第125話 レベル上げの下準備
ササッと群集拠点種へと移動していく。道中は雨上がりで地面が滑りやすくなっていてサヤが少し移動しにくそうだった。でも、こればっかりはどうしようもないからな……。湿地エリアは木の移動種がいれば歩きやすくなるらしいし、アルが居ればもう少し違ったのかもしれない。
……ん? もしかして地面に水分吸収を使えば地味に大丈夫だったのか……? でももうエンは目の前だし、今更遅いか。ってなんか妙な感じがする。
「……この辺は濡れてない?」
「なんでかな?」
「エンがいるから……?」
「ちょっと聞いてくるねー!」
「おう、よろしく」
ハーレさんがエンの近くにいたプレイヤーの元へと素早く駆け寄っていった。良く見てみれば、エンの周辺を中心に雨に濡れた様子がなくなっている。ヨッシさんの言うようにエンが雨避けになってたのか……? あ、聞き終わったのかハーレさんが戻ってきた。
「聞いてきたよー!」
「おかえり。どんな理由だった?」
「えっと、あれくらいの雨ならエンが枝や葉を広げて、この周辺の傘代わりになってくれるんだってさ! 結構見た目が変わってて凄かったらしいよ!」
「へぇ、そんな事になってたんだ。それはちょっと見てみたいかな?」
「そんな事もあるんだ。まだ他にも色々とありそうだね」
「また雨が降らないかなー!? 見てみたい!」
「そうだな。次に雨が降った時には見に来てみるか」
その光景は確かに一度は見てみたい光景だ。是非とも次の機会があれば見に来よう。それにエンが傘代わりになるって事は雨の日はサヤみたいに活動しにくくなる種族の雨宿り場所も兼ねてるのかもしれない。俺は逆に雨の影響はほぼ受けないけども。
もしかしたら普通の木の不動種のプレイヤーもエンと同じような事が出来る可能性もあるかもな。アルはアルで樹洞の中に退避してしまえば雨宿りにはなるだろうし。
さてこの周辺が雨で濡れてない理由も分かったし、サクッとLv上げに行きますか。……と思ったら見覚えのあるトカゲを発見。あ、こっちに気付いて近付いてくる。
「よう、ケイさん達も雨宿り? あ、でもアルマースさんいるから必要ないか」
「おう、紅焔さん。俺らはさっきの雨は濡れまくってたぞ」
「投擲用の泥団子を作ってたんだよ!」
「ほう、泥団子って作れるんだ? あれ、アルマースさんはいないのか?」
「あー夜からログインだってさ。だからそれまでこの4人だな」
「お、マジか。俺も夜までライルもカステラもログイン出来なくて、何やるか悩んでたとこなんだよな。もう1人PTメンバーいるけど、そっちもログインしてないしな」
あらま、他のメンバーが全員いないんならどうしようもないな。というか、紅焔さんのとこはもう1人いるのか。その人にはまだ会った事はないような気がする。
まぁ全員が全員全く同じタイミングでログイン出来るわけでもないから、そういう事が起こるのも仕方ないと言えば仕方ないけどもね。俺のとこだってアルは今いないし。
「競争クエストの方は大丈夫かな?」
「あー多分だけど、大丈夫だろ。さっきまでここでPTの募集もあって雨が止んだから出発してたしな。休みだから張り切ってるやつが結構いたぞ」
「おー! って事は今は向こうは人が多い!?」
「ま、土曜だしな。明日はもっと多いかもね」
「あーそうなるよな。……例の黒の暴走種の事は大丈夫か?」
あの赤の群集側の半覚醒の黒の暴走種を何も知らずに倒されると困るかもしれないからな。かと言って24時間、誰かが見張るって訳にもいかないだろう。逆に灰の群集側のヤツなら倒してもらっても構わないけども。
「その辺は募集の際に周知してたみたいだし、なるようにしかならないって。まぁ倒された時は倒された時だ」
「……それもそうだな。全員に周知するのは難しいか」
それこそログイン場面のようなところで周知しなければ不可能な話だ。万が一倒したとしてもそれだけで詰むという事はないだろうし、周知しきれないのは赤の群集も同じ事だしね。気にし過ぎても仕方ないだけだな。
……そして人が多いなら今は競争クエストのエリアはレベル上げにはとことん不向きだろう。あそこは今は赤の群集は倒しても経験値はないし、普通の黒の暴走種は大して経験値は良くなかったし。
「そういや紅焔さんは野良PTには参加しなかったのか?」
「それも考えはしたんだけど、やっぱりクエストはあいつらと一緒にやりたいからな」
「あ、なるほどね。私達と一緒か」
「ケイさん達もそうなのか?」
「まぁな。って事で夜にアルがログインするまではLv上げの予定。Lv上げはしといてくれって言われてるしな」
土曜の夜ともなればプレイ時間が確保出来て参加者も増える可能性は高い。そうなると競争クエストも激戦化する可能性もある。そして、赤の群集のプレイヤーとの戦闘で優位に立つためにもLvは上げておいた方が良いだろう。可能ならば未成体に進化可能になるLv20にはしておきたい。
そして紅焔さんも俺達と同じような理由で今は競争クエストには行かないみたいだな。うん、気持ちはよく分かる。
「ケイさん達はLv上げに行くんだな。それなら一緒に行ってもいいか?」
「俺はいいけど、みんなはどう?」
「問題ないよー!」
「大丈夫かな」
「私もいいよ」
「お、サンキュー!」
