第148話 新情報を入手
「ハーレさん、情報共有板を覗いてくるけどどうする?」
「私は今回は良いや! ねぇクラゲってどんな感じ!?」
「そうだな……。水中ならぼんやりしててもプカプカと浮けるし、空中浮遊さえ取ってしまえばこの通り」
「おぉー! どんどん浮かんで行ってる!?」
「風魔法と合わせるとこんな感じ。『ウィンドボール』」
「おー! 上昇速度が上がった!?」
「で、こうやれば、こうなる。『傘展開』」
「わっ!? パラシュートみたい!」
ハーレさんは海月さんに色々と聞きたいというかなんか実演してもらっている。海月さんが空中を上下にふわふわと浮かび、風魔法で一気に上に飛んでいったかと思えば、今度はクラゲの傘の部分を大きく広げてパラシュートみたいに思いっきり減速しつつゆっくりと降りてきている。……うん、あれは地味に楽しそうかも。
「ラーサ、休憩中にごめんね?」
「いやいや、良いって。本人もなんか楽しそうだしね」
「そう言ってもらえると助かるかな」
「それにしても木でも纏火って使えるんだ?」
「あぁ、これか。途中で『闇ゴケ』対策に使ってな? っと、流石に時間切れか」
進化の軌跡による纏属進化の30分の時間制限がちょうど切れたらしい。アルが元の燃えていない普通の木に戻っていく。
「『闇ゴケ』に火魔法って有効なの? 魔法は吸収されたし、HPは無いしで逃げてきたんだけど」
「あぁ、あれはクリエイト系の魔法を操作系のスキルで操ればいいみたいだぞ。手動制御中の魔法は吸収出来ないらしい。あと弱点もちゃんとある」
「腐食毒と火魔法が有効だな。後は多分だけど海水も。俺自身が海水で弱った事あるし」
「……コケのケイさんが言うんだから間違いないんだろうね」
「コケはね、全部潰せば勝ちだよ」
「……なかなか面倒な事だね」
うん、倒すのは面倒な類の種族ではあると思う。だけど、対処法が無いわけじゃない。……水属性を持ってる俺よりも遥かに火には弱いんじゃないかな。落とし穴としては本来威力の高いはずのLv2以上の魔法は吸収で封じられる点か。
「ラーサ、だから言ったじゃん! 火魔法取ろうって!」
「海月の発光で充分だって、一番最初に意見を変えたのはオーウルでしょうが!」
「はいはい、お二人共お止めなさい。他のPTの方々の前で見苦しいですわよ」
「…………済まない。……騒がせた」
「相変わらず寡黙だね、ロックの旦那!」
随分と個性の強そうなPTみたいだな。えーとフクロウの人がオーウルさんで、蜜柑の木の人はロックさんか。
「……せっかくだ。情報交換といかないか?」
「お、いいね! どうもあのいつものコケの人っぽいし、色々情報持ってそうだ!」
「オーウル、言葉には気を付けなさい! 流石にその言い方は失礼ですよ!」
「おーこわ!?」
「これくらいなら別に問題ないよ?」
「だとよ、ローズ?」
「ま、限度を越せばどうなっても知らないけどな?」
「ケイさん、程々にね? 敵認定したら容赦ないんだから」
「コケの人、怖!?」
「重々承知しておりますわ。良いですね、オーウル?」
「ちっ、分かったよ」
俺達もハーレさんがいきなり突っ込んで行ったので、あんまり強くは言えない。まぁ出会った頃のアーサーレベルでなければそこまで怒る気もないけど。それにしてもヨッシさんに釘を刺されてしまったな。……まぁやるとしても暴発の無差別ダメージで吹き飛ばしまくるだけだ。
その後、色々と情報交換をしてみたけども通ってきた道が同じなので大した情報は得られなかった。ラーサさん達は初めての洞窟入りで、情報ポイント狙いという事もあってマップ情報は貰ってきていなかったとの事。だけど思っていた以上に迷いまくって、一度拠点に帰ってからマップ情報を貰おうかどうかを相談していたところらしい。……まぁ迷い過ぎればちょっと嫌になってくる場所ではあると思う。
一応この先が海エリアに繋がっている可能性がある事も教えたけども、ラーサさん達の目的地は草原エリアという事だ。オーウルさんが2枠目にライオンを狙っているんだとか。
「私達はもう少し休憩したら拠点に戻るから、ケイさん達はのんびりしてて」
ということなので、俺とアルで情報共有板を見に行くことになった。ハーレさんはまだ海月さんと色々と話し込んでいる。サヤもラーサさんと談笑しているし、ヨッシさんは普通に休憩していた。
さてとそれじゃ情報共有板を見に行きますか。海の人達がいれば群集クエストの転移地点の情報を聞いて、コケが正解ルートの目印かどうかという推測を話しておかないとな。この辺の情報はクエスト攻略に大きく関わりそうだしね。
クジラ2 : おー、これはすごい! 海藻とはまるで違う!
