第130話 三つ目の群集クエスト
思った以上に普通に倒せているので、サクサクと奥へ進んでいく。どうやらここら辺までは適正レベルは成長体Lv10〜って感じかな。奥に行けば行くほどちょっとずつ敵のLvは上がっているから、更に奥に行けばどうかはわからないけど。
出現した黒の暴走種の攻撃の傾向を見た感じだと今のところは魔法や遠距離攻撃が有利のようだ。特にコウモリ相手では。……クモは糸を使わせずに近距離からの物理攻撃で一気に仕留めた方が良さそうだけど、そうしなくても対処が可能な範囲だしサヤを無理に苦手な相手と戦わせなくてもいいだろう。
しばらくするとまた開けた場所に出た。そして今度はそれほど広くはないが地下湖が存在している様子である。薄っすらとだけど、ここにも僅かに光があるな。ここの光源はなんだろう? 天井部分が青く光ってるっぽいけど、何が光っているのかはよくわからない。洞窟内の光る生物全部知ってる訳でもないし、別にいいか。それにしてもこの光ってるかどうかが安全地帯の目安みたいだな。
「おー地下湖だー!」
「また結構広いところだね」
「ここは……うん、ログアウト可能かな」
「……うん、湖には黒の暴走種もいないようだね」
「ん? ソラさん、分かるのか?」
「まぁね。タカには固有スキル『鷹の目』っていうのがあって、敵と獲物の索敵が出来るんだ。『識別』みたいに詳細は分からないけどね」
「敵と獲物って事は、黒の暴走種か一般生物かって事なのかな?」
「うん、そうなるね。他の群集相手にも索敵は出来るみたいだけど、僕は対人戦は進化に関係するもの以外ではする気はないからさ」
「なるほどな。まぁどうプレイするかは人それぞれだし、別に良いんじゃないか」
対人戦にも有効なら競争クエストでは凄く役立ちそうではあるけど、本人にその意志がないのであればそれを尊重すべきだしな。無理強いは良くないし、なによりそんな事をしたらゲームをゲームとして楽しめなくなってしまう。
「そういう反応は嬉しいところだね。このスキルの事を話した相手の大半がせっかくのスキルが勿体無いという人ばっかりだったから……」
「おいおい、俺はそんな事は言わなかっただろ?」
「紅焔達もそうだったね。だから一緒にPTを組んでるんだよ」
「……すまん、競争クエストを優先しちまって」
「いや、気にしなくていいさ。僕がPTに入ったのも紅焔達がクエストを始めてからだったしね」
紅焔さんのとこのPTも色々と結成までには事情があったみたいだな。気が合う相手と出会えるかどうかっていうのも重要なんだろう。その点では俺はかなり運が良かったかな。
「さてと、ちょっと休憩していくか?」
「あ、いいねー! 私ちょっと泳いでくる!」
「あ、ハーレ!? もう、行動が早いんだから」
「あの感じなら休憩しかないかな?」
「まぁもう泳いでるしな?」
「あはは、ホントに君たち面白いね。湖には黒の暴走種はいないけど、一般生物は居るみたいだからねー!」
「分かったー! ヨッシ、一般生物を採ろうよ!」
「え! あ、でも『淡水漁ビギナー』が取れるかも。うん、やろう!」
「私も混ぜて欲しいかな!」
「うん、サヤも一緒にやろー!」
みんなに確認してからと思ったけど、既に湖へと遊びに行ってしまった。ハーレさんは母さんからの話を聞いた感じだと、今は楽しくて仕方ないんだろうな。よし、ちょっと遊びやすくしてやるか。
土の操作を切って、地面へと小石ごと落ちていく。さてやるか。
<行動値を2消費して『増殖Lv2』を発動します> 行動値 33/35(上限値使用:4)
<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します> 行動値 32/35(上限値使用:4)
<行動値を2消費して『増殖Lv2』を発動します> 行動値 30/35(上限値使用:4)
<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します> 行動値 29/35(上限値使用:4)
<行動値を2消費して『増殖Lv2』を発動します> 行動値 27/35(上限値使用:4)
<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します> 行動値 26/35(上限値使用:4)
