第86話 常闇の洞窟の探索


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『常闇の洞窟』に移動しました>


 さてと到着したぜ、『常闇の洞窟』! 相変わらず真っ暗だな……。昼間でもほんのり光を帯びているエンの近くの植物達を見習えよ! よし、しょうもない事を考えてないでさっさと暗視を使ってしまおう。ってその前に一応詳細を確認しとくか。


『暗視』

 『夜目』でも見通せぬ暗闇の景色を映し出す。発動中は行動値上限を3使用。任意でオンオフ可能。


 完全に夜目の上位互換じゃないですか。まぁ誰でも夜の日に1時間で取れる夜目と一緒にしたら駄目か。でもその分、行動値の上限の使用量は増えている。これだと普段使いは夜目の方だな。とりあえず発動してみよう。


<行動値上限を3使用して『暗視』を発動します>  行動値 28/28 → 25/25(上限値使用:3)


 お、流石は上位互換のスキルだ。夜目よりはっきり見える。ただ視界はほぼ白黒のみで他の色はない状態だな……。流石に昼間の明るい視界と同じとはいかないか。

 こういうスキルがあるって事は、こんな真っ暗な場所が他にも色々あるって事なんだろうな。さてこのエリアに暗視が有効なのは証明された。よし、次だな。とりあえず、内部の地形調査だ。まだ移動はせずにここから見える範囲を確認していこう。


 あ、昨日のコウモリを発見。移動なしの俺なら気付かれないみたいだ。……確かコウモリって超音波とかで周囲を確認してるんだっけ? ……洞窟内にコケさえあれば群体化での移動でバレずに移動できるか……?

 よし、一応コウモリの数を確認しておくか。1、2、3……9、10……まだいるのかよ……。これ、本当に群れか? 実は全部で1体で、今は分裂してるだけとか言ったりしないよな? うーむ、ゲームだしその可能生は否定が出来ない……。バラバラの数を倒すのが楽なのか、巨大なコウモリ1体を倒すのが楽なのかも微妙なところ。……見てるだけじゃ分からないし、とりあえず放置で! まずは最優先で群体化出来るコケを探せー!


 うーむ、洞窟の地面にはなさそうか……。壁面はどうだろう? 白黒の視界だといまいち判別がつかないな。なんとなくそれっぽいのがありそうな、なさそうな……。よし、こうなれば力技で強引に行こう。


<行動値を3消費して『群体化Lv3』を発動します>  行動値 22/25(上限値使用:3)


 手動設定で視界内最大まで設定してっと。これで視界内に群体化出来るコケがあれば、赤くなって指定が可能になるはず。よし、ほんの少しだけど見つけた! 外の森はコケで溢れているけど、流石に洞窟の中は少ないか。それでも少しだけどちゃんとコケはあるじゃないか。早速群体化してしまおうっと。


<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します>  行動値 21/25(上限値使用:3)


 そして一応移動してみよう。近場だったからLv1で充分だな。さてとこれでコウモリがどう反応するものか……?


<規定の条件を満たしたため、スキル『発光』を取得しました>

<同系統の互換一般生物に対して群体化及び群体内移動を行った為、融合進化ポイントを3獲得しました>


 とりあえずコウモリ反応はなしだけど、それよりも気になる事が起きた。確か水生コケを群体化した時にも似たようなのあったな。このコケ、もしかして普通のコケじゃなくてヒカリゴケ……? 普通のコケって真っ暗だと駄目だろうし、何より発光ってなればそういう事なんだろう。……これって地味に光源ゲットだな。詳細も見ておこう。


『発光Lv1』

 自らを光らせる事が出来る。光の強さはLvに依存。発動中は行動値上限をLv分使用。任意でオンオフ可能。


 予想外に常時発動型のスキルだった。明るければ明るいほど使用の負担も大きくなると。どの程度の明るさがあるのかは気になるけど、ここで試すのもな……? せめてもう少し奥まで行ってみて、これ以上は無理そうってとこまでは行っておきたい。今使って敵が殺到してきても困る……困るのか? いや、コケを食べるヤツが居ないとも限らない。慎重に行こう。


<行動値を3消費して『群体化Lv3』を発動します>  行動値 18/25(上限値使用:3)


 とりあえず、この洞窟の中ではコケの判別が難しいから群体化の指定範囲の表示に頼っていこう。よし、少し離れた所に他のコケを発見。ちょっと距離があるから、群体内移動はLv3が必要っぽい。


<行動値を3消費して『群体内移動Lv3』を発動します>  行動値 15/25(上限値使用:3)


 よしよし、群体内移動ならコウモリには気付かれないらしい。物理的な動き方はしてないから、察知出来ないのだろう。サヤたちのわいわいと賑やか声も聞こえてはいるけど、喋ると気付かれる可能性が出てくるから今はひたすら黙って行動あるのみ!



