第132話 活発な情報交換

  

 アルに情報を伝え終え、池作りをしながら雑談をしていく。そして6時が近くなり、ヨッシさんとサヤの夕食の為のログアウト時間が訪れた。


「それじゃ私とヨッシは一度ログアウトかな」

「また後でね」

「おう、いってらっしゃい」


 サヤとヨッシさんが夕食の為にログアウトするのを見送っていく。俺とハーレさんの晩飯まではあと1時間あるし、今のうちにやれる事をやっておこう。このメンバーでやる事といえばもちろん情報収集だね。ということで情報共有板へレッツゴー!


「さて、今のうちに情報収集とでも行きますか」

「そだね! 色々とあったしね!」

「他のエリアの情報も気になるしな」


 特に異論もないようなので、3人で情報共有板を見る事になった。さてどんな状態だろうか。


 オオカミ : これは近いうちに踏破のメンバー集めはした方がいいかもしれんな。

 サル   : でも競争クエストとの兼ね合いがなぁ……。

 クジラ  : あ、そっか。森林深部は結構激戦中なんだっけ?

 サル   : そうなんだよ。踏破にも行きたいけど、競争クエストもやりたいっていう悩みどころ。

 マグロ  : その辺は好みでいくしかないだろ。俺は対人戦はパスだから洞窟の方に行こうっと。


 どうやらちょうど常闇の洞窟の話題になっていたようだ。ちょうど関心もあるし、こっちとしても出す情報のある話題だし都合が良い。


 コケ   : こんにちはー! 常闇の洞窟の話か?

 オオカミ : お、コケの人が来たか。正確には新しい群集クエストの話だな。

 サル   : コケの人は、今日は競争クエストはどうしたん?

 コケ   : あーいつものPTメンバーが揃ってなくてな? 夜からは参戦するぞ。

 木    : 俺のリアルの都合でな。

 サル   : あー、リアルの都合なら仕方ないか。木の人が不在は痛いしな。

 リス   : 競争クエストはどんな感じになってる!?

 サル   : 休日で参加人数が多いから『浄化の欠片』集めは順調だぜ! ただ、ほぼマップが埋まってるのに浄化の要所が見つからない!


 木    : ……何か発見の為のフラグがありそうだな?

 サル   : そうだとは思うし、怪しいのはいくつかあるけど……。っと、回復用の果物を補給しに来ただけだったんだ! あんまりのんびりもしてられない!


 コケ   : あ、補給中だったんだな。

 サル   : 詳細は夜に参戦してきた時にでも聞いてくれ! 俺はそろそろ戦場に戻る!

 リス   : サルの人、頑張れー!


 なるほどね。『浄化の欠片』の収集は順調だけど、肝心の浄化の要所が見つからないと。怪しいのはザリガニのいたあの湖、半覚醒の黒の暴走種とかその辺か。ザリガニは進化しなきゃ倒すのは厳しいだろうし、互いに有利になる状況って分かっていると他の群集に倒させるのも難しい……。……ん? なんか、引っ掛かるな……? ……これは後でじっくり考えよう。何か思いつきそうだ。


 コケ   : そういや他のエリアのクエストはどうなんだ?

 カンガルー: 荒野エリアも競争クエストはあるにはあるけど、隣の赤の群集の草原エリアは群集拠点種はまだっぽいから、多少余裕はあるかな。


 草花   : 森林エリアは森林深部と似たような感じかな。だけど青の群集は赤の群集ほど強くはなさそうだからこっちが優勢だね。


 クジラ  : 海エリアは赤の群集が異常に強いよ!? それに青の群集と赤の群集のどっちからも、俺だけ目の敵にされてるんだけど、なんで!?


 オオカミ : あー、それはあれだな。青の群集のクジラが赤の群集の初期エリアに乗り込んで大暴れしたらしいからな。そのせいだろ。


 クジラ  : 俺、同じクジラってだけで関係ないじゃん!?

 木    : ……そのクジラってBANされるほど、罵詈雑言を吐きまくって、青の群集の情報共有の邪魔になりまくってたらしいからな。


 クジラ  : そのクジラ、何やってくれてんの!? 今までも他の群集の人に会ったら妙な態度取られてたのって、もしかしてそれが原因!? え、しかもBANって事はもういない?


 オオカミ : いないはずだな。……しばらくしたら落ち着くだろ……多分。

 リス   : 一応運営に報告してみたらどうかな?

