第131話 情報提供の報酬


「あーもう! また行き止まりだよー!?」

「段々と厄介になってきたね」

「……1人だけだったらこれは迷いそうかな」


 意気揚々と常闇の洞窟の奥へと進んでいったものの、時間が経ち奥に進めば進むほど進むのが難しくなってきた。広さは充分あるけども、分かれ道がかなり増えてきていたからだ。行ったり来たりでなかなか前進していかない状況が続き、なかなか先へ進むのが厳しくなってきている。敵のレベルも16〜17と結構上がってきているしね。

 そして行き止まりだったからとやって来た方向へ引き返したら引き返したで、少し前に倒したヤツが既に残滓化して待ち受けたりしている。いや、レベル上げが目的だから経験値的には良いんだけどね。そんな事の繰り返しであった。前回の探索で海水の地下湖を見つけたのは相当運が良かったのかもしれない。


「……これは適度に帰って、マップの情報共有をした方が良いエリアだな」

「僕もそう思うかな。これは1PTでやるには骨が折れるね」



 結構な回数の戦闘を繰り返したので俺はLv17までは上がった。未発見の別種のコウモリとクモの発見と討伐報酬で各種ポイントも16ずつ手に入っている。『闇グモ』と『光モリ』とかいう逆の適応をしていた黒の暴走種だったな。


 5時も過ぎたので早ければそろそろアルがログインしてくる可能性もあるし、6時になればサヤとヨッシさんは夕食で一度ログアウトになる。合間で安全地帯を見つける度に休憩をしたとはいえ、そろそろ1回本格的に休憩した方が良いかもしれない。夜には競争クエストの方にも行く予定だしね。


「目標には届かなかったけど、まぁ結構レベルも上がったしそろそろ引き上げますか」

「賛成ー!」

「ちょっと疲れたかな」

「そうだね。1回ログアウトして休憩したいかも」

「なら、僕はここまでだね。結構楽しい時間をありがとう」

「ソラはこのまま洞窟にいるか?」

「……そうしたいところだけど、ソロでは無理だろうね。一度群集拠点に戻るよ」


 俺らと合流した時点で厳しく感じていたなら、そこより奥地のこの辺は厳しいよな。


「ソラさんは対人戦はしたくないんだよね?」

「まぁ、そうなるね」

「だったら南部の高原エリアの調査クエストをやってみたらどうかな?」

「そういえば他のクエストの情報は仕入れてなかったね。どんなクエストなんだい?」

「私は直接やってないから伝聞にはなるんだけど、地図作成の群集クエストに近い感じみたいらしいよ」

「あと、個人でやるクエストで期限はないって言ってたね!」

「へぇ、それは僕向けかもしれないね。後で行ってみるよ」

「それじゃ、群集拠点にーーあ、ごめん、フレンドコールだ」

「うん、待ってるからどうぞ」

「悪いね」


 さて、誰からのフレンドコールだろうか? って、アルか! 仕事が終わって帰って来たんだな。色々あったから伝える事が沢山あるし、早速出よう。


「おう、ケイ。レベルはどんなもんよ?」

「今はLv17まで行ったぜ」

「おー、結構上がってんな。って事は『常闇の洞窟』はレベル上げには良さそうだな」

「まぁな。ただし色々と制約もあるけど」

「ほう、そうなのか。後で話を聞かせてくれ」

「そりゃ勿論だ。あ、そういや今までの群集クエストは完全クリアになって、新しいのが始まったぞ?」

「演出は見れてないけど、それは俺もクエスト受注欄から詳細は確認したぜ」

「そっか。とりあえず、これから戻ろうって考えてたとこだから、戻ったら説明するわ」

「なら、エンのとこで待ってるのが良さそうだな」

「あ、確かに。んじゃ戻るから後で合流な!」


 アルと戻った後に合流する約束をしてフレンドコールを切った。さて合流したらとりあえず色々と説明しないとな。確かアルがLv12だったはずだから、どっかでレベル上げの埋め合わせも必要かもしれないね。まぁ、その辺は何とかなるだろ。


