情景170【今日もまた、こうして過ごしてる】
会社で目下の業務と静かに奮闘していた私の左頬へ、茜色の夕陽がそっと触れる。それが横目にちらついて、意識の向かう先がノートPCの画面から外へと引き放された。
オフィスの広い窓に降りた白いブラインドの隙間。そこから西日が幾筋かの横一線を作ってこちら側に降っていた……。
「もう、こんな時間か……。ねぇ、さっきの話だけど」
——あっ、電話中か。
隣席の同僚は忙しなく電話をかけていた。雑多な音が響き合う中に混じる彼の声から、一抹の疲労感を掬い上げるように、私の耳もまた周囲へと意識が向く。
そんな私は、外の様子の移り変わりを感じつつ、今日も箱の中で変わらず仕事。
「仕事があるだけ、お給料が出るだけ……」
ありがたいことなのかな、とか思って思考を落ち着けた。
私は社用端末のパソコンの明滅する画面と睨めっこをしている。指を動かし、指示を出し、スケジュールを弾き直し、返事を待ち……。
——キリがなくない? コレ。
横で暗い沈黙を守っていたスマートフォンが、一転してライトアップ。一件のメッセージを引き連れている。
『【重要】購入ポイント付与/失効のお知らせ——』
もっとこう、ロマンあるメッセージがほしいな。
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