第85話 拠点に集まるプレイヤー
いや『群体化Lv3』をちょっと甘く見ていたよ。手動によるピンポイント指定って超便利。今まで一発芸・滑り以外では殆どLv1ばっか使ってたけど、これはさっさとLvを上げておくべきだった。
行動値の消費量は増えたんだけど、その分1回の使用で長距離進めるようになったのと、最小限の群体数に抑えられて『群体化解除』を使用する頻度が低くなったのが大きい。
今までは毎回100〜400とか群体化して、長距離移動する時はすぐに群体数の上限行くから割と頻繁に解除が必要だったけど、Lv3で毎回10とかまでに減らせたからね。これだけ少なければ、群体化の可能範囲外に出るまで解除しなくても群体数が圧迫されることも無い!
今日の移動には群体化をガッツリ使ったので本日分の融合進化ポイントを3確保した。今の総ポイント数は増強進化ポイント56、融合進化ポイント46、生存進化ポイント45だね。後で何かスキルを取得してみるか、それとも温存しておくか微妙に悩むところ……。
それにしても群体化Lv3がこれだけ便利になるなら、一発芸・滑りから『群体化解除』を外しても……。……ありかもしれないけど、今回のはそれで熟練度稼げてなかったんだからよっぽど急ぐ時以外は一発芸・滑りは使用禁止にしておこう。便利だからって頼り過ぎは駄目。
『一発芸・滑り』
登録内容:『群体化Lv3』・『群体内移動Lv3』・『群体化Lv3』・『群体内移動Lv3』・『群体化Lv3』・『群体内移動Lv3』・『群体化Lv3』・『群体内移動Lv3』・『群体化Lv2』・『群体内移動Lv2』
まぁ登録だけはしておくけども。『群体化解除』は登録せずに手動発動にしておこう。さて、出発だ!
「よっしゃ、到着!」
思った以上に移動の効率が上がっていたので、エンの場所まではそれほど時間はかからなかった。一発芸・滑りは便利だけど、やっぱり頼り過ぎは良くないな。そういや一発芸大会はいつやるかな? 明日アルがログインして変異進化が終わってからやろうか。よし、そうしよう。
それにしても流石は群集の拠点となっただけはあるな。時折遭遇するくらいだったプレイヤー達が沢山集まって来ている。ちらほらとボスの残滓の討伐を目的とした野良PT募集の呼びかけもちらほらといるな。そりゃ新エリアにはみんな行きたいだろうし、固定PTを組んでる人ばっかりじゃないだろうから当然の流れか。
お、ハーレさん発見。向こうも気付いたのか駆け寄ってくる。
「ケイさんもこっち来たんだね!」
「まぁな。ハーレさんもこっちに来てたか」
「うん! ヨッシとサヤとこっちで待ち合わせしてたんだ! ケイさんも一緒にどう?」
ハーレさんはヨッシさんとサヤと待ち合わせか。うーむ、折角のお誘いだけど今日はちょっと色々試したいからな。邪魔って訳じゃないけど、正直色々とどうなるのか未知数なので今回は実験が終わるまではソロで動きたい。
「あー、ちょっとあの洞窟で色々と実験してみたいから、とりあえずソロで動くよ」
「そっか! 何か色々思いついてるって事だよね!?」
「まぁそうとも言う」
「それじゃ情報期待してるね! あ、そうだ。個人的な事情なんだけど次の土日はログイン出来そうにないんだ……」
「あらま、そうなのか。折角の土日なのにな」
「そうなんだけど、私の意思じゃどうにもならなくてね……」
ハーレさんは土日に何かリアルで用事でもあるんだろうな。この言い方だとハーレさん的には不本意っぽい感じではあるけども。まぁそれぞれにリアル事情もある訳だし、ログイン出来ない日もあって当然の事だ。
お、ヨッシさん発見。
「あ、ハーレ見っけ! ケイさんも一緒なんだね」
「ヨッシ! やっほー! あれ、サヤは?」
「サヤならあっちだよ」
ヨッシさんが指で指し示す代わりに、針である方向を指し示す。……なんかクマの群れが出来ている一画があるぞ……? なんだあれ?
