情景244【渇いた指に水滴を】

 朝、乾燥した指先に冷えたペットボトルの水滴が触れる。指の腹がラベルレスボトルの表面をつるりと滑った。指紋の間に水滴が吸い付く。渇いた体が水分を欲している。

 キャップを外し、わずかに開けた口にペットボトルを傾け、くいっとあごを上げてふた口ほど。無色の冷えた水が喉を潤しながら体の中に落ちていく。それは胃に溜まって、内側からじわじわと体全体に滲み入るように潤いが広がっていった。

 と、思ったのもつかの間。

「あったま、痛い——」

 もうひと口、今度はぐいっと大きくいく。

 のそっと立ち上がり、カーテンを開けてベランダの向こうの陽気に触れる。自分の気分とは大違いの晴れやかな天気に誘われ、窓を網戸ごと開けた。

 ベランダから外を見下ろすと、家の前の通りは出勤する大人と登校する子どもたちの姿。一方、自分は部屋着のシャツにガウチョパンツで手入れしそこねたパサパサでボサボサの髪を垂らしている。

「休日だからってさぁ……」

 これではせっかくの休日も、午前中くらいまでは使い物にならないな。

 さらに頭痛が追い打ちしてくる。

「昨日の自分をはっ倒したい」

 そんな二日酔いの自分。

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