第38話 情報と途中経過
移動中、暇なので情報共有板でも流し見しながら移動する事にしよう。群体化での移動もそれなりに慣れてきたし、この辺は既にマップは埋まり済みだ。少し先の所に空白地帯があるけど、そこまでは見ながらでも移動は出来るだろう。不意打ちを食らったときは仕方ないし、ちょっと勿体無いけど水の補給が出来ないと一般生物相手も面倒なので移動優先!
水の補給が出来るなら一般生物も倒しながら行くんだけどな。補給出来るまでは倒せそうな黒の暴走種の残滓だけにしておこう。ってことで出発&情報共有板の閲覧!
クジラ : よし、Lv10行ったぜ!
オオカミ : ほう、クジラの人、Lv10突破か。おめでとう。
リス : おー! おめでとう、クジラの人!
クジラ : そこで相談したい事があるんだけど、いい?
ライオン : 問題ない。ここはそういう場所だしな。
トリ : どんな相談さ?
クジラ : 転生進化って一度死ななきゃ無理じゃん?
オオカミ : なるほど、大体内容は察した。
草花 : 同じく。要するにちょっと前にあったコケの殺し方と同質の問題な訳ね。
ちょうどクジラの人の悩み相談のようだ。クジラの人の悩み、俺も大体察したよ。俺は一応魚に食べられるって手段を見つけたし、最悪あのヒノノコ……面倒くさい、やっぱツチノコ呼びでいいや。ツチノコに焼かれに行けばいいだけだ。それでも他の人よりかなり死ににくいみたいだけどな。
トリ : 『仲間の呼び声』使ってもらうってのは?
クジラ : あーそれは考えたんだけど、ゲーム外の知り合いでこのゲームやってる人いなくてさ。
トリ : あ、そっか。誰でも知り合いいるって訳じゃないもんな。
オオカミ : それなら変異進化の方はどうだ? 選択肢さえ出ればあっちは死ぬ必要もないだろ?
クジラ : 残念ながら選択肢は出てない。あるのは転生進化で大食いクジラと強化クジラの2つ。
キツネ : こう、思いっきり変わったことしてみたら? 俺とかフレから逃げ回ってたら逃亡ギツネとかいう変な変異進化が出たぞ。あいつら無駄に追いかけまわりやがって!
トカゲ : 一緒にPT組んでるのに情報隠蔽しまくるからだろうが! また情報隠しやがってるし!?
シカ : はぁ、この2人は放っておいてソロにしようかなぁ……。
オオカミ : シカの人、苦労してるんだな。
シカ : そうなんだよね。オオカミの人はソロだっけ? ソロプレイって通用しそう?
オオカミ : まだはっきりとは言い切れないが、不可能ではないって感じではあるな。流石にボス討伐は気に入った相手とでもコンビ組むくらいはした方が良さそうだがな。
このオオカミの人はベスタか? これは俺は結構気に入られたって思ってもいいのだろうか? もしそうなら光栄な話だ。氷狼との戦いは逃亡のみだったけど、そのうちちゃんと倒す為に共闘してみたいもんだ。
それにしてもこのキツネの人は何やってんだかね。PTメンバーにくらい情報公開すればいいのに、逃げ回るとは……。というか逃げ回るのでも進化先あるのか……。
クジラ : ソロって案外楽勝だよ? ぶつかって行ったり、呑み込んだだけで勝手に倒せるし。
シカ : クジラの人は参考にならないって。クジラって完全にバランスブレイカーじゃない?
草花 : 『黒の暴走種』の幼生体を丸呑みとか言ってたもんね。真似出来ないよ。
トリ : そうでもないんじゃね? 今は強いけど転生進化を死ねなくて困るんじゃ後々に影響があるしな。
クジラ : えーそんな……。折角楽しくなってきたのに……。
オオカミ : 強い代わりに進化が難しいって事だな。だが、ゲームとして不可能ではない筈だ。やってない事を色々試せ。
クジラ : 例えばどんな?
トリ : それこそさっきキツネの人が言ってたみたいに逃げ回るとか? 何から逃げるのか知らんけど。
マグロ : あれ? クジラの人、なんか悩んでるの?
クジラ : Lv10に到達したけど、転生進化の為に死ねないんだよ……
マグロ : あー、なるほど。クジラの人、マップの北端は行った?
オオカミ : ん? なんか情報でもあるのか?
クジラ : 俺、南端の方だからまだそっちは行ってない。
マグロ : やっぱり南端の方はクジラの人か。南のすっごい勢いでマップ埋まってるもんな。南側が青の群集の海エリアだっけ?
トリ : 海マップもやっぱり隣接してるんだ?
クジラ : まぁそうだね。まだ隣接エリアには行ってないけど。
オオカミ : あー、そういう事は早く言え。あるじゃねぇか、死ぬ方法。
クジラ : え、マジで!?
オオカミ : 相手次第だが、隣のエリア行って青の群集のプレイヤーに殺してもらってこい。
トリ : あ、エリア切り替えが近くなら確かにその手があるか!
クジラ : あっ!? その手があったか!
マグロ : まぁ一応の情報としては北端に『黒の暴走種』のサメの成長体がいるからそっちでも良いかも。っていうか強過ぎるんでクジラの人、なんとかあのサメを倒して欲しかったりする!
ライオン : 情報提供というよりは、討伐依頼だな?
マグロ : 仕方ないじゃん! 海エリアって魚のプレイヤーが多いんだからサメは中々倒し辛いんだよ! 是非ともその強大なクジラの力を貸していただければ!
