第42話 早すぎた取得
あまりじっくり見ていなかったスキル一覧を見てみれば、なにやら知らない《応用スキル》とかいう項目が増えていて、その中に『岩の操作』があった。『岩の操作』って確か、称号『岩を扱うモノ』を取得した時の報酬だよな……? これって公表しても良い情報か?
「ケイ? 固まってどうしたよ?」
「なぁ、アルは《応用スキル》って知ってるか?」
「はぁ? んなもん、聞いたこともーーって、まさか……」
「ケイさん、また新発見!?」
「色々と新実装のものが多いんだね」
「とりあえず詳細教えろ! どんなスキルを手に入れた!?」
どうやらこの反応を見る限り誰も知らないみたいだ。とにかく『岩の操作』の詳細を見てみよう。《応用スキル》なんて分類だけじゃ細かい事はよく分からない。
『岩の操作Lv1』
行動値を消費する事で岩を操る事が可能になる。操作の難易度はLvに依存し、また消費行動値も変動する。
あ、説明文自体は『水の操作』と大して変わらないな。えーと、それで消費行動値は……。え、20……? え、ぎりぎり発動出来るか? いや、『夜目』発動中だと微妙に足らないから今は無理か……。
「……《応用スキル》は『岩の操作』でLv1での行動値消費は20だってさ」
「消費が随分多いね? 今はまだ取得する段階のスキルじゃないのかな?」
「まぁ《応用スキル》って名前からして幼生体で使うもんとは思えないな」
「なんか下位スキルがありそうだよね? というか『岩の操作』が何かの上位スキルかな?」
「アルさん、ケイさん、この情報はどうするー?」
「ケイ、どうする? この情報、前の『水の操作』の情報と合わせたら操作系スキルの取得条件がある程度絞れるぞ?」
おそらく大体の条件は掴めた。操作系スキルはアルの『根の操作』みたいな固有スキル以外は、多分『〜を扱うモノ』系の称号と共に貰えるスキルだ。そしてその称号の取得条件は、推測だけど何らかの方法で自然の中にあるものを利用し、何かの実績を残して別の称号を得る事。
『水の操作』を手に入れた時は『植物達の救世主』と同時で、今回の『岩の操作』は『森を荒らすモノ』と同時取得だ。他にも条件があるかもしれないけど、試す価値があるだけの条件には絞れている。
「……多分、これはそのうち誰かが気付くよな? みんなは操作系スキルって取得したい?」
「まぁ、そうだろうな。俺は『根の操作』があるけど、まぁ他にも取れるならそりゃ取りたいわ」
「私もなんとか取ってみたい!」
「そうだね、私も取ってみたいかな」
みんな揃って取得希望だった。当たり前と言えば当たり前の反応か。ヨッシさんはどうだろう? やっぱり取りたいって言いそうな気はする。……うん、決めた。
「条件付きで公開しよう」
「おぉ! 流石、ケイさん!」
「ケイ、いいの?」
「いつか誰かが気付くならね。俺らだけ全員持ってたら秘匿してるのバレバレで使いにくいしさ」
「意図はわかったが、条件ってのは?」
「それは見てのお楽しみって事で!」
そうと決まれば早速書き込みだ! さて、途中で書き込み中断みたいになったけど、今はどうなってるだろうか。
オオカミ : 手が自由に扱えるヤツは色々投げてみるのもありかもしれんな。
サル : そういや物を投げたら『投擲』は手に入ったな。まぁこれはオフラインでもあったやつだが。
シカ : 角で倒木でも突き刺して振り回してみるとか。
トカゲ : 流石にそれは直接角で攻撃した方が早いだろ。
シカ : 確かに……。でも崖の上から落石くらいならいけるか?
草花 : 『根の操作』をLv上げて、根で土を固めて殴ってみるとか出来そう……?
オオカミ : そうか、そういう手段もあるか。花だとキツそうだが、木なら大きな岩とかでもいけるんじゃねぇか? ……植物系の方がこの手段は応用力高いのか?
草花 : あ、そうかもね。すぐには無理だけど色々出来そう。
どうやら自然物を利用した攻撃方法の考案をしていたようだ。そうなるとこの追加情報はかなり有益だろう。その手段の先にあると思われる情報だからな。
木 : あー盛り上がってるとこ悪いんだが、追加情報だ。とっておきのな!
オオカミ : ん? 急に書き込みが途絶えたからどうしたかと思ったが、情報公開の相談をしてたか?
リス : あ、オオカミの人はやっぱり鋭いね! その通り、相談してました!
クジラ : って事は、他にも重要な情報が!?
コケ : いつもは木に任せてたけど、今回は俺が自分で説明するよ。その代わり条件というか、ちょっとお願いもあるしね。
サル : 条件? お願い? どんな事だ?
オオカミ : まぁお詫びの情報としてはさっきまでのでも充分だったしな。
コケ : まぁ無茶な事は言わないさ。これから公開する情報で試して手に入った情報は極力ここで共有して欲しいだけだよ。あと他の群集には内緒でな!
オオカミ : ちょっと待て。そんな前置きが必要ってどんな情報だよ、おい!
草花 : ……かなり応用の効く情報? そういう条件なら問題はないけど。
トカゲ : 他の群集に内緒ってのは賛成! ここで情報共有も大賛成! どっかのヤツはフレにすら情報隠すからな……。
シカ : そうそう。ってこっちのPTの話はいいか。同じく賛成。
ライオン : 今居ない者や見ているだけの者の動きは制限出来んが、極力共有をすると約束しようではないか。
オオカミ : そうだな。ライオンの人の言う通り全員に守らせる事は不可能だが、最大限の努力はしよう。
クジラ : おうともさ!