 クジラ  : ……うん、そうしてみる。


 ……あの青の群集のクジラってこんなとこまで悪影響が残ってるのか。運営のBANという処置が正しかったという事だな。今もまだ居たらもっと酷いことになってそうだ。こっちのクジラの人は完全な風評被害だもんな……。


 コケ   : クジラの人、大変だろうけどしっかりな。

 クジラ  : うん。頑張る……。


 クジラの人がちょっと元気がなさそうになってる気がする……。だからといって、あれは俺達じゃどうにも対処の手段がないからな……。自然に鎮静化するのを待つしかないだろう。


 リス   : 草原エリアはどんな感じかな!?

 木2   : ヒョウの人とライオンの人が競い合ってて、まぁ効率は良いな。ただ、誰と競争してるのかが分からなくなってくる……。


 オオカミ : またやってんのかよ、あの2人……。

 トリ   : まぁランキング形式でなければ成果は出るから、今回は楽といえば楽だけどね。

 木2   : 確か今は情報ポイントでどっちが先に『進化の輝石・雷』を手に入れるかで争ってたな。

 

 トリ   : まったく、不毛な事をしてるものだよ。

 コケ   : ……そもそも、その競争に意味はあるのか……?

 オオカミ : 間違いなく無いな。

 木2   : ないだろうな。

 リス   : そういえば、他の初期エリアに行ったらそっちの『進化の輝石』も手に入るのかな!?


 オオカミ : そういやどうなんだ? 手に入りそうな気はするが……。

 木    : 実際に行ってみないと分からないんじゃないか?

 クジラ  : それは気になる!

 コケ   : やっぱり早めに常闇の洞窟は踏破しておく方が良さそうだな。

 オオカミ : そうだな。……さっさと競争クエストを終わらせるか。

 マグロ  : 別に対人戦が興味ない奴らで先に踏破しててもいいんだよな?

 オオカミ : んなもん、誰の許可もいらないぞ。

 草花   : そうだよね。行きたい人は好きに行くで良いと思うよ。

 コケ   : だな。制限するような権限なんかない訳だし。ちょっと前まで俺も行ってたしな。


 少しクジラの人も復活したようだ。今は丁度いいタイミングだし、クジラの人は他の群集とは関わらずに常闇の洞窟の踏破をやるのが良いのかもしれないね。

 まぁそれを決めるのはクジラの人自身だな。プレイヤーが他のプレイヤーの行動を強制するのは無し。問題行為に関しては運営が動くだろうし、プレイヤーがやっていい事でもないだろう。精々マナー程度だな。


 草花   : コケの人、常闇の洞窟に行ってたんだ?

 コケ   : ちょっとレベル上げも兼ねて苦手生物フィルタの確認にね。

 オオカミ : なるほど、何をしてたのかと思ったらそういう事か。中の敵は倒せそうか?

 コケ   : 臨時メンバー含めた6人PTで普通に倒せたな。ちょっと敵が独特だからその辺は要注意。広範囲技か、毒が欲しいとこ。あと暗視か何らかの光源は絶対必要だな。奥に行けば行くほど枝分かれしてる道が多いから、この辺は情報共有が必須かも。


 オオカミ : 広範囲技か毒だな。光源か暗視がいるのは前から分かってた事として、結局のところは人数が必要っていう結論に行き着く訳か。


 コケ   : まぁそうなるな。

 リス   : あとね、洞窟内は広くなってるところ以外では普通にはログアウト出来なくなってたから、その辺が要注意かな!


 クジラ  : ……? どういう事?

 リス   : 木がログアウト中にもフィールドに残る仕様があるじゃん!

 草花   : ……そっか。道を塞がないように特定の場所以外ではログアウトが出来ないんだ。厄介だね……。


 コケ   : あ、ログアウト出来ないわけじゃなくて、入り口に戻されるって仕様だな。

 オオカミ : 戻されるだけなんだな。いや、それはそれで便利ともいえるし、厄介でもある訳か。

 草花   : そうなんだ。すぐにログアウトが出来ないのも困るからそういう仕様かな?

 木2   : なぁ、水分補給が出来るような場所ってあるか? 洞窟内だとHP回復に不安があるんだが……。


 リス   : 地下湖があったよー! って、あれは植物系の人の回復用の水場だったんだ!?

 草花   : あ、ちゃんと水場あるんだね。それは安心。

 木    : 水場があった方が良いのは間違いないが、『水分貯蔵Ⅰ』ってスキルでインベントリに水を保管出来るようになるぞ? 取り出してから水分吸収でHP回復も可能だ。


 木2   : なんですと!? どう取得するんだ、それ!?