クジラの人が相当戦力として見込まれているな。サメ対クジラの海中戦か。ちょっと見てみたいけど流石にまだ海までは行けないというかルートすらわからないもんな。
それにしても転生進化の死亡条件を他の群集のプレイヤーに頼むという手もあるのか。同群集じゃダメージないけど、他群集ならダメージ有りだもんな。有効な攻撃手段を持ってるプレイヤーに頼めばそういう事も可能な訳だ。
あ、だから初期エリアの隣接エリアが他の群集のものになってるのか!?
クジラ : サメの成長体がいるんだ!? それは確かに期待できそうだけど、死ぬ前に倒しちゃったらどうしよう?
オオカミ : あーその心配はいらんと思うぞ?
クジラ : ? なんで?
オオカミ : 成長体はありゃ幼生体で勝てるようには調整されてねぇわ。
ライオン : その言い方だとオオカミの人も成長体と戦ったのか?
オオカミ : まぁな。ありゃ幼生体のままじゃダメージすらまともに通らない。遭遇して逃げきれたら上出来なレベルだ。
クジラ : そんなに強いの!?
オオカミ : やるなら1回倒されてからリスポーンして進化してから討伐だろうな。
マグロ : ほうほう。幼生体だけで突っ込んだのがまず失敗だった訳か。
トリ : 初めのうちは仕方ないんじゃない? 情報足りないんだし。
クジラ : とりあえず北端まで行ってみるよ。
マグロ : お、クジラの人やってくれるか! それなら討伐PT組まないと!
トリ : 一応情報提供含んでるから今はいいけど、討伐PTを組む時は情報共有板じゃなくて、群集内交流板でやりなよー?
マグロ : おう、それは分かってる。って事で後で募集するからクジラの人、宜しく!
クジラ : PT自体は良いけど今日はいけるかなぁ?
マグロ : 都合が合えばで良いさ! 待ってるぜ!
情報共有や相談はこの情報共有板で、PT募集とかは群集内交流板になってるんだ? まぁ種族名しか出ない情報共有板じゃPTも組みにくいか。同じ種族のプレイヤーもいるから個人の判別は大体でしか出来ないしね。
それにしても他のエリアでも成長体に挑む人も出てきているんだな。コツコツとマップ埋めてる人と、ボス討伐をメインにしている人が分かれているのか? そういやマップの埋まり具合はどんなもんだろうか? マップをぱっと見た感じでは半分以上は埋まっていそうだけど。それとマップ解放のエリア別貢献度ランキングはどうなってるかな? 昨日見てから全然更新内容を見ていなかったしな。
群集クエスト《地図の作成・灰の群集》
『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』貢献度ランキング
踏破率 56%、特殊地形 0/1、ボス討伐 0/4
1位 ベスタ 踏破率6%
2位 カステラ 踏破率4%
3位 甘口辛子 踏破率3%
3位 ケイ 踏破率3%
5位 ヨッシ 踏破率2%
あれ、なんかランキング入ってるし!? え、そんなに埋めてた? というよりは他の人達が案外埋まってない? よし、こういう時はアルに聞こう。情報に困った時はアル頼み。
「おーい、アル! なんか俺がマップ埋めのランキング入ってんだけど!」
「あーその件か。てか知らなかったのかよ……」
「昨日見たときから全然見てなかったからな。なんか特殊地形とかボス討伐とか増えてるし、どういう事?」
「あーボスについては多分あのツチノコみたいな成長体の事だろ。特殊地形は、あの陥没してたとこじゃねぇかな?」
「なるほど、あそこの下には何かあるのか。鳥系とか虫系のプレイヤーならあれくらいすぐ埋めれそうなのに埋まる気配がないもんな?」
「これは確定情報でもないから言ってなかったんだけど、あの周辺に行くと何かに襲われて死ぬらしいぞ? それが何かは目撃情報は無しだ。対処方法が分かってないからランダムリスポーンを嫌ってあの周辺には近付かないプレイヤーが多いんだとよ」
「そういう情報はあそこに行く前に言えよ!?」
「その情報が出始めたのはケイが殺られた後だし、そもそもケイがログアウトしてた最中だっての! 俺らの火を吹くツチノコ情報が出てからもしかして?って感じで情報が出始めたんだよ!」
「あー悪かった。なるほど、そういう順番か」
「分かったならいい。まぁ俺としても不確定情報だからあえて言ってなかったけど、これは言っとくべきだったな」
少しバツが悪そうなアルである。流石に今のは俺の言い方も悪かった。正体不明の何かに襲われる場所で、火を吹くツチノコに殺られた俺の情報が出てきてそこから検証され始めた訳か。もしかしてヨッシさんがツチノコに1番目に狙われた理由は飛べるからか?
……なるほど、検証しようにも不意打ちで即死する大前提の囮役と、動きを察知してあの突進を耐えるだけの手段がないと正体の確認すら無理か。偶然だけど俺達は確認するだけの条件を満たしていた訳だ。
「なぁアル、あのツチノコ誰かに倒されたりしないよな?」
「どうだろな? そこらは早い者勝ちだからなんとも言えん」
「そんなのは許さないよー! あのツチノコを仕留めるのは私達だー!」
「ハーレ、気持ちは分かるけど落ち着いてね?」
「サヤ! あのツチノコはケイさんの仇なんだよ!?」
「いや、まぁ間違っちゃいないけど、ゲームだし今こうやって生きてるからな? って、あれ呼び方変わった?」
いつの間にやらサヤとハーレさんのお互いの呼び方が呼び捨てに変わっていた。一体いつの間に?
「それなら、さっき2人でヨッシさんのリアル話で意気投合して変わってたぞ」
「あー、なるほど」
元々ヨッシさん繋がりで引き合わせられたサヤとハーレさんだ。そういう切っ掛けで仲良くなる事もある訳だ。
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