サル : まぁ今まで木の人経由で色々情報流してくれてたしな。それでいいよ。
今書き込んでいる人達は同意してくれた。ライオンの人が言うようにこの情報を見た人全員にという訳にはいかないだろう。まぁそうなったらそうなった時だ。次に何かの情報を手に入れた時に出し渋ればいい。
コケ : とりあえず今回手に入れた称号の事からーー
大雑把に手に入れた称号と《応用スキル》の存在、そして推測した取得方法を説明していく。これは実際に色んな人に試してもらい、その結果を書き込んでもらうのが良いだろう。その為の条件だ。そしてここで公表した以上はPTメンバーで全力で取得を目指して目立っても問題ない。そして、一通りの説明が終わる。
オオカミ : ……なるほどな。《応用スキル》って上位スキルの存在に、操作系スキルの取得条件、それに関わる称号か。こりゃ確かに有用過ぎる。さっきまでの検証も無駄じゃないどころか最優先だな。
シカ : 確実に『岩の操作』って取得が早すぎるスキルだよね。行動値20消費はヤバい。
トカゲ : ヤベェよな。俺、行動値上限20もないから発動すら出来ないやん。
コケ : 取得したものの、行動値が足りなくて発動出来ないっていうね?
クジラ : そうなんだ? コケの人、今レベルいくつ?
コケ : 今は9だな。
リス : あ、追いつかれてる!?
木 : あーリス、そういうのは後でPTの方でな?
リス : あ、そうだね! ごめん、ごめん。
ライオン : コケの人、礼を言う。これは確かに重要な情報だ。
草花 : そうだね。これなら『岩の操作』の下位スキル辺りに『土の操作』とかありそうだし、取得狙ってみよう!
クジラ : うわっ!? マジか!?
カツオ : おい! クジラ、今度はなんの真似だ!?
オオカミ : なんだ? カツオっていうと午前中にクジラに呑まれたヤツか。どうした?
カツオ : なんだも何もねぇよ! いきなり口から水を吹き出しやがって! ぶっ飛ばされたじゃねぇか!? おいこら、クジラどういうつもりだ!
クジラ : あぁ!? 巻き込んじゃったのか!? ごめんなさい!
ライオン : カツオの人、少し落ち着くと良い。
カツオ : 落ち着けも何も……ん? これは何かの情報の検証中だったのか?
オオカミ : まだログは流れきってないから、少し遡って見てこい。クジラの人、何をしたか説明を。
クジラ : 思いっきりスキル使って海水を吸い込んで吐き出したら『海を荒らすモノ』と『海流の操作』ってスキルが手に入った……。ちなみに《応用スキル》だね。
リス : 早速再現が出たよ!?
木 : こりゃ、条件はほぼ確定っぽいな。ただ、周りに被害が出るのか……。
カツオ : おい、なんの冗談だ? この情報なんだよ!?
オオカミ : いきなり試してみてカツオの人が巻き込まれた訳か。カツオの人、災難だったな。
クジラ : カツオの人、ほんとごめん! わざとじゃなかったんだ!
カツオ : あーちょうど落ちようとしてたタイミングで邪魔されてイラッとしたけど、この情報見て気が変わった。面白そうな事やってんじゃん!
サル : あ、一気に態度が変わった。そりゃこの状況に居合わせられたならそうなるか。
早速クジラの人が推測の条件から《応用スキル》を取得したか。もっと検証に時間かかると思ってたけど予想以上に早かったな。やっぱり情報公開して正解だったかな?
気が付けば朝日が昇り始めている。夜と昼の切り替えは実際の時間で夜の12時だから切り替わり始めるのは夜の11時か。今日は色々あった1日だったけど、なんとか本日中には合流出来た。それに色々迷惑かけたとはいえ、重要な情報も手に入ったもんだ。
「さてと、一区切りもついたしそろそろ俺はログアウトするよ」
「あ、もう11時なんだね。私もそろそろかな」
「私はもうちょっとやっていく!」
「俺もだな。こんな極上の情報の検証を放り出して寝れるかってんだ!」
「そうだそうだー!」
サヤは俺と同様にログアウトするつもりで、アルとハーレさんはこのまま検証を続行と行くつもりらしい。俺も気にならない訳ではないけど、どんな結果になったかは後日2人から聞けばいいか。下手に付き合えば夜更かしし過ぎて明日に影響がありそうだしな。明日が休みなら夜更かし上等だけど、流石に学校があるから適度な所で切り上げよう。
「それじゃまたなー!」
「おう、またな!」
「ケイさん、またねー!」
「ケイ、またね」
みんなに別れの挨拶をしてログアウトを選択すればログイン画面へと戻される。いつもの如く管理AIであるいったんが待ち受けていた。胴体部分の文字は『二日目もう少しで終了〜』と書いてある。
「お疲れ様〜」
「今日はなんかお知らせある?」
「特に何もないよ〜。『仲間の呼び声』の配布でほぼ苦情はなくなって至って順調さ〜!」
「お、良かったな。それじゃ今日はこの辺で」
「はいよ〜。またログインするのを待ってるよ〜!」
2日目もゲームは終了し現実へと戻ってきた。ベッドで横になっていたのから身を起こし、VRゲーム機を頭から外す。
さてと明日は普通に学校だ。さっさと風呂入って寝てしまおう。うちの親は遅刻とかにはうるさいからな。下手に大遅刻したらゲームを取り上げられる可能性もあるし、安全対策をしておかないとな。
【ステータス】
名前:ケイ
種族:コケ
所属:灰の群集
レベル 6 → 9
進化階位:幼生体
群体数 632/1200 → 632/1500
行動値 8/17 → 8/20
攻撃 6 → 9
防御 15 → 21
俊敏 6 → 9
知識 11 → 17
器用 15 → 21
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