情景246【土曜日のお昼】
正午を過ぎて、休日の空気に体がようやく慣れてきた。
窓を開けて外の空気を拾いながら穏やかに過ごす。そういう季節になった。
外からの風が部屋を通れば室内は色づいていく。時が静止してくすんでいた部屋は鮮やかで生き生きとした場に変わる。息を吸って新鮮な空気を胃の底に落とした。
「土曜日の雰囲気って、あるよね」
冬の間はずっと稼働していたエアコンも、今はおとなしい。
外の通りのほどよく賑わう雰囲気をほどほどに感じ取りながら、カフェラテを用意してテーブルにパソコンを広げた。それぞれの指を踊らせていくつかのキーをタタタンと叩く。横書きの原稿にニョキニョキ生えてくる多種多様な文字。画面上で左右に踊りながら明滅するカーソル。それらが間断なく動き続け、真っ白だった原稿を淡々と埋めていく。遠くから風の音に乗ってきたトンビの
静かで、安らかだ。集中しているのがわかる。
周囲の音と気配を感じ取りつつも、目の前の作業に意識を傾けることができた。
——指が軽い。
キーボードの上で跳ねる指が、キーに触れるたびにパチパチと小さくしびれる。思考が脳内で言語になる寸前のところで、浮かぶ前の文字を原稿に落とし込むことができていた。
指を通じて直感が言う。今日はいいものが書けそうだ。
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