草花 : これで2人目のクジラの誕生だね。
クジラ : クジラ仲間が出来たー!
見た早々にクジラの人が増えていた。これは誰かの2枠目かな?
コケ : お、クジラの人が増えたのか?
クジラ : おーコケの人、こんにちは!
クジラ2 : クジラの人が他の群集に敵視されてる件を、クジラを増やす事で解決してみる事にした! ……この巨体は変な奴が使えば、調子に乗るのもなんとなく分かる……。
マグロ : ……頼むから第二のBANクジラにならないでくれよ?
クジラ2 : 大丈夫、大丈夫!
あ、なるほど。そういう手段もありか。少ないからこそ目立って、目立つからこそ変に敵視されてしまってるわけだしな。人数が増えればその辺は同一人物じゃないとちゃんと認識してもらえるはずだ。
サル : 他にもクジラ希望者っているんだっけ?
草花 : 興味はあるんだよね。条件的にクジラの人に会えさえすれば良いわけだし。
ネズミ : 俺もクジラ希望だけど、まだ海までの移動には時間がかかる!
クジラ : 俺はログインしてる時ならいつでも大歓迎だよ! ……今は『常闇の洞窟』を進んでるからちょっと厳しいけど。
サル : まぁ、そこはじっくりやるしかないな。今の群集クエストが終われば移動は楽になりそうだし。
木 : 俺はクジラというよりはイルカに興味があるんだが、イルカの人っているのか?
マグロ : イルカの人か。木の人、イルカに興味あり?
木 : まぁな。無理にイルカである必要はないんだけど、共生進化でこの木を水上で引っ張れないかと思ってな?
サル : 水上スキーかよ!? ……いやでもありと言えばありか?
イルカ : なんか呼んだ?
ネズミ : あ、本人登場だ。そういやイルカとクジラって、サイズが違うだけじゃなかったっけ?
クジラ2 : ……ん? あれ、そうなるとイルカってどうなるの?
イルカ : イルカはクジラからの変異進化だよ。ここの表記はどうなるのかは気になってたけど、イルカに進化したら別系統になるみたいだね。
クジラ : えっ!? って事はもしかして、進化前までクジラの人って俺以外にもいたの!?
イルカ : いやー、ごめんね? クジラの人が妙に目立ってたから、進化するまでついね……?
クジラ : そんな理由!?
イルカ : いや、だって、他のプレイヤーを丸呑みにして怒られてる時とか顔出し辛いじゃん?
サル : それは確かに……。
カツオ : あー、あの時か。……なんかすまん。
木 : 今のクジラの人が他の群集から目の敵にされてるのと似たようなもんか。
クジラ : ブーメランが盛大に飛んできてるだけなのかー!?
そういやクジラの人が他の魚プレイヤーを丸呑みにして怒らせたとかそんな事もあったな。……確かにあの状況ではクジラとしては顔を出しにくいよな……。それにしても灰の群集にも他のクジラの人が居たんだな。……って事はコケの人も居そうではある。まぁ2枠目も解放されてきたし、あんまり気にしなくてもいいか?
木 : ……ちなみに進化条件を聞いてみてもいいか?