「なんか、他のクマのプレイヤーに捕まっちゃったみたいでね? 今、昨日の氷狼戦とそれまでの移動の件で質問攻めになってるよ」
「なるほどね。適当に誤魔化して来ればいいのに」
「そういうの、サヤは苦手だからね」
「……そういうヨッシさんは?」
「私? 既に逃亡済み!」
「あ、そうですか」
しっかりしているヨッシさんだった。まぁ昨日は観戦してた人も多かったし交流を求めてくる人が居てもおかしくもないか。一番参考になるのは同じ種族の強い人だしな。
……俺はむしろ他のコケのプレイヤーに会ってみたい。クジラの人が灰の群集以外にもいたんだし、いるとは思うんだけどな。でも他の群集所属とかならまだ会えるとも限らないか……。
まぁそれは今考えても仕方ない。バタバタしてて聞きそびれていた事を今のうちに聞いておこう。
「そういや、ヨッシさん、昨日の氷狼戦の時の……毒魔法でいいのかな? あれってどんな風に取得したんだ?」
「あ、あれはね、他の操作系とはちょっと取得方法が違うみたい。3種類の毒が氷狼に入った瞬間に称号『毒を扱うモノ』が取得になったんだよね」
「……もしかしてスキルで複数の毒を扱う事が取得条件か……?」
「多分そうだと思う。でもなんとなくだけど、他の操作系と同じような手段でも取れそうな気はするんだよね」
ふむ。種族固有の『根の操作』っていう例外もあるんだし、操作系スキルも物によってはまだ未発見の取得条件もあるんだろう。今までで分かってる取得方法だと、自然の毒を使うには……うん、毒ありの植物でも黒の暴走種に食わせたらなんとかいけるか……? 食わせるのに苦労しそうだけど。
でも毒持ちの植物とかあんまり知らない。『識別』のLvを上げるとか『看破』を手に入れれば毒を持ってる植物とか見分けられたりしないかな?
「ハーレさんの『危機察知』で毒持ちの植物とか分かったりしない?」
「私にとっての毒は分かるけど、それが黒の暴走種に効くかは分かんないよー?」
「あーそれもそうか。まぁ、今度試してみようぜ」
「そうだねー! 毒アイテムが手に入ったら泥と混ぜてみようっと!」
なんか新たなハーレさんの弾の候補が出来たみたいである。うん、それもありだよな。あ、もしかたら地図作成の素材詰め合わせには毒持ちの植物とかもあったかもしれない。そういう可能性があるなら次の機会があれば素材詰め合わせもありかもしれないね。
あ、クマの集団の中から見覚えのあるクマが出てきた。あれはサヤだな。
「やっと解放されたよー。あ、ケイも来てたんだね」
「私達は3人でこれから熟練度上げのつもりなんだけど、ケイさんもどう?」
俺の知らない間に3人で予定が決まっていたって事はリアル側で予定を決めてた感じか? まぁ今日の俺はソロで実験の予定だしな。今日はそういう気分。あと、単純に新エリアに本格的に進出する前に色々とまだ未使用の手札を確認しておきたいんだよな。
「ケイさんは今日はソロで実験するんだってさ!」
「……またケイは色々と思い付いてそうかな?」
「ケイさん、今度は他のプレイヤーを轢かないように!」
「大丈夫だって。『常闇の洞窟』で実験予定だし」
あそこならまだ人も少ないだろう。場合によっては俺達のPT以外はまだ足を踏み入れていない可能性もある。……ベスタ辺りなら行ってる可能性はなくもないか。まぁ少ない事は間違いないだろう。
「……そういえばケイ、昨日の報酬で『暗視』を選んだとか言ってたね」
「えーと、暗視、暗視……。えっ? 操作系スキルより必要ポイント高いよ?」
「あ、ホントだ! 生存進化ポイント25は厳しいね!」
みんなしてスキル取得一覧を眺めていた。必要ポイント数とか考えなかったけど、そんなにポイント必要なのか。これは期待が高まるね。そしてポイントは多く必要だけど、みんな取得可能なスキルって訳だな。あとは暗視がどれだけ通用するか、こればっかりは試してみないとわからない。
「俺単独なら気付かれない可能性もあるし、折角選んだ『暗視』の性能確認もしたいからな。あと纏属進化の実験もしてくるつもり」
「その内容なら確かにソロの方が向いてるかな」
「ケイさん、後で情報お願いねー!」
「今度はどんな事をやらかすのかな、ケイさんは」
「あー、それならPTだけでも組んでおくか? 会話自体は出来るしな」
「それもそうだね! そうしようー!」
という事でPTを結成して、俺だけ単独行動となった。黙々と一人でやってもいいけど、会話が出来る方が良いもんな。まぁ気付かれずに洞窟の中へと行くのが目的だから、俺は迂闊には喋れないけど。
「それじゃちょっと『常闇の洞窟』まで行ってくるわ!」
「「「いってらっしゃい!」」」
3人に見送られながら、出発する。さてどれだけの色々な事が出来るかな? 暗闇特有のコケでも生えてればいいな。それを群体化した時に、水中のコケを群体化した時みたいに何かスキルが取得出来ればなお良し!
まぁ今回は未知の要素が多いので死ぬ可能性も否定できない。まぁゲームなんだし1回はデスペナで経験値減少は無いし、死ぬ事については気にしなくても良いや。
「あ、昨日の氷狼戦のPTだ!」
「あっ!? また見つかった!?」
「とりあえず個別に逃亡! いつもの崖に集合で!」
「みんな、頑張れよ!」
「ケイさん、いつの間にあんなとこまで!?」
「あー! ケイさんだけ速攻逃げた!?」
「ケイ、そこは全力を出すところなのかな!?」
うん、色々言われてるけど気にしない。今こそ登録し直した一発芸・滑りを使う時! 情報に飢えてるプレイヤー達から逃げるには仕方ないんだよ……。みんな頑張れよ! 俺は『常闇の洞窟』へ行くぜー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます