情景159【季節は移りゆく】

 早々に秋がどこかへ去ろうとしていた。

「あまりにも早くない?」

 誰ともなしにぶつくさと呟く自分の鼻に、ツンと冷めた空気が詰め寄る。


 クローゼットの前で外出の支度をしていて、たまらず箪笥から厚手の長袖を引っ張り出し、袖を通して一枚羽織った。

 ——コレ、冬まで眠らせるはずだったんだけどな。

 家の鍵を手に取り靴を履き、軽く爪先でトンと玄関の床を叩く。鞄を肩に提げて扉を開けて外に出た。

「あれ?」

 外の方が暖かく感じるときって、たまにある。

 ただ、それも一瞬のことで、すぐに夜明けの冷えの余韻を引き連れた微風がやってきた。


 昼前の静かな午前中。

 見上げれば、空は高い。

 快晴の空から降る空気にそっと混じる冷気が肌に触れた。

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