第68話 新たな水魔法


「私は泥団子作ってるから、サヤから先にやってていいよー!」

「そっか。ハーレは弾が必要だし、その方が無駄はないもんね。それじゃお言葉に甘えて先にやらせてもらうね」

「うん、サヤも頑張ってね!」

「よっしゃ、早速本格的にやりますか」


 目指すはとりあえずサヤとハーレさんの『魔力集中』の取得。ヨッシさんが戻ってきたらヨッシさんも含めて一緒にだな。副次的にハーレさんが『土の操作』と『土魔法』の取得、俺は『水の操作』と『水魔法』のLv上げ。様子を見ながら『岩の操作』も使っておきたいところ。

 アルがログインしたら、組み合わせ替えながら対戦形式で他のスキルの熟練度上げも並行してやっていこう。



 そしてしばらくサヤのスキル取得に向けて、特訓を進めていくとふと気付いた事があった。これって、この性質のままじゃ水の操作で出来てた事が一部出来なくなる。そんな事があるのか……? よし、早速試してみるか。さて、思った通りならば……。


「おっ、やっぱりこういう事も出来るのか」

「えっ!? そんなのもありなの?」

「これが出来なきゃフクロウ戦の時の戦法とかが水魔法じゃ出来なくなるしな」


 水飛沫を上げながらサヤの爪が水を切り裂き、そして爪が通り過ぎた後には元の状態へ戻っている。よし、思った通りの結果だ。フクロウ戦では完全に封じ込めはしなかったけど、一時的には閉じ込められたんだ。水魔法の水で同じ事が出来ない筈がない。

 何も言わずにいきなりやったので、その結果にサヤが驚いていた。そりゃさっきまで弾かれてたのに、いきなり弾かれなくなったら驚くか。ちょっと驚かせようと思ったところもあったから、謝っとこう。


「やるのは良いけど、先に言ってよ……」

「ごめん、ごめん」


 標準状態では弾き返す性質になっていた魔法産の水だけど、少し意識して操作してやれば反発力も消す事もできるようである。うん、ちょっと普通の操作より感覚的で難しいけど、この使い分けは有りだな。これなら、フクロウ戦で中途半端に失敗した水への封じ込めも今度こそ可能かも?

 待てよ? そうというよりは、水の操作で球形に維持してるから反発力が発生してるのか? うーむ、操作してないと扱えないしどうにも判断のしようがない。上空に上げてから操作解除して、それを攻撃してみてもらおうかな?



「サヤ、ちょいとパターン変えてみる。水球を上の方に浮かせてから解除するから、落ちてくる水に攻撃してみてくれ!」

「うん、わかったよ!」

「んじゃ行くぞー!」


 水球を浮かせてから操作解除っと。あーこれじゃ水が適度にバラけて落ちていくだけだ。連続的に水が落ちてくる訳じゃないからあんまり意味がない。根本的に水量が足りないな……。それでも、サヤはその水に向けて爪で一閃していたけど。うん、弾かれる様子はないけどそれ以外はよく分からん。まぁ弾かれるのは水球にしてるからって推測自体は間違ってなさそうだ。


「これだと効果があるのかないのか、いまいち分からないね?」

「……うん、俺もそう思ってたとこだ。普通に水球でやるか……」

「そだね、そうしよう」


 もっと水量があって大量に水が操作できたら、崖の上と崖の下で循環させて擬似的な滝でも作ってみるんだけどなー。まだスキルLv的に無理なのか、他のスキルも必要なのか分からないか。

 とりあえずもう一回、水の作り直しだな。


<行動値1と魔力値4消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 12/23(−1): 魔力値 30/46

<熟練度が規定値に到達したため、スキル『水魔法Lv1』が『水魔法Lv2』になりました>

<『水魔法Lv2:アクアボール』を習得しました>


 お、マジか!? 特訓用にそこそこ使ったから、意外と早く水魔法のLvが上がったぞ!


「……ケイ? どうしたの?」

「あ、悪い。水魔法のLvが上がってつい操作するの忘れてた」

「え、ほんとに?」

「なになに、ケイさん、どうしたのー?」


 特訓が中断状態になったのに気付いたハーレさんもこちらへとやって来た。泥団子を散々作りまくっていたのでさっきよりも更に泥だらけになっている。


「ハーレさん、一回洗い流そうか?」

「んー、後でいいや。それより魔法のLvが上がったって聞こえたよ!」

「おうよ。それで新しい魔法も覚えたな」

「おー! どんなの!?」

「やっぱり新要素だし、気になるよね」

「ちょい待ち。今、説明読むから」


 これだと一度特訓中止で新魔法のお披露目かな。まぁ俺も気になるから、試してみないと。さてどんな魔法だろうか?


