第147話 洞窟内で色々と
「『狙撃』! わっ!?」
「どうした、ハーレさん!?」
「『狙撃』のスキルレベルが上がったら進化項目が光り始めたよ!」
「それは朗報だね」
「そりゃいい話だが、先にクモを仕留めるぞ!」
「うん、そうだよね。『爪撃・土』!」
「サヤの近接攻撃がなんか中距離攻撃になってるよね!?」
「良いんじゃないか? 結構ありがたいぞ?」
「そうなんだけど! それじゃ私の役割がー!?」
「私もまだ覚えて間もないから、効果が良く分かってないかな!?」
サヤが発動した『操作属性付与』により、近接攻撃ではそのまま威力増強、少し離れた距離で発動すれば投げナイフの様に尖った石が飛んでいくようになっていた。……こりゃ近接物理向けには是非とも欲しいスキルだな。……使い込めば発生する派生スキルも基本的にはポイント取得可能だとは思うけど、取得一覧に出てくる条件は何だろうか?
「よし、討伐完了かな!」
「サヤの新技を使い始めてから討伐速度が上がったな。それ、別の属性でも出来たりしないのか?」
風属性辺りなら中距離から飛ぶ斬撃みたいなものもいけるかもしれない。土だと叩き切っている感じだが、風なら近接攻撃で鋭さも増しそうである。火なら焼き切る感じだろうか。
「試してみないと分からないけど、多分いけるんじゃないかな? それより、ハーレは進化先はどうかな?」
「えっとね! わっ、新しく2つ出てる! 変異進化で『狙撃リス』、転生進化で『投擲リス』だね!」
「……どう違うんだ?」
「『狙撃リス』は投擲よりも更に遠距離攻撃に特化で、『投擲リス』は投擲系全般に良いみたい! 単純な強化版の『強投リス』よりもどっちもいいね!」
「ハーレさんはどっちにするんだ?」
「んー条件的に厳しいのは『投擲リス』だからこっちがいいかな!?」
「どんな条件なの?」
「えっとね、『狙撃リス』は狙撃Lv3以上で各種進化ポイント20ずつ! 『投擲リス』は3種類以上の投擲系スキルがそれぞれLv3以上で増強進化ポイント30と他の2種類は20ずつだね!」
「あー完全に『投擲リス』の方が条件は上だな」
条件が厳しい方が多分進化後は強くなるだろう。これはハーレさんの進化先は決まりだな。
「うん! 私は『投擲リス』にしよう!」
「なら、ハーレも私と一緒に死亡待ちだね。……中々HPが減らないけど」
「そだねー! アルさんもいて、サヤも新技でパワーアップしたから安定感が増したもんね!」
「まぁまだ海水の地下湖までも結構距離があるしな。まだ良いだろ」
「そうだね。経験値が全くの無駄になるなら流石に悩むけど、クエストの方に回ってるならいいね」
「そうそう! そういえばエンはどのくらい強化されたかな!?」
「あ、そういやクエストの詳細を見るの忘れてた……」
「そういえば私も見てなかったかな?」
「昨日の夜はバタバタしてたもんね。私もまだだったよ」
「……まぁ赤の群集の連中まで混ざってたからな」
昨日の夜のドタバタ騒ぎでみんな確認していなかったらしい。という事でクエスト欄を開いてみる。現在発生中のクエストが『ワールドクエスト《黒の暴走種の出現》』と『群集クエスト《群集拠点種の強化・灰の群集》』と……あ、『チュートリアルクエスト《キャラクターの2枠目》』……。そういやそんなのあったな!? すっかり忘れてた!?
