボール』!」
「私も増えてるね。『シーウォーターボール』!」
「私はLv2を使うのは結構ぎりぎりかな。『シーウォーターボール』!」
<行動値2と魔力値10消費して『海水魔法Lv2:シーウォーターボール』を発動します> 行動値 35/37(上限値使用:8) : 魔力値 66/76
海水の操作のLv2なので消費行動値は5、消費魔力値は操作の消費行動値と魔法Lvの乗算だから10か。……やっぱり操作系のスキルは消費行動値の減るLv3までは欲しいとこだな。ま、纏属進化の一時付与スキルだから仕方ないか。水球自体は水魔法と大差なしと……。
そして5発の海水弾に狙われた闇ゴケは3発が命中しあからさまに萎れていく。ほうほう、やっぱり読み通り海水も弱点か。あ、どこ行きやがった!? もしかして群体内移動で逃げやがったか……。
「効いたかな!」
「あ、逃げた! ケイさん、群体化!」
「いや、もう近くにはいないっぽい。……先に逃げ道を塞ぐべきだった」
「逃げるのが早いね?」
「奇襲に失敗したら、逃走するようになってるんだろうな」
奇襲型の敵は奇襲に失敗すると逃げ出すようになっているのだろうか? 闇ゴケを仕留めたければ、まずは退路を塞ぐのが最優先だな。それにしても俺の群体化以外でどうやってコケの退路を断つ? 普通のコケを枯らす事が出来れば群体化も防げるのか? 気になるし、ちょっと試してみよう。
「ちょっと群体化以外で闇ゴケの退路を塞ぐ実験してみる」
「それは良いけど、どうやるのかな?」
ちょっと距離があるので小石移動で場所を移してっと。よし、この辺で射程範囲内だろう。他のコケのプレイヤーが来ても問題にならないように端っこの方のコケに少しだけ攻撃だ。
<行動値1と魔力値5消費して『海水魔法Lv1:シーウォータークリエイト』を発動します> 行動値 34/37(上限値使用:8) : 魔力値 61/76
<行動値を5消費して『海水の操作Lv2』を発動します> 行動値 29/37(上限値使用:8)
普段は俺の移動手段の一環である普通のコケに対してこんな事はしない。けども、闇ゴケ対策として手段自体は確立しておいた方が良いだろう。魔法産海水版の水球がこれで完成。……海水の操作はLv2だから操作しにくいな……。これ、いつもの水球よりも海水版のほうが操作可能の水量が多い? もしかしたら、海エリアの人が陸地移動に使うから水量多めなのかもしれない。水の生成量に違いありか。
まぁ水の操作と海水の操作には多少の違いがありそうだけどそれは後でもいいや。標的は壁のコケの端っこ!
「一般生物のコケにも多分これは効くだろ」
「あ、おい! ケイ、それしたらーー」
「ん? アル、どうしーー」
<規定条件を満たしましたので、称号『同族の命を脅かすモノ』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
「あー!?」
「……やっぱりか」
「え、何どうしたの!?」
そういやこんな称号あったな!? ……これってどっかで火種でも確保可能になってからやれば火の操作が取得出来たんじゃ……。勿体無いことした!?
「称号『同族の命を脅かすモノ』ってのがあってだな?」
「あっ! それって称号情報が初めて出てきた時のだよね!?」
「あ、そうか。あの時会話してたリスの人ってハーレさんだったか」
「そうそう、私だよ! あの時はまだ森林エリアにいたんだよね!」
それほど前の話じゃない筈なのに、結構昔のような気がしてくる。まぁ色々あったもんな。それにしても勿体無いことをした。コケは枯れてはいないけど、萎れて弱っている。……枯れかけたコケって動きが怠い感じで反応鈍るから、妨害としてはありか。………魔法攻撃だからコケの回復は早いとは思うけど、お詫びで水をあげよう。
<インベントリから『地下湖の水』を取り出します>
「あれ? ケイ、弱らせたのに回復させるのかな?」
「まぁ単なる実験だったしな。水をあげれば回復するのは分かってるし」
「そういや、俺が弱らせ過ぎた木や草花を水やりで復活させて水の操作を取得したんだったよな」
「そうそう。それでマッチポンプとか言われたりしたっけ」
あれは誰に言われたんだっけな? 確かにアルが弱らせて俺が復活させたんだから、確かにマッチポンプとも言えるからね。それにしても、ここに来る直前に取得した水をもう使う事になるとは思わなかった。あ、水を被ったコケが生き生きと復活し始めた。やはり植物系の回復には水が一番だな。
<規定条件を満たしましたので、称号『同族の救世主』を取得しました>
<融合進化ポイントを3獲得しました>
<規定条件を満たしましたので、称号『マッチポンプ』を取得しました>
<スキル『魔力値増加Ⅰ』を取得しました>
あ、なんか他にも称号取得が出た。って酷い内容だよな、おい!? でもやってる事は否定できないのが悲しいところ……。同族を弱らせる称号と同族を回復させた称号を両方持ってれば取得出来るとかそういう感じだろうか。っていうか、それでもらえるスキルの『魔力値増加Ⅰ』って地味に良くないか!?
「ゲームに『マッチポンプ』と称号を与えられた……」
「ちょ!? そんな称号まであるのかよ!?」
「……多分アルならすぐに取れるぜ。『同族の救世主』ってのも同時に手に入ったし」
「もしかしてセットの称号!? ケイさん、スキルはなんか手に入った!?」
「これがびっくりで『魔力値増加Ⅰ』だとよ」
「えー!? そんなのありなの!? ケイさん、詳細教えて!」
「ちょっと待って。今確認する」
思いっきりハーレさんが食いついてるな。まぁハーレさんは元々魔力値が少なめだから、非常に有用なのは間違いない。……っていうかこのスキルって幼生体でも取れるんだろうか? ……条件的には取れそうな気はするけど、効果は発揮しないとかそんな感じかもな。とにかく詳細表示っと。
『魔力値増加Ⅰ』
魔力値の上限が10増加する。
「あー、シンプルに魔力値の上限が10増えるとさ」
「それ、凄く欲しい! 切実に!」
「……群集拠点に戻ったら一般生物のハチを探そうかな。確かサヤってハチミツ採ってたよね?」
「え、あ、うん。もうとっくに復活してるんじゃないかな?」
「なら戻ってから場所を教えて?」
「良いよ。私も一般生物のクマを探してみようかな」
「私もリスを探そうっと!」
称号の名前自体は微妙だけど、そこに付随するスキルは有用である。特に俺のPTの中では物理型で魔力値の少ないハーレさんとサヤにとっては。みんな、既に取る気満々だしな。
多分だけど、仕留めない程度に弱らせた後に、回復アイテムを与えれば良いんだろう。これは条件が確定したら、情報共有板行きの情報だな。念の為ポイント取得が可能か確認してみたところ、未成体のヨッシさんのみ取得が可能であった。推測だけど、ポイント取得では未成体以上かつ一定以上の魔力値か魔力が必要なのかもしれない。
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