第4話 初遭遇


 よし、とりあえず群体数を最大にしよう。視界にモンスター化してないコケを入れてっと。ここって森の中だからそこら中にコケがあって楽だな〜。

 初期地点は種族によって動きやすい場所ってとこだろうか? 他のプレイヤーいないかな?

 とりあえず群体化を発動しよう。

 

<行動値を1消費して『群体化Lv1』を発動します>

<群体数が199増加しました>

<群体数が最大数に達しました>

<融合進化ポイントを1獲得しました>


 行動値 9/10

 群体数 500/500

 融合進化ポイント 3



<規定の条件を満たしたため、スキル『群体化解除Lv1』を取得しました>


 ん? なんか早速新スキルを手に入れたぞ。えーと、詳細確認しとこ。ふむふむ、群体化したものを解除するスキルか。なんでこんなスキルが……?

 あ!? 解除出来なきゃ、誰かに群体数減らされるまで一切身動き取れなくなる! これ、ちょっと試してみたほうが良いかも。


<行動値を1消費して『群体化内移動Lv1』を発動します> 行動値 9/10


 よしよし、これで移動が出来た。精神生命体の核の移動とか言ってたけど要はプレイヤーの視点移動みたいな感じかな? よし、次!


<行動値を1消費して『群体化解除Lv1』を発動します>  行動値 8/10

<群体数が250減少しました> 群体数 250/500


 群体化解除は群体化と一緒の要領で発動できた。けど、群体数250減少か。視界の範囲に結構なコケの量があったから、その影響かな。


 とりあえず移動方法はわかった。行きたい方向のコケを群体化して、そこに群体内移動で移動して、移動前までいたコケを群体化解除で切り離すとそういう流れか。でもって行動値も上限あるから、移動し続ける事も出来ないって事か。

 これ、普通に歩くより面倒じゃない? いや、コケだし歩けないから仕方ないけどさ……。



 群体化と解除を繰り返すことしばらく、標的を発見。どうやら一般生物の熊の様子。とりあえず、群体化解除で群体数の枠を開けて、行動値が最大値まで回復するのを待とう。よし、オッケー。


 目標、前方の熊。よし、足元にコケの存在を確認! まず群体化で奴の足元へと行動範囲を移す!


<行動値を1消費して『群体化Lv1』を発動します>  行動値 9/10 

<群体数が200増加しました> 群体数 450/500


 目標、熊の様子に変化なし。よし、一般生物には気付かれないんだ。まぁ始まったばっかりから気付かれてたらどうにもならんけどさ。次、攻撃行動へ移る!


<行動値を1消費して『スリップLv1』を発動します>  行動値 8/10 


 おぉ!? 熊が少しバランスを崩した! あ、くそ、既に足を着けた状況では転びにくいか? うーむ、キョロキョロと周囲を警戒し始めたな……。次の一歩で転ばせてやる!

 お、警戒しながらも一歩踏み出した。よし、そこだ!


<行動値を1消費して『スリップLv1』を発動します>  行動値 7/10


「きゃ!」

「よっしゃ!」


 熊が思いっきりすっ転んで大成功! 思わずガッツポーズを取りたくなって声が出たよ。ガッツポーズは出来なかったけども……ってちょっと待てや、さっきの「きゃ!」って誰の声だ……?


「……何が『よっしゃ!』なのよ! 誰よ、出て来なさい!」


 そこには大層お怒りの熊が……クマモンスターのプレイヤーが居たのでした。声からしておそらく女性……。怒りながら周囲を見回していたクマの目線が俺の方に固定される。よし、気付かれないようにやり過ごそう。うん、コケなんだからバレないさ。大丈夫!


「へぇ、随分と変わったのがいるのね? どういうつもり、コケのケイさん?」


 速攻バレてんじゃん!? 種族どころか名前までバレてるし!? こうなったら……。


「申し訳ありませんでしたー!!」

「はい?」


 全力謝罪あるのみ。気持ちは土下座。でも気持ちだけ。怒れるクマ、めっちゃ怖いよ……。考えてもみてくれ。リアル寄りのクマが怒気を放ちながら睨みつけてくる状況を!


 クマの人も素直に謝られるとは思っていなかったらしく、俺の謝罪を受けてすぐに怒りを収めてくれた。


「で、ケイさん。なんでいきなりあんな事をしてきたのかな?」

「いや、その、えーと……はい、スキルの実験をしようと思って、一般生物だと思って、間違えてつい……」

「……? なんで、それで間違うの?」

「え? だってカーソルの表示も一般生物のだったしさ」

「……あ、なるほど。ケイさん、オフライン版やってたね?」

「そりゃもう、がっつりと!」

「そして、ヘルプはろくに読んでないと……」

「……へ? あぁ!? そういう事か!?」


 クマの人に言われてヘルプを開いてみて、即座に理由が判明した。


<プレイヤーカーソルについて>

『赤の群集』所属プレイヤーは赤色、『青の群集』所属プレイヤーは青色、『灰の群集』所属プレイヤーは灰色、NPCや一般生物は緑色、重要なモノは黄色で表示されます。


 オフライン版だと、一般生物やNPCは灰色のカーソルで表記されていた。そこら辺の表記の変更に気付いていなかっただけらしい……。オフライン版でもそうだったが、最初期は一般生物とモンスターって見分けがつかないってのも原因かもしれない……。他のVRMMORPGと違って、初期の街とかないしなぁ……。

 オフラインだと間違っても誰にも迷惑かからないし。うん、オンラインゲームだという事を忘れないようにしなければ!


「誠に申し訳ありません! 全面的に俺が悪いです!」


 だからこそ、全力で謝る! このゲーム、PKがない訳ではないけど、おそらく想定されているのは所属が違う相手とのものだ。いや、ヘルプ読んでないんだけどね。

 何が悪いと開き直る事も可能だけど、サービス開始初日から同じ『灰の群集』所属で第一遭遇者であるプレイヤーと敵対しても良いことはない。


「はぁ、勘違いだって事はわかったよ。確かに色々変わってるみたいだしね。これは私も気をつけないとね……」

「そ、それじゃあ?」

「許してあげるよ。ただし、一個だけ条件があるかな?」

「……条件?」


 なんだろうか? このゲームに貨幣はないし、まだ全然アイテムも持ってないからお詫びの品は用意出来ませんよ?


「なーに、簡単なことだよ。その新規実装のコケの事、教えて頂戴!」

「あぁ、それくらいなら良いかな」


 あー気になるよね、確かに。俺も他人がそうだったならめっちゃ聞きたいわ。ただ、誰ともしれない初対面の人にいきなり教えろと言われても教えないけど、これは絶好のチャンスだよなー。俺だってこのクマの人の立場なら同じ事やるね。

 

「じゃあ、はい」


 そう言ってクマの人はフレンド申請を出してきた。あぁ、教えてって今後継続的にって事か。これもオンラインゲームの一つの楽しみ方って事でいいか。悪い人ではなさそうだしさ。


「種族:クマのサヤさんか」

「呼び捨てでいいよ。こっちもそうするから」

「そっか。よろしく、サヤ」

「よろしくね、ケイ」


 こうしてゲーム内でのフレンドが早くも一人出来た。ただし、その後質問攻めにあったのはそれほど想像するのは難しくない事だろう。とは言っても、まだまだ検証を始めたばかりだ。色々気になるみたいだし、サヤにも手伝ってもらおうかね?

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