<行動値を2消費して『増殖Lv2』を発動します> 行動値 24/35(上限値使用:4)
<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します> 行動値 23/35(上限値使用:4)
<行動値を2消費して『増殖Lv2』を発動します> 行動値 21/35(上限値使用:4)
「お、これは凄いや。光るコケの広がる洞窟の中の地下湖とはね」
「おー明るくなった! ケイさんありがとー!」
「はは、こりゃいいや」
洞窟の地面に増殖でコケを増やして光源を増やして、明るく照らし出す。とはいってもそんなに強烈な光ではないので眩しいような事はない。どこでもいつでも出来るわけじゃないけど、少しくらいの間ならこれくらいは良いだろう。
……自分でやっといてなんだけど、地下湖のすぐ横で自発的に光るコケを大量に増やしたら結構な神秘的な光景になったな。うん、これはこれで良いものだ。
さてとしばらく休憩しようかな。ぶっ続けで戦ってるとやっぱり精神的な疲れは出てくるから、こういう休憩場所はありがたい。
「あ、『淡水漁ビギナー』取れた!」
「おー、やったねヨッシ!」
「んーここは私には少し難しいかな……?」
「流石にクマだと警戒されちゃったもんねー!」
3人とも楽しそうに地下湖で泳ぎながら魚や貝やエビを採っている。いやヨッシさんだけは泳いではいないけど。ハーレさんが捕らえた獲物を上に投げて、ヨッシさんが始末するというザリガニのいた湖でやってたのと同じ事をしている。というかハーレさんがリスなのに潜って魚を採るとか器用な事をやってるな。何かコツでもあったりするのか?
<群集クエスト《地図の作成・灰の群集:『始まりの荒野・灰の群集エリア1』》がクリアされました>
<群集クエスト《地図の作成・灰の群集》のクリア率:5/5>
<群集クエスト《地図の作成・灰の群集》及び、群集クエスト《拠点の作成・灰の群集》が完了しました>
<群集拠点種にて『追憶の実』が入手可能になりました>
<規定条件を満たしましたので、群集クエスト《群集拠点種の強化・灰の群集》を開始します>
「お! ついに全部終わったか!」
「すぐに次が始まるみたいだね」
のんびりと寛いでいた紅焔さんとソラさんが飛び起きて反応する。そうか、とうとう5エリア全てに群集拠点種が誕生したか。
「みんな中断! 採ってる場合じゃないよ!」
「そうだね。これは見ておかないとね!」
「見逃したら後悔しそうかな!」
そして湖にいた3人は慌ててこちらへと戻ってくる。そりゃこの機会を逃せば見られない演出の方が優先か。あ、でも地図の作成のクリア報酬で見れるようになるっていったんが言ってたし、もしかしてさっき表示された『追憶の実』とかいうのがそれ関係の物か? ……次にエンのところに行った時に確認しておこうっと。
そしていつものようにグレイの姿が現れてきた。相変わらずの半透明で人型の幽霊の姿だな。まぁこれがゲーム上の設定の精神生命体の姿みたいだし、代わり映えもするわけ無いか。
『同胞の者たちよ、たった今5ヶ所に設定した安全地帯の全てにおいて地図の作成と群集拠点種の誕生が完了した。まずは礼を言わせてもらおう。皆の協力に感謝する』
いえいえ、こちらこそ群集拠点種のエンにはいつもお世話になっていますとも。帰還の実とか便利だしね。雨の日には雨宿りさせてくれるらしいし。まだこれは見てないけど。
『まだ誕生したばかりの地点では調査は不完全だが、【大地の脈動】に関して分かった事がある』
ほうほう、それで次の段階へとクエストが進んでいくという話になるんだな。群集拠点種の強化ってなってたから、エンの強化がメインになってくるんだろうか? でも経験値って自動的に貯まっていくんじゃなかったっけ。なんか別の強化手段でも出てくるのかな。
『今は力が枯渇しているか、または流れが変わってしまったのか、その辺りの詳細はまだ調査中ではあるが、我らが拠点とした5ヶ所の『浄化の地』を繋ぐ【大地の脈動】の跡地となる場所が判明した。……その地には既に足を踏み入れた者もいる筈だ』
ほう、大地の脈動の跡地が判明ときましたか。……この言い方だと思いっきり心当たりのある場所があるというか、今まさしくーー
『瘴気の塊によって塞がれていた『常闇の洞窟』と命名した場所こそがその跡地だ』
やっぱりここかー!? え、この洞窟ってそういう設定の場所なの!?