という事であっさりと紅焔さんが臨時のPTメンバーに加わった。火属性はこのPTにはいないので戦法の幅が広がって良いね。さてとそれじゃ早速Lv上げに行くとしよう。
「ちなみに何処でLv上げするんだ?」
「『常闇の洞窟』の予定。紅焔さんはあそこは入れる?」
「あーヒノノコの残滓は倒すだけは倒したから一応行けるけど……。あの真っ暗なとこでやるのか? ……そうか、ケイさんのあの灯りか!」
「そういう事。まぁ苦手生物フィルタの確認も含めてだけどな」
「私はクモが苦手でね……?」
「私は黒いGが駄目!」
「あーなるほど。それは確かに確認は必要そうだ」
紅焔さんがヒノノコ未討伐ならまた倒す必要もあったけど、その必要はないらしい。そしてLv上げ以外の目的も察してくれた。
「あの中だと死ぬ可能性は高そうだけど、その場合はどうすんの?」
「……どうするかな? どの程度の苦戦具合かにもよる?」
「1回死んだらそこまでで良いんじゃないかな? 2回目はデスペナで経験値は減っちゃうし」
「確かにね。無理してする事もないんじゃない?」
「私はそれでいいよー!」
「それじゃ各自死亡は1回までで、死亡時はエンのところに戻るのでいいか?」
「いいよー!」
「それが無難だね」
「私もそれでいいかな」
「俺も問題ないぜ」
みんな、それで異存はないようだ。今回の『常闇の洞窟』入りは各自死ぬまで、行ける範囲で探索して、苦手生物フィルタで大丈夫かの確認と、見つけた敵を仕留めていって経験値を稼ぐのが目的だ。あんまり洞窟の奥まで入る必要もないだろう。いやまぁ、行けそうなら行くけど。
「そういやケイさんは今回は移動方法はどうするの?」
「……場所が場所だしな。とりあえず水球移動しながら、状況を見て纏樹を使うか」
あそこはコケが全くないわけではないけども圧倒的に少ないのは間違いない。ここは他の移動手段を使うべきだろう。とりあえずLv2で発動したままの発光をLv3で再発動して、水球移動にしようか。
<『発光Lv2』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 34/34 → 34/36(上限値使用:1)
<行動値上限を3使用して『発光Lv3』を発動します> 行動値 34/36 → 33/33(上限値使用:4)
お、発光Lv3になったらそこそこ明るいっぽいな。……夜目が発動中だからちょっと分かりにくいけど、これなら『常闇の洞窟』の光源としては充分だろう。さて次は水球移動の準備だな。
<行動値上限を3使用して『水中浮遊』を発動します> 行動値 33/33 → 30/30(上限値使用:7)
<行動値1と魔力値4消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 29/30(上限値使用:7) : 魔力値 58/62
<行動値を4消費して『水の操作Lv5』を発動します> 行動値 25/30(上限値使用:7)
結構な行動値の消費量になってきたけど、上限値自体が増えているから余裕は出てきてるな。……ただし、この移動中は水球での攻撃しか出来ないから要注意。あ、そういや忘れないうちに退避用のコケ付き石も用意しとかないと。
「結構明るくなったかな?」
「これなら問題なく行けそうだね」
「あ、悪い。誰か退避用のコケ付き石を持っててくれないか?」
「それなら必要だと思って持ってきてるよー!」
「お、マジか。ってどこ入れてんだ!?」
「え、だって手に持ってたら邪魔だもん」
「……ぐっ」
ハーレさんがいつものコケ付き小石を持ってきてくれてはいた。ただし、出てきたのは頬袋の中からだけど。うん、確かに誰かに常時持っててもらうのは邪魔になるのはその通りだし、これは仕方ないか。持ってきてくれた事もありがたい事だし、ちゃんと群体化の有効範囲内のままだしな。
「……それでいいよ。持ってきてくれててありがとな」
「とりあえずこれで準備完了か?」
「そうだね。そろそろ出発しようかな」
「んじゃPT組んで突撃だー!」
「サヤとハーレは苦手生物フィルタの設定もちゃんと確認しときなよ?」
「それはそうかな。うん、確認しておくよ」
「私も確認しとかなきゃ!」
そんな様子を眺めながら紅焔さんがしみじみと物思いに耽っていた。紅焔さんが初めに組んでいたPTはバラバラになったそうだし、何か思うところがあるのかもしれないな。
「賑やかなもんだな、ケイさん」
「まぁな。結構居心地も良いしな」
「それは何より。ま、臨時のPTメンバーだけどよろしくな」
「こっちこそよろしくな。火魔法、頼りにしてるぜ」
「ケイさんの水魔法も頼りにしてるからな」
「準備完了かな。出発はいつでもいいよ」
「目指せ、Lv20ー!」
「流石に午前中には無理だろうけどね」
「目標だからいいの!」
「ま、とにかく頑張りますか!」
出発準備は整ったので、PTを組んでいざ出発! 目的地は危険度の高い『常闇の洞窟』だ。慎重に進みながらも確実に仕留めて経験値を稼いでいこう。ベスタの調査結果からしたら、今の俺らが全然敵わないという事はないはずだ。Lvも多少は上がったし、光源はもちろん、攻撃用のスキルも結構上げた。
さぁ、強くなった実力を測るという意味でも頑張って行こうじゃないか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます