第150話 情報の整理


「よし、情報収集終わり!」

「ケイ、移動はどうする?」

「そりゃあんなの聞いたら『移動操作制御Ⅰ』の取得を目指すしかないだろ。あれこそ俺が今一番欲しいスキルだし!」


 情報収集は思った以上の大成果である。って事で早速、使おうじゃないか。使いまくるのが条件ならば、アルに乗るのは止めて自力で移動しよう。さてと、とりあえず今いるイス型の石から移動するか。


<行動値1と魔力値4消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 40/41(上限値使用:4) : 魔力値 72/76

<行動値を3消費して『増殖Lv3』を発動します>  行動値 37/41(上限値使用:4)

<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します>  行動値 36/41(上限値使用:4)

<行動値を4消費して『土の操作Lv3』を発動します>  行動値 32/41(上限値使用:4)


 すぐ真横に魔法産の小石を生成して、その小石に増殖でコケを纏わせて移動する。後はこれを浮かせてしまえば準備は完了だ。イス型の石の表面のコケも俺の群体の一部のままだからまだ光ったままである。当然、新しく作った魔法産の小石の方も光っていて、光源が2つに増えた。

 本格的な攻撃が必要になった時は土の操作を切って即座にイス型の石に移ればいい。……多少の行動値の回復の時間は欲しくはなるけど、PTでの行動だし問題にはならないだろう。


「ケイさん、アルさん、情報収集は終わりー!?」

「おう、終わったぞ! 収穫は大量だ!」

「おー、やったね! ……なんで新しく小石を作って浮いてるの?」

「ケイは移動方法を変えるのかな?」

「ケイさん、自力移動にするの?」

「あー実は……」


 手に入れた情報を伝える前にさっさと行動に移してしまったので、俺の行動が不思議らしい。まぁ、攻撃しにくいからって理由でアルの上に乗っていたのに、いきなり真逆の事を始めれば不思議がられても仕方ないだろう。その辺の説明も含めて、さっき情報共有板で教えてもらった情報をサヤ、ヨッシさん、ハーレさんに伝えていく。


「『小型化』『大型化』『並列制御』『移動操作制御Ⅰ』、それにイルカはクジラの変異進化先って情報てんこ盛りだね!?」

「それに『共生指示』と『半自動制御』もね。あの一発芸がこんな所に繋がってたとは思わなかったよ」

「サヤに魔法攻撃を追加するのとか良いんじゃない?」

「あ、それいいかも。そうなると私は2枠目は魔法が使えそうな種族が良いかな?」

「サヤに魔法攻撃を追加か。それもいいかもな」

「でもクマをメインにするって事は忘れない方がいいね。結構このクマは気に入ってるし、器用貧乏にはなりたくないかな」

「分散してメインが弱くなっても意味ないしな」


 物理特化のサヤに共生進化で魔法攻撃持ちの種族を合わせてみるのも良いだろう。攻撃の幅はかなり広がりそうだ。……だけど、これは育てる手間は間違いなくある。どのキャラを主体にしていくかは明確に決めておいたほうが良いな。……これがいったんの言っていた器用貧乏になる可能性か。


「私は予定通りクラゲにするよ! 実物を見て特にそう思いました! そういう仕様なら必要な時だけ共生進化して、空中戦対応も良さそうだよねー!」

「共生進化のメリットはいつでもいったんのところで解除が可能な事か」

「デメリットは相性があったりもするってところか」


 状況に合わせて共生進化をしたり、解除したりすれば良いわけだ。ある意味では共生進化は纏属進化に近い性質なのかもしれない。まだ条件は分かっていないが3枠目もある訳だし、状況に合わせての切り替えというのも想定の内なんだろうな。

 ところでラーサさん達の姿がさっきから全然見当たらないけど、どこ行ったんだろうか?


「そういやラーサさん達は?」

「邪魔しちゃ悪いからって、さっき群集拠点に戻っていったよ」

「あー、そうだったか」

「声をかけてくれても良かったんだがな」


 どうも俺とアルが熱中して情報収集をしているのを邪魔するのも悪いと思ったようで、ラーサさん達はサヤ達に挨拶して群集拠点へと戻っていったらしい。別に声をかけるくらいだったら問題なかったんだけど、妙な気を遣わせちゃったかな?

 まぁ過ぎたことを言っても仕方ない。そこそこ休憩にはなっただろうし、そろそろ出発……そういや、今のうちにあれをやっとくか。なんかこれ以上後回しにしたら忘れそうだし。


「2枠目のチュートリアルクエストもやりますか」

「あ、そういやそうだねー! 見なくても大丈夫ではあるけど、折角だし見ておくといいよー!」

「それじゃ見ようかな?」

「そだね。見るだけは見ておかないと勿体無いよね。でもアルさんがまだなんじゃ?」

「あ、そういえばそうか。今アルLv18だもんな。アルがLv20になってからにするか?」

「あー良いって。今のうちに見とけ。俺は俺でLv20になった時に自由に見るから。ハーレさん、そんなに長くはないよな?」

「うん、そんなに長くはないよー!」

「そう? なら先に見させてもらうね?」

「まぁハーレさんは先に見てるし、ここは無理に足並み揃えなくてもいいか」

「そんじゃそういう事で、俺は見終わるの待ってるから、見終わったら出発な」

「「「「おー!」」」」


 そういう事になったのでクエスト欄を開いて『チュートリアルクエスト《キャラクターの2枠目》』を選択してっと。開始とキャンセルと破棄の3択になってるけど、これから見るから開始を選択。破棄って選択肢があるのは必須ではないから見なくても良いよって事なんだろう。こういう演出はどうでも良いって人もいるからね。


<チュートリアルクエスト『キャラクターの2枠目』を開始します>


 お、始まった。いつものグレイの姿が現れてきたな。基本的にはやっぱりこういうのはグレイの役割って事なんだろう。群集の長の仕事、お疲れ様です!


『これを見ているという事は、ある程度新たな身体に馴染んだという事だな。あぁ、すまない。この映像は一定の定着度を得た者への通達である為に、記録済みのモノとなる。そこに至るまでは個人差がある為の処置だ』


 新たな身体に馴染んで一定の定着度を得たってのはつまり成長体Lv20に到達したって事なんだろうな。 そしてそこまで到達するには個人差があるから、記録映像的なものになるって訳か。個別かつ任意だからそういう設定になるんだな。


『その段階まで身体に馴染んでしまえば、一時的に他の身体へ移動しても支障は無くなる。この惑星に元々住んでいる動植物の調査という目的もあった為、初めはこちらで割り振らせて貰ったが、その段階に至ったのであれば一定の成果は得た事にもなる』


 あ、初期種族のランダムって調査の為の割り振りって設定だったのか。……確かにこの世界観の設定なら調査の為に色んな種族の情報は必要になるもんな。もし自由選択だった場合、よほどうまく分散しなければ下手すれば木の不動種の誕生が遅れまくった可能性もある。

 ……まぁオフライン版の世界樹ルートもあるから誰かが試した可能性もあるけど、絶対とは言い切れないもんな。俺だって複数枠があって自由選択なら2枠目で選んだ可能性はあるけど、多分初期枠ではコケは選んでいない。でもいざやってみればコケも結構楽しいから、俺としては良かったと思うけどね。


『なので自身の望まぬ種族であった者は新たな身体を得ても構わない。他の身体の可能性を試したいというのも有りだろう。また今の身体には同胞達の残滓が残る為、新たな身体を得ても再び今の身体へと戻る事も可能になるだろう』


 ふむふむ。つまり2枠目では自由に選べと。設定的には1枠目の身体から離れても残滓のおかげで戻ってこれますよって事か。まぁ1枠目に満足してない人もいるだろうし、他の種族もやってみたい人もいるだろう。俺だって他の種族をやってみたいからこそ、常闇の洞窟の踏破を目指してる訳だしね。


『その過程で新たな身体の変化が発生する可能性があるが、これに関してはまだ情報が足りていない。おそらくはより馴染む変化になるとは思うが、注意しておいてくれ』


 あ、これは複合進化の事か。……その手の進化の情報は足りていないから自分達で調べて下さいねって事で、設定的にはこういう形になるわけだ。


『伝える事はこれだけだ。これからも同胞たちの健闘を祈る』


<以上でチュートリアル『キャラクターの2枠目』は終わりとなります>


 あ、チュートリアルクエストが終わった。内容は世界観設定の方からの2枠目の説明だけなんだな。まぁ、これなら見なくても問題ないとハーレさんが言った理由も分かる。見ていればゲームのストーリー設定上の意味は分かるけど、それ以上の情報はないもんな。だから個別で破棄も可能って事か。


「チュートリアルというよりは世界観設定の説明だな」

「ふむ、そういう内容か」

「あ、見終わったんだね! 言った通りでしょ?」

「まぁな。でもこれはこれで見てても良いとは思うけど」

「そうだね。オフライン版じゃこんなのなかったしね」

「うん、折角こういう設定があるんなら私は極力見ておきたいかな」

「だよね! 折角だもんねー!」

「まぁ自動開始でないのはありがたいかな?」

「あ、確かに」

「……そういや俺以外は競争クエストのクリア時にLv20になったんだったな」

「自動開始だったら確実に命名クエストと被ってたね!」

「……確かに」


 クエストの発生タイミングからすれば確実に被っていただろうな。そういう意味も含めてこういう風な形でのチュートリアルクエストの演出なのだろう。


「さてと、それじゃ出発するか。ケイ、道案内頼むぜ」

「任せとけ! あ、そういや海水の地下湖の手前くらいの広い場所に分かれ道があった気がする……?」

「そこは安全地帯かな?」

「多分な。とりあえずそこを目指すか?」

「そだね! その周辺で進化の軌跡の収集だね!」

「一応コケの確認もしていかないと駄目かな? 検証は私達もしておくべきだよね」

「まぁ程々にな。早めに『移動操作制御Ⅰ』が手に入れば確認しやすいんだけど……」


 同時発動が可能になれば、群体化の支配エリアを確定する前の状態で移動すればコケの位置確認は楽勝だ。どのタイミングで『移動操作制御Ⅰ』が取得になるか分からないから、しばらくは目視での検証になるだろう。まぁやれる事をやっていこう!

 

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