情景168【寒いけど漕ぐ。連なって漕ぐ。】

 部活動の帰り。すっかり日の暮れた国道沿いで、同学年の連中と縦に並び自転車を漕いでいた。ジャキジャキと自転車を漕ぐ音が縦に連なり、柵伝いのそばを乗用車が勢いよく通り過ぎていく——。

 この時期はいつもこうだ。

 六限まで授業に耐えてようやく部活に入れたと思えば、あっという間に暗くなってテニスボールひとつ捉えるのも難しくなる。年季の入った部室で全員が寒い寒いとぶつくさ言いながら着替え、あえなく解散の流れ。それで懲りずに今日もこうして、この寒さに打ちひしがれながら自転車を漕いでいる。


 首に巻いたマフラーの隙間から、日没後の肌寒い風が服の内側にするりと忍び込んできた。これが厄介でしかたない。夕冷えする空気を感じはじめたと思えば、すぐさま夜の暗がりに包まれる自分たち。家はまだまだ遠かった。

 たまらず、連れのひとりが叫ぶ。

「ファミチキ食っていこうぜ!」

 全員の自転車を漕ぐ足力そくりょくが緩んだ。

 名案かよ。

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