イルカ : それは問題ないよ。えっと、一回岩場に挟まって身動き取れなくなった時に『嵌まるモノ』って称号で『小型化』ってスキルが手に入って、それが進化条件だったかな。ちなみに進化階位は上がらないパターンだね。
クジラ2 : え、そんな称号とスキルがあったんだ? ……っていうか何やってたらそうなるの?
イルカ : 目立たない様に、海底の方を彷徨ってたらそうなった。ゲームを始めて割と早い段階でそうなったから、僕のクジラの時期は殆ど目撃されてないかも。進化先が出てからすぐに進化したし。
クジラ : え!? もしかしてイルカに進化したの俺のせい!?
イルカ : いやいや、単純に僕がイルカの方が好きだっただけだから。そういう意味では、ある意味感謝してるよ。『小型化』なんてスキルが手に入ったのはコソコソしてたからだしさ。
クジラ : うぅ……どういたしましてとは言えない……。
コケ : ま、結果オーライって事で良いんじゃないか? 特殊な進化条件ってのも分かったし、必要なスキルも分かったんだし。
木 : そういやその『小型化』ってポイント取得はどうなんだ?
イルカ : さぁ? すぐに取れるスキルって感じもしなかったけど、どうだろ?
サル : 誰かその辺の情報持ってないかー?
カメ : 俺、持ってるぞ。『小型化』なら未成体に進化したらポイント取得で出た。『大型化』ってのもあった気がする。
トカゲ : 『大型化』だと!? 『大型化』の詳細分かるか!?
カメ : うおっ!? 思いっきり食いついてきたな、トカゲの人。……すまん、取ってはいないから詳細は分からん。
イルカ : 『小型化』なら分かるけど、同系統っぽいし大丈夫かな?
トカゲ : それでも問題ない! 教えてくれ!
イルカ : えっとね、上限値消費型のスキルだね。『小型化』発動中は、Lvによって大きさが変動するってさ。発動は任意でオンオフ可能だよ。ただし、使用上限値は最大値の半分も使う。
トカゲ : げっ、そんなに使うのか……。……それでもLvが上がればより小さくもなれるんだよな。となれば『大型化』も同じような仕様か……?
コケ : 行動値の上限使用量多いけど、種族次第では有用スキル?
木 : 普通の移動種の『根脚移動』と同等消費か。……それは誰かに乗るとかいう事も想定してるのか?
ふむふむ、中々興味深い話だな。そして『大型化』に拘ってるのは多分紅焔さんだな。今のトカゲの姿だと相当小さいしね。ドラゴンを目指すなら大型になるのは間違いなく必須だろうし、『小型化』やら『大型化』が条件で進化があるのなら重要なのだろう。……地味にアルの狙っていたイルカにも関わってきてたしな。イルカを狙うなら、まずはクジラを選ぶ必要がある訳だ。
草花 : そういやコケの人って未成体に進化した?
コケ : え、いやまだだけど。2枠目作って共生進化させようと思って成長体で止めてる。
草花 : あ、やっぱりか。そういう人も割といるもんね。って事は知らなさそうだね。
サル : あーあれか。『並列制御』だっけ?
木 : なんか気になる話題だな。
コケ : ……未成体で『並列制御』が手に入る?
『並列制御』ってルアーが使ってなかったか……? 薄々気にしてはいたけども、もしかしてスキルの同時発動が可能なスキルか!?
草花 : 未成体でポイント取得可能になるスキルだよ。なんと『並列制御』は複数のスキルの同時発動が可能に!
コケ : え、マジで!?
木 : ほうほう、それは興味深い話だな。
クジラ : あ、チラッとだけ聞いたけど、俺も詳細知らないや。
イルカ : 僕は初耳だね。
サル : まぁここで情報が出たのは深夜だったからな。
草花 : おっ、結構食いついたね! 『並列制御』自体は行動値は消費しなくて、2つ目に発動するスキルの消費行動値が倍加するってスキルなんだけどね。スキルレベルが上がると同時制御数も増えるけど、3つ目のスキルは消費3倍、4つ目のスキルは消費4倍って増えていくみたい。
木 : 同時に扱える代わりに行動値の消費が増えるのか。
コケ : ……くっそ、なんで未成体から!?
無茶苦茶、そのスキル欲しいんだけど! 水球移動や小石移動中に他のスキルが使えるようになるじゃないか! ……まぁ行動値が回復しない状態で倍消費はキツいけどさ。それでも幅が広がるのは確実だ。
草花 : まぁまぁ慌てなさんな、コケの人。
コケ : ……もしかして、まだなんかある?
草花 : まぁね。コケの人からは火の玉検証とか移動種の引っ張る移動方法とか色々と役立つ情報はあったからね! そのお礼も兼ねて求めている新情報を提示しましょう!
サル : あー、あれか。コケの人も持ってそうな気はしてたけど、さっきの反応じゃまだっぽいしな。
マグロ : ……あれって偶然取得しただけって言ってなかったっけ?
ネズミ : あれか。深夜に草花の人がハイテンションで騒ぎまくってたやつ。
草花 : あーあー聞こえなーい。もー良いんだよ! 偶然でもなんでもさ!
どうやら勿体ぶっている情報の取得時には色々とあったらしい。……どういう状況だったのか気にはなるけど、それ以上にその情報がどんなものかが凄い気になる。
コケ : 結局、どんな情報?
草花 : コホン。それでは気を取り直しましていきましょう! それは『移動操作制御Ⅰ』というスキルなのです!
コケ : 具体的にどんな感じ!?
草花 : それでは説明していきましょう! 『移動操作制御Ⅰ』は操作系スキルの派生スキルになるみたい。条件的には多分、操作系スキルを使っての移動を一定以上の距離か時間で行う事!
コケ : ほうほう!
草花 : スキルの内容は、移動にしか使えないという条件付きだけど操作系スキルを上限値使用での発動だー!
コケ : マジか!? え、それマジで!?
サル : おー、昨日の草花の人と似たような反応だな。まぁ移動にスキルが重要な場合は無茶苦茶重要な情報か。
クジラ : 移動に操作系スキルを使うと攻撃に制限がかかって困るって海のみんなも話してたっけ。その内容は海エリアでも重要かも。
マグロ : まぁこっちは口コミでもう広まりつつあるけどな。……ただまだ条件ははっきりしない。無意味に空中を動きまくってたヤツとかから順番に取得確認が出来てるから、使い込みが条件なのは多分確定だな。
コケ : あー俺はPTメンバーに乗っかって移動する事も結構あるからな……。
木 : そういや俺がいたら基本的には俺の上だしな。
草花 : 多分、コケの人がまだ取れてないのはそこら辺が理由だと思うよ!
コケ : なるほど。
要するに『移動操作制御Ⅰ』は、サヤの取得した『操作属性付与』とは別系統の操作系スキルの派生スキルか。こっちは攻撃向けではなく移動特化型という事だ。これは是非とも取得しておきたい。……『並列制御』もあれはあれで欲しいけど、未成体に進化が必須なら少し待とう。共生進化は同じ進化階位じゃないと出来ないから、2枠目作って成長体まで進化させてからだ。
草花 : ただし、事前登録制かつダメージ判定があれば即座に解除だけどもね!
コケ : あー、攻撃には使えないのか。……なら小石で敵に突っ込むのには使えないか。
サル : ……コケの人も結構な無茶やってんな。
木 : ……いつものことだぞ?
草花 : いつもの事だよね?
クジラ : 何を今更?
コケ : ……俺の扱い酷くない?
ネズミ : この場合は褒め言葉なんじゃないか?
なんか釈然とはしないけども、まぁいいや。凄い重要で、欲しかったスキルの情報が手に入った。多分、操作系スキルならどれからでも派生……いや火の操作とか毒の操作からは流石に無理か。まぁ俺は持ってる水の操作か土の操作で何とかなるだろう。よし、早速戻って試して……って、違ーう!? これはこれで重要だけど、本来の目的を完全に忘れていた。
コケ : とりあえず情報ありがとう! で、聞きたいことがあったのと話しておいたほうが良さそうな推論があったのを忘れてたんだけど、良いか?
木 : あ、そういやそういう目的だったな。
草花 : 2人揃って目的忘れてたの!?
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