 草花   : 気になるんだけど!?


 アルめ、一体いつの間にそんなスキルを……。っていうか、それだと俺の水分吸収と同じ仕様になるのか!? いや、HP回復がない分だけ俺の水分吸収の方が性能は下……?


 木    : 水分吸収Lv5になったら派生して取得になるから取っておくのを勧めるぜ。あと成長体でそれなりに水分吸収が上がってればポイント取得でもいけるはず。

 木2   : 水分吸収Lv5か! まだLv4だった。情報サンキュー!

 草花   : あ、ホントだ。ポイント取得出来るようになってたよ。これで採集系の称号も取れないかな?


 コケ   : あ、『採集ビギナー』ってやつ? もしくは『淡水漁ビギナー』?

 草花   : ……『採集ビギナー』の方だけど、え、『淡水漁ビギナー』って何?

 マグロ  : なんだ、やっぱり淡水版もあったのか。

 コケ   : って事は『海水漁ビギナー』もある?

 マグロ  : おう、あるぞ。

 リス   : その辺の条件って分かってたりする!?

 オオカミ : まだどれも推測段階だが『採集ビギナー』が採集物なら種類問わずで10種類以上、累計300個くらいじゃねぇかって話だな。


 クジラ  : 『海水漁ビギナー』は海に住んでる生物を10種類以上で100個以上じゃないかって話だったよね?


 マグロ  : 丸呑みで取得出来るってのが海で採集の良いところだよな。まぁ下手すりゃすぐにインベントリ一杯になるんだが。


 カニ   : でも重要なHPの回復手段だし、多い分には問題ないよな。

 マグロ  : まぁな。味のオンオフが出来るのもいい。

 リス   : 何それ!? 食べたら魚の味がするの!?

 カニ   : 基本的には刺し身だな。苦手なら味覚オフにも出来る。


 海だと魚とかが回復アイテムになるのか。丸呑みしたのを後で食べるように保管しておく的な処理になるんだろうな。そうじゃないと採集なんか海エリアの大半の人が出来ないだろうし……。

 っていうか、味覚オフなんて機能が……あ、オプションの中にちゃんとあった。……うん、コケは食べれないから設定イジれなくなってるね!?


 一応『淡水漁ビギナー』の条件っぽいのを確認してみるか。えっと今持ってて関係ありそうなのが川魚が20個、湖の小魚が10個、湖の貝が12個、湖の海老が11個、癒水草が1個だな。……確か癒水草を取得した時に称号が手に入ったはずだし……。


 コケ   : 流石に水は淡水漁は含まれないよな……?

 木    : ……流石に水は漁じゃないだろう。

 コケ   : だよねー。だったら多分『淡水漁ビギナー』は淡水に住んでる生物を5種類以上で50個以上ってところかな? ちょうどアイテム所持数がそんな感じだし。


 草花   : ちょっとずつ条件が違う感じだね。全部『容量拡張Ⅰ』の取得?

 オオカミ : あぁ、そうだ。『行動値増加Ⅰ』と同じで『容量拡張Ⅰ』を2つ取得で統合されて『容量拡張Ⅱ』に変わるのは確認済みだ。ちなみに『狩猟ビギナー』ってのもあるぞ?


 リス   : え、ほんとに!? 

 オオカミ : こっちは陸上動物を20種類以上、200個だと思われる。

 木    : ほう、少し数が多めだな?

 オオカミ : まぁ皮とか肉が別々にカウントされてるみたいだからな。

 コケ   : あーなるほど。一緒に手に入ったりするもんな。


 ふむふむ、それならそのうちサヤやヨッシさんが『狩猟ビギナー』も取りそうではあるな。『採集ビギナー』よりは『狩猟ビギナー』の方が取りやすそうだし、俺も狙ってみるかな。それにしてもみんな、推測とはいえこの取得条件をよく調べたもんだな。


 トリ   : でもまぁ1番回復アイテムとして使いやすいのは果物だね。

 コケ   : そうなのか?

 木    : そうか、コケはHPないもんな……。

 リス   : 今のところ割合回復があるのがプレイヤー産の果物だけなんだよね!

 オオカミ : 肉系は固定値回復のくせに地味に面倒で使いにくい。そもそも空腹値なんて毎日取得分のポイントの為だけにあるようなもんだしな。


 トリ   : そういや明日の仕様変更であの辺はログインボーナスに変わるってなってたね。

 

 ん? そういや、今更だけど肉の扱いってどうなってんだ? みんな、空腹値なんて気にしている所を見た覚えがないような……? 確かサヤがあるって言ってた気もするけど……。


「なぁ、アル、ハーレさん?」

「ん? なんでこっち側でだ? 別に良いけどよ」

「どしたの、ケイさん?」

「今更過ぎるけど動物系の空腹値ってどうなってんの? サヤがあるって言ってたと思うんだけど……?」

「……ほんと今更だな。あれはオンライン版じゃ毎日分のポイント取得のためだけみたいだぞ」

「明日の仕様変更で空腹値は無くなるっていったんも言ってたよー! あれってほぼ無意味で不評だったみたいだから毎日分のポイントがログインボーナスに変更になる以上は必要ないってさ! あの説明って空腹値のある動物系だけにしてたのかな?」

「マジか……。じゃあ肉の扱いは?」

「まぁ簡単に言えば肉食系モンスター専用の回復アイテムだな。しかも果物で代用可能」


 なんじゃそりゃ!? そりゃ不評にもなるわ……。だからサヤとかが回復用の果物を食べてる所しか見たことがないのか。そして説明の必要のない種族のプレイヤーには説明していないと……後でちょっといったんに文句言っておこう。


「それにぶっちゃけ生肉だからな。回復アイテムとしても使ってるやつはほぼいないぞ」

「食べたらそれなりに美味しいらしいけどねー!」

「もし進化が進んで加工が出来るようにでもなれば人気出そうだけどな」

「それはあるかも! 池が作れたくらいだしね!」

「まぁ果物だけが便利なままとも限らないしな」

「うん、大体分かった。ありがと」


 池が作れるのに肉が焼けないって事はないだろうけど、魔法産の火じゃ多分駄目なんだろうな。……すぐにどうにか出来る話でもないし、そのうち分かるか。さてと、そろそろ晩飯の時間だし切り上げようか。


 コケ   : それじゃそろそろ飯食ってくるので、さらば!

 オオカミ : おう、食ってこい。さてと俺はそろそろ競争クエストに行くか。


 その後もワイワイと果物談義で賑やかになっている情報共有板を離れていく。


「んじゃアル、また後でな」

「食べてきまーす!」

「おう。俺も今のうちに食べとくか」


 という事で3人揃ってログアウトしていった。とりあえずいったんに苦情だな!



 ◇ ◇ ◇



 そしてやってきたいったんのいるログイン場面。いつもの様に胴体には『【追記】不具合情報と仕様の変更についてのお知らせ』と書いてある。おいこら運営、しっかりしろ。追記って事はやっぱり説明足りてなかった部分があるんかい!


「いやーごめんね〜。動物系のプレイヤー以外には空腹値の説明を忘れちゃっててね?」

「……その事で文句言おうかと思ったけどその気も無くなったよ」

「ほんとごめんね!? 空腹値のないプレイヤーには必要のない情報って事で運営の人が省いちゃっててね!?」

「あーうん、だいたい分かった。んで一応、説明お願い」

「うん、えっとね、動物系のプレイヤーの毎日取得分のポイントはこの空腹値を満たすってのがあったんだ。それでここの部分と、戦闘時のポイント取得の部分に修正しきれないバグがあってね?」

「面倒くさいだけで殆ど意味もないって不評もあったから、まとめて機能を無くすって感じか?」

「うん、その理解で合ってるよ」

「まぁ俺もついさっきまで存在すら忘れてたからな……」


 聞いたのは確かサヤと出会った初日に鹿を狩ってた時だったっけ……? それっきり完全に忘れ去ってたからな。ホントにほぼ無意味なシステムだった上にバグを内包してるなら、そりゃ仕様変更になるわ。


「説明不足してて本当にごめんね! 臨時メンテについては予定通りだよ!」

「いや、理由も分かったし良いよ」


 サービス開始して1週間を過ぎた頃だけど、全く不具合なしとはいかなかった訳なんだな。それでもちゃんと要望も聞いて対応してくれるから、ちゃんと運営は仕事してるんだな。


「んじゃ飯食ってくる」

「お騒がせしました! またのログインを待ってるよ〜!」


 まぁ色々あったけど、要するに忘れ去ってるような機能は無くして分かりやすくしますって事だ。悪い事ではないだろう。

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