第137話 半覚醒の解放
「蒼弦さん、大丈夫か?」
「ちょっとやりにくいが、問題ねぇよ! それよりザック、説明をくれ!」
「そう来ると思ってたぜ。……紅焔達は特性の実が足りないから辞退して、そのまま何かあった時の為にいつでも動けるように待機していたってさ。あいつらは飛べる優位があるから遊撃って感じでな。その後に第二陣の増援組が壊滅した情報を受けてからすぐに飛んできてくれてな?」
「……そういう事か!」
「あ、蒼弦さん、ちょっと右の方に行き過ぎてる! もっと左向き!」
「あ、方向間違ってたか!? すまん、こっちで良いか?」
「うん、大丈夫!」
……多分走る事に集中していて、ちょっとずつ方向がズレていたらしい。ほぼ埋まったマップを貰ってきていて正解だったみたいだな。紅焔さん自身は飛べないけど、小さいからライルさんでも運べたりするのか。……ソラさんは不参加だけど、紅焔さんのとこは飛べるプレイヤーが集まってるな。
「紅焔さん達が待機してたなら、湖突入チームは誰が纏めてる?」
「あぁ、それはカインだな。サルの人だ」
「あ、あいつか。なら大丈夫だな」
今の場所はザリガニのいた湖よりも半覚醒の黒の暴走種がいる所の方が近い。だから紅焔さんたちは間に合ったって事か。あの時に来てくれなければ移動すら阻止されていたから、あの増援は本当に助かった。
そしてサルの人がカインさんだったのか。アルはどうやらカインがサルの人っていうのは知ってたっぽいな。まぁあっちはあっちで任せよう。
俺達は俺達でやるべき事がある。……だけど、肝心の攻略方法が……。くそっ、ここまで来て肝心のザリガニは居なくなって、手段は手詰まりとか冗談じゃない。みんな頑張ってるんだ、なんとか手段を見つけないと!
「ついでに朗報だ。湖から大量の『浄化の欠片』が見つかったそうぜ」
「え、それ本当!?」
「本当だ。確認してみたら1500/1000になってる。……なんか必要個数より遥かに多い気がするんだけど……?」
「まぁ多い分には良いんじゃねぇか? そんで、その数値が反映されてるって事は……」
「あ! もうヤナギさんに渡し終わってるんだね!」
「そういうこった。後は半覚醒の奴を倒せば良いだけなんだが……」
「ザリガニが倒されちゃったもんね……」
「ルアーが躊躇なく倒してたし、何か手段はありそうな気はするけど……」
そうなんだよな……。ルアーがザリガニを倒した以上は他の手段があるはずだ。無ければあんなにあっさりとザリガニを仕留める筈がない。かといって未成体に進化してというのはやっぱり何かが違う気がする。
いや、手段としては未成体も選択肢の1つなんだろうけど、それだけだとそもそもあの半覚醒の黒の暴走種が成長体である意味があるのか……? ザリガニと戦わせるにしても、未成体になって倒すにしても同群集からのダメージの減衰幅を半減くらいにすれば両方とも未成体でも良いはずだ。だから、まだ成長体でも倒せて、赤の群集を誘導しなくても倒せる手段はあるはず……。
「……あれで攻略方法がなくなったとかになれば、赤の群集の盛大な自滅だな。俺らも巻き添えだけど……」
「……ザックさん、今なんて言った?」
「ん? 俺らも巻き添えだって言ったけど」
「いやその前」
「どうしたんだよ、ケイさん? 赤の群集の盛大な自滅だなって言っただけじゃねぇか」
「それだー! 『暴発』だ! あれには無差別ダメージがある!」
「「「あっ!?」」」
「え、何? どういう事? 無差別ダメージ!?」
「そういやそんなスキルもあったっけ? って、あれって無差別ダメージとかあるのか!?」
蒼弦さんはいまいちピンときていないみたいだが、ザックさんはスキル自体は知っていたようだ。そしてみんなは俺が何に気付いたか大体察したらしい。みんなで『暴発』は微妙認定してたけどこの状況だもんな。自滅する可能性のある不発や制御不可、そして無差別ダメージがあるスキルなんて通常時には使い物にはならない。
そうだよ、自滅、そして無差別ダメージ、今必要なのはまさしくそれだ! 無差別なだけあって、群集なんか関係ないはずだ。つまり群集の所属の影響を受けて、ダメージの減衰が起きるなんて事はないはず! 取得条件を考えれば誰かしらが偶然で手に入れる事は間違いなくある。そしてポイント取得も可能ときたら、これしかないだろう! ……ポイント取得可能になったタイミングはもしかしたら競争クエストの開始かもしれないな。