「アルさんだったんだね!」

「おうよ。戻ったら合流って事になった」

「それじゃ僕たちはここまでだね」

「そうだな。ライルもカステラもまだログインは先だから、俺らは2人で高原エリアにでも行ってみるか?」

「お、それもいいね。そうしようか」

「それじゃ帰還の実を使うのも勿体無いし、ログアウトを使って戻るか」

「ならPTはここで解散だねー。また機会があれば一緒にやろうねー!」

「おう、良いぜ!」

「僕らの方からお願いしたいくらいだよ」

「んじゃここで解散って事で!」


 そうしてみんなそれぞれにログアウトしていく。帰還の実を使わずに帰れるのは地味に便利だな。



 ◇ ◇ ◇



 そしてすぐに再ログインする。いったんには特に何も言われなかったので、この帰還方法は想定のうちなんだろうな。


<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します>  行動値 37/37 → 36/36(上限値使用:1)


 再ログインしたから夜目の発動は切れていたので再発動。移動はここはコケの多い森林深部だし群体化でいいか。……雨は止んだけど、空を見上げて見れば星空は見えずに厚い雲に覆われている。曇りだと晴れてる時よりも視界は悪いか。

 とりあえずみんなを探して合流しよう。みんなログアウトしたからPTも解散になっちゃったしな。お、あれは紅焔さんとソラさんだな。紅焔さんがソラさんの背中に飛び乗って、空を飛んでいった。そうか、ああいう移動方法もありなんだな。ほんと種族によって色んな移動手段があるもんだな。……紅焔さんのPTって地味に飛行系が多いよね。


「あ、ケイさん発見!」

「ケイ、いつもの場所に行くから早くしろ」

「あ、ちょっと待ってくれ。エンに用がある」

「んじゃサヤ達から先に話を聞いてるぜ」

「それじゃ先に行って説明しとこうかな」

「ケイさん、先に行ってるね」

「後でそっちの情報もよろしくねー!」


 ブラブラとみんなを探していたら向こうから見つけてくれた。既にみんなは合流済みだったようで、俺が最後だったらしい。うん、みんな俺の事を見つけるのに慣れているようだ。

 折角エンのところにいるんだから気になってる事もあるし、みんなには先に行ってもらって作業分担をしておこう。群集拠点種の新情報の収集と、ここまでの事情をアルに説明するのを同時進行だ。って事で俺はエンに話を聞いて、色々確認しておこう。


「おーい、エン!」

『おう、どうした?』

「マップの情報提供と『追憶の実』について、ちょっと教えてくれ!」

『おう、分かった。どっちからだ?』

「とりあえずマップの方で!」

『ほいよ』


 情報提供のウィンドウが目の前に表示される。内容は提供可能エリアの一覧と提供可能の黒の暴走種の発見情報だな。えーと、今は名も無き森林と常闇の洞窟が提供可能になってるね。

 一応両方とも情報提供しとくか。まずは名も無き森林の方。こっちは踏破率1%で情報ポイントが5貰えると。今5%くらいにはなってるから25ポイントだな。黒の暴走種は成長体5種類で1種類5ポイント、未成体1種類で1種類10ポイントで35ポイントか。


 次は常闇の洞窟だ。って、群集クエストによる地図情報提供の情報ポイント5倍に増加中だって!? ……これは前回提供しなくて正解だったかもしれない。えーと、元々が1%で情報ポイント20だったから5倍になって1%で100ポイント。あの広さを考えたらこれくらいが妥当なのか……? えっと、俺の今の踏破率が1%に到達したところか。あれで1%か、先は長いな……。黒の暴走種の方は増加はなしで1種類5ポイント。発見が成長体6種類だから、30ポイントだな。


