情景165【冬の夜空は透いて高い】

 肌寒くなってきたと言っても、昼日中はまだ上に一枚羽織るだけでなんとかなる。ただ、陽が沈むともうムリね。あと、早朝もキツい。寒くてたまらないったらない。そんな時期に何を思ったのか。夜中にベランダへ出て外の風を浴びる私がいた。

「陽の光が恋しいねぇ」

 なんてことを言ったところで、お陽さまがカオを出すわけはない。それに、この夜の空気が私は決して嫌いじゃない。帰宅して、風呂を済ませて髪を乾かし、薄手で無地のゆっるいルームウェア上下の格好で外に出る。

 当然、外の風が私を冷ましに来た。

 ベランダに背中を預け、手すりに寄り掛かり、真上を見上げまっすぐ視線を飛ばす。どこまでも高く透いて見える藍色の奥の奥に乳白色のモヤのようなものが隠れているような、そんな奥行きを感じる。


 冬の空は、吐いた息がどこまでも吸い上げられていきそうなほど、高く見えた。


 それから二の腕を指でそっと撫でれば……鳥肌がくっきり。バカみたいな自分に笑う。

「でも、気持ちいいな、風」

 言ったそばからくしゃみをした。

 まァ、多少バカかな、自分。

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