情景193【格子窓を開ける】
本を読みながらたまに外の庭を眺めていたくて、縁側に出られる窓のそばに揺り椅子を置いている。揺り椅子に身体を任せ、おもむろに揺られながら、ハードカバーの本を一冊、読み耽っていた。
ふと、外から差す陽の光が開いたページに乗る。その光は窓を十字に通る枠の間を通り、格子状の影を作って身体に降った。窓のそばで音もなく寄る冷気を感じつつ、身体を覆う陽光の暖かみが、指先や前腕の皮膚をほぐしていく。
外を見た。乾いた庭に晴れの空気を感じる。
——窓を開けてみようかしら。
思う前に、立ち上がる自分がいる。
鍵を開け、取っ手を掴んで横に引くと、カラリと音を立てて外と繋がった。
風は乾いている。ただ、日の下で土や植物の作る庭の豊かな空気を含んでいる。
「うーん、気持ちいい……けど」
一分が限界ね。これ以上は風邪を引いちゃうかも。
閉じれば、部屋に還流した風の気配が消える。
それを感じたあと、ホコリに鼻をくすぐられてくしゃみをしてしまった。
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