 そんな感じの移動を繰り返しながら、奥へ奥へと進んでいく。群体化Lv3に上がってて良かった。Lv2なら届かない距離のコケの場所もいくつかあったからな。そして、この『常闇の洞窟』は真っ直ぐではなく結構曲がりくねっている。よし、行動値も減ってきたし回復兼ねて一旦休憩。情報を纏めよう。


 しばらく内部を探索して分かった事は、この洞窟内にはコウモリ以外にはまだ何も見つけてはいない。他の黒の暴走種は隠れているのか、他の種類はいないのかそれはまだ分からないけども……。


 ん? なんだ……? 何かカサカサという音が聞こえてくる。これは虫か……? あれ、なんか光ってるな? ……あ、デカいクモだ。なんか知らないけど光ってるぞ。ホタルかよ、お前……。


<成長体・暴走種を発見しました>

<成長体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント4獲得しました>


 そして発見報酬来ましたぜ! 行動値も全快したし、ついでに識別しておこう。


<行動値を1消費して『識別Lv1』を発動します>  行動値 24/25(上限値使用:3)


『光源グモ』

 種族:黒の暴走種

 進化階位:成長体・暴走種


 やっぱり成長体か。それにしても光源グモってお前……。いやまぁ確かに光源だけどさ。ってなんか近付いて来てるし!? ん? 狙いは俺じゃないのか。……なるほど、すぐ近くにクモの巣があるのか。迷い込んで来たのか、一般生物の虫が巣に捕まってるな。

 あ、よく見ると光源グモが近くにいる時のコケがキラキラと光ってる。これに虫が誘き寄せられて、クモの餌食になってるのか。コケの繁殖用の光源ってもしかしてこの光源グモ……?


 この黒の暴走種の光源グモは暗闇に適応するんじゃなくて、明かりを灯す方に進化したんだろう。こいつを倒したら『進化の軌跡・光の欠片』とか落ちたりしないかな。……気にはなるけどそれは後回しにするか。気付かれてないみたいだし、戦闘するにはまだ早い。とりあえず、気付かれるまではもっと詳しく調べていこう。



 光源グモをやり過ごし、更に洞窟の奥を目指していく。時折カサカサと虫が動くような音が聞こえてくる。これは下手したらゴキブリやらムカデやらの害虫系の虫がいる可能性がありそうだ。さっきの光源グモといい、初期エリアではいなかった系統のモンスターが出現するようになってるか。

 確かサヤがクモが苦手で、ハーレさんがゴキブリが苦手って言ってたっけ。みんなでここに来る時は要注意したほうが良いかもしれない。苦手生物フィルタの設定は必須だな。




 さてと気になる点はいくつか発見出来た。この『常闇の洞窟』、結構広い上にあちこちに分かれ道がある。これは勝手な推測だけど、それぞれの分かれ道の先って色んなエリアに繋がってるんじゃないか……? それこそ他の初期エリアとか。

 何よりも気になったのが、分かれ道の1つの先に多分海水っぽい地下湖があった事だ。ちょうど現在地もこの湖だ。これ、本当に海水なら海に繋がってるんだろう。薄っすらと地下湖の中に奥へと進む水路みたいなのもあったし、魚もちらほら居たんだよな。……あとイカっぽいのが見えたんだよね。だから海水じゃないかと思ったんだけど。


 全てのエリアに特殊地形があるみたいな情報もあったし、常闇の洞窟の入り口はそこにあったものだ。……でもその場合だと、他のエリアでの洞窟の入り口が開放前だと下手すれば出口が塞がっている可能性もある。ちょっとこれ以上の深入りは無駄骨の可能性も出てきた。そろそろ引き上げるとしますか。これは1人でやるには手が掛かりすぎる。情報共有板行きの情報だな。


 それじゃ、洞窟そのものの探索はこの辺りにして実戦投入の実験に移るとしますかね! とりあえず目の前の地下湖が本当に海水か確かめてみようじゃないか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る