「チュートリアルクエストってどんな内容……?」
「ゲームのストーリー上での2枠目の扱いに関して、グレイから説明があるよー! 特に報酬も何もないから受けなくても問題ないと言えば問題ないけどね!」
「あ、そうなんだ」
「ハーレ、いつの間に確認したのかな?」
「え、昨日の臨時メンテナンス明け!」
「起きてたのかよ!? ……いや、休日なら別に良いけどな」
「……とりあえず立ち止まって話すのも時間が勿体ないから移動しながらにしようぜ? 本格的に確認するのは次の安全地帯で良いだろ」
「それもそだね! さー出発だー!」
「とりあえずクエストの進捗状況だけは確認しとくぞ」
「おう、任せた」
とりあえず会話は基本的に移動しながらという事だ。光るイス状コケ付き石を光源にして再び奥へと進んでいく。クエストの進捗状態の確認なら移動しながらの確認でもいけるだろう。……そもそも俺自身はアルがいる時は自力で移動してないし。とりあえずエンの強化具合の確認だな。受注中のクエストから詳細表示をしてっと。
群集クエスト《群集拠点種の強化・灰の群集》
【群集拠点種:エニシ(始まりの森林・灰の群集エリア1)】
経路確立 0/4
経験値強化 8%
進化ポイント 169/2000
転移地点 0/10
【群集拠点種:エン(始まりの森林深部・灰の群集エリア2)】
経路確立 0/4
経験値強化 9%
進化ポイント 326/2000
転移地点 0/10
【群集拠点種:ユカリ(始まりの草原・灰の群集エリア3)】
経路確立 0/4
経験値強化 6%
進化ポイント 86/2000
転移地点 0/10
【群集拠点種:キズナ(始まりの荒野・灰の群集エリア4)】
経路確立 0/4
経験値強化 5%
進化ポイント 156/2000
転移地点 0/10
【群集拠点種:ヨシミ(始まりの海原・灰の群集エリア5)】
経路確立 0/4
経験値強化 13%
進化ポイント 206/2000
転移地点 1/10
※進化ポイントは譲渡された増強進化ポイント、融合進化ポイント、生存進化ポイントの合算になります。
お、他の群集拠点種の名前が出てるんだ。他の名前を見た感じだとエンの由来は『縁』なのか。……ユカリとエニシも『縁』だけど。まぁ名前については別に良いか。今回は海エリアが1番進んでいる状態らしい。あと進化ポイントも結構な量が必要だな。いや大人数で少しずつなら意外とこれくらいなら貯まるのか?
俺も結構な進化ポイントは譲渡したし、ポイントに余裕がある人なら結構いけそうな気がする。
「名前が出てたりするし、拠点の強化は経験値強化と進化ポイントの2つの要素があるみたいだな。あとなんか転移地点って項目もある」
「ほう? 名前が出てるのか。……転移地点ってのが気になるな?」
「海エリアで1ヶ所、出来てるらしいぞ」
「え、ほんと!? あ、ほんとだ! 夜にはまだだったのに!」
「そうなのか? 転移ポイントってのはどういうのか聞いてるか?」
「ううん、まだ! 昨日の時点じゃまだ不明だったもん!」
「って事は今日の朝に達成したところって感じか」
「とりあえず、俺も確認したくなってきたから安全地帯までいくか。ケイ、この先にあるのはどのくらいかかりそうだ?」
「あーちょい待って、マップ見るから」
クエスト詳細から画面をマップの詳細へと切り替える。ここまでの道中で以前行った時には通らなかった分岐もいくつか行ってみたが、大体どこもすぐに行き止まりであった。……というか、分岐があった事に気付かなかった場所も結構あった。暗視だけでは色々と不十分だったらしい。あの時は群体化が出来るコケを探すのに必死だったというのもあるかもしれない。
改めてコケに依存せずにマップを埋めながら進んでいって分かった事は、前に進んだ時は本当に当たりの道を多く引いていたという事だ。……あれ、いくらなんでも運が良すぎないか?
「……これって、もしかして……」
「どうした、ケイ? なにか、気になる事でもあったのか?」
「いや、こうやって移動してて気付いたんだけど、前の通った完全に元々生えてるコケ頼りの時のルートに無駄が少なすぎる気が……?」
「……コケが目印になってるのかな?」
「それはありそう。奥に行けば行くほど複雑になってるし……」
「そうだよね! それにコケのプレイヤーがみんながみんな、ケイさんみたいに色んな移動手段を持ってる訳じゃないもんね!」
これは一考の価値はありそうな推測かもしれない。……よし、後で情報共有板に情報を流して他のエリア側からも検証してみてもらおう。現実の洞窟だとそんな目印なんかある訳ないが、これはゲームだ。気付けば簡単になる情報というものもあるだろう。
「とりあえず重要な情報なのはわかったが、今は次の安全地帯の情報をくれ」
「あ、すまん。えっと、次の3つの分かれ道があるとこを真ん中に進んでいって、しばらくすれば広めのエリアがあるな。多分そこが安全地帯だ」
「よし、次は真ん中だな。ちなみに海水の地下湖とやらはあとどのくらいだ?」
「まだ3分の1くらいだな。つっても寄り道も多いから、その辺省けばもっと早めには着くと思うぞ?」
「……ただ踏破だけならそれでもいいんだがな」
「海属性の黒の暴走種も倒さないとね! まだ見かけてないけど!」
「もう少し先になるんじゃないかな?」
「海水の地下湖の近くまでは寄り道なしで行く?」
「……それが良いかもな。敵のレベルも微妙だし」
「……確かに」
今の周辺の敵はLv12〜14前後。アルはLv17で、この辺りは残滓も多くあまり効率が良いとも言えない。一応通っていない場所で海属性の黒の暴走種も探してはいたけども、まだ出てくる範囲ではないようだ。
「んじゃ、とりあえず安全地帯まで行って色々と情報を確認した後で、最短距離で海水の地下湖付近を目指すって事でいくか」
「うん、それでいいよ!」
「私もそれがいいと思うかな?」
「私も賛成」
「ま、それが無難だな」
「って事で、アルは移動よろしく!」
「……既に移動中だけどな」
アルはずっと移動しながらだったから当たり前の状況ではあるけどね。
「そういや、アルの移動も普通に早くなってるよな?」
「あー、それな。あのサヤに引っ張ってもらってる移動方法あるだろ?」
「それが関係してるのか?」
「まぁな。あれは根の操作で支えてる訳だが、同時に『根脚移動』も発動しててな?」
「あ、そっか! 『根脚移動』は上限使用型のスキルだったよね!」
「もしかして、アルさん、サヤに引っ張られてる間にも熟練度稼げてた?」
「お、ヨッシさん正解。まさしくその通り。『根脚移動』は今はLv5だからな」
「なんかズルいぞ!」
「そう言われてもな……」
俺の群体化での移動はそんな感じでは熟練度は入ってこないぞ!? 最近はコケの少ない場所を移動する事も増えてきたからどうやって熟練度を稼ぐかにも悩んできているというのに! ……まぁそれでもコケさえあれば他の動物系のプレイヤーと同じくらいの移動速度はある訳だけど。
「あ、ケイの行ってた分かれ道ってここかな?」
「あー、うん、多分ここだ」
「それじゃここを真ん中だな」
「おう!」
そしてしばらく進んで行けば広めの場所へと辿り着いた。ログアウトの可否を確かめて見れば普通にログアウト可能なので安全地帯で間違いないようだ。ここにも僅かながらも光源は存在していて、湖はないが、小さな滝と岩の隙間へと流れ込んでいっている水場が少し存在していた。
「なんか随分明るいPTが来たぞ?」
「あ、サヤだ! おーい!」
「ラーサのPTだ! ここに来てたんだ!」
「先着PTありか。まぁそういう事もあるか」
「まぁあれだけ残滓化してればな」
当たり前と言えば当たり前。安全地帯では先着PTが休憩をしていた。アルと同じ蜜柑の移動種の木の人と、サヤのクマ仲間のラーサさん、草花の人……これは真っ赤なバラっぽいな。そしてフクロウの人と、浮いている1メートルくらいの大きめのクラゲの人。
そしてクラゲの人は光ってもいるのでおそらく発光と空中浮遊を両方持っているんだろうな。……クラゲは発光の取得可能っと。
「あー! クラゲの人がいる!」
「え、何事!?」
「いきなりなんですの!?」
「こら、ハーレ! すみません、この子、2枠目をクラゲにするって言ってたもので」
「だからといってこれは!?」
「ローズ、俺は問題ない。そもそもその理由なら納得」
「海月さんがそう言うのでしたら構いませんが……」
えっと、バラの草花の人がローズさんで、クラゲの人は海月さん。……どっちもそのままな名前だな。まぁ種族を決めてから名前を決めるんだし、それに合わせた名前ってところか。
ハーレさんのハイテンションぶりに困惑していた海月さんだけど、ヨッシさんの説明で納得してくれたらしい。クラゲのプレイヤーがここにいるって事は、この人も『仲間の呼び声』でやって来てた人だろうか?
とりあえず休憩と情報収集はするけど、この感じだとハーレさんはあっちに夢中かな。それにしても狙っていた種族のプレイヤーにここで会えるとはラッキーだったな。これでハーレさんの狙いのクラゲは選択可能になっただろう。
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