情景163【行き交う歩廊でゆったりと待つ】

 博多駅のプラットホームにちょこんとひとり、北の方に向かう電車を待っていた。濃い色のコートを着込み、両手をポケットに突っ込んで、

「そろそろ厚手のヤツに変えるかな——」

 とか、思ってしまう。

 前髪を横に流して視界をクリアにして、視線は定めず前方に向けたまま、ほっとひと息ついた。まだ息が白むほどではないらしい。


 左右に伸びる何本もの線路と、それに沿い幾つかの面が据わる歩廊ホーム。ターミナル駅と言うだけあって、車両の出入りがあちこちで忙しない。鉄道の織りなす音がそこかしこで鳴っていた。奥の電車は淡々と人を吸い込み、南に伸びていく。背後の特急はそのまま北へと走っていった。

 私はぽつねんとひとり、時が経つのを待っている。

 すぐ側の立ち食いラーメン屋を横目に。


 ——新宮で降りたら、うまかっちゃん買ってかえろ。


 まったくもう、隣のラーメンのおかげでお腹が鳴って仕方ない。

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