第21話 サヤの友人と水の操作


 サヤの質問の意味を測りかねて、とりあえず情報源と思われるアルを問い詰めようと思う。


「アルが喋ったのか?」

「いや、俺はそれは話してないがーーあぁ、そういう事か」


 ん? アルが何か納得しているがイマイチ意味が分からない。ハチの人ことヨッシさんは友達2人と合流したくてもエリア分断を食らって落ち込むというか絶望していた。そのうち、1人は同じエリアみたいだと言っていたっけ? そういやサヤもリア友と……あっ! もしかしてそういうことか!? てか掲示板見てた時に1回その可能性は考えてたのになんで失念してんだよ、俺!


「……もしかしてハチの人のヨッシさんってサヤのリア友?」

「そうだよ。コケの人に会ったって聞いてまさかとは思ったけど、やっぱりケイだったんだ」

「はー、そういう事もあるんだなぁ」


 てか、昨日の時点で気付けよ俺! リアルで連絡取った時にヨッシさんがサヤに俺の事を話したって事なんだろうな。結局どういう結論になったんだろうか?


「なぁサヤ、それでヨッシさんとの合流はどうなりそうなんだ?」

「あ、それね。午後から合流って事になってるんだ。私はここで待っててって言われてるんだよ」

「なんか俺が待ち合わせ場所に使われちまってな? いや別にいいんだがよ」


 アルが待ち合わせ場所か。マップで見ても崖の手前だから意外と目印になりやすい感じだしな。座標があってもやっぱり分かりやすい目印があると移動もしやすいもんだ。それにしても午後から合流という事は、運営の対応策でどうにか目処が立ったという事か。気になってたから上手くいったならそれは良かった。


「でもヨッシ、初めは妙に落ち込んでて変だったんだよね。マップ解放されたなら合流も難しくないのになんで落ち込んでたんだろ? なにか慌ててかけ直すって電話切ってから次に電話来たときにはいつも通りに戻ってたけどさ」

「……ん?」

「ケイ、どうかした?」

「あ、いや何でもない」


 もしかして公式サイトを見る前に連絡して、電話しながら公式サイトを見て運営の対応策に気付いたのか? というかこの言い方だとサヤはもう1人合流予定なのを知らない? そういやハチの人はそれぞれに紹介するとか言ってたような……。もしかしてヨッシさん、サヤともう1人をサプライズで引き合わせるつもりなのか!?

 サヤと午後からって合流って事は、先にもう1人の方の迎えに行ってるのかもしれないな。『仲間の呼び声』を使って呼び寄せる必要もあるだろうし。


「ねぇ、ケイ。なんか変だよ?」

「あ、いやそれは……」


 ヨッシさんがサプライズを計画しているのなら、俺がバラすのは駄目だろう。ただでさえ予定が狂いまくってるみたいだし、ここは秘密厳守!


「あーサヤ、ケイも偶然でびっくりしてんだろうよ。なぁ、ケイ?」

「あ、あぁ、そんな感じだ」

「それもそっか。私もびっくりしたもんなー」


 アルが事情を察して、助け舟を出してくれて助かった! サヤがヨッシさん達と合流するまで悟られないように気をつけよう。



「それで、ケイは今日はどうするの?」


 あ、話題が変わった。よし、これでボロを出す可能性も低くなる。それにしても今日の予定か。そんなものは昨日の夜から決まっている!と言いたいけど、先に手に入れるべきスキルもあるみたいなんだよな。まぁ並行して出来そうだし問題ないけど。


「そうだな、とりあえず『夜目』を手に入れるのが最優先だな」

「あ、そうだね。別に無くても動けない訳じゃないけど、動きにくいのは確かだし」


 とりあえず午前中は『夜目』取得に費やす事に決めた。群体での移動はほぼ視覚に依存しているので見やすい方が確実だろう。そして、まだ試していない『水の操作』も試さなければいけない。情報共有板にいたオオカミの人が言ってたようにこの『水の操作』は攻撃転用の可能性はある!


「『夜目』が手に入るまでは『水の操作』の実験するか」

「あ、ついでに水やりよろしく!」


 しれっと水やりの要求してくるアルだった。よくよく見るとまた植物達が弱っている。昨日ほどやり過ぎではないけど、水やりはしておいた方が良さそうだ。

 とりあえず『水の操作』で攻撃が出来そうなら、標的はアルにしよう。なに、ダメージはないし、ご希望通りに水を浴びせてやろうではないか! 失敗した時には水やりにもなるし一石二鳥って事で!