『同じような跡地が複数ある事も確認は出来たが、そちらは赤の群集と青の群集の支配下の地域に繋がっている可能性が高い。私達では手は出せないだろう』
同じような洞窟が複数存在していて、それらはそれぞれの群集専用であり、他の群集とは繋がってないんだな。うん、これは重要だ。まぁ別々にあるっていうのはゲーム的な都合だろうな。こういうとこをリアルにし過ぎて、どこかの群集が洞窟の占拠とかになれば悲惨だし。
『そこで、そのかつての【大地の脈動】の跡地を利用する計画を立てた。『常闇の洞窟』を経路として、群集拠点種同士で連携を取るためのネットワークを構築する』
ほう、そう来たか。群集拠点種同士を繋げて、群集内での協力体制の強化をしようって感じなんだな。そうなると、その為の情報収集がクエストの内容か?
『これまで通り地図情報は任意提供になるが『常闇の洞窟』の内部情報、特に他の安全地帯への正確な経路情報を重点的に必要としている』
お、やっぱりか。っていう事はある意味、今の段階で既にクエストの一部をやっているって事にもなると。戻ったら他のエリアも含めてマップ情報を提供して、情報ポイントも貰っておこう。もう1種類くらい『進化の輝石』も欲しいとこだし。
『そしてそれを成す為にも群集拠点種の強化が必要となってくるため、継続的な強化を頼みたい』
<群集クエスト《群集拠点種の強化・灰の群集》が開始されました>
<Lv上限に達している時点で取得した経験値が『群集拠点種』へと自動譲渡されるようになりました>
<任意で『群集拠点種』に各種進化ポイントの譲渡が可能になりました>
<群集拠点種5体に集まった情報を総合して、5ヶ所の群集拠点への『常闇の洞窟』内の順路が確立されればクリアとなります。積極的にマップ情報の提供を行いましょう>
これで演出は終わりでグレイの姿は消えていった。Lv上限でも経験値が無駄にならなくなる訳か。……これは望んだ進化先を出す為にLv上限で進化させずにいても、経験値は無駄にはならないね。そして余ってる進化ポイントを群集拠点種へと譲渡出来ると。……もしかして群集拠点種もスキルを取得したり、進化したりするのか? これも後で要確認。
そしてクリア条件は群集拠点種同士を繋ぐ経路の情報を揃える事か。ということは踏破率100%である必要はない訳だ。それぞれのエリアから他のエリアに繋がる経路を特定出来る情報が全て揃えば良いんだな。
「今回のは特にランキングとかは無いみたいだな」
「あ、そうなのか?」
「そうみたいだぜ? まぁ後から追加がないとも限らないけどな」
「今回は情報ポイント集めがメインじゃないかな? 僕としてはそっちのほうがありがたいけど」
「まぁ、すぐには終わりそうにもないよな」
そもそもこの洞窟、一本道ではなくてあちこちで分かれ道があるからな。前回潜った時も結構進んだと思っても思ったほどは進めてなかったし。でも他の初期エリアと繋がってるなら広くて当たり前か。
前に掲示板で見た情報では他の初期エリアに辿り着くのに複数エリアを移動する必要があったみたいだし、下手をしたら他のどのマップよりも広い可能性すらある。踏破するならじっくりとこれに専念しての話になりそうだ。
「とりあえずこのまま進む?」
「まぁ予定を変える理由もないな。むしろ進んだ方がクエストには良さそうだし」
「それじゃ休憩終わりにして出発しようー!」
「うん、それが良いかな」
「僕は、元よりそのつもりだね」
「とりあえず競争クエストで勝つ為にもレベルは上げてたほうが良いからな」
現状ではやる事の変更の必要性は皆無だからね。俺達はアルが、紅焔さんも他の2人がログインするまでは競争クエストには行かない予定だから、それまでは予定通りにレベル上げ。『常闇の洞窟』の踏破は競争クエストを終わらせてからだな!
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