【水魔法Lv2:アクアボール】 消費行動値:2 消費魔力値:8

 魔力値と行動値を消費して水の球を生成して撃ち出す事が出来る。同時生成数は『水の操作』の制御分割数に依存。撃ち出す速度の指定は『水の操作』のLvにより上限が変動し、消費魔力値に加算。


 ふむ。これって、俺が水の操作で作ってる水球と同じじゃね? でも、消費行動値はこっちの方が少なくて済むのか。その分だけ魔力値を使うけど……。水の操作で操れるのが今は2つだから、2発同時に使えて、ついでに速度指定もありか。うーむ、これはちょっと使ってみないとなんとも言えないな。


「実際に使ってみないとよく分からないな。ちょっと試し打ちしてみていい?」

「どんなものか見てみたいし、大丈夫だよ」

「そだねー! 是非とも見せて下さいな!」


 よし、それなら試し打ちといってみよう。さっき発動したアクアクリエイトは水の操作してないから別の魔法を発動しても問題なしか。てか少しだけど行動値も魔力値も回復してるね。


<行動値2と魔力値8消費して『水魔法Lv2:アクアボール』を発動します> 行動値 16/23(−1): 魔力値 32/46


 発動時に球の数を指定できるのか。まぁ実験だしここは1つにしておこう。速度指定は1〜4までか。水の操作のLvが上限ってなってたもんな。とりあえずどんなものか分からないのでここも1で行こう。次は、おっ!? これは初めての仕様だな。照準マークが視界に出てきたよ。なるほど、これで狙いをつける訳だな。照準はそこらの岩にしておこう!

 ここまで指定して初めて発動か。これはある程度使い慣れてないと誤発動とかやらかしそうだ。とりあえず発動準備完了っと。後は猶予時間の間に任意で発動か。猶予時間切れだと不発か暴発かどっちだろうか?


「よし、んじゃ発動するぞ! 標的、そこの岩!」


 その合図と共に水球を撃ち出す。お、そこそこの速さだな。これは指定4なら結構な速度が期待できそうだな。さて威力はどんなものか……。


 ビキリッと水球が岩に直撃した途端に、岩から嫌な音が聞こえた。岩に命中した水球は弾け飛び、雲散霧消していた。後に残った岩には亀裂が入り、割れていた。


「ちょ!? 予想以上の威力!?」

「……これ、私の『双爪撃』くらいの威力はありそうだね」

「ケイさんの攻撃力が上がったね! 流石は魔法だね!」


 少なくともアーサーをボコった時の魔法産の水を操作した水球の威力とは比べ物にならない。自由自在に動かせる訳じゃなさそうだけど、この威力は申し分ないな。速度を上げれば威力も更に上がりそうだ。その分消費魔力値も増えるけど仕方ないだろう。行動値が少ない分、攻撃としては使いやすいかもしれない。


「ちょっと離れてたら、ケイさんがまたなんか色々やってるね」

「あ、ヨッシ! おかえりー!」

「ヨッシ、ポイントはどうだった?」

「ただいま。なんとかポイントは確保して『魔力制御Ⅰ』も取得してきたよ。それで今度は何事?」

「ヨッシさん、おめでとさん。これはスキルLvが上がって取得した新魔法の実験をしてたんだよ」

「見た目は今までの水球と変わらなかったのに新魔法だとああなるんだ……。なんかどんどん置いていかれてる気がするなぁ……」

「ヨッシ、大丈夫だよ! ケイさん以外は誰も進展してないから!」

「自慢げに言うことなのかな……?」


 うーむ、まぁ色々先走ってるような気はしなくもないけど、その代わりに他のスキルが全然育ってないからね。さてと、スリップやら毒生成やらどうやって育てたものか……。まぁそこらは後回しでもいいか。今はみんなの『魔力集中』の取得からだな。

 そろそろ水の操作のLvも上がって欲しいとこなんだよな。水の操作はLv3で行動値消費が減って操作数も増えたからLv5で何か変化がある気がしてるんだよな。まだ変化の法則が分かってないから絶対とは言えないけどさ。


「ま、焦らず頑張って特訓していこうぜ!」

「そうだね。焦って結果が出る訳じゃないしね」

「そうそう! 焦りは禁物なんだよね!」

「そうだよね。焦っちゃ駄目……焦っちゃ駄目……」


 ちょっとヨッシさんが少し不安定気味だけど、大丈夫だろうか? とりあえず特訓再開はヨッシさんから行ってみるか……?



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