情景223【山間の道】

 今日という日曜日がよく晴れていたものだから、平坦な街場から遠くの山間やまあいまで車を走らせた。山道さんどうに敷かれたアスファルトに沿って進み続けるほどに、目にする景色は都会の持つそれからかけ離れていく。木々の間をぬって差し入ってくる光が、鈍色にびいろのアスファルトに白い光のたまり場をいくつも作っていた。

 私たちの車は、その光溜ひかりだまりをくぐって進んでいく。車体ごしに唸るように響くエンジン音と、タイヤがアスファルトを踏んで回転する音が鼓膜を震わせた。

「晴れてよかったねぇ」

 と言えば、隣で運転する相方は前を向いたまま頷いて、

「それ、何回目?」

 ふっと柔らかく笑う。

「……百回目?」

 いや、わかんないけど。


 そうして進み続けると一軒。カフェの装いに設えられたロッジに着いた。ジビエ料理を出してくれるらしい。田舎特有のやけに広い駐車場に車を止めた。たまに、わざわざこういうところに店を構えてくれるひとがいる。

「山の中って言っても、車で一時間もせず都会まちに着くんだけどな」

「……そういうこと言っちゃう?」

 でも、確かにそうかもしれない。

 ここまで来るとつい忘れちゃうよね。そういうの。

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