「アル……は移動中だから到着してからでいいな。ヨッシさん、ハーレさんは『暴発』の取得をしてもらっていいか?」
「うん! ここでポイントをケチってどうするんだって話だもんね!」
「そうだね。私も取得しておくよ」
「……あの微妙スキルにこんな使い道があったとはな」
「とりあえず何とかなりそうだと思っていいんだよな?」
「あぁ、多分な! あ、そうだ、頼んどいた岩の有無はどう?」
「あーあれか。普通にいくつも転がってるそうだぞ?」
「よし! 倒す条件は見えた!」
「……いまいち話が見えないけど、目処が立ったならそれでいい!」
俺は岩の操作で暴発による無差別ダメージを与える。それで半覚醒の黒の暴走種を倒して、浄化の要所の場所を確定させてやる! そしてヨッシさんとハーレさんも『暴発』を取得してくれているようだ。無差別ダメージは確率での発動なので複数人で取得して少しでもダメージを与えられる可能性は上げておくべきだろう。
「よし、自己強化の再使用が可能になった! 切り替えて飛ばすぞ!」
「あ、すまん。もう少しで着くぞ?」
「もうすぐ見えてくるよ!」
「なんですと!?」
「ザックさん、ハーレさん、もう少し早めに教えてくれ……」
思わず気が抜けた蒼弦さんがバランスを崩し、アルがバランスを取り直す。思ったより早い到着になったけど、魔力集中の方が負担が大きい代わりに移動速度は早かった。だから残り3分の1の踏破も効果中の時間で可能だったようだ。……なんか蒼弦さんには悪い事をした気はするけどな。
「よし、俺も暴発を取っておくか」
「あ、アル。念の為、近くにリスポーン位置設定しててくれるか?」
「……そうだな。無差別ダメージのダメージ量が分からないし、安全策は取るべきか」
「ケイさん、あそこ!」
到着して、即座にアルも暴発を取得する。そしてハーレさんが何かを見つけて、指し示す。その方向を見てみれば、そこには赤の群集のキツネとタンポポがいた。俺達を見て何やら驚いている様子。……ここには灰の群集が少しはいたんじゃないのか?
「おい!? 嘘だろ、あのルアーさん達を掻い潜ってきたのか!?」
「ちっ、灰の群集め! 折角、全員倒しきったと思ったのに、どんだけこっちも倒されたと思ってんだ!?」
「……ちっ、ここにいた奴らは殺られたか……」
「おい、ザック。ここは俺らの出番だろう?」
「あぁ、そうだな、蒼弦」
「「ここは任せろ!」」
「おう、任せたぞ、2人とも!」
頼もしい蒼弦さんとザックさんにキツネとタンポポを任せよう。戦線離脱になったプレイヤー達の分も含めて、俺達がやるべきは半覚醒の黒の暴走種の討伐だ!
「よし、リスポーン位置設定は済んだぞ!」
「行くぞ、みんな!」
「「「おー!」」」
そして相対するのは、半覚醒の黒の暴走種。まずは周辺のコケを群体化と識別をしておこう。下準備で暴発されても困るから暴発を使うのは戦闘開始の直後からだ。
<行動値を3消費して『群体化Lv3』を発動します> 行動値 25/40(上限値使用:4)
<行動値を3消費して『群体化Lv3』を発動します> 行動値 22/40(上限値使用:4)
<行動値を3消費して『識別Lv3』を発動します> 行動値 19/40(上限値使用:4)
『ミズウメ』Lv15
種族:黒の暴走種
進化階位:成長体・暴走種
属性:水、樹
特性:半覚醒、不動
見た目も種族も南西部にいたのと全く同じの成長体でLv15。ダメージ減衰さえなければそれなりにレベル上げをしていれば間違いなく勝てる範囲だろう。コケは小さな湖側と森側に群体化を多めにしておく。とりあえずこれだけあれば問題はないだろう。万が一の増殖用に少し群体数の余裕は残しておく。
「ちょっと話してくる」
「気を付けろよ、ケイ」
<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します> 行動値 18/40(上限値使用:4)
大した距離ではないので移動にはLv1で充分だった。蒼弦さんとザックさんが戦ってる最中だからゆっくりはしていられないけど、これだけは確認しておきたい。ちゃんと味方なのかどうかをね。……まずあり得ないとは思うけど、何か情報に間違いがあれば危険だからな。
