情景204【朝の里雪】
朝、足もとの冷たさに耐えかねて目を覚ました。
外より染み入ってくる空気から、いつもとは違う冴え渡るような冷えを感じてからだを起こす。カーテンを開ければシャッと音を立ててまぶしくて、それから外の様子が視界に入った。
庭を真白く染め上げているのは雪らしい。
「積もってる……」
静かだった。ちらつく雪が周囲の音を吸い取っているかのように、ただ深々と目の前で雪が降っている。
「えっ、ちょっ、ま……おかあさーん!」
——雪、積もってるんですけど!
積雪なんて何年ぶりだろう。寝間着のまま階段をドタドタと駆け下りてリビングに出る。ヒーターとストーブで暖められた空間に朝餉の匂いが漂っていた。
「雪! あの——ソトでユキ!」
「なにそのカタコト」
こたつで漫画を読んでいた弟が聞いてもないツッコミを入れてくれる。
そもそも雪なんてめったに積もらないんだから、玄関先に小さい雪だるまのひとつでも作りたくなる。
「ちょっと外の様子見てくる!」
そう言って寒い廊下に出ると、
「滑るから気をつけろよ」
外で郵便を取ってきたお父さんが、玄関で湿ったダウンを抱えながら靴を脱いでいた。
「え、うん」
気のない返事をしてドアの取っ手を下げて押す。外の冷たい空気が出迎えて——。
「……」
軒下の雪にひとがちょうど尻餅をついたアトがでかでかと残っていた。
お父さん、コケたな。
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