「あ、なんかケイの悪巧みの予感がする」

「……あのサヤさん、どうやって見抜いてるんですかね?」

「んー、勘かな?」

「サヤの勘、怖いんだけど!?」

「ケイ、諦めろ」

「アルは面白がってるよね」

「うっ、俺までバレるのか……」


 アルまで見抜かれていた。勘で見抜かれたらどうしようもなくないですかね!? よし、切り替えていこう。気にしたら泥沼に嵌まる気がする。


「よし、とにかく俺はスキルの検証する!」

「あ、誤魔化したね。ま、いいか。私は待っててって言われてるし、ここでスキルの熟練度稼ぎでもしようかな?」

「俺も『根の操作』のスキル上げだな。これが実用レベルにならんとどうにもならんし」

「って事はみんなここなんだな」


 みんなが結局一緒の場所でそれぞれのやる事をする事になった。一緒の場所にいるならPTを組んでおこうという事にもなった。ちなみにリーダーはサヤである。


 よし、俺はともかくスキルの検証だ! 何はともあれ、まずはスキルの説明を見てみよう。


『水の操作Lv1』

 行動値を消費する事で水を操る事が可能になる。操作の難易度はLvに依存し、また消費行動値も変動する。

 

 消費行動値は5か……。って、ほぼ半分じゃないか。これLv上げれば消費下がるのか? あ、既存の水が必要なんだな。インベントリの中に小川の水が残ってるし、それを使うか。とりあえず水を出そう。


<インベントリから小川の水を取り出します>


「わっ!? あ、ケイが水を出しただけか。びっくりした!」

「あ、声かけとくべきだったな。ごめん」

「で、ケイよ、俺に水をぶっ掛けたのはわざとか?」

「水やりをしてくれって言っただろ?」

「周囲にだよ! まぁ、水分吸収に使うから良いけどよ」


 ふふふ、そう簡単にさせるものか。いざ『水の操作』を発動だ!


<行動値を5消費して『水の操作Lv1』を発動します>  行動値 6/11


 お、群体化と同じような範囲指定が出てきた。ふむ、これで操作する水を支配下に置く訳か。これ、群体化とよく似てるな。とりあえず、さっき出した水を支配下にしようっと。


「あれ!? この水、水分吸収出来ないぞ!?」

「お、そうなるのか。1つ情報ゲットだな」

「ケイ、何をした!?」

「ふふふ、その水は俺の支配下にあるのさ!」

「なん……だと……!?」

「水の操作ってそういう感じなんだ? 他にはどんな風になるの?」


 うーむ、この手のノリにはあんまりサヤは乗ってくれないな。ま、良いか。これはあくまで下準備っぽいしな。本番は次だ。えーと、今出来る事は水の集中と水の移動と支配解除の3つか。とりあえず水の集中をやってみよう。

 集中、集中! お、地面に染み込んだ水が集まってきて水溜りが出来てきた。


「お、おぉ! 水が集まって行ってるね! すごいゆっくりだけど……」

「はぁはぁはぁ……。何これ、無茶苦茶集中力いるんだけど……」

「序盤は感覚掴むまではそんなもんだろ。『根の操作』だって序盤は苦労したぜ?」

「あーそれはオフラインで経験済み。てか同じ『〜の操作』ってなってるけど、もしかして『根の操作』と『水の操作』って同系統スキルか?」

「その可能性はあるかもな。まだまだ情報が少なくて断定は出来んけど」


 『水の操作』はオフライン版にはなかったけど、『根の操作』なら存在していた。同系統スキルと仮定するなら熟練度上げてLvを上げるのが最適解か? よし、そのつもりでやっていこう!


 頑張ってやってるうちに水溜りが水の玉になって浮かせるようになってきた。まだLvは上がらないか。Lv1だと難易度高いな。


「あ……」

「あー水被っちゃった」


 俺の『水の操作』が気になったのか、自分のスキル上げはやらずに見学していたサヤに水の玉が破裂して、水が被ってしまった。サヤは即座に身震いして水気を飛ばしているが。


「サヤ、すまん!」

「いいよ、これくらい。別に問題もないしさ」


 確かにリアルの女性に水を被せたら色々と問題あるが、ゲーム内のクマの姿なら大丈夫ではある。風邪を引く事もないし、色々透ける事もない訳で。


「それより、なんでいきなり破裂したの?」

「えっと、あ、支配時間切れって出てるわ。時間制限あったのか」

「なら、その水は水やりになってちょうど良さそうだな?」

「支配し直すのは不可能みたいだし、それが良いかもな」

「よっしゃ、これでまた植物が回復する! ケイ、あんがとよ!」

「いえいえ、どーも」


 再度『水の操作』を発動してみたが、もう一度支配下に置くことは出来なかった。どうやら水は使い捨てのようである。そして不発だと無駄に行動値だけが減っていた。もっとスムーズに操作出来るようになれば攻撃転用は出来そうだけど、これは一筋縄ではいかなさそうだ。

 どんな攻撃ができるか考えながら鍛え上げて行こうじゃないか。


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