『……ナニヲ……シニ……キタ……? ドウホウ……ヲ……キズ……ツケタクハ……ナイ……! アカカ……アオノ……グンシュウ……ヲ……ツレテ……コイ!』
「大丈夫だ。俺達がこれから解放してやるから待ってろ」
『……ムリダ。……ドウホウ……タチ……デハ……タオシ……キレン……』
「なんでそんな事を言うんだ? 手段はあるぞ?」
『アカカ……アオノ……グンシュウ……ヲ……ツレテ……コイ……!』
「……なんで赤か青の群集なんだ? なんでそんなに拘る?」
『ソレ……イガイ……ニ……カノウセイ……ヲ……モツモノ……ナド……ナニモ……イナイ……ダロウ……!』
「あっ、そういう事か!」
そうか、この半覚醒のミズウメは自分達が黒の暴走種と名付けられた事を知らないんだな。……暴走した状態でグレイからの連絡を受けられる筈がないし、そうなれば存在を知っていて、尚かつ攻撃を与えられる可能性があるのは他の群集のみ。不動種で移動はできないし、設定上は紅焔さん達が攻撃するまでは意識すらなかったんだ。他の黒の暴走種について詳しく知っている方が設定としておかしい。
……紅焔さん達がミズウメ発見した時の詳しいやり取りは分からないけど、多分この理由までは聞かなかったんだろう。そして赤の群集の連中もだな。多分みんながみんな、敵NPCとプレイヤーの情報の差を見落としてた。……俺もその可能性を今の今まで気付いていなかったから人の事は言えないけどな!
『ニゲロ……! イマハ……テダスケ……デキル……コト……ハナイ……!』
「やなこった! 倒す……いや、助けるぞ、みんな!」
「おう! 『暴発』!」
「そうこなくちゃね! 『暴発』!」
「だね。『暴発』!」
黒の暴走種としての攻撃性が抑えられなくなったのか、ミズウメが根を突き刺すように攻撃をし始めてくる。だが、攻撃の狙いが甘いのは暴走に抗っているせいだろう。さて、ここからが正念場だ。
<『暴発』を発動して行動値が倍増、全快します> 行動値 18/40 → 84/84 (上限値使用:4)
<一定時間、スキルの発動時に不発、制御不可、暴走による無差別のダメージが発生する可能性があります>
よし、これが狙いだ。あとは上手く無差別ダメージを狙うだけ!
「それじゃ行くよー! 『魔力集中』『アースクリエイト』『投擲』! あー!? 『投擲』が不発!?」
「そういう事なら、単発の方がいいかな。『ポイズンボール』! ……あ」
「ぎゃー!?」
「お、おう、ヨッシさん助かった!」
「あ、まぁ……結果オーライ……?」
ハーレさんは不発を引き、ヨッシさんは制御不能を引いてザックさんに襲いかかろうとしていた赤の群集のキツネに直撃していた。……不発は外れとしても制御不能はこの場合良かったと言えば良かったのか……?
「……なかなか思った通りにはいかないってか! 『スタブルート』!」
『……ダカラ……ムリダト……イッテ……イル……!』
アルの攻撃は暴発は発動せず普通の攻撃として直撃する。やっぱり普通の攻撃だと減衰が酷くて殆どHPが減ってないな……。とにかく無差別ダメージを狙い続けるしかない!
<行動値を19消費して『岩の操作Lv3』を発動します> 行動値 65/84(上限値使用:4)
<『暴発』により暴走状態に入ります>
上手い具合に無差別ダメージの出る暴走状態を一発で引き当てた。一応は暴走状態でも完全に制御が出来ない訳ではないらしい。……多分別枠で制御不能があるからなんだろうな。とはいえ、制御の難易度が半端ないな、おい!? 全然思った通りに操作が出来ない!
「わわっ!? 危ないなー!?」
「おい、ケイ! 流石に岩の操作は危な過ぎるぞ!?」
岩の操作の制御がおかしくなって、アルにあるハーレさんの巣の周辺を掠めていく。ここまで制御が難しいのか!? 危うくハーレさんを仕留めるとこだった!
『オマエ……タチハ……ナニヲ……シテイル……?』
「助ける為だよ! 『投擲』! やった、今度は成功だよ!」
『……ナゼ……ハイノ……オマエタチ……ガ……ワタシニ……ダメージ……ヲ……?』
「ハーレさん、ナイス!」
「ケイさんは制御に集中して! ヨッシ、危ないよ!?」
「ヨッシさん、すまん!」
よし、今度のハーレさんの投擲は上手く無差別ダメージが入ったようだ。そして今度は岩がヨッシさんに当たりそうになる。くそっ、暴走状態で普段より威力や速度が上がってないか、これ!?