 えーと、ここまでの合計で情報ポイント190か。進化の輝石にはまだ遠いけど、現実的に不可能な範囲でもないか。地道にやれば充分貯められる範囲だね。


「あ、そうだ。進化ポイントの譲渡ってなんか代わりにもらえたりするのか?」

『あー、一応進化ポイント1に対して情報ポイントを1渡す事にはなってるぜ。目的が別の事だから少ないのは悪いけどな』

「そうなんだ。進化ポイントを渡すとエンってなんか変わるのか?」

『おう、変わるぜ。他の群集拠点種との連携するために根を伸ばさなきゃならなくてな、その強化に使わせて貰う予定だ』


 なるほどね。ある意味では群集拠点種専用のスキルの取得に使われるのか。……それならちょっと端数を提供しておこうかな。


「それじゃこれだけ提供しておくよ」

『おいおい、良いのか? 結構な量だぜ?』

「良いって。ちょっと貯まりすぎて扱いに悩んでたし、まだまだあるしな」

『……そういう事なら有り難く、受け取って置くぞ』


 提供したポイントは増強進化ポイントを26、融合進化ポイントを17、生存進化ポイントを20だ。これでどのポイントも残りはちょうど120になった。……進化までにまだポイントは手に入りそうだし、これだけあれば多分大丈夫だろ。それに誰かがポイント提供しなければ群集クエストも進まないしね。

 そして情報ポイントは63ポイント追加っと。これで情報ポイントは合計253ポイントだ。さてと残りの用件はあと1つ。


「あと『追憶の実』ついて教えてくれ!」

『おう。『追憶の実』はグレイが映像記録として残している群集拠点種の誕生とかの記録を再現するものだな。あとは何かしらの連絡を行った際の記録もだな。欲しけりゃ渡すから言ってくれ』

「おう、そんじゃ1個くれ!」

『1人1個限りだから、そもそも2個と言われてもやれんけどな。ほれ、これだ』


 そしていつものように実が落ちてきてインベントリへと入っていく。さてと、どんな風になっているのかな。


【追憶の実:始まりの森林深部・灰の群集エリア2】

 始まりの森林深部・灰の群集エリア2にて発生した、終了した過去のイベントの特殊演出の再現映像を見る事が可能になる。

 ゲーム内フィールドではなく、ログイン場面にて使用可能。


 お、これはゲーム内で使うんじゃなくて、いったんのいるあのログイン場面で使うアイテムなのか。という事は1人専用って事で、みんなと一緒に見る事は出来ないのか。……流石に無条件で貰えるアイテムでそんな我儘も言えないよな。

 みんなが使いまくって特殊演出だらけになってもそれはそれで台無しだから、個別に見る方がいいだろう。それに1人用で再現映像だとしてもあの特殊演出をまた見れるのは嬉しいし、多分他の群集拠点種からも同種のアイテムが貰えるんだろう。そしてそれを使えば他のエリアでの特殊演出も見れるはず。


 それにしてもゲーム内で使えないアイテムでインベントリを圧迫するのもあれだな。その辺はどうなって……あ、この追憶の実をここで使用したらログイン場面に送られてインベントリからは消えるのか。よし、使用しておこうっと。うん、インベントリからは消えたから、これでログイン場面へと送られたかな。あとは多分いったんに言えば使えるのだろう。


「エン、ありがとなー!」

『おう、頑張れよ!』


 エンへの要件も終わったので、みんなと合流しよう。場合によっては競争クエストは誰か1人でもマップ情報をエンから貰って全体像を把握しておいた方がいいかもしれないし、その辺も相談しないとな。



 そしていつもの崖下へと移動してきた。そしたらみんなで池作りをやっていた……。いや、情報説明してたんじゃないの!?


「ただいまー! ってあれ、なんで池作りやってんの?」

「ケイ、やっと来たか。そりゃ行動値が増える称号があるんだから、やるしかないだろ」

「状況説明なら作業をしながらやってるかな」

「会話だけならやりながらでも問題ないしね!」


 どうもただ喋っているだけというのも時間が勿体無いから称号とスキルの熟練度上げも並行してやっていたという事だったようだ。今日はアルも土の操作で池作りに参加している様子。これはアルが『地形を弄るモノ』の取得狙いか。

 それじゃ俺も池作りをやりながら仕入れた情報の説明をしようかな。どっちにしても今から競争クエストに行っても、時間的には夕食を挟む事になるから中途半端になるしね。



 そして池作りをしながらの状況説明をしながら時間は過ぎていく。だけど6時前までには何とかアルに説明し終えた。


「なるほど。『常闇の洞窟』は今のレベルなら倒すのは問題ないが、道が複雑で単独PTでは時間がかかるんだな?」

「だと思う。まぁ拠点に戻らずひたすら頑張れば多分出来なくはないと思うけど……」

「それよりは共有化したマップを貰って、踏破済みルートは行かない方が効率は良いか」

「まぁそういう事だな」


 おそらくそれが最も効率の良い手段だろう。人海戦術で行き止まりをすべて潰していき情報共有するのが確実だ。あそこは根本的に広すぎるし、そもそもクエストとして情報提供が推奨されている。

 途中の安全地帯や群集拠点種の強化も考えるなら、強化具合で短縮ルートが生まれる可能性すらある。現時点で競争クエストに転移の為のアイテムがある事だしね。


「そんで、ハーレさんもサヤも苦手生物フィルタで問題ない範囲だったんだな?」

「私は接近戦は出来れば避けたいけど、どうにかなる範囲ではあるかな」

「私も大丈夫ー!」

「それくらいなら大丈夫か。実際どうにかなってたんだろう?」

「サヤも投擲は持ってたから、それで戦ってたぞ」

「うん、そうだね。そのおかげで少し投擲もレベルが上がったかな」


 Gへの突っ込み事件はアルには話さなかった。あんまりしつこく言ってもあれだし自粛しておく。まぁ母さんから聞いた話も関係してなくはないけども、それは誰にも言わないでおこう。

 そして俺は俺でさっきエンから聞いた話をみんなに伝えておく。これであとは単純に情報提供でポイントを貰ってくれば良いだけだ。みんなが情報ポイントをどれだけ貰えるかはわからないけどね。


「具体的にどれだけ情報ポイントが貰えるかはそれぞれで確認しといてくれ」

「人の分は分かんないからそうなるよねー! 後で確認しに行っておこうっと!」

「追憶の実も気になるかな。1人用っていうのが少し残念だけど」

「サヤ、それは仕方ないって。改めて見れるだけでも良い機能だよ」

「だな。とりあえず俺がいない間の情報はこんなもんか?」

「……多分そのはず」

「あ、いったんが1回バグってたよ!」

「……マジか。……気にはなるけど、ぶっちゃけどっちでもいい情報だな」

「まぁねー!」


 さてとアルに伝えるべき情報はこんなもんだな。……そういやアルの苦手な生物っているんだろうか? 支障があっても困るし、忘れずに聞いておくべきだな。


「アルって、苦手な生物っているのか?」

「基本的にはどれでも平気だぞ。ゲーム内なら特にな」

「ゲーム内なら?」

「……リアルなら毒持ちの生物はお断りだ」

「それは大半の人がそうじゃないかな?」

「うん、私もそう思う」

「確かにそうだね!」

「……いや、まぁそうなんだけどな。以前牡蠣に当たって盛大に苦しんだ事があってだな?」

「あー、なるほどね……」


 確かにそれは嫌な経験だろうな。うん、でもそれはやっぱり誰でも同じだと思うけどね。まぁそれならゲーム内ならなんの問題もないな!




【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:水陸コケ

 所属:灰の群集


 レベル 14 → 17

 進化階位:成長体・複合適応種

 属性:水、土

 特性:複合適応


 群体数 154/3100 → 154/3400

 魔力値 66/66 → 66/72

 行動値 28/39 → 39/42


 攻撃 33 → 39

 防御 41 → 47

 俊敏 32 → 38

 知識 54 → 63

 器用 54 → 63

 魔力 74 → 86


 

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