第2話 キャラメイク
「さ〜て、初期種族は『コケ』に決まった事だし次にーー」
「ちょっと待った!」
「あれ〜? なんか質問ある?」
「質問も何もコケってなんだよ! コケって!? どう攻略しろって!?」
「そんなの教えられるわけないじゃん〜。一人のプレイヤーにだけ攻略情報は教えられないよ〜」
「そりゃそうかもしれんけど!」
確かに一人だけに攻略方法を教えるというのは最大級の反則行為だろう。言っていること自体はその通りだ。かといって流石にコケっていうのは納得し難い。
というかいつの間にか、垂れ幕のいったんに書かれていた文字が『コケに決定〜 まさか初日からこの変わり種が出るとはw』とかに変わっていた。運営的にも変わり種なんかい! てかこの演出、イラッとするなぁ……
「ふ〜仕方がないねぇ……。最大限の譲歩だよ〜? これはオンラインゲームであり、自キャラ枠が三枠ある理由を考えてみてね?」
「それってどういう……」
「それ以上は教えられないな〜」
それ以上の情報は教えてくれる気はないらしく、話を打ち切られた。オンラインゲームであり、自キャラが三枠ある理由か……。こりゃオフライン版とは全く別物と考えた方がいいみたいだな。
そしてまた文字が『仕方ない奴め……』とかに変わっている。おい、いい加減にしろよ? 本気で苦情入れるぞ?
「さて、次行ってもいいかな〜?」
「……色々納得しかねるけど、とりあえずプレイしてみてから考える事にするよ。次に行ってくれ」
「ほいさ〜。んじゃ次は名前決めてね〜。初期枠の名前がここで決めた名前、二枠目は名前+2nd、三枠目は名前+3rdって感じになるからね〜」
「名前か……」
次に決めるのは名前らしい。二枠目、三枠目も個別に自由に名付けられる訳ではないようだ。本名の吉崎圭吾(よしざきけいご)から適当に文字を取って決めるかな。
「よし、名前は『ケイ』にしてくれ」
「ほいよ〜。重複する名前の登録は無理だからちょいと確認するから待ってね〜。うん、重複はないから大丈夫だよ〜。『ケイ』でオッケーかな?」
「あぁ、大丈夫」
「はい、『ケイ』で登録したよ〜。次で決めるのは最後かな〜」
「項目少ないんだな?」
「まぁね〜。って事で所属を決めて貰おうか〜。次の三つの内から選んでね〜」
その言葉と共に俺の目の前にウィンドウが投影される。いったんの文字は『所属決めですね』と変わっていた。うん、至って普通の内容だ。これならイラッとはしない。さて、どんなものがあるのやら?
書かれている選択肢は三つだった。内容は以下の通り。
『赤の群集』
精神生命体の中でも過激派の勢力。邪魔者は殺しまくってライバルを減らし、人類種への進化を目指す集まりである。肉食系モンスターにオススメ。
所属メリット:攻撃力上昇、殺戮による『増強進化』ポイントの上昇
所属デメリット:防御力減少、自身の死による『生存進化』ポイントの減少
『青の群集』
精神生命体の中では穏健派の勢力。原生物を尊重しつつ、調和し融合していく形で人類種への進化を目指す集まりである。自然系モンスターにオススメ。
所属メリット:防御力上昇、原生物との融合による『融合進化』ポイントの上昇
所属デメリット:攻撃力減少、殺戮による『増強進化』ポイントの減少
『灰の群集』
過激派と穏健派のどちらにも所属していない勢力。時と場合により臨機応変に対応して、手段を固定せずに人類種への進化を目指す集まりである。被捕食系モンスターにオススメ。
所属メリット:変異率上昇、自身の死による『生存進化』ポイントの上昇
所属デメリット:殺戮による『増強進化』ポイントの微減少、原生物との融合による『融合進化』ポイントの微減少
ほー、進化ポイントのボーナスが変わってくるんだ。確かオフラインでの進化ポイントの取得条件は、他のモンスターを倒す事、他のモンスターに倒される事、モンスター以外の生物を取り込む事だったっけな? 一律同じポイントとして扱われてたけど、オンライン版だと個別に分かれてるって事か。こりゃ、進化条件も色々と変わってそうだな。
俺の種族はコケだし、どこにしようか? コケって植物だし『青の群集』か、それともエサにもされてそうだから『灰の群集』か……。
いったんの方を見てみると、『はよ決めろ〜』と内容が変わっている。こいつ鬱陶しい……。
「ちなみに二枠目、三枠目も同じところの所属になるからね〜」
「そうなのか。なぁ、これって後から変更は可能なのか?」
「無条件ではないけど、可能だよ〜。条件は教えられないけどね〜」
「そうか。そうなると……」
後から変更可能なら、とりあえずで決めておくか。コケでのプレイスタイルもわからんし、臨機応変でいくか。二種類が微減少になるけど他の減少よりは影響範囲は少ないだろうし、これにしよう。
「よし、『灰の群集』に決めた」
「はいはい、『灰の群集』ね〜。ほい、登録完了〜。これで決める事は終わりだけどなんか質問ある〜?」
「アバターの制作はないのか?」
「ないよ〜。モンスターになりきるんだから必要ないでしょ? あ、人類種に到達した時に作成する事は出来るけど、作るのもその時だからね〜」
「それもそうか。他のVRゲームとは根本的になにか間違えてるもんな、このゲーム」
「……失礼なこと言うね、君は〜」
その言葉とは裏腹に垂れ幕の文字は『それこそ我らにとっては褒め言葉!』となっていた。運営、遊びすぎじゃね?
「さてと、それじゃこれでキャラメイクは終わりだね。チュートリアルは種族毎に専用クエストがあるからそれをやってね〜」
「あれ? ここじゃやらないのか?」
「うん、ちょっと種族の種類が多くなり過ぎてチュートリアル用のマップを個別に用意するのがめんどーー手間がかかってたから、実際のマップでやってもらう事になったんだ〜」
「おい、今面倒とか言おうとしてなかったか?」
「さて、なんの事やら〜?」
垂れ幕表示には『しまった!? 口を滑らせた!?』と表示されている。……おい! てかこいつホントにAIか? 中の人いるんじゃないのか?
「まぁそんなことは置いといて、決める事は決まったしそろそろゲームスタートだよ。準備はいい?」
「……色々と聞きたいとこだけど、どうせ教えてくれないだろうし、自力で確かめるよ。操作方法とかもチュートリアルあるんだよな?」
流石にVRゲームでのコケの操作方法なんか知らないからな。これくらいはないと困る。
「ちゃんとあるよ〜。スタートしたら、チュートリアルクエストは自動受注だからね〜。キャンセルも出来るけど、ちゃんとチュートリアルをするのをオススメするよ〜」
そして垂れ幕の方には『コケは特殊過ぎるから、チュートリアルなしだとどうなっても知らん』と無責任な内容が……。おい、そこまで変な種族を作るなよ……。
「あーわかったよ。ちゃんとチュートリアルはやっとくさ」
「それじゃゲームスタートだね。人類種を目指して頑張ってね〜」
「おうよ! って、おいこら待て!?」
「いってらっしゃーい!」
そうして俺はMonsters Evolve Onlineのゲームマップへと転送された。その直前に見たのは垂れ幕の『色物種族の悪あがき、楽しみにしてるね』という一文だった。本当に大丈夫なのだろうか、このゲーム……。
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