「わっ!? これほんとに扱いにくいスキルだね。『斬針』『腐食毒生成』『乱れ針』『乱れ針』『乱れ針』!」
「なるほど、連撃の方が良さそうな感じか。『アースバレット』『アースバレット』『アースバレット』! ちっ、今更ながらに思ったが俺は物理攻撃が少ないな!」
ヨッシさんとアルの連撃により、ミズウメのHPはガリガリと減っていく。ただし、減る時と減らない時の威力の差がとんでもなく激しい。だが、これは確実に効果ありだ! でも、ミズウメも水分吸収でHPがジワジワと回復していく。湖に植わってるから水分には困らないってか!?
「こっちは片付いたぜ!」
「なんか凄いことになってるみたいだが、任せても大丈夫そうか?」
「……もし巻き込んだらすまん!」
「巻き込む可能性あんのかよ!?」
「ザック、俺らは少し離れとくか?」
「……あぁ、そうしよう」
赤の群集のキツネとタンポポを仕留め終わった蒼弦さんとザックさんは俺達から距離をとっていく。巻き込むかもしれないからその方がいいだろうな。
そして徐々にミズウメの攻勢も激しくなっていく。……それよりも遥かに味方の暴発のほうが危険だけどな! ……よし、このじゃじゃ馬にもだんだん慣れてきた。これなら1撃入れられそうだ!
『……ナニガ……? ……ナニガ……オキテ……イル……? ……コレ……ハ……ナンダ……!?』
「お前が孤立無援になってた間に色々進んでんだよ、こっちもな!」
そしてとうとう操作した岩がミズウメに当たりHPがごっそりと削られる。そして岩が爆発した……。そして爆発の余波が俺達にも襲いかかってくる。ちょっと待って、岩が爆発は想定外なんだけど!?
<暴走による無差別ダメージを受けました。群体数が698減少しました> 群体数 1467/3600
「わっ!?」
「爆発すんのかよ!?」
「みんな大丈夫!?」
「何とかね! HP1だったけど……」
「はい、ヨッシには蜜柑ね!」
「……『暴発』使用中に水分吸収での回復は怖いな……。このまま行くか」
みんなもそれなりにダメージを受けてHPが減っていた。ヨッシさんがHP1とか物凄くギリギリで、コケの群体にも無差別ダメージは通用するとか、とんでもないな。恐るべき無差別ダメージ。……だけどまだ1度も死んでないから、もし死んでもまだ大丈夫か。リスクは承知、それでもやるしかないだろう!
『……ワタシ……ヲ……タオセル……ノカ……? オマエ……タチ……ナラ……?』
「こっちも結構危険なことしてんだ! 信頼しながら期待せずに待っとけ!」
「無茶言うな、ケイ……」
「でもあながち間違ってないのがね?」
「よし! もう少しだし頑張るぞー!」
<行動値を19消費して『岩の操作Lv3』を発動します> 行動値 49/84(上限値使用:4)
<『暴発』により不発になりました>
<行動値を19消費して『岩の操作Lv3』を発動します> 行動値 30/84(上限値使用:4)
「あーもう! もう一発、岩の操作で行きたいのに暴走状態にならん!」
「今のうちにみんな削るよ! 『投擲』『投擲』『投擲』!」
「そうだね。『斬針』『腐食毒生成』『乱れ針』『乱れ針』『乱れ針』!」
みんなは攻撃の回数で無差別ダメージの発動を補っている。制御不能で不必要にどっかに飛んでいく攻撃や、不発、通常発動に混じりながらも暴走による無差別ダメージはどんどん蓄積していく。そして攻撃した自身もダメージを負い、果物でHPを回復しながら攻撃を続けていく。みんな酷い時はHP1までは減ったりはするけど、まだ死亡はない。
俺の方は普通の岩の操作じゃダメージにならんから破棄だ、破棄! もう1回、暴走状態来い!
<行動値を19消費して『岩の操作Lv3』を発動します> 行動値 11/84(上限値使用:4)
<『暴発』により暴走状態に入ります>
「よし、暴走状態に入ったぞ!」
「次で決めれそうだね!」
「ケイさん、やっちゃえ!」
「おうよ!」
『……タノム。……ワタシ……ヲ……カイホウ……シテクレ!』
「言われなくてもやってやるさ!」
残りHPは2割。暴走状態の岩の操作なら削りきれるはず! 止めの1撃を受け止めろ、ミズウメ! そして暴走状態の岩がミズウメへと直撃する。
<一定時間が過ぎましたので『暴発』は解除されます> 行動値 11/84 → 11/40(上限値使用:4)
「……マジか」
「HP1残るって酷くない?」
「『暴走』も切れちゃったしね……」
「いや、すぐに一斉攻撃だ! HP1なら普通の攻撃でも削りきれる!」
『……ヤハリ……ダメナノカ……?』
「ハーレさん! 俺をミズウメに向かってすぐに投げろ! アル、ヨッシさんは全力攻撃だ!」
<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します> 行動値 10/40(上限値使用:4)
ちっ、俺達もミズウメもHP1は残るなら、これは無差別ダメージがそういう仕様の可能性が高そうだな! そう簡単に進化の自殺方法はくれないってか。くそ、こういう事なら予め検証しておけばよかった!
となれば、残りは普通の攻撃で削るしかないけど、ミズウメには自前の回復手段の水分吸収がある。この状況で水分吸収での回復が始まったらまずい。即座に小石に移動して妨害に行かないと!
「ケイさん、行くよ! 『投擲』!」
<行動値を2消費して『増殖Lv2』を発動します> 行動値 8/40(上限値使用:4)
<行動値を3消費して『水分吸収Lv3』を発動します> 行動値 5/40(上限値使用:4)
小石が当たった瞬間に即座に増殖でミズウメの幹に増殖し侵食する。そして即座に水分吸収でHPの回復を阻害する。さっきの暴発中の攻撃でヨッシさんの腐食毒も入っているようなので、俺の水分吸収と合わせて回復は多少は食い止められるはず。後は僅かに回復しつつあるHPを削りきれるかどうかだ!
「アルさん、複合魔法! 腐食毒で『ポイズンクリエイト』!」
「あれか! 土の塊で『アースバレット』!」
「あれは『ポイズンバレット』だね! 私も行くよ! 『アースクリエイト』『投擲』!」
複合魔法の固形の毒の塊の砲弾『ポイズンバレット』が撃ち出され、それにまだちゃんと発動していたらしい『魔力集中』の効果ありのハーレさんのとっておきが炸裂する。そしてついにミズウメのHPを削り切る事に成功した。
『……マサカ……コンナ……コトガ……。イヤ……ジジツ……ハ……ウケ……イレヨウ……。ドウホウ……タチヨ……カンシャ……スル……!』
「おう! またどっかで会おうぜ!」
「……アァ……ソウダナ……!」
<規定条件を満たしましたので、称号『ミズウメを解放したモノ』を取得しました>
<『進化の軌跡・水の欠片』を10個獲得しました>
<『進化の軌跡・樹の欠片』を10個獲得しました>
……軌跡自体は悪くないし大量入手はありがたいんだけど、俺の属性的にこの2つはいらない……。あ、でも貨幣代わりにしてるって話だし、ありといえばありなのか? それにヨッシさんと氷の欠片と交換するのもありだな。まぁいいや。とにかく色々予定は狂ったけど、俺達の役目は無事達成!
「よっしゃー! 倒した、いや助けたぞ!」
「わっ!? 今度はなに!?」
「……これは次の段階に進んだかな?」
「だろうな。あっちはヤナギのいる方か? いや、少し方向がズレてるか……?」
ミズウメを倒し、ポリゴンとなり砕け散って消えていく。そしてその直後に異変が現れた。ミズウメのいた浅く小さな湖から光が立ち昇り、そして地面に光の線が現れて、ある方向へと向かっている。
「感慨に浸るのは後だぜ! 情報が入ったぞ!」
「情報早いな!?」
「ヤナギのいる位置から少し東の辺りで、光が走った直後に地面から瘴気に汚染された石が押し出されてきたらしい!」
「瘴気の石!?」
「間違いなくそこが浄化の要所だな!」
「……往路の実を持ってない奴っているか?」
その問いには誰もノーとは答えない。という事は全員が持っている訳だ。ならば話は簡単だ!
「ヤナギの位置といい、運が良いぞ! 今、エンとの同期中だから往路の実が使える!」
「よし、ならこのままヤナギさんのとこまで転移するぞ!」
「「「「「おー!」」」」」
みんなの気持ちが1つになった瞬間であった。そして迷うことなく全員で往路の実を使い、ヤナギさんの元へと転移する。残すところはヤナギさんをその浄化の要所へ連れて行くだけだ!
ベスタやサヤたちの戦いの結果は気になるけど、それは後で確認しよう。PT会話で声だけは微妙に聞こえていたけれど、内容を聞き取る余裕なんて皆無だったからどうなってるかは分からない。あのメンバーが簡単に負けているとは思えない。
だけれどももし負けていたとしても浄化の要所を押さえれば、競争クエストは灰の群集の勝ちだ! 最後の条件をクリアしに行こう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます